著者
深見 聡 坂井 伸子
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, 2020-03-31

本研究の目的は、『十六夜日記』に登場する多くの地名詠の中から、これまで注目されてこなかった馴染みの薄い地名を詠み込んだ和歌を分析し、その特徴を明らかにすることである。鎌倉時代に阿仏尼が京都から鎌倉までの行程を描いた紀行文である『十六夜日記』の中で、特に地名詠の集中している「路次の記」を考察の対象とする。表現技巧の分析や先行歌との関係性を具体的に検討することにより、これまで注目されてこなかった地名詠にも、阿仏尼の心情や歌道家としての技能、当時の東海道の最新の様子などが盛り込まれていることがわかった。また、先行歌との影響関係からは、為家歌との関連性からその影響力が十分に看取される。さらには、鎌倉・宇都宮といった東国歌壇との影響関係にも注目され、それらの和歌には阿仏尼独自の世界を打ち出そうとする姿勢が見られることが明らかになった。
著者
深見 聡
出版者
鹿児島県地学会
雑誌
鹿児島県地学会誌 (ISSN:13417223)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.25-38, 2000-06

鹿児島県地学会からの許諾を得て登録しています。
著者
深見 聡
出版者
観光学術学会
雑誌
観光学評論 (ISSN:21876649)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.185-196, 2017 (Released:2020-01-13)

「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」は、世界遺産登録を目指す過程の2016年に、イコモスから「日本国におけるキリスト教の歩みは、禁教(潜伏)期にこそ顕著な普遍的価値」が認められ、現状での登録は困難と指摘された。日本政府は、構成資産候補の変更や遺産全体の名称の変更といった対応を迫られ、すなわち、信徒への迫害や弾圧、反乱や鎮圧、改宗をめぐる軋轢といった、いわゆる負の歴史を中心とした物語性の確立が、登録への大きな関門に浮上した。 よって、構成資産を訪れる観光も必然的に本視点からの展開がみられるだろう。その際、ダークツーリズムの手法は、前面に負の歴史を悼み祈る旅との認識が中心に据えられるため、観光客にはそれらの物語性を扱うことへの事前了解が得られる有用性がある。一方、復活期の教会建築中心の遺産登録に理解を示してきた地域コミュニティに、その手法の受容は細心の配慮が求められる。とりわけ、観光教育がホストとゲストを媒介する存在として重要となろう。その上で、科学コミュニケーションとしてのダークツーリズムの言辞の浸透と、敢えて「ダークツーリズム」を掲げなくともその実質化が図られることとの両者における相互啓発が不可欠である。
著者
深見 聡
出版者
全国地理教育学会
雑誌
地理教育研究 (ISSN:18826202)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-10, 2016-10

This paper describes how geography education plays a role in territorial education in consideration of its characteristic of creating space perception. Specifically, we conducted a questionnaire survey on the territorial recognition of university students. As the result, no significant difference is not confirmed in questions of the location of and the basis of territorial rights to the Takeshima and the Senkaku Islands between students studying geography at high school and those not studying. On the other hand, students' answers in the survey show affirmative attitudes toward the enhancement of territorial education. To promote mutual understanding with neighboring countries from now on, it is necessary to establish the social recognition of Japan's position on the issue of islands on the border under the severe international situation.
著者
深見 聡
出版者
鹿児島県地学会
雑誌
鹿児島県地学会誌 (ISSN:13417223)
巻号頁・発行日
no.81, pp.25-38, 2000-06

鹿児島県地学会からの許諾を得て登録しています。
著者
深見 聡
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.17, 2004

_I_.はじめに 近年、まちづくりの新たな手法として、地域住民みずからが主体となって行政等と協働のもと「地域資源」を再発見し、それを発信しようというエコミュージアム活動が各地でみられる。まちづくりを進める上で不可欠な交流人口(観光客)の拡大につながるものとして、現代の多様化した観光形態に応えうるものとの期待も高い。 エコミュージアムと従来の博物館との相違は_丸1_主体としての住民の存在、_丸2_対象となる資料の分散範囲をテリトリーとする、_丸3_官民が対等の位置づけにあり、まちづくりに取り組むという3点に集約できる(新井,1995)。国内における動向もほぼこれに沿った形での運営がなされている。その先駆けは1989年の山形県朝日町における研究会発足にあり、2000年にはNPO法人朝日町エコミュージアム協会が誕生している。また、鹿児島県隼人町では地元の志學館と町生涯学習課などと住民が協働して築100年の駅舎を中心とした、決して数年前まで地域資源として一般には注目さえ集めなかった地域が、農産物の販売や散策マップの配布で地域資源が見直された。2004年にはJRの観光特急列車が停車するまでになっている。いずれも成功地といわれる地域に共通するのは、度合いの濃淡はあるにせよ上掲3つの要件を備えていることにある。しかし、これらのほとんどの事例は、農村地域(周辺地域)で展開されている(井原,2003)。エコミュージアムの定義からすれば、都市部での取り組みが少ないのは意外ともいえる。本研究では、都市のなかの過疎地域と言うべき旧中心市街地における活性化の手法としてエコミュージアムに注目し、地域住民の取り組みの模様や意識の実際を、参与観察法にもとづいて把握しその効果と課題を明らかにしていく。_II_.対象地域の概要 鹿児島市南部に位置する谷山地区は、1967年に鹿児島市と合併するまでは谷山市として国鉄谷山駅や市電谷山電停から南側にのびる国道225号沿いおよび周辺は商店街を形成するなど谷山市としての拠点性を持っていた。しかし、合併以後現在まで人口は約4倍の増加をみたが、それは郊外の新市街地の誕生の結果であり、旧市街地の停滞化は著しい。2002年に谷山TMO構想が策定されたものの、まちづくり手法として有効性を発揮するには至っていない。_III_.谷山エコミュージアムの確立に向けた動き エコミュージアムの対象地からみた旧市街地は、周辺地域にはない「地域資源」が存在する。たとえば、谷山地区には鹿児島市内唯一の19世紀建造の石橋が旧街道の河川に架かり、近世から近代にかけて塩田が広がっていたことを伝える塩釜神社がある。また、商店街には樹齢100年を超える保存樹がある。ところが、これらを一体のものと位置づけた固有の資源として、地域住民(とりわけここでは専門的な関心を抱く者を除いて地域住民という)が主体となり積極的に発信、すなわち活用してこなかった。以下、参与観察による成果を示す。住民みずからが「地域資源」を探すワークショップの開催 このような経緯を踏まえて、地元のNPO法人「かごしま探検の会」が常設の組織機能を担い、『たにやまエコマップ』作りをとおしたエコミュージアムの確立を図った。 ワークショップは2003年9月から毎月第2土曜日に計5回開催した。参加者は延べ62名で、その多くは高齢者と小中学生、旧市街地外の谷山地区に居住する者であった。毎回、ファシリテータとなるNPOのスタッフがおよそのルートを提示して、地域資源と感じたものに理由を添えて写真やスケッチに収め、散策後は各自がそれらをブレインストーミングしながら白地図1枚に集結させていった。とくに、子どもの視線がおとなだけでは見つけにくい、何ら変哲のないような空地や河川に棲む生き物に関心を向けさせ、遊び空間を実体験に基づいて記録していたことは特筆すべきであろう。
著者
深見 聡
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>1.はじめに</p><p> 地域にとってプラスにもマイナスにも作用する可能性のある観光は、もはや21世紀における主要産業として欠かすことのできない存在となっている。そのため、「持続可能」という言葉が意味する、「本物」を保全・利用しながら次世代へと承継していく視点は、より高まっていくと考えられる。そこで登場してきたのが、エコツーリズムや世界遺産観光といった、地域への経済的効果ばかりではなく、保全意識の高まりや地域への共感といった、社会的効果が期待される「持続可能な観光」という考え方である。</p><p> そこで、本報告は、2020年に世界自然遺産への登録審査を控える「奄美・沖縄」の事例に焦点をあて、持続可能な観光につながる世界遺産登録の役割について考察を加えていくことを目的とする。</p><p></p><p>2.「奄美・沖縄」の世界自然遺産登録再推薦までの動向</p><p> 2018年の第42回ユネスコ世界遺産委員会が終了した時点で、日本には22件(自然4、文化18)の世界遺産が存在する。ここで取り上げる南西諸島では、屋久島(1993年登録)のほか、「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(2000年登録)がある。首里城跡や斎場御嶽、今帰仁城跡など、観光客の増加は、地域経済に恩恵をもたらすと同時に、「観光公害」や「オーバーユース」といった、いわゆる観光客のマナーが原因となるさまざまな課題も生じている。</p><p> 登録件数の増加にともない、世界遺産の登録審査もより狭き門となりつつある。原則として年1回開催の世界遺産委員会における本審査に臨める候補は、従来の1か国につき「自然遺産・文化遺産で各1件まで」から、2020年より「自然遺産・文化遺産のいずれか1件」へと変更される。すなわち、国内での推薦を獲得するハードルが高くなることは確実と指摘されている。2019年1月、「奄美・沖縄」は、ふたたび世界遺産の審査に臨むことが決定した。当該地域の持つ自然や独特の文化の魅力は言わずもがなのものがある。そこに附言するならば、アマミノクロウサギやヤンバルクイナ、イリオモテヤマネコなどの希少生物に代表される、豊かな自然環境とそれらに育まれる文化を承継してきた当事者(主体者)に位置する島民にとって、今回の再推薦の決定に至る合意形成のプロセスが、どの程度ていねいに踏まれたのか、我われ研究者は十分に注視する必要がある。専門家が認める学術的価値や、それらを説明するストーリーは、専門家のなかで完結してしまうものではない。それらの価値が、地域で浸透していく過程が尊重されねばならない。このことを疎かにし、地域が置き去りにされるという感覚に陥った瞬間、保全とその背後にある観光との均衡は、余りにも脆弱なものになってしまうおそれがある。</p><p> 2018年5月、世界自然遺産の現地調査を担うIUCN(国際自然保護連合)は、「登録延期」という中間報告を発表し、政府はいったん申請を取り下げた。そのわずか半年後に、政府が再推薦の方針を示したことになる。この短期間に、学術的価値に限れば、ストーリーの再構築は可能だったかもしれない。しかし、保全の当事者である地域住民に対して、再推薦に向けた意識醸成や一体感といった動向は想定以上に伝わってこない。筆者が対象地の非居住者であり接する情報が少なくなってしまうことだけとは言えないと考えられる。</p><p></p><p>3.考 察</p><p> たとえば、それぞれの道に秀でた専門家の理解と、その理解を求め深めていく対象としての地域住民が価値の共有に至るまでの道のりには、どうしてもタイムラグが生じる。したがって、この時間差を半年の間で埋められたのか大いに疑問が残る。</p><p> 2018年に沖縄県が「奄美・沖縄」に含まれる西表島の島民を対象に実施したアンケート調査結果によれば、世界遺産登録を望まない割合が高く、その理由が「自然遺産に登録されると観光客が増えることで保全への不安が高まる」という、世界遺産制度のジレンマを地域住民が抱えていることがわかった。また、著名な観光サイト「トリップアドバイザー」でも、「奄美・沖縄」を、「世界遺産に登録される前に行っておきたい」と紹介しており、世界遺産観光の本来の役割はどこにあるのかを逆説的ではあるが観光者や研究者への問題提起ととらえられる。</p><p></p><p>4.おわりに</p><p> 世界遺産は、その根拠条約において保全を目的に掲げる一方、観光振興との両立には触れられていない。しかし実際には、魅力ある地域の宝が登録の対象となり、その価値共有の側面からも世界遺産観光が二次的現象として活発化し現在に至る。しかし、これまで繰り返されてきたように、登録決定時の首長コメント等に多い、観光振興(とくに経済的効果)への期待が声高に表明され、本来の保全への決意がかすんでしまうかのような「世界遺産への挑戦」は、再考すべき時機にあると考えられる。</p>
著者
坂井 伸子 深見 聡
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, 2020-10-30

本研究の目的は、『十六夜日記』の和歌表現に関して、歌枕を一つの指標として分析し、その特質を明らかにすることである。特に歌枕が頻出している「路次の記」を考察の対象とする。歌論書・同時代の紀行文等12の文献との比較や和歌表現の分析を行うことにより、伝統的な名所歌枕の価値を認め詠歌しつつも、時代の変化に合わせ新奇な地名において、自身の感懐を表現する和歌がみられることがわかった。そこには、伝統的かつ古典主義的な知識を踏まえながらも、新しい視点で東海道の景観や風物を活写し、自身の感懐を読み手に伝えようとする阿仏尼の姿勢が看取される。『十六夜日記』「路次の記」の和歌には、題詠の時代から一歩踏み出し、新しい地名に一つの評価を与える阿仏尼の新見性がみられることが明らかになった。
著者
深見 聡
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>わが国における観光産業は、2010年代の急速な訪日外国人の増加、過疎地域における交流人口・関係人口の拡大、団体と個人・小グループといった形態の選択肢の多様化など、21世紀の基幹産業としての成長が期待されてきた。そのようななかで、2019年末に中国武漢市での報告に端を発する新型コロナウィルス感染症は、2020年3月にWHOはパンデミック相当との見解を表明した。本稿提出の同年7月末現在、わが国でも経済活動の停滞をはじめ「新たな生活様式」の登場など、その渦中にある。</p><p></p><p> 2020年4月、政府は新型コロナウィルス感染症緊急経済対策の一種として、「Go Toトラベル」キャンペーン事業を打ち出し、7月22日より東京都を対象から外して開始された。星野佳路氏の造語であるマイクロツーリズム、すなわちスモールツーリズムの伸長や、持続可能な観光への後押し効果を期待する論調もある(古田,2020)。また、自治体首長などからは、経済活動の回復への理解や、感染拡大を懸念する声といった賛否両論の声も挙がっている。</p><p></p><p> そこで、本報告は、観光産業への依存度が高い島嶼部に焦点をあて、「Go to トラベル」がもたらす効果と課題を、奄美群島の与論島を事例として予察的な検討を加えていくことを目的とする。</p>
著者
深見 聡 坂井 伸子
出版者
九州地区国立大学間の連携事業に係る企画委員会リポジトリ部会
雑誌
九州地区国立大学教育系・文系研究論文集 = The Joint Journal of the National Universities in Kyushu. Education and Humanities (ISSN:18828728)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1,2, pp.No.10, 2020-03-31

本研究の目的は、『十六夜日記』に登場する多くの地名詠の中から、これまで注目されてこなかった馴染みの薄い地名を詠み込んだ和歌を分析し、その特徴を明らかにすることである。鎌倉時代に阿仏尼が京都から鎌倉までの行程を描いた紀行文である『十六夜日記』の中で、特に地名詠の集中している「路次の記」を考察の対象とする。表現技巧の分析や先行歌との関係性を具体的に検討することにより、これまで注目されてこなかった地名詠にも、阿仏尼の心情や歌道家としての技能、当時の東海道の最新の様子などが盛り込まれていることがわかった。また、先行歌との影響関係からは、為家歌との関連性からその影響力が十分に看取される。さらには、鎌倉・宇都宮といった東国歌壇との影響関係にも注目され、それらの和歌には阿仏尼独自の世界を打ち出そうとする姿勢が見られることが明らかになった。
著者
深見 聡 高木 香織
出版者
長崎大学
雑誌
地域環境研究 : 環境教育研究マネジメントセンター年報 (ISSN:1883373X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.27-38, 2013-06-15

In the present century, a new form of tourism, which is a landing-type tourism (optional tour) in contrast with a departing-type tourism, has been attracting attention. The landing-type tourism is that local communities take the initiative in using local resources as tourist resources, which is also regarded as one of the effective approaches for disaster recovery. In July 2012, the area of the Hoshino Village, Yame, Fukuoka Prefecture, sustained significant damage caused by the heavy rains in Northern Kyushu. Accordingly, the author conducted a questionnaire survey targeting the residents of the Hoshino Village, who experienced the heavy rains, with an aim to understand how they see the current issues of their local communities and how they think about the possibilities of realizing the landing-type tourism. Based on the acknowledgement, the author advances discussions with the goal of determining the ways of tourism in the village in the future.Findings from the questionnaires reveal that the residents of the village are concerned about the village's future as a tourism destination, after suffering from the disaster. In addition, as for the changes in the consciousness of residents, there is also a positive impact, as they rediscover the resources for tourism.From these findings, it is believed that the landing-type tourism will allow the residents of the Hoshino Village to rediscover their local areas and as a result, it revitalizes local communities, leading to achieve the disaster recovery.