著者
守本 倫子
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.141-143, 2015 (Released:2017-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
3

新しい小児人工内耳適応基準2014の内容について解説した。従来と異なる点は、適応年齢が1歳以上かつ体重8kg以上、聴力は裸耳90dB以上かつ補聴器装用にて閾値45dBに満たないもの、語音明瞭度が50%未満であるもの、重度難聴遺伝子変異があり改善の見込みがないもの、1kHz、2kHz以上が聴取できず構音の発達が望めない場合が対象となった。また両耳装用を否定しないとの一文が加わった。
著者
曾根 三千彦
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.130-134, 2010 (Released:2011-07-08)
参考文献数
13

胃食道逆流症(GERD)と誘因不明な成人滲出性中耳炎(OME)症例との因果関係について検討した結果、GERD症状を有する症例の中耳貯留液中のペプシノーゲン(PG)濃度は、症状を有しない症例に比し高値例の割合が高いこと、症状を有する症例では両側性のOMEが高率である事が判明した。GERDとの関連を強く疑ったOME 症例では、プロトンポンプ阻害剤(PPI)投与後症状の改善と貯留液中PG濃度の低下、OME治癒に有効な症例も認められた。GERD有症率は病院受診者に比べて診療所受診患者により高い傾向があった。PPI反応不良例の中には高濃度のビリルビンや胆汁酸が認められた症例も存在し、PPI内服に加えてGERDに対する生活指導がOME治癒に有効である事も確認された。以上の事から従来の治療法に抵抗する誘因不明のOMEに対して、十二指腸・胃逆流を考慮した対応も選択する必要があると思われる。
著者
宇佐美 真一 工 穣 鈴木 伸嘉 茂木 英明 宮川 麻衣子 西尾 信哉
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.151-155, 2010 (Released:2011-11-30)
参考文献数
15
被引用文献数
10 8

低音域に残存聴力を有する高度感音難聴患者に対し人工内耳埋め込み術を施行した。症例は60歳女性。40歳頃から難聴を自覚した。50 歳頃からは右耳の補聴器の装用効果が認められなくなった。この症例にMED-EL社人工内耳(COMBI 40+:standard電極)埋め込み術を行った。電極挿入は、より低侵襲な正円窓からのアプローチにより行った。全電極を挿入したにもかかわらず、挿入後の低音部聴力が保存できた。残存聴力の保存が確認できたため、Electric acoustic stimulation用のスピーチプロセッサであるDUET®を用い、低音部は補聴器、高音部は人工内耳により音情報を送り込んだ。8ヶ月後の語音弁別能を評価した結果、術前15%であった最高明瞭度が50%にまで改善が認められ、日本語の聴取においても有用であることが明らかとなった。