著者
石川 朋穂 高田 貴奈 渋谷 泰子 浅里 仁 井上 美津子 柳原 正恵 足立 マリ子 佐々 龍二
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.434-438, 2006-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
11

平成15年4月から平成16年3月までの期間に,東京都K区の保健所および保健センターの歯科健診に来所した2歳6か月児459名について咬合状態の診査を行い,同時に保護者を対象におしゃぶりの使用状況についてアンケートによる調査を行い,以下の結論を得た。1.おしゃぶりの現在使用群では,使用経験なし群に比較して開咬の者の割合が明らかに高かった。2.おしゃぶりを過去に使用していた群では,開咬の割合は少なかった。3.おしゃぶりの使用開始時期にかかわらず,使用期間が長期間に及ぶほど開咬になる割合も高くなった。4.おしゃぶりの現在使用群では,使用経験なし群に比較して習癖を持っている者の割合が少なかった。5.おしゃぶりとしゃぶり癖の両方を行っている者はほとんどいなかった。6.おしゃぶりのみを現在使用している群は,しゃぶり癖のみを行っている群に比べ,開咬になる割合が高く,その範囲は広範囲に及び,程度も大きくなっていた。
著者
日本小児歯科学会医療委員会 品川 光春 田中 光郎 犬塚 勝昭 大原 裕 國本 洋志 鈴木 広幸 福本 敏 藤居 弘通
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.397-408, 2010-06-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
42
被引用文献数
2

低年齢児の診療導入に関する実態調査をするために,小児歯科専門医である日本小児歯科学会の役員117 名にアンケート調査を行った。その結果,56 名(47.9%)から回答があり,低年齢児434 名について検討したところ以下のような結果を得た。1 .医療機関選択の理由は,専門医だから33.2%,他医からの紹介32.3%,知人家族等の紹介31.3%の順に多く,地域での小児歯科専門医の役割を示している。2 .保護者の希望は,多少の泣き嫌がりは仕方ない50.7%,泣き嫌がってもしてほしい44.7%,泣き嫌がる時はやめたいは4.6%であった。3 .保護者の69.8%が診療開始から終了まで入室を希望していた。4 .診療中の子どもの反応は,泣き動くため抑制34.6%,おりこう31.6%,泣き動きそうだがおとなしくできる19.1%,泣き動くが抑制せずに何とかできる14.7%であった。5 .術者の対応は,必要な対応法を取りながら計画治療を実施が71.9%で最も多かった。6 .診療に要したスタッフ数は,子どもの年齢の増加とともに減少し,平均人数は2.7 名であった。7 .診療の所要時間は,4 歳児が最も長く42.8 分で,平均38.6 分であった。また,泣き動くために抑制の方が,おりこうの場合より所要時間が長かった。8 .小児歯科専門医としての診療の説明および診療の評価は,ほとんどが良好であり,小児歯科専門医を受診した患者の満足度が高いことが示された。
著者
玉井 久光 田中 敏子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.1091-1099, 2000-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
42
被引用文献数
1

北九州市内の歯科医院において抜去収集された乳歯350本を対象として,乳歯のエナメル質及び象牙質に含まれるSr,Al及びMn濃度と齲蝕との関連性を検討した。乳歯は齲蝕経験のない健全歯群,齲蝕未処置の齲蝕歯群及び充填歯群の3群に分類し,エナメル質と象牙質とに分離した。両歯質中のSr,AI及びMn濃度はフレームレス原子吸光分光光度計を用いて測定した。健全歯エナメル質中のSr,Al及びMn濃度はそれぞれ,71.1±24.0μg/g,37.0±27.3μg/g,3.03±1.53μg/gであった。また,象牙質中のSr,AI及びMn濃度はそれぞれ,67.4±23.0μ;g/g,33.9±28.2μg/g,0.92±0.74μg/gであった。健全歯群で性差を検討したところ,エナメル質,象牙質ともSr,Al及びMn濃度に性差は認められなかった。次に,健全歯群で歯種別差を検討したところ,Sr濃度に差は認められなかったが,AlとMn濃度については歯種別差が認められ,エナメル質,象牙質とも,乳犬歯に比べ乳切歯は約1.7-2.1倍も高かった。健全歯群,齲蝕歯及び充填歯群の歯質中Sr濃度は近似しており,齲蝕との関連性は認められなかった。Al濃度については,健全歯群は齲蝕歯群及び充填歯群と比較して有意に高く,エナメル質でそれぞれ1.6倍,1.4倍,象牙質でそれぞれ1.6倍,2.3倍であった。また,乳切歯のみを用いて検討しても,健全歯群は,齲蝕歯群及び充填歯群と比較してそれぞれエナメル質で15倍,1.4倍,象牙質で1.6倍,25倍と有意に高かった。健全歯群,齲蝕歯及び充填歯群の歯質中M11濃度は近似しており,齲蝕との関連性は認められなかった。乳切歯のみを用いて検討しても同様であった。以上のことから,SrおよびMnには齲蝕との関連性は認められず,Alは抗齲蝕作用を持つ元素であることが強く示唆された。
著者
小久江 由佳子 猪狩 和子 小松 偉二 真柳 秀昭
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.140-147, 2003-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
24
被引用文献数
4

近年,口呼吸をする小児が増加しているといわれているが,実際に口呼吸をしている小児の割合や口呼吸が引き起こす問題点に関しては未だ明らかにされていないことが多い.そこで,今回小児における口呼吸の実態を調査する目的で仙台市内の保育園11か所における年長児クラス(4~6歳)275名の保護者を対象にアンケート調査を行い,206名から回答を得た(回収率74.9%).アンケートにより,口呼吸吸群群,鼻呼,中間群と群分けし比較したところ,以下の結果を得た.1.保育園児の22.8%が口呼吸をしている可能性が高い.2.口呼吸群は鼻呼吸群と比較して以下のような傾向があった.1)鼻咽頭疾患の既往率が高い.2)口唇,口に乾燥がみられる.3)唇が弛緩し,上唇がめくれている.4)風邪をひきやすい.5)よく聞き返す.6)前歯部の咬合は正常の割合が低い.7)咀嚼嚥下が上手にできない.8)猫背である.3.口呼吸は離乳時期,おしゃぶりの使用の既往との間に関連は認められなかった.以上より口呼吸は様々な問題点を引き起こしていることが示唆され,外来患者における呼吸様式を把握することの重要性ならびに耳鼻咽喉科との連携強化の必要性を再確認した.
著者
河合 利方 福田 理 中野 崇 磯貝 美佳 中田 和彦 中村 洋 土屋 友幸
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.684-691, 1998-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
34

外傷により脱落した歯を再植し,その予後を良好なものとするためには,その歯根膜の活性の維持が重要な要因の一つであると考えられている。本研究では,歯根膜の活性の維持をするための保存液としてソフトコンタクトレンズ保存液に注目し,その溶液の歯根膜細胞への影響をヒト歯根膜由来線維芽細胞を用い,それまで脱落歯の保存液として有効性が報告されている牛乳と生理食塩水を比較対照とし,短時間低温保存条件下で細胞数,細胞形態の観察から検討を加え,次の結果を得た。1.細胞数の測定3種類のソフトコンタクトレンズ保存液ともに,牛乳のような高い細胞数は示さず,溶液間にも差が認められた。しかし,経日的に細胞数の増加が認められ,作用7日後には牛乳の作用直後より高い細胞数を示した。2.細胞形態の観察牛乳においては,まったく異常所見は認められなかった。3種類のソフトコンタクトレンズ保存液では,生理食塩水と同様な所見を示した。すなわち,作用直後に原形質突起の縮小・球状化・剥離が認めらるものの,作用7日後には回復傾向を示し異常な所見は認められなくなっていた。以上のことからソフトコンタクトレンズ保存液は,脱落歯保存液の第一選択とされている牛乳よりも劣るものの,緊急時の一時保存溶液として短時間低温条件下での有用性を示唆したものと考える。
著者
日本小児歯科学会 有田 憲司 阿部 洋子 仲野 和彦 齊藤 正人 島村 和宏 大須賀 直人 清水 武彦 尾崎 正雄 石通 宏行 松村 誠士 石谷 徳人 濱田 義彦 渥美 信子 小平 裕恵 高風 亜由美 長谷川 大子 林 文子 藤岡 万里 茂木 瑞穂 八若 保孝 田中 光郎 福本 敏 早﨑 治明 関本 恒夫 渡部 茂 新谷 誠康 井上 美津子 白川 哲夫 宮新 美智世 苅部 洋行 朝田 芳信 木本 茂成 福田 理 飯沼 光生 仲野 道代 香西 克之 岩本 勉 野中 和明 牧 憲司 藤原 卓 山﨑 要一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.363-373, 2019-06-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
17

要旨:日本人永久歯の萌出時期,萌出順序および第一大臼歯と中切歯の萌出パターンを明らかにし,約30 年前と比べて永久歯の萌出に変化があるか否かを検討する目的で,4 歳0 か月から18 歳11 か月の小児30,825 人を調査し,以下の結果を得た。1 .男子の萌出は,1 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,6 が5 歳10 か月-7 歳6 か月,1 が6 歳6 か月-7 歳10 か月,2 が6 歳3 か月-8 歳3 か月,6 が5 歳11 か月-8 歳7 か月,2 が7 歳6 か月-9 歳2 か月,3 が9 歳2 か月-11 歳3 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳7 か月,4 が9 歳5 か月-11 歳6 か月,3 が9 歳10 か月-12 歳1 か月,5 が10 歳4 か月-13 歳0 か月,5 が10 歳3 か月-13 歳2 か月,7 が11 歳3 か月-13 歳 10 か月,7 が12 歳1 か月-14 歳5 か月の順であった。2 .女子の萌出は,1 が5 歳5 か月-6 歳7 か月,6 が5 歳6 か月-7 歳0 か月,1 が6 歳3 か月-7 歳7 か月,2 が6 歳3 か月-7 歳8 か月,6 が5 歳10 か月-8 歳4 か月,2 が7 歳2 か月-8 歳8 か月,3 が8 歳 8 か月-10 歳5 か月,4 が8 歳11 か月-11 歳0 か月,4 が9 歳1 か月-11 歳1 か月,3 が9 歳2 か月- 11 歳4 か月,5 が10 歳1 か月-12 歳11 か月,5 が10 歳2 か月-13 歳1 か月,7 が11 歳2 か月-13 歳 10 か月,7 が11 歳9 か月-14 歳3 か月の順であった。3 .萌出順序は,男女ともに上顎が6≒1 →2 →4 →3 →5 →7 で,下顎が1 →6 →2 →3 →4 →5 → 7 であった。4 .第一大臼歯と中切歯の萌出パターンは,男子では上顎がM 型77.2%,I 型22.8%で,下顎がM 型29.2%,I 型70.8%であった。女子では上顎がM 型73.4%,I 型26.6%で,下顎がM 型36.7%,I 型63.3%であった。5 .萌出時期の性差は,すべての歯種で女子が早く萌出しており,上下顎1, 2, 3, 4 および6 に有意差が認められた。6.約30 年前に比べて,男子は上下顎4, 5, 6 が,女子は3,上下顎の4, 5, 6, 7 の萌出時期が有意に遅くなっていた。
著者
関口 浩 町田 幸雄 尾股 定夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.99-109, 1996-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25

日常頻繁に摂取する食品171品種の硬さについて,新測定法として硬さ測定用触覚センサを採用して調査した結果,以下の結論を得た。1.硬さ測定値は0Hzから3,868Hzまでと広範囲にわたっていた。この測定値を基に0Hzから4,000Hzを等分し,硬さを8段階に区分した。最低値を示した食品は茶碗蒸,最高値を示した食品はキャラメルであった。2.全食品の硬さの分布状況をみると,90%が硬さ順位1から4の間にあり,軟らかい方に集中していた。3.各食品群別に硬さの分布状況をみると,穀類,肉類,調理加工食品類,野菜類は硬さ順位4に多くの食品が分布していた。これらに比べて,いも類,種実・豆類,果物類,卵・乳類および魚介類は,硬さ順位1から2の間に分布する食品が多く,軟らかい傾向が認められた。菓子類は他の食品群に比べて,分布範囲が広く,硬さ順位1から8の間に分布していた。4.硬さ順位ごとに代表的食品を挙げると,1:プリン,豆腐,2:肉団子,大根(煮),3:うどん,ウィンナーソーセージ,4:ハンバーグ,食パン,5:せんべい,するめ,6:チョコレート,あめ玉,7:無し,8:キャラメル,キャンデーであった。5.硬さ測定用触覚センサは幅広い測定範囲と高い感度を有しているため,種々な食品の硬さの測定が可能であり,しかも,短時間で判定できるため,多くの食品について測定することが可能であった。
著者
岡崎 好秀 宮城 淳 堀 雅彦 東 知宏 中村 由貴子 小坂田 弘子 紀 螢 Bazar Oyuntsetseg Rodis Omar 松村 誠士 下野 勉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.693-700, 2002-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
37
被引用文献数
2

齲蝕のない3~5歳の小児114名を対象として,Dentocult-SM®strip Mutansテスト(Orion Diagnostica社製)を用い,ミュータンス連鎖球菌数について調べた。また小児の生活習慣に関する15問のアンケートを実施した。そしてミュータンス連鎖球菌数とアンケート項目との関係について数量化理論II類を用い解析した。さらに上位にランクされた項目についてはχ2検定を用い検討を加えた。1.Dentocult-SM(R) Strip mutansテストの判定結果の分布は,クラス0は69.3%(79/114名),クラス1は21.9%(25/114名),クラス2は8.8%(10/114名)であり,クラス3は1人もいなかった。2.以下の項目はミュータンス連鎖球菌数と有意に関係していた。1)間食の不規則摂取(χ2検定p<0.01)2)間食回数3回以上(χ2検定p<0.01)3)甘味飲料を多く飲む(χ2検定P<0.05)4)保護者の齲蝕が多い(χ2検定p<0.05)5)間食後の歯磨きをしない(χ2検定P<0.05)以上より,これらの項目に対する保健指導を行えば,ミュータンス菌の定着のリスクが減少し,ひいては小児の齲蝕予防につながることが期待できる。
著者
後藤 早智 茂木 瑞穂 薮下 綾子 三輪 全三 髙木 裕三
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.193-201, 2012-06-25 (Released:2015-03-17)
参考文献数
25
被引用文献数
1

歯科用局所麻酔剤スキャンドネストⓇ(3%メピバカイン塩酸塩製剤)は,血管収縮薬,防腐剤や酸化防止剤等の添加物が無配合,短時間作用型という特徴を持つことから小児歯科治療において有用であると考えられるが,小児に対しての国内での使用成績の報告は少ない。そこで,本研究では,小児歯科治療における本剤の臨床的有用性を検討した。対象は東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来で局所麻酔下にて窩洞形成や抜髄等の歯科治療を行った148 症例で,術者および患児にアンケート調査を行った。局所麻酔剤はスキャンドネストⓇ,シタネストⓇ,シタネスト-オクタプレシンⓇ,キシロカインⓇ,オーラⓇ注の5 種類から,術者の判断で選択し,使用した。その調査結果では,麻酔効果および処置中の痛みにおいて,薬剤間による有意差は認められなかった。また,薬剤の種類と術後違和感において有意な差が認められ,スキャンドネストⓇは,他剤と比較して術後違和感が少ない傾向が認められた。以上より,スキャンドネストⓇの麻酔効果は他剤と同等で,持続的観血処置や長時間(30 分以上)の処置を除けば,術後の咬傷などを防ぐ意味でも小児歯科において有用性の高い局所麻酔剤と考えられ,他剤を含めた局所麻酔剤の選択肢が拡大したといえる。
著者
張 野 Lina M. Cardenas 今武 由美子 山邊 陽出代 岩沼 健児 後藤 讓治
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.478-488, 1997-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
37

咬合面小窩裂溝と並んで頬面小窩は齲蝕好発部の一つである.頬面小窩の形態を解明する目的で,ヒト未萌出下顎第一大臼歯20歯を用い,頬面小窩の形態についてSEMによる観察,樹脂包埋の連続研削面について実態顕微鏡による観察および計測を行い,以下の結果が得られた.1)未萌出下顎第一大臼歯20歯中の13歯(65.0%)に18の頬面小窩が観察された.同一個体の左右同名歯に左右対称的に発現する傾向が認められた.2)未萌出下顎第一大臼歯における頬面溝の長さは平均2.5mmであり,頬面小窩はすべて頬面溝の下1/3部に認められた.3)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩開口部の形態は楕円形のものが最も多く,18中の12(66.7%)であった.4)頬面小窩の各計測平均値は,開口部の長径553μm,開口部の幅径189μm,小窩の深さ867μm,小窩底部エナメル質の厚径658μmであった.5)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の長径と幅径との間,頬面小窩の長径と深さとの間にそれぞれ正の相関関係が認められた(p<0.01).6)未萌出下顎第一大臼歯における頬面小窩の形態は,DV型が最も多く,18中の7(38.9%),SV型とSK型がそれぞれ4(22.2%),DK型が3(16.7%)であった.SU型とDU型はなかった.
著者
松崎 和江 外木 徳子 長谷川 浩三 矢島 功 町田 幸雄 井坂 隆一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.88-93, 1985-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
16
被引用文献数
2

歯磨圧は歯垢清掃効果及び歯質,歯周組織の損傷と大きな関連性を有しているものと思われる。そこで本研究は,小児のスクラブ法による最適歯磨圧を歯垢清掃効果率,刷掃時の疹痛及び歯齪よりの出血の有無等を参考として求めた。被験者は,4歳から5歳までの歯牙の欠損および歯列不正を認めない乳歯列期の小児15名である。歯ブラシは中等度の毛の硬さを有するライオン株式会社製DentM-2を使用した。測定部位は上下顎左右側の乳臼歯部頬面の4部位で,欄掃回数は各部位とも20回とした。設定歯磨圧は,100g,200g,300g,400g,500gとし,その他の条件は一定とした。得られた結果は以下の通りである。1)100gの歯磨圧での歯垢清掃効果率は30・2%であり,200gでも44.3%であった。これらに対し300gでは76・1%と大きな向上が見られた。しかし,400gでは76.7%,500gでは73.4%とあまり変化がみられなかった。それぞれについて有意差検定を行ったところ1009,2009及び3009の間には1%の危険率で有意差が認められた。しかし,300g,400g,500gの間には有意差は認められなかった。2)部位による清掃効果の差は,歯磨圧100gおよび200gにおいてはみられたが,300g,400g,500gにおいては殆どみられなかった。3)刷掃時の疹痛は300g以下では全く認められなかったが400gで8名,500gで11名の小児に認められた。また,辺縁部歯齪からの出血が400gで3名,500gで5名の小児に認められた。以上の結果より小児のスクラブ法による刷掃において,中等度の硬さの歯ブラシを用いた場合,最適歯磨圧は300gと考えられる。
著者
秋友 達哉 光畑 智恵子 太刀掛 銘子 新里 法子 岩本 優子 達川 伸行 櫻井 薫 香西 克之
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.374-381, 2019-06-25 (Released:2020-01-31)
参考文献数
9

広島大学病院は2013年9月に医科歯科それぞれの外来を統合し,より緊密な医科歯科連携が可能となった。この度,外来診療棟移転後である2015年度に当院小児歯科を受診した知的障害児(者)を対象に,歯科治療の実態調査を行い,移転前である2004年度および2009年度における当科の実態と比較し,以下の結果を得た。1.2015年度に来院した知的障害児(者)は312名(男児214名,女児98名),延べ1,538名であった。そのうち147名については,2009年度より当科を継続的に受診していた。2.年齢分布は7歳~12歳が35.5%と最も多く,次いで13歳~18歳が33.6%であり,2004年度および2009年度と著変なかった。3.患児(者)の障害の種類は,自閉症が41.9%と最も多く,次いで知的障害のみが34.6%,Down症10.8%,脳性麻痺10.2%であった。2009年度と比較し知的障害のみの占める割合が増加した。4.診療内容は歯科衛生実地指導が34.8%,歯石除去が24.3%,形成充填が14.8%であった。過去の調査と比較し,歯科衛生実地指導が顕著に増加した一方,形成充填・既製冠修復は減少していた。5.対象者の58.1%に対し,体動コントロールを行っていた。行動変容法においては,視覚支援の使用が経年的に増加していた。
著者
藤原 卓
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.367-373, 2010-06-25 (Released:2015-03-12)
参考文献数
16

ヒューマンエラーは人間の本来持っている特性と,人間を取り巻く広義の環境がうまく合致していないために引き起こされるものと定義される。現在のリスクマネージメントにおいては,ヒューマンエラーはゼロにはできないので,医療事故は必ず発生するということが基本となっている。またヒューマンエラーだけでなく,構造的な危険(リスク)もゼロにすることは不可能で,安全とは受け入れがたいリスクが無いことと定義される。したがってリスクマネージメントに加え,医療事故が発生した後の対策としてのクライシスマネージメントが重要になる。小児歯科の医療従事者は,パルスオキシメーターなどのモニター機器を活用するとともに,救急蘇生術を習得しておく必要がある。AHA のBLS ヘルスケアプロバイダーや二次救命としてのPALS コースがそれに適している。院内感染対策は標準予防策が基本となる。血液を媒介とする肝炎やヒト免疫不全ウイルス感染症について,その感染確率や予防法,治療法について知っておく必要がある。麻疹,水痘,流行性耳下腺炎,風疹などの小児期によくみられるウイルス感染症対策も重要で,医療従事者は抗体価測定とその結果に基づくワクチン接種が必要である。
著者
榊原 章一 中野 崇 加藤 一夫 中垣 晴男 福田 理
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.459-464, 2011-12-25 (Released:2015-03-14)
参考文献数
27
被引用文献数
1

齲蝕は歯垢中の細菌が産生する酸が歯質を脱灰することによって起こる。一方フッ化物は齲蝕予防効果があり,歯垢中に低濃度で常時存在することでそれを発揮する。フッ化物による齲蝕予防効果の1 つに歯垢細菌の糖代謝に対する抗酵素作用があり,菌体外への乳酸などの有機酸の生成を抑制する。本論文ではフッ化物の具体的な効果を解明するため,250 ppmF NaF 溶液を用いた際の,歯垢細菌へのフッ化物の影響を調査した。NaF 溶液で洗口した群を実験群,蒸留水で洗口した群を対照群とし,各群の洗口後,10 分後に10%グルコース溶液にて洗口を行い,更にその後5 分後に歯垢採取を行い,採取した歯垢のフッ化物,乳酸及びグルコースの濃度を測定した。本実験より以下の結果を得た。・実験群では,フッ化物濃度は有意に上昇した・実験群ではグルコース洗口後の乳酸の産生濃度が有意に減少した・実験群ではグルコースの残留量が多い傾向にあった本実験の結果より,フッ化物洗口によってフッ化物イオンが歯垢中に取り込まれ,歯垢細菌の乳酸産生を抑制したことが明らかとなった。しかしながら,NaF 溶液による歯垢中フッ化物濃度の上昇は一時的であるため,今後は歯垢中フッ化物濃度を長時間高濃度に維持する方法について検討が必要である。
著者
三上 俊成
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.1-11, 2005-03-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
43
被引用文献数
1

キシリトールを配合したガムを噛むことは,齲蝕感受性が高く,また上手に歯磨きを行えない小児に対して推奨できる齲蝕予防法であると考えられる.このガムにフッ化物を配合して歯質の脱灰を抑制しその再石灰化を促進するには,低濃度で安全なフッ化物配合量での再石灰化促進効果を調べる必要がある.本研究では10%キシリトール溶液に低濃度フッ化物を段階的に添加した場合のヒトエナメル質再石灰化促進効果についてCMR法を用いて検討し,さらに試作したフッ化物配合キシリトールガムの再石灰化促進効果を,市販の再石灰化促進物質配合キシリトールガムとin vitro試験およびin vivo試験で比較した.その結果,10%キシリトールと0.4PPm以下のフッ素を添加した再石灰化液では対照(0PPm F)に対して再石灰化率の増加に有意差がみられなかったが,0.8ppm以上では再石灰化率の増加に高い有意差が認められた.再石灰化促進効果がフッ素濃度0.4ppmと0.8ppmの問で大きく変化したことは,フッ素濃度が低い場合にはキシリトールが抑制的に働く可能性を示唆していた.フッ化物を配合した試作ガム(2μgF/枚)は,in vitro試験では2種類の市販ガムの中間の再石灰化効果を示し,ヒト口腔内では効果が低い方のガムと同程度であった.
著者
大塚 義顕 渡辺 聡 石田 瞭 向井 美惠 金子 芳洋
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.867-876, 1998-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
28
被引用文献数
4

乳児期に獲得される嚥下機能の発達過程において,舌は中心的役割を果たしている。しかしながら,吸啜時の動きから固形食嚥下時の動きへと移行する舌の動きの経時変化の客観評価についての報告はほとんど見られない。そこで,生後20週から52週までの乳児について,超音波診断装置を用いて顎下部より前額断面で舌背面を描出し,舌の動きの経時的発達変化の定性解析を試みたところ以下の結果を得た。1.生後20週には,嚥下時の舌背部にU字形の窪みが見られ,舌全体が単純に上下する動きが観察された。2.生後26週には,嚥下時の舌背正中部に陥凹を形成する動きがはじめて見られた。3.生後35週には,上顎臼歯部相当の歯槽堤口蓋側部に舌背の左右側縁部が触れたまま正中部を陥凹させる動きが確認できた。4.生後35週から52週までの舌背正中部の陥凹の動きは,ほぼ一定で安定した動きが繰り返し観察できた。5.舌背正中部にできる陥凹の動きの経時変化から安静期,準備期,陥凹形成期,陥凹消失期,口蓋押しつけ期,復位期の6期に分類することができた。以上より,前額断面での舌運動は,舌の側縁を歯槽堤口蓋側部に接触固定し,これを拠点として舌背正中部に向けて食塊形成のための陥凹を形成する発達過程が観察できたことから,食塊形成時の舌の運動動態がかなり明らかとなった。
著者
大河内 昌子 向井 美惠
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.224-231, 2003 (Released:2013-01-18)
参考文献数
18

乳児を対象にした乳児用食品の固さの基準値についての客観的な検証は行われていない現状である.そこで,乳児に適正な物性基準の資料を得る目的で,離乳期の乳児を対象に摂食時の口腔領域の動きを観察評価して,その発達状態によって4群に分類し,以下の検討を行った.被験食品は,予め調整した固さの異なる4種類の基準食品とし,それらの食品の摂食時の処理方法の適否および顎の運動回数を指標として4群間で比較検討を行い以下の結論を得た.1.被験食品の固さが増加するに伴い,適正処理可能な乳児の割合は減少した.2.乳児は,食品の固さに応じて,顎の運動回数を変化させ食品を処理していることが認められた.3.食品の固さの変化による顎の運動回数は,離乳の時期によって異なることが示唆された.離乳初期~後期の乳児が処理できる固さの目安は得られたが,今後これらの固さの食品に対して適切な顎運動回数の検討などがさらに必要と考えられた.
著者
岡崎 好秀 東 知宏 田中 浩二 石黒 延枝 大田原 香織 久米 美佳 宮城 淳 壺内 智郎 下野 勉
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.677-683, 1998-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
25
被引用文献数
4

655名の小児を対象として,3歳時と小学校1年生時から中学1年生時までの,齲蝕指数の推移について経年的に調査した。1)3歳時の齲蝕罹患者率は65.6%,1人平均df歯数は3.80歯であった。2)中学1年生時の齲蝕罹患者率は93.4%,1人平均DF歯数は4.78歯であった。3)3歳時のdf歯数は,小学校1年生から中学校1年生までのDF歯数と高度の相関が認められた(p<0.001)。4)3歳時のdf歯数が0歯群と9歯以上群の小学校1年生から中学校1年生までの永久歯齲蝕罹患者率には,有意の差が認められた(p<0.001)。5)3歳時のdf歯数が多い群ほど,永久歯のDF歯数も高い値を示した(p<0.05)。3歳時の齲蝕は,将来の齲蝕に影響を与えることから,乳幼児期からの齲蝕予防の重要性が示唆された。