著者
加藤 拓彦 小山内 隆生 和田 一丸 カトウ タクヒコ オサナイ タカオ ワダ カズマル Kato Takuhiko Osanai Takao Wada Kazumaru
出版者
弘前
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2/3/4, pp.71-78, 2006-03

作業療法を行っている統合失調症患者84例を対象とし,対象者の退院に関する意識と社会生活背景としての結婚および就労状況を明らかにすることを目的に面接調査を行った.その結果,退院を希望しない者は29%であり,退院希望者に比べ入院生活に満足している者が有意に多く,年齢は有意に高く,入院期間および罹病期間は有意に長かった.退院への不安については,家族,経済や就労に対する不安が多かった.結婚状況では,対象者の26%に結婚経験があったが,そのうち離婚率は82%と高率であり,結婚継続の困難さが示された.就労については,就労希望者群では就労希望のない群に比し,退院希望者の占める割合が有意に高かった.これらの入院統合失調症患者に対し有効かつ積極的な作業療法を展開していくためには,以上に示した個々の対象者の社会精神医学的側面についての理解を深めることが重要である.
著者
加藤 拓彦 小山内 隆生 和田 一丸
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2-4, pp.71-78, 2006 (Released:2021-09-21)
参考文献数
19

作業療法を行っている統合失調症患者 84例を対象とし,対象者の退院に関する意識と社会生活背景としての結婚および就労状況を明らかにすることを目的に面接調査を行った.その結果,退院を希望しない者は 29%であり,退院希望者に比べ入院生活に満足している者が有意に多く,年齢は有意に高く,入院期間および罹病期間は有意に長かった.退院への不安については,家族,経済や就労に対する不安が多かった.結婚状況では,対象者の 26%に結婚経験があったが,そのうち離婚率は 82%と高率であり,結婚継続の困難さが示された.就労については,就労希望者群では就労希望のない群に比し,退院希望者の占める割合が有意に高かった.これらの入院統合失調症患者に対し有効かつ積極的な作業療法を展開していくためには,以上に示した個々の対象者の社会精神医学的側面についての理解を深めることが重要である.
著者
橋本 和明 福島 裕 斎藤 文男 和田 一丸
出版者
弘前大学医学部・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.147-152, 1989-06

死亡時年齢が満16歳以上のてんかん患者38例(男24例,女14例)を対象として,その死亡・死因について検討した.死因を発作と直接関係のある群(A群),発作と直接関係のない群(B群),詳細不明のもの(C群)に分類すると,各々11例,19例,8例であった.発病から死亡までの期間は,それぞれ7.3年,14.1年,16.5年とA群で有意に短かった.A群のうち溺死が6例と最も多く,その死亡は日常生活の中で起こっており,生活指導の重要性が示唆された.自殺が4例(11%)を占め,いずれも精神障害を合併し発作も抑制されておらず,治療に際しては,発作のコントロールとともに心理的・社会的関わりが必要と思われた.全症例中,発作が抑制されていたものは6例(16%)のみで,発作を有するものに死亡が多くみられるといってよいと思われた.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.363-374, 2012-08-15

要旨:統合失調症患者57名と健常者30名を対象として,ぬりえ課題を用いて線画の呼称と塗った色の分析を行った.線画の呼称を正答し,かつ線画に対応した色を塗ることができた者が共に8割以上であった線画は,健常者群では12項目全てであったが,統合失調症群ではバナナとミカンの2項目であった.四つ葉のクローバーとピアノは,統合失調症群で判別できた者は健常者群よりも有意に少なかった.残りの8項目は,線画を正しく呼称していたにも関わらず対応した色を塗ることができない者が多かった.統合失調症群のぬりえの特徴は,線画を認知できるが健常者が選んだ色とは異なる色を塗る者が多いことであった.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
三輪書店
雑誌
作業療法ジャーナル (ISSN:09151354)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.1055-1062, 2015-09-15

Abstract:統合失調症患者61名と健常者54名を対象として,色彩に対して抱く感情およびイメージの特徴について分析を行った.色彩に対する感情語の選択割合が5割を超えた項目は,統合失調症群は一つもなかったのに対し,健常者群では青に対する平静,黄に対する愉快,緑に対する平静の3色が5割を超え,統合失調症群に比べ有意に選択割合が高かった.両群に対して色彩に対するイメージ課題を行った結果,青と緑において健常者群は冷たいととらえている者が多いのに対し,統合失調症群は熱いととらえている者が多かった.統合失調症群の中で,REHABにおける問題行動がある者および全般的行動得点が低い者は,そうでない者に比べ感情の適合割合が低かったことから,これらの者は通常経験すべき社会体験を十分に積む機会がなかったことに加え,色彩に対して感情を選択する際に何らかの混乱を生じている可能性が示唆された.