著者
柳井 真知 藤谷 茂樹 渡邉 周子 中沢 恒太 林 宏行 若竹 春明 森澤 健一郎 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-44, 2012-01-01 (Released:2012-07-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】治療開始48時間後にテイコプラニン(teicoplanin, TEIC)の有効トラフ濃度を得るローディングとその安全性の検討。【方法】ICUのmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症およびその疑い患者を対象とした。48時間後の目標TEICトラフ濃度を15μg/ml前後と設定し,体重とクレアチニンクリアランス(creatinine clearance, CrCl)から1回投与量を決定できるノモグラムを用いて,1日2回2日間,計4回のローディングを施行した。【結果】73例の1回平均投与量は472.6±11.4 mg(8.2 mg/kg),総ローディング量1,890±251.8 mg,48時間後の平均トラフ濃度は17.1±5.8μg/mlであり,腎機能障害などの重篤な副作用は認めなかった。【結論】ノモグラムにより迅速にローディング量を決定でき,腎機能障害などの重篤な副作用を認めることなく安全かつ早期に治療有効トラフ濃度に到達可能である。
著者
谷内 仁 池田 寿昭 池田 一美 須田 慎吾
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.397-400, 2011-07-01 (Released:2012-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
1

プロカルシトニン(procalcitonin, PCT)は全身性細菌感染症のバイオマーカとして有用であり,敗血症の重症度ともよく相関するとされる。今回,感染症を伴わない高PCT血症を呈した悪性症候群(neuroleptic malignant syndrome, NMS)疑いの一例を経験したので報告する。症例は66歳,男性。中咽頭癌の根治術後,摂食不良となり胃瘻を造設した。3日後より発熱し,血液生化学検査ではCRP,PCT,CKの上昇を認めたため,敗血症および横紋筋融解症が疑われ,ICU入室となった。入室時バイタルサインは安定し,理学所見上感染巣は認めなかった。胃瘻造設後ハロペリドールが増量されていたことから,向精神薬増量によるNMSが疑われた。輸液管理のみでCRP,PCTは低下した。本症例においてPCTが上昇した原因は特定できなかったが,細菌感染症を伴わない悪性症候群の疑い例で,炎症に付随しPCTが上昇する可能性があることに注意する必要がある。