著者
髙橋 葉子 丸山 一雄 根岸 洋一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.116-123, 2019-03-25 (Released:2019-06-25)
参考文献数
27

遺伝子・核酸医薬が臨床応用されるうえで、標的組織および標的細胞へのデリバリー技術の開発は重要課題である。近年、物理エネルギーのなかでも超音波を利用したデリバリーシステムはその安全性の高さから注目されており、ナノバブルやマイクロバブルを併用することで、造影効果のみならず薬物・遺伝子・核酸デリバリー効果の増強の可能性が示されている。筆者らは、超音波造影ガスを封入したリピッドバブルを開発し、種々の疾患モデルマウスを用いて遺伝子・核酸デリバリーツールとしての有用性を評価してきた。本稿では、超音波による診断と治療を融合したシステム(セラノスティクス)構築に向けた現状について概説するとともに、筆者らが開発したリピッドバブルによる遺伝子・核酸デリバリー効果とその治療への応用を紹介する。
著者
髙橋 葉子 濱野 展人 根岸 洋一
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.166-174, 2021-07-25 (Released:2021-10-25)
参考文献数
37

体外からの外部刺激に応答したドラッグデリバリーは、そのエネルギーの適用エリアにより、比較的容易に標的組織特異的デリバリーが可能となる。なかでも超音波エネルギーは、その安全性の高さから注目され、マイクロバブルやナノバブルを併用することで、超音波造影効果、薬物・遺伝子・核酸デリバリー効果の増強が可能とされている。筆者らは、リポソームに超音波造影ガスを封入したナノバブルを開発し、種々の疾患モデルに対する遺伝子・核酸デリバリーを試み、その有用性を評価してきた。本稿では、医療現場における超音波利用の現状を概説するとともに、超音波を利用した薬物・遺伝子・核酸デリバリーについて、筆者らの研究成果をまじえ紹介する。
著者
根岸 洋・長谷川 綾子
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.65-79, 2019 (Released:2019-06-28)

1973 年に重要無形民俗文化財に登録された「男鹿のナマハゲ」は、秋田県を代表する観光資源であり、2018 年に「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコの無形文化遺産に選ばれ世界に知られることになった。反面、若者によって担われてきた本行事は少子高齢化による後継者不足に悩まされており、観光客や外国人等の外部参加者の受け入れを始めた地区もある。本稿では、男鹿半島各地の集落に伝わる伝統行事であったナマハゲが、観光資源としての「なまはげ」に変容してきた経緯を振り返る。他方、昭和・平成に実施されたアンケート調査の比較を通じて、伝統行事としての諸要素が時代の要請に応じて変容したことを論じる。外国人留学生も受け入れている椿・双六での聞き取り調査を紹介し、無形文化遺産としての真実性を何に求めるべきか考察を行う。
著者
根岸 洋・上野 祐衣・熊谷 嘉隆
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.111-120, 2020 (Released:2020-11-13)

江戸時代の「ねぶり流し行事」を原型とする「秋田の竿灯」は、1980年に国の重要無形民俗文化財に指定された文化遺産である。1931年に発足した秋田市竿灯会は妙技会を初めて開催し、その後「竿燈」の用語が広く用いられるようになった。実行委員会が主催する「竿燈まつり」となったのは1965年以降である。現在行事の後継者不足は顕在化していないものの、今後の少子高齢化が予想されることから、若年層確保のための取り組みが幾つか行われている。また本行事に外国人参加についてのガイドラインは設置されておらず、国際教養大学およびその前身であるミネソタ州立大学秋田校の竿燈会という組織単位で、外国人留学生が継続的に参加している。他方、各町内会の竿燈会のメンバーになるためには町内に一定期間住むことが求められるため、滞在期間が限られる留学生にとってはハードルが高いのが現状である。
著者
根岸 洋
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-57, 2020

2009 年1 月5 日にユネスコ世界遺産暫定一覧表に記載された「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」は、幾度かの推薦書素案の修正を踏まえて「北海道・北東北の縄文遺跡群」として名称変更を行い、2019 年7 月30 日に開催された文化審議会世界文化遺産部会において世界文化遺産推薦候補に選定された。この取り組みの当初から、日本列島に存在した「縄文文化」そのものに顕著な普遍的価値があるならば、「北海道・北東北」という地域にある遺跡群のみによってその価値を代表できるのかという疑問が指摘されてきた。本来「縄文文化」という用語は幾つかの考古学的文化から構成されるテクノコンプレックス概念であるため、世界遺産への推薦では縄文時代を通じて形成された「地域文化圏」を単位とするのが望ましいし、この点について周知が図られなければならない。本稿は、津軽海峡を挟んで長期間分布してきたこの「文化圏」が弥生時代前半期にも継続していたことを、詳細な遺跡地図を示すことで証明するものである。
著者
根岸 洋一 高橋(遠藤) 葉子 鈴木 亮 丸山 一雄 新槇 幸彦
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.130, no.11, pp.1489-1496, 2010-11-01 (Released:2010-11-01)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

Skeletal muscle is a promising target tissue for the gene therapy of both muscle and non-muscle disorders. Gene transfer into muscle tissue can produce a variety of physiologically active proteins and may ultimately be applied to treatment of many diseases. A variety of methods have been studied to transfer genes into skeletal muscle, including viral and non-viral vectors. Recently, we have developed the polyethyleneglycol (PEG)-modified liposomes entrapping echo-contrast gas known as ultrasound (US) imaging gas. We have called the liposomes “Bubble liposomes” (BLs). We have further demonstrated that US-mediated eruption of BLs loaded with naked plasmid-DNA is a feasible and efficient technique for gene delivery. In this study, to assess the feasibility and the effectiveness of BLs for the gene therapy of disorders, we tried to deliver therapeutic genes (anti-inflammatory cytokine; IL-10 or anti-angiogenic factor; hK1-5) into skeletal muscles of arthritis or tumor model mice by the gene delivery system with BLs and US exposure. As a result, their disease symptom was efficiently improved by the systemic secretion of therapeutic proteins. Thus, this US-mediated BLs technique for muscle gene transfer may provide an effective noninvasive method for arthritis or cancer gene therapy in clinical use. In addition, it may be applicable for the gene therapy of other non-muscle and muscle disorders.
著者
根岸 洋 熊谷 星 北畑 有紀乃
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.63-72, 2021 (Released:2021-06-09)

2005 年に設立された国際教養大学竿燈会は、交換留学生も含むメンバーで秋田竿燈まつりに継続的に参加してきた学生団体である。ミネソタ州立大学秋田校の時代にも外国人の参加があったことから、竿燈は過去 20 年以上に渡って外国人を参加者として受け入れてきた伝統行事と言える。本論文は国際教養大学竿燈会に焦点をあて、外国からの交換留学生がどのような形で参加してきたかを明らかにすることを目的とする。まず秋田青年会議所と上亀之丁竿燈会からの聞き取り調査を通じて、同会と外部との関わりについて論じる。次に同会に在籍した学生(正規生)を分析対象としたアンケート調査と交換留学生の聞き取り調査を通じて、交換留学生の行事への参加形態や外部との交流の実態について検討する。最後に調査結果を踏まえて、今後の外国人参加のあり方について展望を述べる。
著者
根岸 洋
出版者
公立大学法人 国際教養大学 アジア地域研究連携機構
雑誌
国際教養大学 アジア地域研究連携機構研究紀要 (ISSN:21895554)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.37-57, 2020 (Released:2020-04-10)

2009 年1 月5 日にユネスコ世界遺産暫定一覧表に記載された「北海道・北東北を中心 とした縄文遺跡群」は、幾度かの推薦書素案の修正を踏まえて「北海道・北東北の縄文 遺跡群」として名称変更を行い、2019 年7 月30 日に開催された文化審議会世界文化遺 産部会において世界文化遺産推薦候補に選定された。この取り組みの当初から、日本列 島に存在した「縄文文化」そのものに顕著な普遍的価値があるならば、「北海道・北東北」 という地域にある遺跡群のみによってその価値を代表できるのかという疑問が指摘され てきた。本来「縄文文化」という用語は幾つかの考古学的文化から構成されるテクノコ ンプレックス概念であるため、世界遺産への推薦では縄文時代を通じて形成された「地 域文化圏」を単位とするのが望ましいし、この点について周知が図られなければならな い。本稿は、津軽海峡を挟んで長期間分布してきたこの「文化圏」が弥生時代前半期に も継続していたことを、詳細な遺跡地図を示すことで証明するものである。
著者
根岸 洋一 丸山 一雄 高木 教夫 新槇 幸彦 高橋 葉子 野水 基義 田野中 浩一 丸ノ内 徹郎 片桐 文彦 小俣 大樹 濱野 展人 石井 優子 小栗 由貴子 塩野 瞳 秋山 早希 間山 彩 菊池 太希
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では,微小気泡(ナノバブル) の一つとして開発してきた超音波造影ガス封入リポソームにデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療用アンチセンスモルフォリノ(PMO)を搭載させたバブルリポソーム(BL)の開発に成功した.さらにBLと超音波照射との併用システムによりDMDモデルマウス骨格筋や心筋へのPMO送達・導入を行うことで,超音波照射部位におけるエクソンスキッピング誘導に伴う顕著なジストロフィンタンパク質の発現回復が可能となることを明らかとした.よって本システムは,DMDの核酸治療において全身筋組織への効率的PMO送達・導入とDMD治療における有用な一手段となると期待された.