著者
深見 聡 坂井 伸子
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1,2, pp.No.10, 2020-03-31

本研究の目的は、『十六夜日記』に登場する多くの地名詠の中から、これまで注目されてこなかった馴染みの薄い地名を詠み込んだ和歌を分析し、その特徴を明らかにすることである。鎌倉時代に阿仏尼が京都から鎌倉までの行程を描いた紀行文である『十六夜日記』の中で、特に地名詠の集中している「路次の記」を考察の対象とする。表現技巧の分析や先行歌との関係性を具体的に検討することにより、これまで注目されてこなかった地名詠にも、阿仏尼の心情や歌道家としての技能、当時の東海道の最新の様子などが盛り込まれていることがわかった。また、先行歌との影響関係からは、為家歌との関連性からその影響力が十分に看取される。さらには、鎌倉・宇都宮といった東国歌壇との影響関係にも注目され、それらの和歌には阿仏尼独自の世界を打ち出そうとする姿勢が見られることが明らかになった。
著者
山田 高誌 ヤマダ タカシ Yamada Takashi
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, 2018-03-31

本論文は, 18世紀後半のナポリの諸劇場と関わりをもった作曲家, 台本作家, 演奏家, それぞれの待遇の経年変化, キャリアの変化について, ナポリ銀行歴史文書館所蔵, 興行師による支払い文書史料113点の支払い文書全訳とともに, その労働条件, 職務を解明するものである.
著者
八丁 由比
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.No.8, 2017-09-30

In 1945, the United Nations Charter was signed in San Francisco after the United Nations Conference on International Organization. In the first chapter, “Purposes and Principles,” four purposes are stated, and one of them refers to racial equality: to “achieve international co-operation . . . in promoting and encouraging respect for human rights and for fundamental freedoms for all without distinction as to race, sex, language or religion.” Considering that President Wilson, 25 years ago, refused to accept the Japanese proposal for inserting a short clause about the abolition of racial discrimination into the Covenant of the League of Nations, the United Nation Charter accepted to bear a responsibility this time. Based on official documents of the time and secondary works, this article examines the origins and the driving forces both within and outside of the Roosevelt Administration that led to the inclusion of the clause. It draws attention to the substantial contribution of a private organization such as the Commission to Study the Organization of Peace and its close relationship with government officials. It concludes that the reference to racial equality was not the result of single organization or country, but of various countries and people who were concerned about the nature of the new international organization.
著者
桜井 芳生
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集
巻号頁・発行日
vol.4, no.1,2, pp.No.25, 2017-03

見田宗介の『社会学入門』の中核部分を検討する。あくまで蓋然的な推量にすぎないが、見田は、彼の(修正)「ロジスティックス曲線」を記述した(2006a,b)さいに、古田(1998)自体、かつ・あるいは2005年以前の、古田(1996)系統の(諸)文献を典拠とし、そのさい、ロジスティック曲線の表記を、ロジスティック「ス」曲線と、誤写した。そして、「高原」(2014)論文にいたる、同主旨の数々の論文・講演でふたたび典拠にあたることはせずに自己引用に終始したと、わたしは思料した。以上がただしいかぎり、「安定」(2014:29)か「滅亡」(2014:29)かを「免れることはできない」(2014:29)とはいえない【結論】。
著者
張 小英
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.No.1, 2018-03-31

アカデミック・ディベートを行う際、主張の根拠として、出版された文献から証拠資料を引用し、議論を行わなければならない。証拠資料を引用するにあたり、証拠能力(出典の明示、原典からの直接引用、不正引用に当たらないこと)と証明力(証拠資料自体の信憑性、証明しようとする主張との関連性)を判断する必要がある。本研究は、ディベート大会の文字化資料に基づく証拠能力と証明力の検証(張, 2017)に引き続いて、アンケート調査を通じて、証拠資料の使用実態の究明を目的とした。証拠能力に関して、それぞれ「ディベーターが認識している明示すべき出典の項目」「孫引きの使用状況」「不正引用の原因」の三つに分類して考察を進めた。さらに、証明力における証拠資料の「信憑性」と「主張との関連性」の判断について、ディベーターに自己評価回答に考察を加えた。
著者
瀬戸崎 典夫 全 炳徳
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集
巻号頁・発行日
vol.4, no.1,2, pp.No.12, 2017-03

本研究は,全天球パノラマVR教材におけるユーザインタフェースを評価し,評価結果をもとにVR教材を改善した.さらに,小学6年生を対象とした授業実践によって改善した教材を評価することを目的とした.ユーザインタフェースの評価の結果,観察地点や文字,音声などの提示情報の追加が課題であることが示された.そこで,全天球パノラマVR環境を有する観察地点において,2地点のパノラマコンテンツを追加し,各観察地点におけるモニュメント等の現在の写真をVR環境に重畳表示した.さらに,VR環境に重畳表示された写真に,音声による解説と文字による説明を示した.次に,改善した全天球パノラマVR教材を活用し,修学旅行における事後学習を2つの小学校で実践した.その結果,本教材は興味や意欲を高めることができ,振返りの教材として有用であることが明らかになった.また,学習のねらいや活動内容によって,学習者の意欲や長崎にいるような実感に対する評価が異なることが示された.
著者
藤本 秀平
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.No.31, 2017-09-30

本論文では、利根川裕『喜屋武マリーの青春』(1986年)の読解を通して、「戦後」沖縄における「混血」表象の変容について論じた。1980年代に「混血」をめぐるイメージがポジティヴなものへと変化する動きの加速を追いながら、その変化が「戦後」沖縄を占領・統治したアメリカによる文化政策によって影響を受けている点を明らかにした。特に、マリーが幼少期から大人になるまで生活の場としていたコザという「戦後」最も強いアメリカの文化統治を受けた地域に着目しつつ、そこでアメリカによって発信されていたKSBKというラジオ放送とマリーの関係性に注目した。
著者
林 亮輔
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.No.16, 2015-10

民間経済活動が行政区域を越えて行われている今日、地域政策は一体性の強い地域を対象に行う必要がある。しかし、民間の経済活動には様々な側面があるにもかかわらず、わが国においては学術的にも政策的にも、職場と居住地からなる通勤圏を都市圏とすることが多い。そこで本稿では、企業活動に基づいた都市圏である企業活動圏を法人使用車移動率によって設定し、金本・徳岡(2002)において設定されている都市雇用圏(通勤圏)と比較した。その結果、都市雇用圏は、中心都市と郊外都市が互いに隣接し合いながら形成されているのに対し、企業活動圏は、高速道路の存在により、郊外都市が点在しながら圏域が形成されていることが明らかになった。このように経済活動によって、一体性を持った都市圏域が大きく異なるという事実は、研究や政策の目的に応じて都市圏域を設定することの重要性を示している。
著者
楠山 研
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.No.7, 2015-10

本研究は、NCLB法(No Child Left Behind Act of 2001)の導入により、アメリカの公立学校において英語以外の言語による教育が事実上難しくなり、バイリンガル教育への視線も厳しくなる状況の中にあって、移民を多く抱えるカリフォルニア州において中国語を含むバイリンガル教育を実施している教育機関・施設(=ロサンゼルスの公立小学校とサンフランシスコの就学前教育施設)に注目して、その生き残り策を探ることを目的として検討を加えてたものである。