著者
吉野 政治 YOSHINO Masaharu
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大學學術研究年報 = Doshisha Women's College of Liberal Arts annual reports of studies (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.170(11)-160(21), 2010-12-25

西洋では太陽中心説あるいはコペルニクス説と呼ばれるものを東洋では地動説と呼ぶ。この名には、語の創始者である蘭学者志筑忠雄の、陽である天は動き、陰である地は不動であるとする陰陽論の考え方を完全には克服できなかった個人的思想が反映されている。彼は動不動の相対論を展開しつつ、宗学の特徴である二つの主張西洋の新説は早く東洋でも説かれていたこと、また東洋哲学は西洋科学より優れていることを繰り返している。既に宗学を克服した我々が地動説という語を使用しているのは、一度定着した言葉は容易に変えることはできないという言葉の保守性によるのである。
著者
諸井 克英 徳光 祐衣 板垣 美穂
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大学学術研究年報 = Annual reports of studies (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
no.67, pp.69-78, 2016

The present study re-examined the factor structure of paranormal beliefs and explored the relationship between those beliefs and ordinary thinking styles in female undergraduates. The Paranormal Beliefs Scale (Moroi et al., 2014), the Attributional Complexity Scale(Fletcher et al., 1986; Moroi, 2000), and the Orientation toward the Critical Thinking Scale(Hirooka, et al., 2000; 2001) were administered to female undergraduates (N=468). The factor analyses(principal factor method with promax rotations) were executed for those scales. Five factors for paranormal beliefs were extracted: belief in augury, belief in unidentified objects, belief in the soul, belief in preternatural power, positive attitude toward science. According to a series of regression analyses(stepwise method), paranormal beliefs were significantly determined by ordinary thinking styles. Interestingly, contrary to prediction, in several cases, active thinking strengthened paranormal beliefs. The significance of research in paranormal beliefs from the point of view of ordinary thinking styles.論文
著者
吉海 直人
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大学学術研究年報 = Annual reports of studies (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
no.67, pp.96-90, 2016

同志社の歌人として有名な池袋清風の短冊を五十葉以上入手した。その紹介を兼ねて、短冊に記された和歌及び詞書から知りうる清風の人生の一齣、並びに同志社関係のできごとなどについていささか報告する次第である。研究ノート
著者
吉海 直人
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大学学術研究年報 (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
no.65, pp.80-75, 2014

新島八重の研究において、八重自作の和歌は彼女の心情を探る上でも重要な資料だと思われる。そこで現在知られている八重の和歌をすべて網羅し、それを詠作年代順に並べてみた。その上で、一首毎に和歌の内容を検討してみた。その結果、若い山本八重時代の和歌がないこと、もっとも早い歌は鶴ヶ城開城に際して詠まれた「明日の夜は」であることがわかった。これは唯一、川崎八重時代の和歌である。その後、新島襄と結婚した後はほとんど和歌を詠んでおらず、襄が亡くなった後、堰を切ったように和歌を詠んでいることが明らかになった。また晩年には会津若松に関する和歌が増加しており、さらに八重自身の人生の節目に詠まれた和歌も少なくないことがわかった。論文 (Article)
著者
小林 賢章
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大学学術研究年報 (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
no.62, pp.220-213, 2011

論文 (Article)
著者
吉海 直人 Yoshikai Naoto
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大學學術研究年報 = Doshisha Women's College of Liberal Arts annual reports of studies (ISSN:04180038)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.150(39)-142(47), 2017-12-26

いろはかるたの基礎資料として「教訓いろはたとゑ」を入手することができたので、その画像を影印で紹介し、資料として提供したい。ただし掲載されていることわざは、大半が「京いろは」とも「江戸いろは」とも異なっており、従来の分類では収まりきれないものである。その意味でも今後の分析・検討が期待される。
出版者
京田辺
雑誌
同志社看護 = Doshisha kango (ISSN:24240184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.29-37, 2016-03-31

目的:本報告は,認知症の人と家族の円滑な意思決定を支援する方法を探求するために,認知症の人の意思決定における介護支援専門員(以下,専門員)の支援状況と課題を文献から検討した。 方法:文献選定には医学中央雑誌Web版およびCiNii Artclesを用い,キーワードを「介護支援専門員」「認知症」「意思(意志)決定」「居宅介護支援」とした。該当した文献から会議録,総説・解説,重複したものを除き,その中から専門員が行う認知症の人の意思決定支援に関する文献8 件を選定し,ハンドサーチした3 件と合わせ,合計11 件を分析対象とした。 結果:11 件の文献を類似性に従って分類すると,認知症の人に対する説明・同意とその影響を検討した文献,認知症の人への支援から意思決定に言及した文献,高齢者の意思決定支援に関する文献,困難事例の検討から意思決定について言及した文献の4 つに分類された。これらの文献から,認知症の人の意思決定における専門員の支援状況として,意思決定の前提である情報の適切な提供が,認知症の人に対して充分行われているとは言えず,意思決定には家族の意向が優先されやすい現状にあることが明らかになった。また,専門員が行う居宅介護支援を困難にする要因として,家族間での意向の不一致や本人のサービス拒否に関する記述が多く,支援が困難になる状況には意思決定に関する問題が複雑に絡んでいることが示唆された。 考察:認知症の人に対する意思決定支援に焦点を絞った調査は少なく,居宅介護支援の中での困難事例を検討している文献が多くみられた。意向の不一致や,その調整の困難などの意思決定に関する問題には,認知能力・判断力の低下の問題が潜んでいるが,そこに限局した調査がほとんどみられない。今後は認知症の人とその家族の意思決定に関して,専門員がどのように調整を行い介入しているかの詳細な検討を行っていく必要がある。資料
出版者
京田辺
雑誌
同志社看護 = Doshisha kango (ISSN:24240184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.19-28, 2016-03-31

Purpose:This study was conducted to clarify childcare stressors, cognitive assessment and coping characteristics among primapara women in a state of strong stress reactions at 4 weeks postpartum. Method:A questionnaire survey was conducted targeted at 70 primapara women at 1 and 4 weeks postpartum.The contents of the survey consisted of the Childcare Stressor Scale, Cognitive Appraisal Rating Scale, Coping Scale and Public Health Research Foundation Stress Check List Short Form (PHRF-SCL-SF). Results:A cluster analysis of the PHRF-SCL-SF was conducted at 1 week postpartum targeted at 27 women categorized as a high stress reaction group.These subjects consisted of 12 women (44.4%) of a persistent stress group who were categorized as the high stress reaction group at both 1 week and 4 weeks postpartum, and 15 women (55.6%) of a diminished stress reaction group who were categorized as the high stress reaction group at 1 week postpartum but categorized as a low stress reaction group at week 4 postpartum.The Mann-Whitney U test was performed using these two groups as independent variables and using subscale scores of the Childhood Stressor Scale, Cognitive Appraisal Rating Scale and Coping Scale as dependent variables.Among childcare stressors, the persistent stress group demonstrated high scores for "decreased sense of effectiveness as parent", "inadequate childcare knowledge and skills" and "sense of constraint due to childcare".Those subjects who felt a high level of stress attributable to their baby crying at night or after feeding consisted of 6 subjects( 50.0%) in the persistent stress group and 2 subjects (13.3%) in the diminished stress group, and cognitive assessment scores were higher for "assessed as threatening" and lower for "controllability" among the persistent stress group.There were no significant differences observed with respect to coping. Discussion:The characteristics of childcare stressors and cognitive assessment among primapara women in whom high stress reactions persisted at week 4 postpartum were able to be identified.These were thought to be attributable to a sense of confusion and things not going as expected with respect to feeding and childcare they experienced for the first time as a result of being first-time mothers, as well as being forced to a lead a lifestyle in an environment that subjects them to restrictions such as a lack of recreational activities.In order to prevent this, it was suggested to be important for nursing professionals to provide specific guidance to first-time mothers in the areas of childcare knowledge and skills while focusing on the time from pregnancy to childrearing, as well as make active use of telephone visitations and two-week checkups after birth to validate their behavior and emotions as mothers while also promoting a sense of success and achievement. 目的:産後4週間においてストレス反応が強い状態にある初産婦の育児ストレッサー,認知的評価,コーピングの特徴を明らかにする。 方法:初産婦70名を対象に産後1週と4週に質問紙調査を実施した。調査内容は,育児ストレッサー尺度,認知的評価測定尺度,コーピング尺度,Public Health Research Foundation Stress Check List Short Form (PHRF-SCL-SF) であった。 結果:産後1週のPHRF-SCL-SF のクラスタ分析によりストレス反応が高群に分類された27名を分析対象とした。産後1週と4週ともに高群に属した持続群12名 (44.4%),産後1週は高群,4週は低群に属したストレス軽減群15名(55.6%)であった。この2 群を独立変数,4週の育児ストレッサー尺度,認知的評価測定尺度,コーピング尺度の下位尺度点を従属変数とし Mann-Whitney のU検定を行った。育児ストレッサーでは,「親としての効力感低下」「育児知識と技術不足」「育児による拘束感」で持続群の方が高得点であった。夜間や授乳後の児の啼泣をとてもストレスと感じる者は持続群6名(50.0%),軽減群2名(13.3%)であり,認知的評価の得点は,持続群の方が「脅威性の評価」で高く,「コントロール可能性」では低かった。コーピングでは有意差はなかった。 考察:産後4週間においてストレス反応が高い状態で持続する初産婦の育児ストレッサーや認知的評価の特徴が明らかにされた。これらは初産婦であるため初めて体験する授乳及び児の養育に対する戸惑いや思い通りにすすまないこと,外出の制限等限られた環境での生活を余儀なくされることに起因していると思われる。それらの予防には,看護職者は妊娠中から育児期を視野においた育児知識や技術の具体的な指導を行うこと,産後の電話訪問や2週間健診を活用し,母親の行動や感情を承認して成功体験や達成感の体感につなげることの重要性が示唆された。報告
著者
加藤 敦 三宅 えり子
出版者
京田辺
雑誌
同志社女子大学現代社会学会現代社会フォーラム = Journal of contemporary social studies (ISSN:21870780)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.20-34, 2021-03-31

小論は,自営業家庭に育った子女は起業家になりやすいか,親世代から受け継ぐ⽛資産⽜には何があるか,特に女性起業家にどのような影響をもたらすか,明らかにすることを目的としている。そこで,起業活動と自営業の家庭について人的資本,非人的資本の観点から理論的に検討し,自営業の家庭で育ったことと起業の関係,並びに自営業の家庭で育った起業家がどのような資産を受け継いでいるかについて⽛新規開業実態調査(特別調査)⽜の個票データを再集計し検討した。小論で明らかになったことは次の通りである。第1 に創業時20代,30代の起業家については,男性,女性のいずれも,また創業時40代の女性起業家について,有意に自営業家庭の比率が高い。また,女性起業家についてみると,創業時の年代が若くなるほど,両親のいずれかが自営業であった比率が高くなる。第2 に自営業の家庭の子女は,起業する際に有利に働く経済資産・社会資産を受け継いでいること,起業家精神の形成につながるハビトゥスが体化されていることを確認した。また小論にもとづき,自営業家庭で育つことが,起業する上で有利に働く点をまとめると次の通りである。第1 に,自営業で用いた土地,店舗,施設・設備等の経済資産を継承することである。第2 に,両親が事業を通じて得た人的ネットワークを活用し,取引先やその他協力者などにアクセスしやすいという社会資産を受け継ぐことである。第3 に生育期に自営業者の家庭で獲得された思考プロセス,自営業者に対する肯定的態度が,起業家精神を高める上で優位に働く可能性があることである。ただし,こうした優位性は若いほど働きやすいので,⽛鉄を熱いうちに打つ⽜支援策が重要である。