著者
吉田 徹 堤 健 栗栖 美由希 岩井 俊介 三上 翔平 吉田 稔 若竹 春明 北野 夕佳 桝井 良裕 藤谷 茂樹 平 泰彦
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.221-225, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
11

向精神薬によるARDS (acute respiratory distress syndrome) の報告は限られており, また, ARDSや薬物中毒に対してECMO (extracorporeal membrane oxygenation) の有用性が指摘されている。【症例】20歳代女性。うつ病等で精神科通院中。フェノチアジン系抗精神病薬, ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬, オレキシン受容体拮抗薬, ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の過量服薬を行い, 服用後約5時間で救急搬送された。来院時意識レベルE3V5M6, その他バイタルサインに大きな所見はなかった。入院後に低酸素血症出現, 胸部単純X線で肺水腫の所見を認めた。人工呼吸管理を施行するも心停止し, VA-ECMOを導入した。頭部・上肢の酸素化不良に対しVVA-ECMOとした。第6病日にVVA-ECMOを離脱, 第32病日に転院した。【考察・結語】本症例は, ARDSから心停止, VVA-ECMOを必要とした。過量服薬した原因薬剤のうち, フェノチアジン系抗精神病薬以外は今までARDSの報告はなく, 注意が必要と考えられた。
著者
田中 拓 内藤 純行 長島 梧郎 加藤 晶人 上村 美穂 藤原 正三 馬野 由紀 田北 無門 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.585-590, 2015-08-31 (Released:2015-08-31)
参考文献数
10

アルコール摂取に伴う意識障害,ならびに迷惑行為は救急医療機関にとって避けられない問題である。今回,2012年1月から2013年9月までの21カ月間に,当院へ救急受診した急性アルコール中毒166例を対象に振り返り,これらについて性別,年齢,エタノール血中濃度,意識レベル,外傷の有無,暴言・暴力の有無について検討した。平均年齢は45.1±19.3歳,男性120人,女性46人であった。エタノール濃度が計測されている症例は129例あり,平均エタノール濃度は207.9±99.6mg/dLであった。約10%の16例で,医療従事者に対する暴言・暴力行為があり,うち4例が警察介入を要した。暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり,平均年齢は36.2±17.4歳と若く,血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり,また,医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり,適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
著者
吉田 稔 平 泰彦 尾崎 将之 斎藤 浩輝 吉田 徹 桝井 良裕 藤谷 茂樹
出版者
日本救命医療学会
雑誌
日本救命医療学会雑誌 (ISSN:18820581)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.14-18, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
6

集中治療領域での分離肺換気 (independent lung ventilation, 以下ILV) は稀であり, 適切な呼吸器設定は不明である. 近年, 人工呼吸器関連肺障害に関連する因子を統合したエネルギー量を示すMechanical power (以下MP) が注目されている. MPは駆動圧や1回換気量に加え, 呼吸数, 最高気道内圧から計算され, MPと死亡率の関連が報告された. われわれは片側に偏った重症肺炎2例に対し, double-lumen tubeを用いて左右別々の呼吸器設定で患側肺のrest lungを念頭においたILVを行い, 良好な結果を得た. ILVでの肺保護戦略を探索するため, MPを用いて後ろ向きに2例を検証した. ILV後の左右合計したMPはILV前に比べ低減した (症例1: 28.7 J/分→9.3 J/分, 症例2: 8.8 J/分→5.2 J/分). また, 障害肺のMPは1.0 J/分以下であった (症例1: 0.1 J/分, 症例2: 0.7 J/分). 患側rest lungの設定では, 左右合計のMP はILV前と比較し低減, さらに, 患側のMPは1.0 J/分以下であった. ILVによる患側rest lungが健側に大きな影響を及ぼさずに管理でき, MPの観点からも, 適正な人工呼吸器設定であった可能性が示唆された.
著者
吉田 徹 藤谷 茂樹 平 泰彦 堤 健 栗栖 美由希 岩井 俊介 三上 翔平 吉田 稔 若竹 春明 北野 夕佳 桝井 良裕
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.221-225, 2019

<p>向精神薬によるARDS (acute respiratory distress syndrome) の報告は限られており, また, ARDSや薬物中毒に対してECMO (extracorporeal membrane oxygenation) の有用性が指摘されている。【症例】20歳代女性。うつ病等で精神科通院中。フェノチアジン系抗精神病薬, ベンゾジアゼピン系催眠鎮静薬, オレキシン受容体拮抗薬, ノルアドレナリン再取り込み阻害薬の過量服薬を行い, 服用後約5時間で救急搬送された。来院時意識レベルE3V5M6, その他バイタルサインに大きな所見はなかった。入院後に低酸素血症出現, 胸部単純X線で肺水腫の所見を認めた。人工呼吸管理を施行するも心停止し, VA-ECMOを導入した。頭部・上肢の酸素化不良に対しVVA-ECMOとした。第6病日にVVA-ECMOを離脱, 第32病日に転院した。【考察・結語】本症例は, ARDSから心停止, VVA-ECMOを必要とした。過量服薬した原因薬剤のうち, フェノチアジン系抗精神病薬以外は今までARDSの報告はなく, 注意が必要と考えられた。</p>
著者
松本 純一 服部 貴行 山下 寛高 濱口 真吾 森本 公平 一ノ瀬 嘉明 田島 信哉 中島 康雄 平 泰彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1159-1162, 2012-11-30 (Released:2013-03-08)
参考文献数
6
被引用文献数
1

脾臓は最も多く損傷を受ける腹腔内臓器である。肝臓と同様に上腹部を占める実質臓器であるが,内部の組織構造が粗であるために,損傷し易い上に,出血しても損傷部周辺の実質による圧迫効果が弱い。現在外傷初期診療において標準的に用いられているCTは,仮性動脈瘤や造影剤の血管外漏出像といった血管損傷の所見をより短時間で,より正確に評価することを可能としている。脾損傷の治療法選択は,循環動態や他の損傷の数と程度などから総合的に判断されるが,CTがもたらす情報は大変重要である。CTで造影剤の血管外漏出や仮性動脈瘤形成といった血管損傷の所見を認めた場合には,被膜断裂がなくても肝臓より積極的に経カテーテル的動脈塞栓術を考慮する必要がある。日本外傷学会臓器損傷分類2008では,血管損傷の有無を評価に含めていないが,中島らは2007年にCT所見に基づく肝,脾臓器損傷分類を提唱している。本分類では,血管損傷の有無を加味しており,治療方針決定に際し有用なgrading systemといえる。
著者
川田 忠典 荒瀬 一己 舟木 成樹 正木 久朗 北川 博昭 平 泰彦 野口 輝彦
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.1405-1409, 1983-12-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
9
被引用文献数
1

外傷性胸部大動脈断裂の急性期予後は不良であり,外科的治療が唯一の救命手段である.そのためには早期診断が必須であるが,多臓器損傷を伴うために確定診断は意外と困難である.我々は入院直後の胸部レ線像上,縦隔陰影拡大,気管右偏像,大動脈弓部不明瞭化の一つ以上の所見があれば,胸部CTスキャンを行い,縦隔内あるいは大血管周囲に血腫像を呈していれば血管撮影を行うという診断プログラムに基づき本症の早期診断に努めた. 1979年7月から1982年12月までに胸部外科医が関係した鈍的胸部外傷患者は21例で,そのうち胸部レ線像上診断基準陽性例は15例であった. 15例中13例は胸部CTスキャンが行われ,縦隔内血腫の見い出された7例は大動脈造影が行われた.残る2例はCTスキャンが省略され即大動脈造影が行われた.血管造影の行われた9例中では4例に胸部大動脈断裂が, 1例に左鎖骨下動脈断裂がみとめられ,全例緊急外科的治療にて救命された. 以上の結果より我々の診断プログラムは本症早期発見に有用であったと考えられた.特に胸部レ線像上診断の疑わしい例ではCTスキャンが補助診断的に有力で,血腫形成像があれば緊急血管造影の決断のよい指標となった.しかし,縦隔拡大が明瞭な例では切迫破裂の危険性が予測され,診断のために時間の浪費は避けるべきで,血管撮影を先行させることが肝要と考えられた.
著者
柳井 真知 藤谷 茂樹 渡邉 周子 中沢 恒太 林 宏行 若竹 春明 森澤 健一郎 平 泰彦
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.39-44, 2012-01-01 (Released:2012-07-10)
参考文献数
19
被引用文献数
1

【目的】治療開始48時間後にテイコプラニン(teicoplanin, TEIC)の有効トラフ濃度を得るローディングとその安全性の検討。【方法】ICUのmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症およびその疑い患者を対象とした。48時間後の目標TEICトラフ濃度を15μg/ml前後と設定し,体重とクレアチニンクリアランス(creatinine clearance, CrCl)から1回投与量を決定できるノモグラムを用いて,1日2回2日間,計4回のローディングを施行した。【結果】73例の1回平均投与量は472.6±11.4 mg(8.2 mg/kg),総ローディング量1,890±251.8 mg,48時間後の平均トラフ濃度は17.1±5.8μg/mlであり,腎機能障害などの重篤な副作用は認めなかった。【結論】ノモグラムにより迅速にローディング量を決定でき,腎機能障害などの重篤な副作用を認めることなく安全かつ早期に治療有効トラフ濃度に到達可能である。