- 著者
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吉田 稔
平 泰彦
尾崎 将之
斎藤 浩輝
吉田 徹
桝井 良裕
藤谷 茂樹
- 出版者
- 日本救命医療学会
- 雑誌
- 日本救命医療学会雑誌 (ISSN:18820581)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, pp.14-18, 2022 (Released:2022-09-30)
- 参考文献数
- 6
集中治療領域での分離肺換気 (independent lung ventilation, 以下ILV) は稀であり, 適切な呼吸器設定は不明である. 近年, 人工呼吸器関連肺障害に関連する因子を統合したエネルギー量を示すMechanical power (以下MP) が注目されている. MPは駆動圧や1回換気量に加え, 呼吸数, 最高気道内圧から計算され, MPと死亡率の関連が報告された.
われわれは片側に偏った重症肺炎2例に対し, double-lumen tubeを用いて左右別々の呼吸器設定で患側肺のrest lungを念頭においたILVを行い, 良好な結果を得た. ILVでの肺保護戦略を探索するため, MPを用いて後ろ向きに2例を検証した.
ILV後の左右合計したMPはILV前に比べ低減した (症例1: 28.7 J/分→9.3 J/分, 症例2: 8.8 J/分→5.2 J/分). また, 障害肺のMPは1.0 J/分以下であった (症例1: 0.1 J/分, 症例2: 0.7 J/分).
患側rest lungの設定では, 左右合計のMP はILV前と比較し低減, さらに, 患側のMPは1.0 J/分以下であった. ILVによる患側rest lungが健側に大きな影響を及ぼさずに管理でき, MPの観点からも, 適正な人工呼吸器設定であった可能性が示唆された.