- 著者
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山田 明
- 出版者
- 共栄学園短期大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1988
身体障害者療護施設における介護ー被介護場面の観察調査をした結果以下のような諸点が研究成果として確認された。1)身体介護場面における精神的(心理的)側面の重要性介護を要する重度障害者に対して起床、摂食、排泄、入浴、その他の介護が行なわれているが、身体的介護としてだけで実行されている場合が少なからずある。食事介助場面を例にとると、食事をただ口に運ぶだけになっていて、楽しい食事の雰囲気づくりなどに留意されていない場合が過半であった。介護福祉士の養成教育でも事故防止などのための技術は学ぶが、被介護者との介護場面におけるあたたかい精神的関係づくりの方法などを学ばせていない。介護技術の最重要点のひとつがここにあるだけにないがしろにできない問題であろう。2)言語活動過程における指示・抑圧的特徴介護職員が介護場面で発する言葉は「早くしなさい」「がんばって食べて」などの指示的言語であったり、「〜しないで」などの禁止、抑止言語である場合が多い。その反対に「そうね,いたいんだよね」などの共感語は少ない。言葉を出す声のト-ンも冷たくて固いものが多く、やわらかくてあたたかいものが少ない。これは被介護者の心理的活力を減少させるものとなっている。3)非言語活動としての身体表情の非共感的特徴介護者の被介護者を見るまなざしも指示・抑圧的であったり非共感的である場合が多い。身体の表情、動作の表情も全体に固く、非受容的、非共感的である場合が多い。パ-ソナルスペ-スは大きくなりがちで、意識的なアダチメントやアイコンタクトも少ない。パ-ソナルな近親性に乏しい。これが被介護者の孤立感、無力感をつよめていることが考えられる。