著者
今里 滋 Shigeru Imasato
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.15-29, 2020-03

2006年度から発足した同志社大学大学院総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション・コースにおいて複数の大学院生が獣害対策を研究課題としてきた。本論は、その課題の背景となったわが国の獣害対策、そしてその手段としての狩猟について、歴史的経緯、制度の変遷、政策およびガバナンス面での現代的課題を、自ら狩猟・有害獣駆除を行ってきた筆者の経験を踏まえて、考察したものである。井上恒男教授退職記念号退職記念論文(Article in commemoration of the retirement of Professor Tsuneo Inoue)
著者
武蔵 勝宏 Katsuhiro Musashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-170, 2020-03

日本の国会は、政府に議事運営権や審議促進手続に関する権限が付与されておらず、凝集性の低い自民党内で造反を回避するためには、事前の調整で政府と与党を一体化する必要性がある。そのため、自民党政権では与党による事前審査が行われ、国会提出の段階から党議拘束がかけられてきた。本稿は、こうした事前審査制に代えて、閣法草案を国会の委員会において予備審査を行う方法を提案し、国会審議の形骸化の解消に取り組むことを提案する。井上恒男教授退職記念号論説(Article)
著者
北川 雄也 キタガワ ユウヤ Kitagawa Yuya
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.387-405, 2017-10

今川晃教授追悼号研究ノート(博士資格論文)(Note (Doctoral qualification these))本稿の目的は、負の政策効果を把握するためにはどのような方策が有効であるかを理論的に検討することである。具体的には、行政による政策効果把握が有効であるのか、それとも行政以外の主体による政策効果把握の成果を活用した方が有効であるのかを検討する。その際、負の政策効果が政策対象者の生活状況ないしは生命を脅かしうるほど大きな影響を与える、障害者政策を理論枠組みの適用対象にあてはめて議論を進める。
著者
大竹 恵子 オオタケ ケイコ Otake Keiko
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-52, 2016-09

研究ノート(Note)近年、日本では高齢化にともない、介護サービス分野における人材確保が緊急の課題となっている。本論文では、中心的役割を担うことが予想される介護福祉士に着目し、介護分野における就業率等の就業状況や、介護分野での就業に関する意識について、既存の統計データや調査を基に現状と課題を考察している。その結果、今後の研究課題として、ワーク・ライフ・バランスに関する要因、介護職場への適切なイメージにつながる教育段階での取り組み、就業継続を促す現場での経験、専門性の発揮の有無による就業継続の違いなどについて検討していく必要があると考えられる。
著者
久保 真澄 北 寿郎 クボ マスミ キタ トシロウ Kubo Masumi Kita Toshiro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.261-276, 2017-10

今川晃教授追悼号論説(Article)PDPを生産しているメーカーは存在しておらず、PDPは市場からは完全に姿を消している。ディスプレイデバイス業界における間違った産業予測により、多くの日本企業が短命に終わるPDP産業に巨額の投資を行った。技術者たちへのインタビューにより、「技術者の集団思考的判断」が技術領域における限界予測へ及ぼす影響について明らかにした。技術者たち特有の「専門職共同体における集団思考」の存在についての可能性を確認した。それは、非専門職共同体における集団思考とは全く異なるものである。The manufacturer producing PDP doesn't exist, and PDP has disappeared perfectly from a market. Many Japanese companies did a huge investment in the PDP industry which doesn't have a long life span by a wrong industrial prediction in display device industry. By an interview to engineers, I made it clear about the influence of "engineer's groupthink-like judgement" on predictions of limits in the technological field. A possibility about the existence of "groupthink in a professional collective" peculiar to engineers was confirmed. That's completely different from groupthink in non-professional collective.
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-14, 2020-03

社会福祉行政研究に関係するミクロ権力論には、社会学権力論と行政学的権力論の二つの流れがある。この論文では、行政学的権力論を切り開いたリプスキーのストリート・レベルの官僚制(SLB)論を大きく取り上げ、社会福祉行政研究におけるその適用可能性について検討している。また、SLBの在り方が現代において変化した要因についても考察している。それは行政への批判的態度の増大、ガバナンス改革、福祉専門職の行政への進出といったものである。井上恒男教授退職記念号退職記念論文(Article in commemoration of the retirement of Professor Tsuneo Inoue)
著者
武蔵 勝宏 ムサシ カツヒロ Musashi Katsuhiro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.25-41, 2018-08

論説(Article)本論文は、日本の国政調査権の制度とその運用を英仏独の各国と比較し、その現状と問題点に対する解決策を検討するものである。日本の国政調査権は、少数者調査権が認められておらず、調査報告書の作成も行われていない。また、参考人制度に証人喚問が代替され、資料や記録の提出も守秘義務を理由に行政側が応じない事例もある。衆参両院の行政監視委員会や予備的調査制度も、近年不活発化している。以上の問題点を踏まえ、全会一致制の見直しや、委員長職の野党への配分、予備的調査要求の人数要件の引き下げなどを提言する。
著者
清水 習 シミズ シュウ Shimizu Shu
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.27-40, 2017-03

論説(Article)日本社会科学研究において、談話分析とその理論の認知度は依然として低く、「談話分析」と「言説分析」が同義語として捉えられるような誤解がある。この問題に対し、本稿では、談話分析とその理論誕生の背景を整理し、また、英国財政危機談話の例をもとに分析手法とその応用を明確にすることで、その研究視座と分析射程を思想史的に明らかにした。
著者
小田切 康彦 コタギリ ヤスヒコ Kotagiri Yasuhiko
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2016-02

20周年記念特集号本稿では、地方議会において市民との協働という潮流がどのように捉えられてきたのか、議会会議録を手掛かりにその言説を分析した。テキストマイニング等の手法を用いて、第1に、協働言説のトレンドを分析した。結果、協働関連語句の頻出傾向は、新聞記事等における頻出傾向と類似していることが明らかになった。第2に、協働関連語句の共起ネットワーク分析を行った結果、協働の理念・実践は議会において肯定的に捉えられる傾向にあることがわかった。
著者
倉林 陽 クラバヤシ アキラ Kurabayashi Akira
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.35-51, 2016-03

論説(Article)米国のICT業界において、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を活用したベンチャー企業との資本提携や、ベンチャー企業の買収によるR&Dの外部化は、事業開発上の標準的な手法として定着している。日本に於いても、近年大手企業によるCVCの設立が続くが、未だ米国程の成功を収めることのできた事例は少ない。本稿では、米国の先行研究を基にCVCの成功要因を抽出すると共に、日本のCVCの組織とパフォーマンスに関する実態調査を行い、米国CVCの成功要因が日本でも有効であるかどうかについて、分析を行った。In the US, IT companies used Open Innovation through Corporate Venture Capital (CVC) and M&A as a standard practice of corporate development to remain at the forefront of innovation. However in Japan, the number of successful CVC practices continues to be limited despite growing number of Japanese corporations launching a CVC practice. To explain this difference, this thesis first performed comprehensive review of US past researches regarding US CVC and sort out key success factors. Then, conducted a survey of Japanese CVC's organization profile and investment performance and undertook a statistical analysis to investigate whether US CVC's key success factors works in Japan.
著者
橋本 誠志 Satoshi Hashimoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.11-18, 2016-02

2015年9月3日に成立した個人情報保護法改正では,① 個人情報保護委員会の新設に伴う権限の一元化,②個人情報の第三者提供に関するトレーサビリティの確保,③不正な利益を図る目的での個人情報データベース等提供罪の新設,④国境を越えた適用に関する規定の整備等が盛り込まれた.次に問題となるのは日々,インターネット上でなされている膨大な量のデータ流通を確保しながら攻撃が発生した際のダメージを如何にコントロールするかという点である.本研究ではインターネット上で流通するパーソナルデータへの攻撃発生やデータ流出インシデントが発生した際に消費者/企業が受けるダメージのミクロレベルにおけるコントロールを行う上でデータの流通速度と手続のスピードに圧倒的差異があることに鑑み,手続実施中の情報の二次流通による被害を軽減するために紛争解決制度が果たすべき役割と機関設置例を検討する.20周年記念特集号
著者
河井 紗央里 新川 達郎 カワイ サオリ ニイカワ タツロウ Kawai Saori Niikawa Tatsuro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-76, 2019-08

研究ノート(一般)(Note)本研究では、公共政策系の学部を有する大学のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを精査し、両ポリシーとその実現状況に見られる公共政策学教育の共通構造を明らかにする。各大学に関する調査の結果、身につける能力(学習成果)として、「問題発見・課題(問題)解決」、「政策的な思考」、「コミュニケーション力」が共通構造の要素として見出された。また、「学際性・総合性」、「グローバル(国際)、地域」、「協働」といった要素がカリキュラム編成上の特徴に見られた。最後に、「少人数教育」、「フィールドワーク」が具体的な教育方法であることが明らかになった。
著者
田中 宏樹 タナカ ヒロキ Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.31-37, 2019-03

論説(Article)地方公務員給与の規定要因を検証した国内の実証分析として、太田(2013)、石田(2015)一瀬(2017)等があるが、対象職種が一般行政職あるいは警察職であり、教員は対象に含まれていない。加えて、給与水準に労働組合が与える影響は小さくないと考えられるが、石田(2015)を除いて、給与と組合との関わりに焦点を当てた研究は乏しい。本研究では、公立学校の教員給与の規定要因について実証分析する。特に、都道府県毎に異なる組合活動に焦点を当て、それが給与水準に影響を与えているか否かを、都道府県パネルデータをもとに検証する。
著者
片山 明久 カタヤマ アキヒサ Katayama Akihisa
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.19-26, 2016-02

20周年記念特集号本稿では、コンテンツツーリズムが情報社会の進展という社会変化に伴って興った新たな観光の潮流と位置付けられること、また観光における「消費者」と「生産者」の二項対立という構図を転換させたパラダイムシフトであることを示した。そしてコンテンツツーリズムにおいて旅行者が真に求めるものを「ものがたり創造」という言葉で提起し、その目的が修学旅行など他の観光形態においても現出し得るという可能性を示した。
著者
木下 健 田中 宏樹 キノシタ ケン タナカ ヒロキ Kinoshita Ken Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.15-25, 2015-03

論説(Article)本稿では、2012年8月に実施された「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の効力について、計量評価を行っている。具体的には、Fishkin et. al.(2006)で提示されたDP評価の4基準に照らして、エネルギーDPがそれらの基準をどこまでクリアできていたかを検証する。実証分析の結果、討議参加者の代表性の確保に関しては、電話アンケート調査とエネルギーDP参加者の選好が異なっていたことから、記述的代表性が確保されていないことを明らかにした。有意な意見態度の変容に関しては、χ2検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオに関して、有意な意見態度の変容が起こったことを示した。また、討議倫理の保持に関しては、Somersのd検定の結果より、原発ゼロシナリオ及び原発20-25シナリオにおいて、集団分極化が発生していることを示した。最後に、討議合理性の発揮に関しては、順位相関分析より、コストと原発シナリオが相関関係を示すように変化したことから、討議合理性が発揮されたと判断した。集団分極化が見られたものの、有意に意見態度が変容し、討議合理性を発揮したといえることから、熟慮された公共的判断を体現する熟議的代表性が一定程度確保されていたといえよう。
著者
小田切 康彦 Yasuhiko Kotagiri
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.45-57, 2016-02

本稿では、地方議会において市民との協働という潮流がどのように捉えられてきたのか、議会会議録を手掛かりにその言説を分析した。テキストマイニング等の手法を用いて、第1に、協働言説のトレンドを分析した。結果、協働関連語句の頻出傾向は、新聞記事等における頻出傾向と類似していることが明らかになった。第2に、協働関連語句の共起ネットワーク分析を行った結果、協働の理念・実践は議会において肯定的に捉えられる傾向にあることがわかった。20周年記念特集号
著者
木下 健 キノシタ ケン Kinoshita Ken
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.17-30, 2015-09

論説(Article)本稿の目的は、政治家とインタビュアーのコミュニケーションにおける相互作用の実態をケース・スタディにより明らかにすることにある。政治討論番組は、視聴者にわかり易く政治状況を伝えるとともに、マスコミが政治家に対して直接質問することによって、政府や政党を追及することに意義があるといえる。本稿においては、テレビの政治討論番組がインタビューを行う過程において、出演する政治家に対して、いかなる質問を行い、どのような回答を得ているのかを明らかにする。その際、司会者はどのような争点を質問し、出演する政治家はその質問に対して、いかに答えているのか、質問を回避しているのかを明らかにする。分析の結果、以下の3点を明らかにした。第1に、政治討論番組において、議題はテレビ局及び司会者が設定するため、唐突に質問の議題が大きく転換する点が存在することである。第2に、質問にはフェイスへの脅威が存在する場合があり、脅威には程度の違いが存在していることである。第3に、議題、フェイスへの脅威、及びクローズドエンドクエスチョンかどうかという質問の形式によって回答が明確に答えられるかが変わりうることが明らかとなった。