著者
木村 光孝 西田 郁子 牧 憲司 高橋 宙丈 渡辺 博文 野沢 典央 堤 隆夫 岡 裕美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.291-298, 1991-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は食物の硬軟による咀嚼機能の変化が下顎骨にどのような変化を及ぼすかを明かにした.3週齢のWistar系雄ラットにそれぞれ固型飼料群,練飼料群-I,練飼料群-IIおよび粉末飼料群の飼料を与え,飼育6週間後に下顎骨に及ぼす影響を検索し,次のような結果を得た.1.飼料の平均圧縮強さは固型飼料群で94.32kg/cm2,練飼料群-I 45.23kg/cm2,練飼料群-II 14.20kg/cm2,粉末飼料群0であった.2.写真濃度所見は,固型飼料群が最も濃度が高く練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に歯槽骨骨濃度は減少した.3.下顎骨計測所見は,固型飼料群と練飼料群-Iおよび練飼料群-IIの下顎骨長および下顎枝高はほぼ同程度の値を示したが,粉末飼料群の値は減少した.4.X線マイクロアナライザーによる分析所見では,歯槽骨のCa,Pの点分析による定量分析を対照群と比較した相対Ca量比(Ca/[Ca]c)およびP量比(P/[P]c)を求めた結果,固型飼料群および練飼料群-Iはほぼ同程度の値を示し,練飼料群-IIおよび粉末飼料群に比べ高い値を示した.5.下顎骨破砕強度は固型飼料群が最も強く,練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に低値を示した.以上のことから食物の硬軟の変化によって歯槽骨の内部構造に影響を及ぼすことが明らかになった.
著者
大野 秀夫 大野 和夫 小椋 正 木村 光孝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.653-660, 1986-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
13

乳歯生活歯髄切断処置後,乳歯の生理的歯根吸収が健全乳歯の場合と同様に進行しているか否かを検討するため,生後3カ月前後の幼犬の乳歯に,覆髄剤として,水酸化カルシウムを主成分とするCalvitalを使用し,生活歯髄切断処置を施し,病理組織学的に検索した。乳歯生活歯髄切断処置後の生理的歯根吸収は,健全な対照歯と比較し,組織学的にはほぼ同調した吸収状態を示した。このことは,乳歯生活歯髄切断処置が生理的歯根吸収に対して,何ら影響を与えているとは考え難く,乳歯の歯髄処置として,非常に意義あるものと考えられた。
著者
内藤 真理子 川原 玲子 井手口 博 上田 和茂 鶴田 靖 吉永 久秋 内藤 徹 木村 光孝
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.625-630, 1997

児童の食習慣を検討する目的で,北九州市内の公立小学校に通学する3年生から6年生までの児童,男児1,336名,女児1,248名,計2,584名を対象に,質問票による調査を実施した。<BR>「朝ごはんを食べない」と回答した児童は5%前後であり,平成4年度の調査結果と比較して著しい変化はなかった。「やわらかいものを食べる」あるいは「かたいものをあまり食べない」と回答した率は50%前後であり,全般に女児に高く認められる傾向にあった。「食べる速さがはやい」と回答した率は20%前後であり,男児の率が有意に高く認められた。「食べるときにあまりかまない」と回答した率は10%前後であり,男児に対して有意に高く認められた。「インスタント食品をよく食べる」と回答した率は15%前後であり,全般に男児に高く認められる傾向にあった。学年の上昇にともない,主食の中でごはんを「一番好き」と回答した率が上昇する傾向にあった。それぞれの設問における男女児間の回答の違いは,全般に6年生でその差が減少する傾向にあった。<BR>児童を取り巻く環境や状況の変化が食習慣に影響を及ぼすことが示唆されたことから,早期からの段階を追った「食育」の過程において,この時期に好ましい食習慣の確立をはかることが重要であると思われた。
著者
森高 久恵 木村 光孝 中村 嘉明 松山 道孝 住本 和隆 篠崎 英一
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.515-522, 1983-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
18

著者らは,初診時4歳9ヵ月,Hellman's Dental Age II Aの女児において,既に4歯芽の早期萌出と,動揺による咀嚼障害を主訴として来院した症例に遭遇した。歯芽は舞踏状に動揺し,脱落寸前であった。電気診(一),X線診査で歯根形成が認められないため,保存不可能と判断し歯芽を除去した。歯芽のエナメル質表面は一部褐色を呈している部分があり,エナメル質形成不全であると思われた。除去した歯芽を2分割し,一方は未脱灰研磨切片を作製し光顕的観察に,もう一方は走査電顕的観察に用いた。光顕的にはエナメル質,象牙質ともに形成不全像を呈し,電顕的には肉眼像で褐色を呈する部分にpitsが散在し,構造は粗造でエナメル質低石灰化像を呈していた。低石灰化部と健全部のエナメル質をX線マイクロアナライザーで分析すると,定性的には全く差異を認めなかった。歯芽と同時に歯芽直下の歯槽内より摘出した軟組織の病理組織所見は慢性肉芽性炎症であった。本症例の発生原因を文献的考察と合わせて探ってみた結果,先行乳歯への影響が永久歯歯芽に及び,歯芽が壊死に陥ったため異物排除機転が働いたものと考えられる。
著者
今村 均 西田 郁子 牧 憲司 森本 彰子 古谷 充朗 上田 秀朗 坂本 淑子 曽我 富美雄 内上 堀征人 木村 光孝
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.732-742, 1993-09-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
27
被引用文献数
2

著者らは小児における歯牙の測色にビデオディジタイザーとコンピュータを応用することを考えた.しかし,本機材はコンピュータグラフィック用に開発されたもので測色値は保証されない.今回の実験では機材の特性を調査し設定方法について検討した.1)機材の電源投入後30分以上経過して測定値が安定した.2)HPV2コマンドではカラーレベルが3,γ 補正値が4のとき10YR7/3の基準信号を良好に測定した.これは,HV-HP-S013012コマンドに相当した.3)ビデオカメラの設定を次のようにすると良好な結果が得られた.(1)シャッタースピード:1/60S(2)絞り:F3.4以上またはオート設定(3)ゲイン:+6dB(4)ホワイトバランスまずカメラを横壁に向ける.次にホワイトレンズキャップを付けピントを最大にぼかす.ワンプッシュホワイトバランスボタンを押す.4)無彩色を取り込んだ測色値の特性は非直線的で理論値と一致しなかった.5)計測値を理論値に近づける数学的補正の基本式にK×M1/3+A(K,Aは定数)を用いると良好な補正値が得られた.
著者
木村光孝著
出版者
書林
巻号頁・発行日
1984
著者
井上 美津子 浅里 仁 池田 訓子 小林 聡美 佐々 龍二 高木 裕三 朝田 芳信 大嶋 隆 小口 春久 田中 光郎 前田 隆秀 宮沢 裕夫 藥師寺 仁 渡部 茂 真柳 秀昭 鈴木 康生 下岡 正八 野田 忠 渋井 尚武 進士 久明 田村 康夫 土屋 友幸 大東 道治 香西 克之 西野 瑞穂 木村 光孝 本川 渉 藤原 卓 山崎 要一 吉田 昊哲 丸山 進一郎 嘉ノ海 龍三 品川 光春
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.561-570, 2005-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
5

小児に対する歯科用局所麻酔剤の安全性を明らかにするため日本小児歯科学会の委嘱により,臨床における使用実態と不快事項の発現に関する調査を行った.大学病院小児歯科および個人小児歯科診療所より4,145名分のデータが収集され,以下の結果を得た.<BR>1.局所麻酔を用いた治療は0歳から20歳以上の幅広い年齢層に行われていたが,12歳以下の者が約90%を占めていた.<BR>2.全身疾患やアレルギー体質を有する小児は調査対象児の2割以上を占め,また局所麻酔が初めての小児が16.2%であった.3<BR>.小児の治療において,局所麻酔はコンポジットレジン修復などの修復処置にも多用されていた.<BR>4.局所麻酔薬剤としてはリドカイン製剤が多く用いられており,投与量は1.0ml以下が多かったが,1.8mlを超えた例も3%程度みられ,追加投与により総量が増える傾向がみられた.<BR>5.術中,術後の不快事項は,それぞれ108名(2.6%),109名(2.6%)にみられた.不快事項の内容は,麻酔の奏効不良による疼痛や麻痺による違和感・不快感の訴えや,麻痺の残存による咬傷などが多くを占めていた.<BR>6.局所麻酔薬剤の副作用を疑わせる熟睡や軽い呼吸困難,悪心などの症状は,術中に3例,術後に6例ほどみられたが,いずれも重篤なものではなかった.