著者
古谷 英樹 大河原 壮 浅沼 成人 日野 常男
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1-2, pp.30-39, 2005-04-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
28

イヌの健康増進、特に大腸癌の予防・抑制を目的として、スフィンゴミエリン(SM)の有効利用のための条件およびSM分解への腸内細菌の関与についての基礎的知見を得るための実験を行った。まず、マウスにSMを経口投与したところ、1,2-ジメチルヒドラジンで誘発した結腸・直腸の異常陰窩病巣(前癌病巣)の形成が抑制されることが確認された。マウスおよびイヌの糞中のスフィンゴ脂質を分析したところ、消化管内には内因性のSMおよびその分解生成物がかなり流入することが示唆された。しかし、それだけでは大腸癌の予防・抑制には不十分であり、食餌性のSMを補強することが重要と考えられた。また、大腸粘膜上皮細胞への取り込みのためには、SMはセラミド、特にスフィンゴシンに分解される必要があるが、かなりの量のSMおよびセラミドが糞中に排泄されたので、腸管内での分解は不十分と考えられる。一方、抗生物質によってマウスの腸内細菌を除去しても糞中のSM量は変化しなかったので、マウスはスフィンゴミエリナーゼ(SMase)をもつ腸内細菌を保有していないと考えられた。しかし、抗生物質の投与によって糞中のスフィンゴシンが減少したので、マウスの腸内にはセラミダーゼをもつ菌が存在すると推測される。イヌの場合は、個体によってはSMaseおよびセラミダーゼをもつ腸内細菌が存在することが明らかとなった。しかし、そのような菌をもつ個体は少なかった。SMaseおよびセラミダーゼをもつ菌を保有するイヌでは、糞中のSMが少なく、スフィンゴシンが多かったので、このような菌は腸管内でSMやセラミドの分解に寄与していると考えられる。以上より、SMの投与と同時にこれらの酵素をもつ菌をイヌに導入すればSMの効果が高まると思われる。
著者
辻本 綾子 辻本 義和
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_37-suppl_39, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

糖尿病の猫には炭水化物を制限した高蛋白・低炭水化物食を処方するが、基礎疾患や併発疾患を有する場合があり、その際にはそれらに対する食事療法を優先すべきであるとされている。しかし腎臓病用療法食は低蛋白食で脂質と炭水化物の割合を増やしており、理論上は血糖値が増加しやすい組成となっている。従って一般的にはインスリン投与量は増量した方が良いと推察されるが、今回、腎臓病用療法食に変更し十分な水和をしたことで、血糖値が上手くコントロールできるようになり、インスリン投与量を減量できた猫の2症例を報告する。
著者
金井 将昭 中村 敏一 船越 洋
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.Suppl_69-Suppl_70, 2011

21世紀に入り、ヒトの情動障害や伴侶動物の行動異常は、社会活動に影響を与える疾患として益々重要性を増している。古くから、トリプトファン (Trp) 代謝が情動に影響することが知られているが、その分子機序の詳細は不明である。私達はTrp代謝からみた精神神経機能の解析を行うため、Trp代謝の中心酵素であるTryptophan 2,3-dioxygenase (TDO) の遺伝子欠損マウスを作製し、Trp代謝ならびに情動行動におけるTDOの役割を解析した。その結果、TDOは全身ならびに脳内Trp代謝の中心酵素として働き、不安行動ならびに海馬等の神経新生を修飾する生理的な調節因子であることが明らかになった。
著者
田端 佑規 植松 沙也加 四童子 好廣
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.S40-S41, 2018-07-10 (Released:2018-08-10)

ゲラニルゲラノイン酸(GGA)はレチノイドの一種で、ウコンなどに含まれる栄養素である。我々は以前、マウス繁殖時の餌にGGAを添加すると交配数あたりの離乳仔数(生産指数)が増加することを見出し、特許を取得している。また、その際、GGA食で生まれ授乳された1週齢の仔マウス脳海馬歯状回において脳由来神経栄養因子(BDNF)発現量が顕著に増加することなどを見出したが、これらが哺乳動物の普遍的な作用であるのかなどは不明なままである。そこで本研究ではGGAによる生産指数の増加が他の系統のマウスにおいても再現できるか検討することとした。その結果、以前の観察と同様にGGA投与により生産指数の増加が確認された。しかし、今回はGGAにより受胎や分娩の効率が増加したというよりは、母親マウスの食殺行動の抑制が生産指数の増加に至る可能性が示唆された。

1 0 0 0 OA 免疫について

著者
上杉 隆平
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.152-153, 2003-10-10 (Released:2012-09-24)
著者
大野 耕一
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.69-73, 2010-10-08 (Released:2011-04-15)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
鈴木 立雄
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.16-24, 1999-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
9
著者
小泉 亜希子 栗原 里奈 中山 みずき 熊谷 安希子 増田 健一 大辻 一也
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.95-100, 2019-10-10 (Released:2019-10-31)
参考文献数
4

涙やけは多くの家庭犬に認められ、その原因は流涙症とされている。われわれはドックフードを替えると涙やけの症状が変化するイヌに注目した。このイヌを被験犬としてフードと涙やけの関係について検討した。その結果、試験前に給餌されていたフード(フードP)から過去に涙やけを悪化させたフード(フードA)に切り替えると涙やけが悪化し、涙やけを改善したフード(フードB)を与えると涙やけが改善した。過去に観察されたドックフードによる涙やけの症状の変化が再現された。涙やけの原因の一つとして食物アレルギーが考えられることから、フードに使用されている原材料について調査した。その結果、いずれのフードにも食物アレルギー源となる可能性のある原材料が使用されていた。しかし、試験期間中、被験犬に食物アレルギーの症状は観察されなかった。そこで、涙やけに腸内環境が関係しているのではないかとの仮説を立て、便のpHを測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の便のpHは低値を示した。さらに便中の総短鎖脂肪酸濃度を測定したところ、フードA給餌期間中に比べフードB給餌期間中の総短鎖脂肪酸濃度は高値となった。便のpHの低下は短鎖脂肪酸によることが示唆された。以上の結果から、涙やけを改善したフードBの給餌により、腸内環境が改善される可能性が示唆された。フードBは腸内環境改善を謳ったフードであり、ビートパルプ、オリゴ糖の他にビール酵母や野菜パウダーが添加されていた、しかし、今回の実験ではフードに配合されているどの原材料が涙やけの改善に関与したのかは特定できなかった。涙やけと腸内環境の関係の糸口として、涙液中の総IgE濃度を測定した。しかし値の変動が大きく一定の傾向は認められなかった。
著者
荒田 明香
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.106-108, 2018-07-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
9
著者
松本 逸宏
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.107-108, 2001-10-10 (Released:2012-09-24)
著者
宮島 芙美佳 小野沢 栄里 生野 佐織 石井 聡子 後藤 杏依 小田 民美 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-26, 2018-04-10 (Released:2018-05-18)
参考文献数
19

本研究では、中鎖トリグリセリド(MCT)が健常猫にどのような影響を与えるか検討するため、MCTを豊富に含むココナッツ油を添加した食事、および長鎖脂肪酸脂肪(LCT)を含むラード、大豆油を添加した食事を給与した場合の糖、脂質代謝の変化を比較した。健常猫6頭を用いて、3種の異なる脂肪を添加した食事を給与した。3種の脂肪添加食をそれぞれ14日間ずつ給与し、体重および体脂肪率の測定、臨床症状の有無の評価、血液検査を実施した。全ての食事において試験期間中、全頭で嗜好性に問題はなく副作用も認められなかったため、脂肪添加食は安全に給与できた。さらに、血液検査項目の血糖値、インスリン濃度、GIP濃度、GLP-1濃度、中性脂肪(TG)、遊離脂肪酸(NEFA)濃度を測定した所、全ての検査項目において3種の食事間で有意な違いは認められなかった。ヒトにおいてMCTは代謝が速く効率の良いエネルギー源とされ、また脂肪蓄積抑制効果なども認められているが、猫においては今後さらに検討が必要である。
著者
鈴木 達也 後藤 健 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.4, no.Supplement, pp.39-40, 2001-05-24 (Released:2012-09-24)
参考文献数
3

実験1(n=7)において,健康なネコに市販ドライフード(乾物中CP30%)を1日3時間だけ制限給餌した場合,不断給餌に比べて尿量は変わらなかったが排尿頻度(1日当たりの排尿回数)が減少した。給餌方法に関わらず日中の排尿は少なかったが,時間制限の場合は食後の尿pHが著しく上昇した。一方,不断給餌中は1日を通して尿pHは比較的安定していた。実験2(n=12)において,健康なネコに乾物当たりのCP含量が29%,50%および71%のドライフードを不断給与した結果,粗蛋白質含量の増加とともに排尿頻度および尿量が増加し,尿pHは低下した。
著者
Sheri Ross
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.27-32, 2011-04-09 (Released:2011-05-27)
著者
林 海鷹 松井 徹 堀江 崇文 菱山 信也 藤瀬 浩 矢野 秀雄
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.53-56, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
17

一般臨床上健康な48頭の柴犬から採血を行い,高圧液体クロマトグラフィーにより血漿中ビタミンC濃度を測定した。供試犬の年齢構成は1歳未満4頭,1-2歳12頭,2-5歳7頭,5-10歳12頭,10歳以上13頭であり,性の構成は,雄13頭,雌28頭,避妊雌7頭であった。血漿中ビタミンC濃度は年齢の影響を受けたが(P<0.001),性の影響および年齢と性の交互作用は認められなかった。1歳未満の柴犬は,1歳齢以上のイヌと比較し血漿中ビタミンC濃度が高かった(P<0.01)。一方,1歳齢以降では加齢に伴う血漿中ビタミンC濃度の変化は認められなかった。1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度は7.00±1.10mg/L(平均±標準偏差)であり,1歳齢以上の柴犬における血漿中ビタミンC濃度の標準的な値は4.8-9.2mg/L(平均±2×標準偏差)程度であることが推察された。