著者
中西 正尚 山田 賢 中原 弘美 田村 康夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.669-679, 2005-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本研究は,授乳方法と口腔機能発達との関連を検討する目的で,2歳児から5歳児の1357名(平均年齢3歳7か月)の保護者を対象にアンケートによる調査を行いその結果を分析,検討した.出生後3か月までの授乳方法から母乳哺育群(Br群),混合乳哺育群(Mix群),人工乳哺育群(Bo群)の3群に分類すると,Br群が399名(29.4%),Mix群が811名(59.8%)で,Bo群が147名(10.8%)であった.離乳に関して,離乳食開始時期,離乳食終了時期,断乳時期ともに授乳方法問に差は認められなかった.現在の食べ方について,18項目中,咀嚼の上手下手,前歯で噛みきる食べ物,食べ物の吐き出し,食べこぼし,食生活のリズム,食事の自立の6項目において群間の有意差が認められ,いずれもBr群が良好な発達を示していた.その他の関連項目で,吸指癖,おしゃぶり,言語発達の遅れ,性格面に有意差が認められた.以上より,アンケートではBr群が全体的に良好な咀嚼発達を示し,Bo群の食行動に一部問題がみられたことから,授乳方法はその後の咀嚼の発達に少なからず影響を及ぼしていることが示唆された.
著者
森永 珠紀 二木 昌人 野沢 美夕起 中田 稔
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.29-36, 1996-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
30

抜去ヒト小臼歯を用いて,永久歯咬合面非切削エナメル質のリン酸エッチング時間および脱灰効果とシーラントの接着性との関連性を調査検討した。15秒,30秒,60秒の3種類のエッチング時間を設定し,エッチング後のエナメル質表面形態の違いを走査電子顕微鏡を使用して観察した。その結果,エッチング時間が長くなる程より強い脱灰像が観察され,裂溝底周囲部よりも平滑部において,より明瞭な,エナメル小柱周囲が脱灰された像が多く観察された。また,エッチング時間がシーラントの接着性に与える影響を,サーマルサイクリングテストおよび色素浸透試験によって,辺縁封鎖性およびシーラント・エナメル質界面部のギャップ形成の面から調査した。その結果,15秒および30秒エッチング群は60秒エッチング群と比較して辺縁封鎖性が有意に優れていた。また,ギャップの発生は15秒エッチング群が60秒エッチング群に比べて少ない傾向が認められた。しかしながら,エッチング時間にかかわらず,辺縁封鎖が良好な場合でも裂溝内部とくに深部にギャップが観察される例が多く認められた。以上の結果から,エッチング時間を延長することでエナメル質表面の脱灰は進行するが,形態的な脱灰の強さとシーラントの接着性との間には単純な相関は認められなかった。即ち,シーラントの接着には至適な脱灰度が存在すると予測された。
著者
山田 亜希子 栗原 亜由希 杉山 智美 浅里 仁 井上 美津子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.487-494, 2015-11-25 (Released:2017-03-16)
参考文献数
24
被引用文献数
6

家庭における子どもの歯科保健に対する保護者の意識とその実態について把握し,今後の保健指導に活用することを目的として,幼稚園に通う3 歳~6 歳の園児の保護者を対象に,子どもの歯科保健に対する意識調査を行い,以下の結果を得た。1 .齲蝕予防において歯磨き以外に気をつけていることは,父母ともに「定期検診」が最も多く,その重要性は広く認識されていたが,父親では「なし」も多かった。2 .母親の95.2%,父親の56.8%が仕上げ磨きを行っており,全体からは少数であるものの母親が働いている場合,父親が仕上げ磨きを行っている割合は高かった。また,父親の多くは「なんとなく」仕上げ磨きを行っていた。3 .子どもの口腔内への興味は,父母ともに「むし歯」が最も多く,次いで「歯並びや咬み合わせ」であった。4 .参加している育児項目において「仕上げ磨き」は父母ともに頻度の高いものであった。今回,子どもの歯科保健に対する幼稚園児の保護者の意識を,父母別々にその違いについて把握できたことは,今後の口腔衛生指導につながる意義のあるものであった。育児の主体が母親から両親へと移行してきているなか,父親の子どもの口腔内への関心は,母親に比べ低かった。今後,父親にも積極的に子どもの定期検診に来てもらい,仕上げ磨きに参加してもらえるよう,かかりつけ歯科医院での検診方法や口腔衛生指導も,提案していく必要が示唆された。
著者
枡富 由佳子 邉見 蓉子 田中 結子 枡富 健二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.66-79, 2019-02-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
46

第三大臼歯は,大臼歯のうち最も後方に位置する歯で臨床的問題がしばしば出現することから,それらに対する対応が求められる。しかしながら,第三大臼歯に対する治療の明確なガイドラインが存在しないため,対症療法であったり,個々の歯科医師の経験に基づく判断で治療介入が行なわれているのが現状である。そこで,今回われわれは,当院の患者のパノラマエックス線写真を用いて第三大臼歯のエックス線学的形成時期の調査と治療介入時期に関する検討調査を行った。 本調査から,パノラマエックス線写真で第三大臼歯の骨包の形成が確認できる目安は9.4 歳であり,歯冠は13~15 歳で形成が完了し,歯根は16~17 歳頃形成が開始し,18~23 歳頃に形成が完了することがわかった。18 歳以降の調査から第三大臼歯を1 歯以上有する者は94.8%であり,そのうち60.7%の者に4 歯全て存在することがわかった。第三大臼歯の97.3%は顎骨から歯冠が萌出しており,口腔内に萌出しない場合でも多くの第三大臼歯は粘膜下での埋伏であることがわかった。また,患者の意識調査から,第三大臼歯に対する認識は約80%にあり,そのうち「要らない歯」と認識する者が約60%と多かった。抜歯に対しても「早く抜くべきであれば抜いてほしい」と考える者も多く,抜歯時期については「すすめられたら」や抜歯時期については「定期検診時に情報提供を求める」とする者も多かった。 本調査を通し,第三大臼歯は全ての人に存在することを前提に,骨包の出現が始まる9 歳頃より管理を開始し,周囲の歯や歯列への影響が出現すると考えられる歯根形成時期である中高生時期には特に注視しながら,保存か抜歯の検討を早期から行うことが大切だと思われた。その際には,スクリーニング法としてパノラマエックス線写真は有効であり,また,画像所見や症状に基づいたフローチャートを使用することで客観的な判断が可能となることが示唆された。
著者
小林 英樹 松山 順子 三富 智恵 佐野 富子 川崎 勝盛 田口 洋
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.388-396, 2010-06-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
18

小児の咀嚼パラメーターが,学校給食の献立内容,特に主食の種類の違いによってどのような影響を受けるのかを明らかにする目的で,小学校6 年生の男児3 名,女児3 名の計6 名を対象に観察研究を行った。麺類,米飯類,パン類の主食毎に2 種類ずつ,計6 種類の給食について食事中の咀嚼をビデオ撮影し,咀嚼回数や時間などの各パラメーターの変化を比較検討した。さらに,保護者などの一般の方が,どのような学校給食の献立内容を望んでいるかを知る目的で,20 歳以上の170 名の成人を対象にアンケート調査を実施し,今後の給食内容のあり方についても検討した。今回対象とした給食では,主食が変化しても咀嚼パラメーターへの影響はほとんどないことが明らかになった。給食回数についてのアンケート結果では,米飯給食を週3~5 回実施するのがよいとする回答が全体の80%を超えていた反面,米飯以外の給食も週に0.5~1 回出して欲しいとの回答が約65%あった。米飯給食に比べると他の4 種の給食は栄養バランスに明らかな偏りがみられ,食育基本法の制定目標の趣旨から考えても,米飯給食を主体とするのは適切であろうと考えられる。一方,本研究結果から主食の種類の違いによる咀嚼への影響はほとんど考慮しなくてもよいことから,子どもの給食への楽しみと保護者の希望に配慮し,米飯以外の給食も月に数回は選択してもよいのではないかと考えられた。
著者
村田 典子 市石 慶子 江崎 順子 坂田 貴彦 中島 一郎 赤坂 守人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.505-509, 1997-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15

本研究の目的は,夜間睡眠時における筋活動の評価に機能的に異なった複数の筋の筋電図記録を行う意義を明らかにすることである.そこで我々は,夜間睡眠時における側頭筋と咬筋の筋活動発現時間および筋活動比において検討を行った.被験者は健康成人5名とした.夜間睡眠時の筋電図記録は,簡易型筋電計を用い側頭筋および咬筋から記録を行った.そして,夜間睡眠時における筋活動発現時間および咬筋・側頭筋比を検討した.その結果,夜間睡眠時における筋活動発現時間において,側頭筋活動が長い時間を示す者は3名,咬筋活動が長い時間を示す者は2名であった.咬筋・側頭筋比は側頭筋優位な者が3名,咬筋優位な者が2名であった.このことから,夜間睡眠中の筋活動は,側頭筋を主体とした筋活動を示す場合と咬筋を主体とした筋活動を示す場合があることがわかった.以上のことから,夜間睡眠時の咀嚼筋活動を記録し検討するには,複数の筋から筋電図記録を行う必要があり,その結果,筋活動の相違が認められることが示唆された.
著者
白井 裕子 荒井 清司
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.689-695, 2010-12-25 (Released:2015-03-13)
参考文献数
26

乳歯用既製金属冠は,歯冠崩壊の大きい乳臼歯や歯髄処置を施した乳臼歯や保隙装置の支台歯などに使用されている。またフッ化物の小児への局所応用は頻繁に行われており,齲蝕治療経験児においてもフッ化物の応用が積極的に行われている。乳歯用既製金属冠の装着後のフッ化物応用を想定して,in vitro におけるフッ化物の乳歯用既製金属冠への影響を調べたところ以下の知見を得た。フッ化物により乳歯用既製金属冠からニッケルイオンの溶出を認めることが明らかとなった。特に,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠からは,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より多くニッケルイオンの溶出を認めた。ニッケルイオンの溶出量ならびに乳歯用既製金属冠の金属表面の走査型電子顕微鏡観察から,腐食にはフッ化物の酸性度が関与することが明らかとなり,ニッケル含有量が多い乳歯用既製金属冠は,ニッケル含有量が少ない乳歯用既製金属冠より金属表面の腐食が強かった。
著者
田村 博宣 高木 愼 矢部 孝 樋口 満 柳田 可奈子 中川 豪晴
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.520-525, 2010-09-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1

含歯性嚢胞は,歯牙交換期に好発する歯原性嚢胞であり,下顎小臼歯,下顎智歯によく発生する。これまで,本嚢胞の研究では臨床統計学的研究や病理組織学的な検討がなされることが多く,含歯性嚢胞内に埋伏する歯牙に関して,萌出後の長期経過および長期予後についての報告はほとんどみあたらない。本症例は初診時において,嚢胞の大きさ,含まれる埋伏歯の深さ,埋伏歯の角度,埋伏歯の近遠心的位置のいずれにおいても深刻な状態であったが,これに対し,速やかに嚢胞を摘出し処置後10 年間の長期経過を見たところ良好な治療結果を得ることができた。これにより,含歯性嚢胞内に存在する埋伏歯は,できるだけ早期に摘出することができれば,嚢胞の大きさ,埋伏歯の深さに関わらず自然萌出が期待できることが示唆された。このことは今後の含歯性嚢胞に対する処置の参考に成りうるものであり,小児歯科臨床にとって意義のある症例であると考えたため報告することとした。
著者
吉原 俊博 加我 正行 小口 春久
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.773-777, 1997-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

口腔内に潜伏する単純ヘルペスウイルスの検出を目的として,本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児241名(年齢0歳2か月~14歳8か月)の唾液を採取して検体とし,PCR法を用いてHSVの検出を行い,以下の結果を得た。1)検体試料採取時,口腔内に疱疹性歯肉口内炎および口唇ヘルペスを発症していない健常児を対象としたにもかかわらず,被験児唾液中から17.0%の割合でHSVが検出された。2)年齢別のHSV検出率では,0歳および1歳において0%であり,2歳以降においてほぼ一定の検出率であった。3)兄弟姉妹の間の潜伏状況を調べると,兄弟姉妹全員がHSV(+)である群と兄弟姉妹のうち少なくとも1人がHSV(+)である群との間に有意差はなかった。
著者
堤 修郎
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.537-545, 1981-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
26
被引用文献数
2

乳臼歯隣接面齲蝕は,その発見が困難であるばかりでなく,進行が速やかなため小児歯科臨床上重大な諸問題を生じさせる。したがって,乳臼歯隣接面齲蝕の抑制は,小児歯科臨床上重要な課題である。そこで著者は,乳歯齲蝕の進行抑制剤として本邦で臨床的に広く使用されているAg-(NH3)2Fに注目し,本薬剤による乳臼歯隣接面齲蝕の抑制効果を検討した。臨床試験対象者は,左右側乳臼歯隣接面が共に健全なものおよびエナメル質に限局した蝕を有する3歳-5歳の小児58名である。乳臼歯隣接面の一方に,Ag(NH3)2Fをデンタルフロスを用いて3分間,3カ月間隔で塗布し実験側とした。他側は,3カ月間隔のフロッシングのみとし,対照側とした。初診時より6 カ月間隔で視診, 触診および咬翼法によるX 線診を行い, 齲蝕の程度を判定した。18カ月間の観察結果,Ag(NH3)2F塗布側における齲蝕の発生は,対照側より有意に抑制されており,また,エナメル質齲蝕から象牙質齲蝕への進行も有意に抑制されていた。以上の結果から,Ag(NH3)2Fを乳臼歯隣接面へ局所塗布することにより,同部の齲蝕予防とエナメル質齲蝕から象牙質齲蝕への進行拡大を効果的に抑制出来ることが示唆された。
著者
齊藤 桂子 氏家 隼人 蒔苗 剛 櫻井 真梨子 松本 弘紀 青木 健史 宮田 泰子 三笠 祐介 藤井 雅 丸谷 由里子 田中 光郎
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.482-487, 2016-11-25 (Released:2017-11-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4

本学歯科医療センター小児歯科外来では,歯科治療の際に特別な対応が必要な心身障害児や不協力児に対して,その患者の治療に対する協力状態により全身麻酔下での歯科治療を選択している。平成21 年1 月から平成27 年12 月までの7 年間に当科を受診し,全身麻酔下での歯科治療を行った症例を対象として実態調査を行い,平成元年の当科の調査結果と比較検討した。1 .症例数と年齢分布:82 名(男性53 名,女性29 名)の患者を対象に,のべ87 回行われた。処置平均年齢は12 歳5 か月であり,過去の報告と同程度であった。2 .患者の内訳:対象患者の51%が障害児・障害者であり,その多くは精神遅滞であり,過去の報告と同様であった。3 .処置内容と処置歯数:1 症例当たりの平均処置歯数は乳歯10.5 歯,永久歯7.6 歯であり,コンポジットレジン充填が乳歯6.8 歯,永久歯5.6 歯で最も多く,過去の報告と同様の傾向を認めた。4 .処置時間:平均処置時間は2 時間13 分であり,過去の報告より処置時間は短縮していた。5 .本県のような面積の広い地域においては,とくに地域の開業医と大学の連携が重要であると考えられた。
著者
柳沢 幸江 田村 厚子 寺元 芳子 赤坂 守人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.74-84, 1989-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
32
被引用文献数
10

様々な咀嚼機能を持った個々の人間にとって,より好ましい食物物性の在り方を探るために,物性と嚼咀の相互関係を捉えてきた。本研究は咀嚼筋活動量による食物分類を作ることを目的に,まずテクスチュロメーターにより測定した食物物性から咀嚼筋活動量を推定する方法を検討した。咀嚼筋活動量は筋電図による咀嚼筋の活動量から求めた。被検者は正常咬合者である成人男女各10名ずつで,咀嚼開始から嚥下開始までの咀嚼筋活動量を左右の閉口筋3筋について計測した。回帰分析を用いて食物物性値と咀嚼筋活動量の対応性を分析し,その結果をもとに咀嚼筋活動量による食物分類を行った。得られた結果を以下に示す。1)3種のテクスチャーパラメーター即ちかたさ・凝集性・ひずみを用いることによって,高い精度で咀嚼筋活動量を推定することができた。2)テクスチャー測定値を用いた推定方法から,食物物性が既知である144種の食物の咀嚼筋活動量を明らかにした。3)食物を咀嚼筋活動量のレベルにより10ランクに分類することができた。また,「物性による食物分類」に咀嚼筋活動量の尺度を加えることができた。
著者
齊藤 正人
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.208-214, 2011-09-25 (Released:2015-03-14)
参考文献数
33

Minimal Intervention の概念が提唱されて以来,乳歯および幼若永久歯においても,その概念に沿った齲蝕治療が求められている。単に齲蝕の切削を小さくするのではなく,口腔内細菌叢を変容し,患者の口腔清掃指導や食事指導に介入して,早期齲蝕を削ることなく再石灰化させていくことがMinimal Intervention の概念であり,小児歯科における齲蝕に対するアプローチと合致する。正確な診断を行い,やむを得ず切削治療を行う場合には可能な限り健全歯質を保存し,接着修復を行わなければならない。本稿ではMinimal Intervention の概念に基づく,乳歯・幼若永久歯における歯冠修復,とくにコンポジットレジン修復について概説した。
著者
細矢 由美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.651-665, 1985-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
39

38%フッ化ジアンミン銀(サホライド)塗布後の乳歯に対する酸処理効果とレジンの浸入について観察する事を目的に研究を行った。資料としては,口腔内で齲蝕症第2度の乳歯にサホライドを塗布した33例と,抜去もしくは自然脱落した齲蝕症第2度の乳歯に口腔外でサホライドを塗布した24例を用いた。エッチング材,ボンディング材並びに修復用レジンは,Clearfil Bonding System-Fを用いた。軟化象牙質を除去し,エッチングを行ったサホライド塗布後の乳歯象牙質面では,エッチング後においても多くの象牙細管が閉鎖されており,サホライドが塗布されていない場合の齪蝕下乳歯象牙質面には認められなかった,立方体,平行六面体の集合,線維状並びに不定形の構造物などが観察された。口腔内もしくは口腔外でサホライドを塗布した乳歯29例について,象牙細管内へのレジンの浸入状態を観察した結果,塗布後の経過日数と浸入レジンの長さの間には,統計学的に有意な差は認められなかった。サホライド塗布後の齲蝕下乳歯象牙質は,酸処理効果もレジンの浸入状態も健全乳歯象牙質の場合より明らかに劣っており,さらにサホライドが塗布されていない齲蝕下乳歯象牙質よりも劣る傾向が観察された。
著者
假谷 直之 松村 誠士 Omar M M Rodis 紀 瑩 杜 小沛 志野 綾子 下野 勉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.379-384, 2006-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
15

今回,我々は新しく発売されたミュータンス菌測定キット,オーラルテスターミュータンスのS. mutans検出能力を臨床評価する目的で研究を行った。被検児は岡山県内にあるN保育園児(4,5歳児)52名。オーラルテスターミュータンスとカリオスタットはマニュアルに従い処理,判定した。PCR法は,QIAGENのマニュアルに従いDNAを調製してPCR後,電気泳動にてバンドを確認した。対象をS. mutansとした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間ではP<0.001,カリオスタット値の同様な分析では,High-Low間においてP<0,01でBand検出の有無との問に関連性を認めた。対象をS. sobrinusとした場合,オーラルテスターミュータンスの値をHigh,Low二群に分けた分析で,High-Low間においてはBand検出の有無との間に関連性を認めなかった。カリオスタット値の同様な分析においても,High-Low間でBand検出の有無との問に関連性を認めなかった。今回の研究で,S. mutansに特異的といわれている領域を増幅したPCR法によるバンド検出率と関連することが確認された。オーラルテスターミュータンスは,齲蝕原因菌のうち特にS. mutansの検査として有用と考えられる。
著者
髙橋 摩理 大岡 貴史 内海 明美 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.36-42, 2012-03-25 (Released:2015-03-15)
参考文献数
17
被引用文献数
3

自閉症スペクトラム(以下ASD)児の摂食状況の調査と摂食・嚥下機能の評価を行い,療育場面および家庭における食事の問題に対する効果的な医療的支援方法を検討することを目的に本研究を行った。地域療育センター摂食・嚥下外来を受診したASD 25 名を対象に,主訴,摂食・嚥下機能評価,指導内容と経過等の検討を行った。主訴は偏食,丸飲み,溜め込みが多く,年齢により差がみられた。低年齢では口腔機能の未熟さや食具操作の未熟さが食べ方の問題として表出し,高年齢ではASD のこだわりなどの特性が偏食として問題になったものと思われる。一方,主訴と摂食・嚥下機能の問題が一致しないケースもみられ,保護者が小児の摂食・嚥下機能を正しく理解していない様子も窺われた。また,食べ方が口腔機能に影響を与えている様子が窺われ,ASD の食事の問題に対応するにあたっては,摂食・嚥下機能評価を行い,それに基づき支援方法を検討する必要性が示唆された。指導が継続しているケースは発達レベルが低く,自閉症の特性が強い傾向があり,全体的な発達を促す対応が重要と思われた。
著者
塩田 亜梨紗 翁長 美弥 恩田 智子 唐木 隆史 小平 裕恵 菊池 元宏 朝田 芳信
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.375-381, 2017-06-25 (Released:2018-07-23)
参考文献数
20
被引用文献数
1

下顎における中切歯,側切歯および第一大臼歯の萌出パターンに関して,1980年以前は下顎第一大臼歯が,1980年以降は下顎中切歯が最も早く萌出するとする報告が続き,1980年を境に下顎永久歯の萌出パターンが変化した可能性があることが示唆されていた。そこで,最新の中切歯,側切歯,第一大臼歯の萌出パターンを知ることを目的に,乳歯列期からHell­ man's Dental Age III B期までの患児105名を対象に,永久歯の萌出パターンを縦断調査したところ,以下の結果を得た。1.萌出パターンは,男女間差,左右間差は共に認めらなかったが,上下間に有意差を認めた。2.上顎で最も多かった萌出パターンは【6(第一大臼歯)­1(中切歯)­2(側切歯)】,下顎で最も多かった萌出パターンは【1­6­2】であった。3.上顎は【1­2­6】と【1­6­2】間,下顎は【1­6­2】と【6­1­2】間に有意差を認めなかった。4.下顎中切歯が最初に萌出した群と下顎第一大臼歯が最初に萌出した群間における歯冠近遠心径を比較したところ,上顎側切歯において有意差を認めた。以上のように,少なくとも下顎で最初に萌出する歯種に有意差は認めず,萌出パターンに関しては現時点で変化したと断定するのは時期尚早であることが示唆された。また,歯冠近遠心径と萌出順序の関連性も疑われるが,さらに継続して研究を続ける必要があることが示唆された。