- 著者
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山口 直也
- 出版者
- 山梨学院大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
本研究では、普遍的に採択されて国際人権基準として重要な意味を持っている「国連子どもの権利条約」(=子どもの人権論)の観点から少年司法手続におけるデュー・プロセスの保障を明らかにした。まず、デュー・プロセスの保障を検討する前提作業として、子どもの人権が、憲法上および国際人権法上、どのような意味を有しているのかを分析した。その結果、子どもは大人とは違って精神的にも肉体的にも成長発達の途上にあるということは誰もが認める疑いのない事実であり、その子どもが、人間として、個人として尊重されるということを当然の前提として、子どもが未成熟な子どもとして尊重され、成長発達していく権利(=子どもの成長発達権)を固有に保障されていることを明らかにした。そのうえで、そのような子どもの成長発達権を根拠にした少年司法におけるデュー・プロセスの保障の目的は、権利条約が成立した今日的状況に鑑みると、人間としてかつ子どもとしての尊厳を認める形で扱われることで、自己の人間としての成長を成し遂げて、将来、社会の中で建設的な役割を担うことができるようにすることにある。そしてその方式は、あらゆる段階での子どもの主体的な手続参加を確保して、自由に意見を述べることができる環境を提供すると同時に、流山最高裁決定で団藤補足意見が指摘したように、子ども自身が手続に参加したことで納得できるものでなければならないということを明らかにした。最終的に本研究では、子どもの成長発達権の観点から見た少年司法手続における適正手続の保障が重要であると結論づけている。特に、少年が、自分のために援助をしてくれる弁護人(=付添人)および親・保護者との健全な人間関係(=成長発達権を否定しない人間関係)の中においてこそ、少年自らの司法手続参加および意見表明が可能になると主張した。そしてその手続参加(=意見表明)は、権利保障および権利放棄における自己決定を認める「小さな大人」論を認めるものではなく、関係論的子どもの成長発達権に支えられたものであることを明らかにした。