- 著者
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豊田 哲也
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.4-26, 2013-03-30 (Released:2017-05-19)
- 被引用文献数
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1990年代以降わが国では世帯所得格差の急速な拡大が見られるが,世帯所得の地域間格差については実証研究が進んでいない.理論面では,地域間格差は累積的因果関係によって拡大するという主張と,市場の調整メカニズムによって収束するという見解が対立している.低所得地域から高所得地域への人口移動は,1人あたり所得の均衡化をもたらしたとしても,人口の地域的偏在を助長し経済規模の格差拡大を招くというディレンマが存在する.現実には,地域の所得水準はそれぞれに固有な地理的諸条件の結果であり,その空間的分布や時間的変化が具体的な地域の構造とどう結びついているかが重要である.本研究では,1993〜2008年住宅・土地統計調査のミクロデータを使用し,世帯規模,年齢構成及び物価水準を考慮した都道府県別世帯所得(中央値)の推定をおこなった.その結果,地理的な所得分布は首都圏を頂点に国土の中央部で高く周辺部で低いこと,日本全体で地域間格差はほとんど拡大していないが,順位には東海地方の上昇と近畿地方の下降など変動が見られることが示された.また,所得水準と人口社会増加率との間には正の相関があり,その関係は強まっていることから,低所得地域から高所得地域への人口移動が活発化していることが明らかになった.すなわち,世帯所得の地域間格差は拡大していないが,人口移動が経済規模の地域間格差を拡大していると言える.