著者
赤池 一将 福田 雅章 山口 直也 三島 聡 徳永 光 本庄 武
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

研究は、大別して、海外における民営刑務所についての調査・検討と、日本国内において進行していたPFI刑務所(2005年春以降、4施設が開設またはその準備の状況にあった)についての調査・検討とから構成された。上記の研究代表者、分担者の他に、岡田悦典(南山大学教授)、笹倉香奈(甲南大学専任講師)、萩原聡央(名古屋経済大学専任講師)、前者については、2005年度に、アメリカ合衆国、オーストラリア、イギリス、2006年度に、イギリス、ドイツ、アメリカ合衆国、フランス、2007年度に、フランスにおいて現地における施設参観、関係者に対する面接調査等を行った。また、後者については、2005年度に、市場化テストモデル事業の実施された宮城刑務所、2006年度に、建設中の美祢社会復帰促進センター、2007年度に、開設後の美祢社会復帰促進センター、播磨社会復帰促進センター、を参観したほか、日本におけるPFI刑務所計画を推進してきた法務省担当者、参入企業担当者、施設受入れを決定した自治体関係者に対する面接調査を重ね、また、座談会を開催した。3年間の研究期間中に、30回を超える研究会を実施し、論文22件(内、雑誌における刑務所民営化関連特集掲載6件、関連紹介論文11件、関連単行本収録論文3件)、書籍1件(論文9件、座談会記録1件)、学会報告3件(主催国際シンポジウム1件を含む)の成果をあげた。また、2008年度刑法学会大会における分科会(刑務所への民間参入の意義と課題)での報告が予定されている。
著者
澤登 俊雄 村井 敏邦 前野 育三 福田 雅章 荒木 伸怡 斉藤 豊治 新倉 修
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

本研究は、主として、アメリカ、イギリス カナダ、ドイツ、フランス、北欧各国の少年司法制度、児童福祉制度における「こどもの権利保障」の内容につき、体系的に整理された詳細な「共同調査項目表」を作成し、それに基づいて調査・分析を行った。この「共同調査項目表」は、少年手続を審判前、審判段階、処分決定と処遇の3段階に分け、それぞれ少年の権利保障、適正手続の観点から有意義と思われる全25項目(さらに細項目は約225項目に分かれる)について調査する質問票であり、各質問番号を各国横断的に比較することで、明確に各国権利保障の状況の比較分析ができるよう工夫されている。これについて、最新の法令、判例、運用等を紹介したことはもちろん、これらでは十分に解明しえない諸点については、外国人研究者への直接質問等により正確を期した。これらの比較の上に立って、各段階、各国毎に、適正手続、国親思想、保護主義、刑罰主義、職権主義、当事者主義等の基本概念を縦軸に、「少年司法運営に関する国連最低基準規則」、「子ともの権利条約」等、子どもの権利保障を重視した諸々の国際準則が各国においてどのような影響を与えているかを横軸に、総括的なまとめを行った。その際、これらの知見が、日本法、とりわけいま問題となっている少年手続の基本構造をめぐる議論にどのような示唆を与えるものかを常に念頭に置いて分析したことはいうまでもない。詳細は今年中に発行を予定されている書物(「少年司法と適正手続」)に譲ることとするが、国際準則の影響下、全般的には子どもの権利保障が進みつつあるものの、各国固有の歴史的、政治的、社会的背景を反映し、各国における問題関心、権利保障の具体的な現れ方には、看過できない大きな相違があることが感じられた。
著者
福田 雅章
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、「事実上の死刑廃止国(州)」(DE FACTO ABOLITI0NIST COUNTORY/STATE)、すなわち刑法典上は死刑を存置している(いた)が現実には死刑を執行していない(いなかった)国(州)のそこに至るプロセスを探り、わが国の死刑執行停止(モラトリアム)へ向けての理論的・政策的提言を行うことにあった。上記目的を達成するため、調査研究を行い、次のような成果を得た。1.海外共同研究者であるRoger Hoodオックスフォード大学教授およびPeter Hodgkinsonウェストミンスター大学教授と調査票を作成し、関係諸国に送信し、回答を得た(成果報告書付録1、2)。事実上の死刑廃止は、実際には凶悪犯罪が発生しないために裁判所で死刑判決が下されないか、または立法府の決議によってもたらされており、わが国の状況に直接参考になるようなものではないことが判明した。2.ヨーロッパおよび東欧諸国の死刑廃止へ向けての動向は、国連のモラトリアム運動を踏まえて、上記Peter Hodgkinson教授と共同研究を行い、その成果を研究報告書に収録した。3.アメリカにおいては、1990年代半ば以降存続派と廃止派が共にモラトリアムへ向けて動いていたが、2000年1月31日にはイリノイ州知事が「今後すべての死刑執行命令書に署名しない」という行政権によるモラトリアムをはじめて実践し、「死刑存続or死刑廃止」というかつての対立構造に代えてモラトリアム運動が隆盛を極めている。このプロセスはわが国の状況に直接参考になるため、モラトリアム運動関係者への訪問インタビューおよび文献によって、論文「アメリカにおけるモラトリアム運動」を執筆し、成果報告書に収めた。4.上記成果を踏まえて、わが国との関連で、「死刑執行停止へ向けての提言」および「わが国の社会文化構造と死刑」の2論文を作成し、成果報告書に収めた。5.上記2、3および4の4論文は、1の具体的なデータ分析および「イギリスにおける死刑廃止のプロセス」を補充して、順次4月以降山梨学院大学法学論集に掲載し、一冊の書物にまとめる予定である。