著者
木下 健 田中 宏樹 キノシタ ケン タナカ ヒロキ Kinoshita Ken Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.15-25, 2015-03

論説(Article)本稿では、2012年8月に実施された「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の効力について、計量評価を行っている。具体的には、Fishkin et. al.(2006)で提示されたDP評価の4基準に照らして、エネルギーDPがそれらの基準をどこまでクリアできていたかを検証する。実証分析の結果、討議参加者の代表性の確保に関しては、電話アンケート調査とエネルギーDP参加者の選好が異なっていたことから、記述的代表性が確保されていないことを明らかにした。有意な意見態度の変容に関しては、χ2検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオに関して、有意な意見態度の変容が起こったことを示した。また、討議倫理の保持に関しては、Somersのd検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオにおいて、集団分極化が発生していることを示した。最後に、討議合理性の発揮に関しては、順位相関分析より、コストと原発シナリオが相関関係を示すように変化したことから、討議合理性が発揮されたと判断した。集団分極化が見られたものの、有意に意見態度が変容し、討議合理性を発揮したといえることから、熟慮された公共的判断を体現する熟議的代表性が一定程度確保されていたといえよう。
著者
小田切 康彦 Yasuhiko Kotagiri
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2016-02

本稿では、地方議会において市民との協働という潮流がどのように捉えられてきたのか、議会会議録を手掛かりにその言説を分析した。テキストマイニング等の手法を用いて、第1に、協働言説のトレンドを分析した。結果、協働関連語句の頻出傾向は、新聞記事等における頻出傾向と類似していることが明らかになった。第2に、協働関連語句の共起ネットワーク分析を行った結果、協働の理念・実践は議会において肯定的に捉えられる傾向にあることがわかった。20周年記念特集号
著者
木下 健 キノシタ ケン Kinoshita Ken
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-30, 2015-09

論説(Article)本稿の目的は、政治家とインタビュアーのコミュニケーションにおける相互作用の実態をケース・スタディにより明らかにすることにある。政治討論番組は、視聴者にわかり易く政治状況を伝えるとともに、マスコミが政治家に対して直接質問することによって、政府や政党を追及することに意義があるといえる。本稿においては、テレビの政治討論番組がインタビューを行う過程において、出演する政治家に対して、いかなる質問を行い、どのような回答を得ているのかを明らかにする。その際、司会者はどのような争点を質問し、出演する政治家はその質問に対して、いかに答えているのか、質問を回避しているのかを明らかにする。分析の結果、以下の3点を明らかにした。第1に、政治討論番組において、議題はテレビ局及び司会者が設定するため、唐突に質問の議題が大きく転換する点が存在することである。第2に、質問にはフェイスへの脅威が存在する場合があり、脅威には程度の違いが存在していることである。第3に、議題、フェイスへの脅威、及びクローズドエンドクエスチョンかどうかという質問の形式によって回答が明確に答えられるかが変わりうることが明らかとなった。
著者
阪本 崇
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策研究 (ISSN:18818625)
巻号頁・発行日
no.2, pp.95-110, 2008-03

文化経済学の最も大きな理論的貢献である「ボーモルの病」は、近年盛んになっている公共性に関する議論に対してもインパクトを与えるものである。技術的性格の故に生産性の上昇が望めない財の価格が市場で高騰すると、消費者の貨幣錯覚のために需要が過度に縮小する可能性がある。この場合、とくに解決が困難なのは、その生産費の高さが問題視され、公共部門の介入が支持されない可能性があるということである。問題の根本的な解決のためには、人々が「ボーモルの病」について正確に理解することが必要である。特集 【文化政策】
著者
本多 幸子
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-90, 2012-03

研究ノート(Note)学説史の中で公共空間といえば、やはりユルゲン・ハーバーマスの公共圏(Öffentlichkeit)を避けて通るわけにはいかない。本論は、ハーバーマスの出世作とも言える『公共性の構造転換』が、英訳ではpublic sphere となっていることに着目し、Öffentlichkeit 概念が包摂する空間性を問うことから出発し、ハーバーマス公共圏論の基本構図に迫った。本論は、まず、ハーバーマスのÖffentlichkeit 概念の特徴について再確認する作業を行い、次いで、古代ギリシアのポリス以降の市民的公共圏の4つの位相を、ハーバーマスのÖffentlichkeit 概念に即しつつ、検討する。
著者
黒澤 寛己 横山 勝彦
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.115-118, 2010-09

研究活動報告(Research and Activity Report)本稿は、2009年12月25日~28日にかけて、日本広報学会「スポーツ広報とソーシャル・キャピタル研究会」の会員5名 が中国上海市を訪問して、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)形成に果たすスポーツの事例を調査した報告である。今回の訪問では、在留邦人を含む多くの外国人が駐在し、複雑な多民族・多国籍文化を形成している国際都市上海を事例に、スポーツを活用したソーシャル・キャピタルの構築について、美津濃(中国)体育用品有限公司・上海石橋水産品有限公司 の各企業を中心とした支援体制のもと調査を行った。スポーツの「強化」と「普及」の両面を調べるため、国家のスポーツエリート養成施設「東方緑舟体育訓練基地」と日本人駐在員を中心としたボランティアによる「龍心館柔道場」を訪問先として選定した。