著者
トゥルビン アレクサンドル 竹村 豊
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.19-58, 2017

地理的近接性と共通経済利益と露日関係正常化への政治努力とは両国間の経済交流にポジティヴなダイナミズムを生み出すはずであり、日本海をまたぐ露日港湾間の船舶輸送量の増加にもつながるはずである。しかしながら、近年の成果は控えめなものにとどまり、急成長どころか、旧来の協力関係の維持すら難しいのが現状である。メディアや専門家の分析において、そのことは、主に、日本を含む諸外国の対露経済制裁とルーブルの下落に伴うロシア企業の購買力の低下によって説明されている。しかし、それだけが理由だろうか。東アジアでの露日間の貿易量に影響を与えている他の要因は何であろうか。本稿は、露日間の貿易と協力について海上交通の面で検討し、日本海をまたぐ両国港湾間の協力が現在抱えている問題と将来の展望を明らかにしようとするものである。
著者
根岸 洋 熊谷 星 北畑 有紀乃
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.63-72, 2021 (Released:2021-06-09)

2005 年に設立された国際教養大学竿燈会は、交換留学生も含むメンバーで秋田竿燈まつりに継続的に参加してきた学生団体である。ミネソタ州立大学秋田校の時代にも外国人の参加があったことから、竿燈は過去 20 年以上に渡って外国人を参加者として受け入れてきた伝統行事と言える。本論文は国際教養大学竿燈会に焦点をあて、外国からの交換留学生がどのような形で参加してきたかを明らかにすることを目的とする。まず秋田青年会議所と上亀之丁竿燈会からの聞き取り調査を通じて、同会と外部との関わりについて論じる。次に同会に在籍した学生(正規生)を分析対象としたアンケート調査と交換留学生の聞き取り調査を通じて、交換留学生の行事への参加形態や外部との交流の実態について検討する。最後に調査結果を踏まえて、今後の外国人参加のあり方について展望を述べる。
著者
阿部 邦子
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.43-56, 2020 (Released:2020-11-13)

この小論では、江戸後期『解体新書』の木版附図の下絵を任された秋田蘭画の絵師小田野直武による「扉絵」及び一部の図の引用元本とされるアントワープで出版された1568年版ワルエルダ『解剖書』、また当時の舶載書として唯一確認されている、秋田藩医稲見家伝来のワルエルダ『解剖書』本との関連を、同時期の関係文献を通して探り、書誌学、図像学の視点から、謎の解明にせまる。
著者
熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-7, 2018 (Released:2018-09-27)

我が国には43 ヶ所のジオパーク( 2017 年 10 月現在)が登録されている。ジオパークを有する地元自治体はジオパークを地域資源再認識の切り口として、またジオツーリズム促進による地域振興の目玉としてその運営を全面的に支援している。ただ、ジオパークは国の所管官庁を有さないほか、法的裏付けもない。 一方で 43 ヶ所のジオパークのうち 25 カ所が国立公園地域と重複しており、ジオパークの運営をめぐっては国立公園法の制約の中で実施されている。ただ、ジオパークと国立公園の指定・運営目的においては共通項も多く、相互補完的にそれぞれがその存在を 強化しつつ地域振興に接続させる取り組みも行われている。本稿では我が国のジオパークと国立公園の現状、そして両者が併存する公園における地域観光振興の課題と可能性について論じる。
著者
根岸 洋
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-57, 2020 (Released:2020-04-10)

2009 年1 月5 日にユネスコ世界遺産暫定一覧表に記載された「北海道・北東北を中心 とした縄文遺跡群」は、幾度かの推薦書素案の修正を踏まえて「北海道・北東北の縄文 遺跡群」として名称変更を行い、2019 年7 月30 日に開催された文化審議会世界文化遺 産部会において世界文化遺産推薦候補に選定された。この取り組みの当初から、日本列 島に存在した「縄文文化」そのものに顕著な普遍的価値があるならば、「北海道・北東北」 という地域にある遺跡群のみによってその価値を代表できるのかという疑問が指摘され てきた。本来「縄文文化」という用語は幾つかの考古学的文化から構成されるテクノコ ンプレックス概念であるため、世界遺産への推薦では縄文時代を通じて形成された「地 域文化圏」を単位とするのが望ましいし、この点について周知が図られなければならな い。本稿は、津軽海峡を挟んで長期間分布してきたこの「文化圏」が弥生時代前半期に も継続していたことを、詳細な遺跡地図を示すことで証明するものである。
著者
豊田 哲也
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.9-16, 2018 (Released:2018-09-27)

国境を超える移住と国内での移住は法的には異なっているけれども、既存の共同体に新たな構成員が加わるという点では共通している。皮肉にも、日本政府による外国人学生の受け入れの方が、地方自治体による他県学生の受け入れよりも積極的である。日本では国家のレベルでも地方のレベルでも人口動態が大きな変化の時代を迎えつつあり、既存の共同体が新たな構成員を真の仲間として受け入れることができるかは、今後、共同体のアイデンティティの問題として重要になっていくであろう。
著者
椙本 歩美
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.73-89, 2018 (Released:2018-10-29)

戦後73 年が経過し、戦争の記憶の継承が課題となっている。しかし戦争体験は、当事者にとって語り難いものであり、それゆえに語り手となることもまた難しい。秋田市には県内で唯一、戦争体験の語り部の会がある。本稿では、この語り部の会を設立した人物に焦点を当てる。小中学生時代を戦中・戦後に生きた設立者が語る戦争は、生活体験としての記憶であり、その中で学校教育や社会の矛盾について、子ども心に抱いた多くの疑問を語り手に訴えるものであった。この個人の経験が、その後の秋田市語り部の会の設立にも影響していると考えられる。設立者は戦争体験について、何を、誰に、なぜ語るのだろうか。秋田市語り部の会の設立者のオーラル・ヒストリーを通して、会の特徴や目的について理解を深めたい。
著者
豊田 哲也
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.63-72, 2018 (Released:2018-10-29)

8 世紀に秋田城は大和朝廷の実効支配の及ばない辺境地域に孤城として構築・維持された。その背景には、北方から来航する渤海使をそこで受け入れ、時には送還する必要性があったとの事情がある。渤海使の来航は不規則かつ予測不可能であったために、770 年にいったんは秋田城の廃止を決めたにもかかわらず10 年後に決定が撤回されるということも起きた。秋田城の存続が渤海使の来航に依存する状況は、大型船の建造技術の習得によって渤海使が訪日航路を北方迂回ルートから日本海横断ルートに変更する8 世紀末まで続く。それ以後、秋田城は外交使節の応接施設として性格を失い、外観すらも変えることになった。
著者
梅原 克彦
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-25, 2015-06-30 (Released:2018-04-27)

筆者が本学に着任した2012年1月当時、東南アジア諸国からの観光客誘致についての問題意識は、秋田県内でほとんど共有されていなかった。本稿は、「行動するシンクタンク」として設立された東アジア調査研究センターの一員として行った、東南アジア諸国とりわけタイからの観光客誘致に関する調査成果について整理、記録するとともに、その過程で明らかになった課題等について論じるものである。まず、観光客誘致のターゲットとしての東南アジアの観光市場と仙台市の先進事例を参考に、タイ、シンガポールで行った聞き取り調査成果を踏まえて、「ASEAN諸国との観光交流促進について」行った政策提言について論じる。次いで、タイからの観光客誘致に向けて実施され、筆者も参加したタイ商談会と、タイ旅行業協会による秋田調査について紹介する。また、これらの成果によって実現した本県知事によるトップ・セールス及び観光セミナーと、タイ国際航空チャーター便による東北一周ツアーについて論じる。最後に、今後の東北地方全体の広域連携を見据えて、「街道」コンセプトを全面に押し出したツアープラン等、幾つかの具体的提言を行う。
著者
名越 健郎
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.33-43, 2016

ロシア政府は2015年夏、北方領土問題で対日強硬姿勢を強め、15年で期限切れとなるクリール社会経済発展計画をさらに25年まで延長することを決めた。ロシアは西のクリミア半島と同様、北方領土の実効支配を強め、民族愛国主義高揚の手段に利用しているかにみえる。北方領土の情報収集は、短期間のビザなし渡航では難しく、国後、択捉両島で発行されている地元紙を読むのがデータ入手に有効な手段だ。四島は漁業、水産加工など開発潜在力は高いものの、自然環境、投資環境とも過酷で、開発の難易度が高い。ロシアは軍事目的もあって四島開発を重視しているが、汚職・腐敗も深刻で、住民の生活は厳しい。劣悪だった生活環境は政府の開発計画で改善されているものの、しょせんは公共投資による人工のミニバブルであり、公共投資が終了すると、島の経済は再び破たんしそうだ。地理的に近く、水産技術が高く、離島開発の経験豊富な日本にしか島の開発はできないだろう。
著者
梅原 克彦
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.11-25, 2015

筆者が本学に着任した2012年1月当時、東南アジア諸国からの観光客誘致についての問題意識は、秋田県内でほとんど共有されていなかった。本稿は、「行動するシンクタンク」として設立された東アジア調査研究センターの一員として行った、東南アジア諸国とりわけタイからの観光客誘致に関する調査成果について整理、記録するとともに、その過程で明らかになった課題等について論じるものである。まず、観光客誘致のターゲットとしての東南アジアの観光市場と仙台市の先進事例を参考に、タイ、シンガポールで行った聞き取り調査成果を踏まえて、「ASEAN諸国との観光交流促進について」行った政策提言について論じる。次いで、タイからの観光客誘致に向けて実施され、筆者も参加したタイ商談会と、タイ旅行業協会による秋田調査について紹介する。また、これらの成果によって実現した本県知事によるトップ・セールス及び観光セミナーと、タイ国際航空チャーター便による東北一周ツアーについて論じる。最後に、今後の東北地方全体の広域連携を見据えて、「街道」コンセプトを全面に押し出したツアープラン等、幾つかの具体的提言を行う。