著者
大田 衛 Mamoru Ota
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.53-65, 2023-03-01

本稿は、不特定多数の者に対して一般的に協力を求める行政指導(一般的行政指導)の機能とそのメカニズムを、法と経済学における「法の表出的機能」(expressive function of law)の理論を手掛かりに考察するものである。N人ゲームの数理モデルを用いた分析等を通じて、法的強制力や経済的インセンティブの裏付けを持たない一般的行政指導が、アクターの意思決定にどのように作用するのか、そして、いかなる条件の下で人々が行政指導に従うのかを解明する。
著者
富樫 耕介 Kosuke Togashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.143-157, 2021-02-15

シベリア抑留は、日ロ関係に横たわる重要な歴史問題だが、研究は長年進まず、近年活性化の兆しを見せているものの、抑留者の高齢化や死去で抑留経験の聴取は喫緊の課題になっている。本稿は、筆者の祖父・本山新一へのインタビュー聴取に基づいてシベリア抑留の「記憶」を「記録」する試みである。本稿では、1945年9月から4年間の抑留を記録対象とし、既存研究や資料に基づく事実の検証、あるいは抑留全体の議論と個人の経験を接合する作業に注力した。
著者
笠間 浩幸 Hiroyuki Kasama
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.115-129, 2018-08-10

「砂場」は、子どもの成長と発達に影響を与える重要な遊具である。だが、現代日本ではその評価が低く、特に公園における砂場の設置率は5割を切っている。また保育・教育の分野においても必ずしも良好な環境とはいえないところが多い。本研究では、このような砂場問題の根本的な原因のひとつとして「砂」の不適切性を指摘し、「適切な砂」の基準仮説を示すとともに、その検証を試みて砂場環境改善の方向性と意義を論じた。
著者
金田 重郎 Shigeo Kaneda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.21-45, 2012-03-15

要求分析では,母語を用いて仕様を記述する.Object 指向分析は要求分析の代表的な手法の一つであるが,ここでも,クラス名等には母語が使われる.本稿では,英語圏で生まれたObject 指向を利用するとき,日本語と英語の違いを考慮するべきことを問題提起する.具体的には,認知言語学の立場から,クラス図の構造は英語の5 つの基本文型そのものであることを示す.例えば,クラスとは可算名詞,メソッドは動作動詞,関連は状態動詞,Has-s 関係は第4 文型(S+V+O+O),Is-a 関係は第5 文型(S+V+O+C),である.これによって,GOFのデザインパタンの理解も容易になる.一方,日本語と英語の構造は大きく異なっている.日本語仕様からクラス図を描くことは,日英翻訳に等しいことを明らかにしている.更に,本論文では,日本語クラス図における「関連名」について,考察を加えている.そして,手島によって提案された概念データモデリングと関係モデルとの関係を論じている.
著者
奥野 耕平 Kohei Okuno
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-31, 2020-08-01

今日の文化財保護政策は、保存から積極的な観光活用へと転換している。しかし、これまで観光との観点からの文化財保護の意義に関する検討は不十分であった。本研究では、文化政策学的視座から柳田國男と宮本常一の民俗学的知見・思想を援用し、かつ批判的に継承することでその意義の再考を行った。文化観光を通じた文化財保護の意義とは、文化財の真正性と心意性を共に継承し続け、地域住民や後世の人々がより豊かに暮らせるまちにすることにある。
著者
橋本 誠志 Satoshi Hashimoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.11-18, 2016-02

2015年9月3日に成立した個人情報保護法改正では,① 個人情報保護委員会の新設に伴う権限の一元化,②個人情報の第三者提供に関するトレーサビリティの確保,③不正な利益を図る目的での個人情報データベース等提供罪の新設,④国境を越えた適用に関する規定の整備等が盛り込まれた.次に問題となるのは日々,インターネット上でなされている膨大な量のデータ流通を確保しながら攻撃が発生した際のダメージを如何にコントロールするかという点である.本研究ではインターネット上で流通するパーソナルデータへの攻撃発生やデータ流出インシデントが発生した際に消費者/企業が受けるダメージのミクロレベルにおけるコントロールを行う上でデータの流通速度と手続のスピードに圧倒的差異があることに鑑み,手続実施中の情報の二次流通による被害を軽減するために紛争解決制度が果たすべき役割と機関設置例を検討する.20周年記念特集号
著者
増田 聡 Satoru Masuda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.69-85, 2021-02-15

仙台で1999年に設立した(特非)まちづくり政策フォーラムは現在、コアメンバーの移動や転出、東日本大震災後の非営利セクターの変容などを経て、活動の停滞期にある。このような動きを踏まえて、NPO法制定後の法人動向を把握した上で、まちづくりNPOの特徴に関する先行研究の知見をまず整理する。次に、代表者の世代交代やミッションの継承等について、中小企業型の事業承継モデルの適用性を検討し、非営利性・公益性を有するNPO法人の事業承継の分析枠組みを提示する。
著者
北川 雄也 Yuya Kitagawa
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.143-155, 2020-03-01

本論文では、日本の府省において導入が進められているEBPMの特徴を整理したうえで、障害者政策においてもEBPMを適用可能であるか否かを検討した。その結果、日本の府省におけるEBPMは統計データの整備に重点が置かれており、障害者政策の分野では雇用分野で統計データ整備が進められている点が明らかとなった。しかし、対象者の個別性の要素に配慮した多量の情報を集める必要があり、統計データの整備はいまだ不十分である点を示した。
著者
内藤 正和 Masakazu Naito
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.121-136, 2019-08-01

現在、地方自治体におけるスポーツ施設整備政策をめぐっては賛否両論があり、その課題は、まちづくりに関する合意を形成する対話の場が欠落していることにある。まちづくりと整合性を持つスポーツ施設の整備には、住民との議論における情報提供を目的とした専門家による予備調査、目的に応じた参画や調査を可能とする複数組織による役割分担、多様な調査手法による多様なアクターからの意見集約が重要なポイントとなるのである。
著者
山崎 幹根 Mikine Yamazaki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.173-184, 2021-02-15

本稿は、公共政策の同化/分化が生じる要因を考察する中で、政府間関係がどのように作用しているのか否かを明らかにすることを目的としている。日英比較の観点から受動喫煙防止政策を対象とした研究から、政策課題設定に関して、サブ・ナショナルな政府という位置を活かし、政策課題を論じる場を移動させ、受動喫煙防止を公衆衛生として問題のフレーミングを見直し、政策転換を図った過程が共通して明らかにされた。一方、政策環境、政策の窓の観点から見れば、制度、ネットワーク形成、問題、政策、政治の3つの流れの有り様の違いが、異なる政策内容を導き出している。
著者
風間 規男 Norio Kazama
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.41-55, 2021-02-15

本稿は、2011年の福島第一原子力発電所事故後に起こった日本の原子力政策における制度構造の変化を扱っている。日本においては、原子力政策のガバナンス・ネットワーク、いわゆる「原子力ムラ」がしだいに政治的な権力を獲得していたが、福島原発事故以後にそのガバナンススタイルの変更を余儀なくされた。原子力ムラの構造変化は、日本の原子力政策に根本的な方向転換をもたらしている。
著者
野田 遊 Yu Noda
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.171-183, 2020-03-01

本研究は、行動行政学の知見をふまえ、大阪都構想の賛否への情報提供の影響を分析したものである。これまで、都構想の肯定・否定の情報提供は、政党や政治家、学者や評論家から積極的になされ、推進派は肯定的な情報を、反対派は否定的な情報を強調し、賛否を誘導してきた。本研究では、都構想の肯定・否定の情報を実験手法により提供のうえ賛否への影響を分析し、市民の動機づけられた推論の影響が非常に大きい点を抽出した。
著者
武蔵 勝宏 Katsuhiro Musashi
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.157-170, 2020-03-01

日本の国会は、政府に議事運営権や審議促進手続に関する権限が付与されておらず、凝集性の低い自民党内で造反を回避するためには、事前の調整で政府と与党を一体化する必要性がある。そのため、自民党政権では与党による事前審査が行われ、国会提出の段階から党議拘束がかけられてきた。本稿は、こうした事前審査制に代えて、閣法草案を国会の委員会において予備審査を行う方法を提案し、国会審議の形骸化の解消に取り組むことを提案する。
著者
佐野 淳也 Junya Sano
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.13-30, 2019-03-01

島根県海士町は行財政改革と産業創出により多くのUIJターン者が移り住み、人口減少が横ばいになるなどの成果を上げた。町長や役場職員が「変革の主体」としての行動規範を伝播させるハブとなり、離島から日本を変えるという大きなミッションのもと関係人口とのネットワークを形成した。価値観やビジョンを共有しながら全体で地域イノベーションを可能にするネットワークが形成されており、それを「自己生態系化」という概念を用いて分析を行った。
著者
畑本 裕介 Yusuke Hatamoto
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha University policy & management review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.1-14, 2020-03-01

社会福祉行政研究に関係するミクロ権力論には、社会学権力論と行政学的権力論の二つの流れがある。この論文では、行政学的権力論を切り開いたリプスキーのストリート・レベルの官僚制(SLB)論を大きく取り上げ、社会福祉行政研究におけるその適用可能性について検討している。また、SLBの在り方が現代において変化した要因についても考察している。それは行政への批判的態度の増大、ガバナンス改革、福祉専門職の行政への進出といったものである。
著者
河井 紗央里 新川 達郎 カワイ サオリ ニイカワ タツロウ Kawai Saori Niikawa Tatsuro
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.63-76, 2019-08

研究ノート(一般)(Note)本研究では、公共政策系の学部を有する大学のディプロマ・ポリシー及びカリキュラム・ポリシーを精査し、両ポリシーとその実現状況に見られる公共政策学教育の共通構造を明らかにする。各大学に関する調査の結果、身につける能力(学習成果)として、「問題発見・課題(問題)解決」、「政策的な思考」、「コミュニケーション力」が共通構造の要素として見出された。また、「学際性・総合性」、「グローバル(国際)、地域」、「協働」といった要素がカリキュラム編成上の特徴に見られた。最後に、「少人数教育」、「フィールドワーク」が具体的な教育方法であることが明らかになった。
著者
田中 宏樹 タナカ ヒロキ Tanaka Hiroki
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.31-37, 2019-03

論説(Article)地方公務員給与の規定要因を検証した国内の実証分析として、太田(2013)、石田(2015)一瀬(2017)等があるが、対象職種が一般行政職あるいは警察職であり、教員は対象に含まれていない。加えて、給与水準に労働組合が与える影響は小さくないと考えられるが、石田(2015)を除いて、給与と組合との関わりに焦点を当てた研究は乏しい。本研究では、公立学校の教員給与の規定要因について実証分析する。特に、都道府県毎に異なる組合活動に焦点を当て、それが給与水準に影響を与えているか否かを、都道府県パネルデータをもとに検証する。
著者
片山 明久 カタヤマ アキヒサ Katayama Akihisa
出版者
同志社大学政策学会
雑誌
同志社政策科学研究 = Doshisha policy and managemant review (ISSN:18808336)
巻号頁・発行日
pp.19-26, 2016-02

20周年記念特集号本稿では、コンテンツツーリズムが情報社会の進展という社会変化に伴って興った新たな観光の潮流と位置付けられること、また観光における「消費者」と「生産者」の二項対立という構図を転換させたパラダイムシフトであることを示した。そしてコンテンツツーリズムにおいて旅行者が真に求めるものを「ものがたり創造」という言葉で提起し、その目的が修学旅行など他の観光形態においても現出し得るという可能性を示した。