著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.1-16, 2018-07-01

我が国における動力車での牽引を前提とする森林鉄道の嚆矢は、明治42(1909)年に竣工した津軽森林鉄道である。その幹線の延長は67 kmに及び我が国の森林鉄道の中で最長を誇った。我が国最初で最大の森林鉄道が津軽半島に建設された背景は、山林局国有林において、首都圏をはじめとする大都市部で十分な市場評価を受けていなかった青森ヒバの需要拡大が課題とされていた中で、河川流送の脆弱性から国有林に賦存する膨大な青森ヒバの運材が不安定であった状況を解決することだった。このため、津軽、下北両半島から集荷可能な青森市に貯木場が建設され、まずは貯木場から至近であった津軽半島全体の青森ヒバ運材を目的とする津軽森林鉄道が建設された。本論は、津軽森林鉄道が我が国最初の森林鉄道となった背景について、山林局国有林における青森ヒバの置かれた位置及び森林鉄道建設前における青森ヒバの河川流送条件等から明らかにするものである。
著者
南 喜一
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.10, no.7, pp.25-26,7, 1957
著者
泉 桂子
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.1-16, 2016 (Released:2016-11-07)
参考文献数
34
被引用文献数
2

山梨県内に位置する小菅村、丹波山村、道志村、早川町、西桂町を対象として1985年前後~2010年までの(1)高齢化、(2)町村財政、(3)女性就業率の推移を明らかにした。(2)には、小菅村、丹波山村固有の視点として、東京都水源林の事業費支出の推移と水道事業におけるその位置づけを含めた。まず第1に、高齢化について、対象町村は全国に比べ、高齢化のピークをいち早くくぐり抜けた高齢化先行地であること、第2に、西桂町を除く対象町村の財政は人口1万人未満の他町村に比べ人口1人あたり歳出総額が多く、同様に人口1人あたり町村税収入が少ないことが明らかになった。道志村、早川町、西桂町や近年の小菅村は人口1人あたり町村税収入を一定割合保っている。また、対象町村の女性就業率は全国平均、県平均に比べて、小菅村、道志村、西桂町で高く、上記3町村では第2次産業の女性就業者が減少した分、第3次産業の女性就業者が増加し、加えて道志村では第1次産業の女性就業者が一定数見られた。
著者
矢部 三雄
出版者
一般財団法人 林業経済研究所
雑誌
林業経済 (ISSN:03888614)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.1-16, 2018 (Released:2018-10-01)
参考文献数
106

御料林における森林鉄道は、伐木作業員向けの物資輸送を目的として敷設されていた阿寺軽便軌道を明治40(1907)年に木材輸送用として改良したことに始まる。その後、順次、森林鉄道が開設されるが、その多くは大正期後半以降の竣工であり山林局所管国有林に比べ後発であった。その要因は、御料林が主要河川流域にまとまって編入され、木材の河川流送が確保されたことにより陸送への転換圧力が大きくなかったことによる。なお、大正期に入ると主要河川は電源開発の対象となり、木材輸送手段の陸送への転換が不可欠とされたが、御料林では木材を大都市部に輸送する方式を採用していたことから普通鉄道との接続が森林鉄道導入の前提となった。本論では、御料林において開設された森林鉄道の概要を把握した上で、その開設の状況から、森林鉄道導入の要因及び普通鉄道との接続状況について明らかにする。なお、森林鉄道の開設経費に影響を与えた昭和天皇の御下問問題にも触れる。