著者
中村 翰太郎
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.19-24, 2003

ISO 10006「品質マネジメント-プロジェクトマネジメントにおける品質の指針」が改訂され,新しい規格が2003年6月15日付で発行された.今回の改訂では,表題も「品質マネジメントシステム-プロジェクトにおける品質マネジメントの指針」と変えら,ISO 9000sの2000年改訂と整合性を保つ規格となった.規格の主要変更は,章の構成がISO9004:2000と同じになったこと,八つの品質マネジメントの原則が導入されたことおよび1997年版ではプロセスとして扱っていなかった改善の活動が,測定・分析を加え,継続的改善プロセスのグループにまとめられたことなどである.
著者
杉本 沢民 青木 麻由美
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.5, pp.9-14, 2010

IT技術の進歩とユーザーニーズの多様化により,業務アプリケーションはますます複雑化する傾向にある.企業は,パフォーマンスや可用性といった様々な品質要素をいかに確保するかということが大きな課題となっている.品質を確保するために,ミッションクリティカルなプロジェクトでは,通常では考えられないほどのテストリソースが投入される.一方,十分な妥当性検討もされないまま,開発コスト削減の観点から,テスト工程が必要以上に圧縮されてしまうプロジェクトもある.どのくらいのテストをすれば良いのか,企業にとっては悩みの種である.また,テストツールの導入のしやすさから,テスト作業の中心はどうしても下流の方ヘシフトしがちである.これでは欠陥の検出時期を遅らせるだけでなく,欠陥を修復するためのコストが高くなる原因ともなる.本稿では,まずIBMグローバルで標準的に使用されているテスト技法であるFLT(Full Lifecycle Testing)を紹介する.この技法は,テスト計画をプロジェクト作業計画と融合し,プロジェクト全体のテスト作業を最適化したものである.次に,上流工程におけるFLTの適用方法を説明し,静的テストを効率的に実施するための手順を紹介する.
著者
除村 健俊
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.36-38, 2003

ThinkPad開発において,さまざまなリスクに対処しながら開発を進めるが,特にスケジュール・リスク管理は主要な管理項目である.本稿では. ThinkPad開発において発生しているスケジュール・リスクを整理し,それぞれの特徴を述べる.また,プロジェクト遂行時のスケジュール・リスク管理の方法としてチェックポイント・スケジューリングと並行開発について述べ,さらに,並行開発ではタスク分解を行なうことにより,スケジュールの遅れを少なくし,リソース,開発費の増加を抑えることができる例を示す.
著者
黒岩 雅彦
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.5, pp.14-17, 2009

現在,ミッションクリティカルシステム(以降,MCシステム)構築のSI要件として,短納期で高品質が要求されることが多い.そのような要件において,プロジェクトマネージャー/開発要員の確保が難しく,新規要員によるプロジェクト体制を構築する場合も多々,存在している.また,プロジェクト内は複数の会社による請負開発や地方分散開発が行われて,風土統一も難しくなっている.そのような背景において,人の行いに着目して,やるべきことを行う風土創りを行うことによりMCシステム構築を行う手段の一つとして行って来ている,人重視マネジメントについての取り組みをご紹介する
著者
松園 淳 倉重 誠 小林 り恵 粟根 達志 幕田 行雄
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.17-20, 2006

近年,IT業界では対象となるシステムに必要となるソフトウェアを全て新規開発することは少なくなり,パッケージを利用することが多くなっている.しかしながら,パッケージを利用したソフトウェア開発の見積は,新規開発に比較して業界標準となる見積手法が確立されておらず未成熟な分野である.日立製作所では,パッケージのコンポーネントの関連情報をもとに,パッケージの修正量見積と再利用率見積から設計工程〜テスト工程の工数を見積もる手法を考案し,現在,有効性の検証を行っている.本論ではその見積手法を紹介する.
著者
佃 軍治 星 幸雄 初田 賢司 建部 清美
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.40-45, 2007
被引用文献数
1

プロジェクトマネジメントの計画・コントールに関する新しい手法であるCCPM法は,従来のプロジェクトで生じていた無駄を削減する仕掛けとして有効であり,プロジェクトの正確な状況把握にも貢献する.本論文では,段階的な計画の詳細化やマイルストーン管理という特徴を持つソフトウェア開発プロジェクトへのCCPMの適用方針や適用範囲,適用の前提条件を示す.また,実適用を行う上での課題への解決策を提案する.
著者
佐藤 建吉 小野 正則
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-28, 2003

本論文は多くの市民による風力発電事業を行うためのビジネスモデルを提案している.グリーン・プレミアム・カードGPCが風力発電所建設資金を集めるために導入されており,グリーン・コミュニティが同時に形成される.GPCによるベネフィットがクレジットカード会社,協賛会社,およびグリーン・コミュニティから提供される.このコミュニティは京都議定書,環境税,地域エコマネーの動向にもとづいて進んだ環境社会を形成するために寄与できる.
著者
松本 健一 石野 福弥
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.33-38, 2004

本論文は,電力リスクヘの社会的取り組みの必要性と社会的プロジェクトにおける非同期コミュニケーションについて議論する.ステークホルダーの多い社会的プロジェクトは,合意形成やコミュニケーションの面で個別プロジェクトと性質が異なる.電力リスク対策はそのような社会的プロジェクトの典型例である.近年の電力関係の事故や災害から,近未来の電力需要の約40%を原子力に依存するとされる日本では,制御不可能な理由で電力不足が生じる可能性を考える必要がある.また,突然の電力不足が何をもたらすかを予測できない状況でもある.そのような電力リスクに対応するために個別に自家発電機を準備している組織はあるが,社会的な設計概念がない.このリスクの影響範囲は広く,個別プロジェクトでは解決できない課題があるので,社会システム改革プロジェクトと各組織による個別プロジェクトの2重構造でこの問題を捉えることが求められる.そして,その上位に位置する社会システム改革プロジェクトはステークホルダーが多いので,個別プロジェクト間のコミュニケーションマネジメントでは,従来のような同期的な情報のやり取りは不向きである.そこで,各組織の状況に応じて非同期的に必要な情報を取得して,リスク対策結果を登録するための公開データベースが必要となる.また,リスク対策レベルの規格化と認証を行う中立的な機関の設置がそれに先立つ必要がある.
著者
除村 健俊
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.32-35, 2002

階層意思決定法(AHP)は主観的判断とシステムアプローチをうまくミックスした問題解決型意思決定手法であり,これをThinkPad機能選択の重み付けに適用し,機能の優先順位を明らかにした。さらに,結果をふまえてThinkPad T SeriesからPS/2 Mouse Portをサボートしないことを決定した。また,この製品の対象マーケットではバッテリー時間や軽さが重要であることが分析から裏付けられた。
著者
佐藤 洋行
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.9-13, 2010

プロジェクトが失敗する要因の一つとして,問題が本番稼働直前で発覚し,その対応が間に合わず大きな事故になってしまうといったことが多々見受けられる.問題の顕在化が遅れることは,問題解決のための時間が少なくなるだけでなく,プロジェクト全体に大きな影響を与えてしまう可能性が高く,問題を早期に検出することはプロジェクト成功のために非常に重要なことだと考える.「なぜもっと早い段階で問題を検出できなかったのか」,プロジェクト完了時の反省として議論することが多いが,いまだ効果的な対処策を見い出せていないと感じる.通常,プロジェクトメンバとの各種会議で進捗状況や懸案の確認を行っているが,担当者の認識の甘さからPM(またはPL)への報告漏れがあったり,またミスが原因の場合などでは叱責を受けることを恐れて無意識に報告がおろそかになるなど,必ずしもPM(またはPL)に正しく状況が伝わらない,といった現状があると考える.そこで,日頃の進捗確認方法に何かしらの問題があるのではないかと考え,より早期に,かつ適確に問題を顕在化するための手段を検討し,実際に試行を行った上でその手段の有効性について検証する.
著者
木村 景一 中鉢 欣秀
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-20, 2004

企業における研究開発はプロジェクト体制で進められることが多く,さまざまなプロジェクトマネジメント手法が試みられている.しかし,研究開発自体が持つ不確実性のため多くの問題点が現出し,その解決のため体系的なプロジェクトマネジメントが求められている.企業の研究開発の特徴として,開発した技術を製品に反映させることが義務付けられているため,多くの場合,研究開発部門において基盤要素技術の開発を進め,その成果を製品開発に移転するという2段階のプロセスを通る.この基盤要素技術の開発において最も重要なプロセスはプロジェクトスタート段階における研究開発テーマの決定である.本稿では,小型電子機器において問題となっている放熱技術開発を例に取り,研究開発テーマの決定プロセスについて述べる.
著者
中津 望 石崎 裕 中村 満明 石川 貞裕 建部 清美
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.37-42, 2006

近年,システム開発に対する要件は,高機能化,期間の短縮化の傾向にある.このような背景において,プロジェクトを成功させるためには,進捗管理の強化が必須である.納期を守るには,早期に問題部位を特定し,早期に対策することが重要となる.問題部位の早期発見には,進捗の管理サイクルを短縮化し,鮮度の高い情報を取得できる必要がある.しかし,従来のように報告に基づく進捗管理では,進捗情報の収集に時間がかかるという問題がある.さらに,報告に基づいた進捗は,実態と乖離する危険性がある.この傾向は,プロジェクトの規模が大きく,開発拠点が分散されている場合,顕著になる.そこで,開発拠点が分散されているプロジェクトを対象に,WBSを採用したプロジェクト支援ツール"プロナビ"を用いた解決策を検討した.本論文では,成果物の実態に基づいて,進捗情報をタイムリーに把握するための施策について述べる.
著者
遠藤 雄一
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.58-63, 2005

ユーザー要件を完全に固めていない段階で, プロジェクトを早く立ち上げ, 開発しながら要件を固めて行き, 短納期で成果をだす開発手法XP(eXtreme Programming)が, 脚光を浴びている.また, この開発手法は, 開発者本位でもあり, 開発者からも非常に良い評価を得ている.ところが, プロジェクトマネジメントの観点からみると, その方法論に疑念を抱かせる面がある.その為, プロジェクト・マネジャーが, XPを採用すると表明した例は非常に少ない.本稿では, XPが, 何故これほどまでに評価されているのか, しかし, 何故, プロジェクト・マネジャーがその採用に躊躇するのかを, プロジェクトマネジメントの観点から明らかにする.その上で, 如何にしたら, プロジェクト・マネジャーが, XPを積極的に採用できるようになるかを論じる.これにより, 今求められている短納期, 高品質の開発が, XPにより可能であることを考察してみる.
著者
赤星 和之
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.19-22, 2015

ITプロジェクトが混乱する要因としては,設計の漏れ・設計不十分等によるテスト工程での問題多発に起因するものが多い.業務アプリケーションソフトウェアの開発を伴うプロジェクトでは,要件を全て確定させた上で設計工程へ進む事が望ましいが,現実には困難である事が多い.そのため一部の設計項目を残した状態で後続工程へ進み,スケジュールが輻輳した状態で推進するが,残課題をつぶし込む意志が弱いと製造工程で暫定対処などにより,手戻り工数が膨らむ事でプロジェクトは混乱につながる.そうなる前に設計内容を関係者できちんと検証し確定させる事が重要である.対策として成果物や作業分担を明確に定義し,設計品質を確保する事が効果的である.