著者
高橋 浩一
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.65-70, 2023 (Released:2023-04-12)
参考文献数
24

新型コロナワクチン接種後に発症し,ブラッドパッチが有効であった脳脊髄液漏出症5例を報告する.対象は,新型コロナワクチン接種が原因として疑われた20歳未満の5例(男性3例,女性2例,14~17歳,平均年齢15.6歳)である.全例で頭痛があり,ワクチンはすべてコミナティであった.全例にブラッドパッチを行い,3例(60.0%)が著明改善,2例(40.0%)が部分改善と全例に治療効果を認めた.新型コロナワクチン接種後に体調不良が持続する症例では,脳脊髄液漏出症を考慮すべきと思われた.
著者
笠原 靖史 今井 千速
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.211-219, 2021 (Released:2021-10-01)
参考文献数
59

膠芽腫は極めて速い増殖と強い浸潤性を併せ持ち,集学的治療によっても予後不良で新規治療の開発が待たれている.キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法は,モノクローナル抗体の抗原認識能力をT細胞へ付与する養子免疫細胞療法で,MHC非拘束性に強力な細胞傷害性を発揮する.近年,膠芽腫を対象としたCARが数多く報告され臨床応用が期待されている.本稿ではCARに関する基礎事項および造血器腫瘍での臨床使用に至る歴史につき紹介し,引き続き膠芽腫に対するCAR-T細胞療法の最近の発展につき概説する.
著者
田代 弦 石崎 竜司
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.29-34, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
10

鎖骨頭蓋形成不全症は,頭蓋骨欠損・鎖骨低形成,および歯牙の形成異常を三徴とする,常染色体優性遺伝疾患である.本稿では,自験例9例から診断年齢,頭蓋骨欠損の部位や大きさ,そしてその閉鎖時期などを解析し,その他の骨性合併症との対比を行った.また,日常生活上の脳神経外科的な対処法を加えながら,遺伝子学的病因論を交えて文献的考察とともに検証した.
著者
君和田 友美 林 俊哲 白根 礼造 冨永 悌二
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.414-418, 2022 (Released:2023-01-30)
参考文献数
12

右中頭蓋窩くも膜のう胞破裂後に硬膜下血腫/水腫を来し,けいれん重積型(二相性)急性脳症に類似の病態であるinfantile traumatic brain injury with a biphasic clinical course and late reduced diffusion(TBIRD)を併発した1乳児例を報告した.新生児/乳幼児急性硬膜下血腫後に脳腫脹を来す一因として,我々脳神経外科医はTBIRDを十分理解しておく必要がある.
著者
宇津木 玲奈 宇都宮 英綱 藤永 貴大 有田 英之 前野 和重 原田 敦子
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-7, 2021 (Released:2021-03-31)
参考文献数
11

表在脳実質性軟髄膜出血(以下SPLH)は,脳溝に沿って進展する軟髄膜出血と同領域に併発する皮質下出血を特徴とする正期産児の分娩時発症頭蓋内出血と報告されている.新生児のまれな外傷性変化であり実地臨床ではよく知られていない.今回我々は,SPLHと画像診断した自験例5例の画像所見と臨床像を解析し,SPLHの発生機序を分娩時の過度な頭蓋変形による軟髄膜出血とこれに起因する髄質静脈の灌流障害で静脈性皮質下出血を併発したものと推察した.正期産児の脳実質内出血の診断時には本病態を念頭におく必要がある.
著者
棗田 学 温 城太郎 渡邉 潤 高橋 陽彦 塚本 佳広 岡田 正康 平石 哲也 吉村 淳一 大石 誠 藤井 幸彦
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.358-364, 2022 (Released:2023-01-30)
参考文献数
25

Diffuse midline glioma(DMG)の80%以上がヒストンH3K27M変異を有する.橋に局在する病変は摘出術の適応はなく,針生検でも重篤な合併症が生じ得るためDMGに対してliquid biopsyの確立が切望される.我々は初発時に腰椎穿刺で採取した脳脊髄液よりH3K27Mを同定するのは困難と報告した.本稿では,多発病変および播種病変を有しliquid biopsyによりH3K27M変異と同定された2症例を紹介し,liquid biopsyの恩恵を受ける症例の特徴について迫る.
著者
隈部 俊宏 柳澤 隆昭 西川 亮 原 純一 岡田 恵子 瀧本 哲也 JCCG(日本小児がん研究グループ)脳腫瘍委員会
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.279-296, 2022 (Released:2022-09-23)
参考文献数
18

JCCG/AMED原班により2009~2013年に治療された99症例の15歳未満DIPGを対象とした後方視的検討を行った.その結果,1)約20%に対して組織診断が行われた,2)照射はほぼ全例で行われた,3)3/4の症例に対してテモゾロミドが使用された,4)再発に対してさまざまな化学療法追加・部分摘出等が行われた,5)生存中央値は11か月であり,照射方法・化学療法併用・化学療法内容による生存期間延長効果は認められなかった.本邦における最多症例のDIPGの治療実態と成績結果が得られた.
著者
高砂 浩史 梶 友紘 松森 隆史 小野 元 後藤 哲哉 田中 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本小児神経外科学会
雑誌
小児の脳神経 (ISSN:03878023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-6, 2022 (Released:2022-03-15)
参考文献数
11

最近10年間に経験した虐待が疑われる小児頭部外傷18例を検討し当院での取り組みを報告する.被虐待児の年齢や外傷種別などの臨床像は過去の報告と同様であった.一方当院での虐待防止委員会の取り組みとして,病院職員全体への啓蒙活動を充実させ報告の敷居を下げることで取り扱い件数が増え,児童相談所通告には至らずも育児支援を要するネグレクト事案などがあぶり出されることが増えた.小児専門以外の脳神経外科医も虐待を念頭に置いた診療と虐待に伴う社会対応を熟知する必要がある.