著者
森高 久恵 木村 光孝 中村 嘉明 松山 道孝 住本 和隆 篠崎 英一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.515-522, 1983-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
18

著者らは,初診時4歳9ヵ月,Hellman's Dental Age II Aの女児において,既に4歯芽の早期萌出と,動揺による咀嚼障害を主訴として来院した症例に遭遇した。歯芽は舞踏状に動揺し,脱落寸前であった。電気診(一),X線診査で歯根形成が認められないため,保存不可能と判断し歯芽を除去した。歯芽のエナメル質表面は一部褐色を呈している部分があり,エナメル質形成不全であると思われた。除去した歯芽を2分割し,一方は未脱灰研磨切片を作製し光顕的観察に,もう一方は走査電顕的観察に用いた。光顕的にはエナメル質,象牙質ともに形成不全像を呈し,電顕的には肉眼像で褐色を呈する部分にpitsが散在し,構造は粗造でエナメル質低石灰化像を呈していた。低石灰化部と健全部のエナメル質をX線マイクロアナライザーで分析すると,定性的には全く差異を認めなかった。歯芽と同時に歯芽直下の歯槽内より摘出した軟組織の病理組織所見は慢性肉芽性炎症であった。本症例の発生原因を文献的考察と合わせて探ってみた結果,先行乳歯への影響が永久歯歯芽に及び,歯芽が壊死に陥ったため異物排除機転が働いたものと考えられる。
著者
中島 謙二 青木 浩子 加藤 敬 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.926-935, 1997-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本研究は,乳首の違いが乳児の吸啜運動に及ぼす影響を検討する目的で,乳房哺乳群(BRF群),丸型人工乳首群(ROF群)および有弁型人工乳首群(SV群)を対象に,吸啜時の口腔周囲筋筋活動を筋電図学的に比較検討したものである.その結果,1)最大筋活動量は,咬筋と口輪筋においては3群間で差はみられなかったが,側頭筋ではBRF群がROF群より有意(P<0.05)に高い活動を示し,舌骨上筋群もBRF群とSV群がROF群より有意(P<0.01)に高い活動を示した.2)総筋活動量はBRF群とSV群がROF群よりそれぞれ有意(p<0.01,p<0.05)に高い活動を示した.3)吸啜サイクル時間はBRF群とROF群で差はなく,SV群が有意(p<0.01)に長いサイクル時間を示した.4)口腔内の動きと筋の協調の観察では,丸型人工乳首も有弁型人工乳首も舌の蠕動様運動を伴い基本的には差はみられず,有弁型人工乳首は舌の下降時に弁が上下に大きく離開し,その時舌骨上筋群が大きい活動を示していた.以上の結果より,丸型人工乳首が乳房哺乳や有弁型人工乳首に比べ筋活動量が小さかったことから,乳児にとって丸型人工乳首は比較的容易に吸引できることが示唆された.
著者
今村 均 西田 郁子 牧 憲司 森本 彰子 古谷 充朗 上田 秀朗 坂本 淑子 曽我 富美雄 内上 堀征人 木村 光孝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.732-742, 1993-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2

著者らは小児における歯牙の測色にビデオディジタイザーとコンピュータを応用することを考えた.しかし,本機材はコンピュータグラフィック用に開発されたもので測色値は保証されない.今回の実験では機材の特性を調査し設定方法について検討した.1)機材の電源投入後30分以上経過して測定値が安定した.2)HPV2コマンドではカラーレベルが3,γ 補正値が4のとき10YR7/3の基準信号を良好に測定した.これは,HV-HP-S013012コマンドに相当した.3)ビデオカメラの設定を次のようにすると良好な結果が得られた.(1)シャッタースピード:1/60S(2)絞り:F3.4以上またはオート設定(3)ゲイン:+6dB(4)ホワイトバランスまずカメラを横壁に向ける.次にホワイトレンズキャップを付けピントを最大にぼかす.ワンプッシュホワイトバランスボタンを押す.4)無彩色を取り込んだ測色値の特性は非直線的で理論値と一致しなかった.5)計測値を理論値に近づける数学的補正の基本式にK×M1/3+A(K,Aは定数)を用いると良好な補正値が得られた.