著者
清水 信年
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.49-60, 2019-09-27 (Released:2019-09-27)
参考文献数
46
被引用文献数
2

小売企業間の競争において,製品差別化を実現できるようなPBや独自商品の開発が重要となっている。生産設備や開発力などの点でメーカーに劣る小売企業が魅力的な製品開発を行うためには,大きな販売力を持ち消費者に関する情報の源でもある店舗の存在がその源泉とであると考えられてきた。加えて,そこで働く従業員の中には店舗で扱う製品についてのリードユーザーが存在しており,製品開発活動にそうした店舗従業員が関与することによって独自性の高い製品が生み出される可能性がある。スポーツ用品販売チェーンと食品スーパーに関する事例研究を行った結果,ユーザーイノベーションの代表的なマネジメント手法であるリードユーザー法とクラウドソーシングが実践され成果を挙げていることが確認された。
著者
古江 奈々美
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-69, 2018-06-30 (Released:2018-12-14)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Govindarajan, Immert, and Trimble(2009)は,新興国で既存技術の組み合わせによるイノベーションが生まれ,最終的には先進国市場で普及する,これまでの先進国から新興国へという既存理論に逆行する“リバースイノベーション”を提唱している。産学ともにこの新しい現象に注目しているものの,一連のイノベーションのプロセスにおいて,新興国と先進国の間で具体的な違いが何であるのか言及している研究は少ない。本研究は,先進国と新興国の大学院生を対象とし,新商品開発を模したワークショップを通じて,アイデア作成の内容やその選抜を行う際の姿勢における違いを探索することを試みた。実験の結果,先進国と比べて,新興国のアイデアの方が,新規性・独創性が低く,投資リスクの低いアイデアを作成することがわかった。そして新興国の被験者は,先進国の被験者に比べ,常に自信を持ってアイデアを選抜する傾向が明らかとなった。加えて,これらの特徴を踏まえ,先進国人材,新興国人材それぞれが実務上どのような点に注力すべきかを,デザイン思考を用いて提示する。
著者
瀨良 兼司
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.88-96, 2019-06-28 (Released:2019-06-28)
参考文献数
52

サービス提供企業と享受者(顧客)との接点となる,サービス・フロントラインで働く従業員が接する顧客のニーズは,多岐にわたる。この異質性への対応というサービス・フロントラインの課題を踏まえると,各顧客のユニークなニーズへの対応の必要があり,品質の標準化に基づく定型的な提案だけではなく,パーソナライズされた創造的な提案が求められる。サービス・フロントラインにおいて創造性を発揮する従業員は,顧客の潜在的ニーズを発見し,顧客の抱える課題を独自の対応で効果的に解決し,優れた顧客経験を生み出すことで,顧客との長期的な関係を築くことに貢献する。本稿では,サービス・フロントライン従業員を対象とし,創造性研究における蓄積を手掛かりとしながら,サービス・フロントライン従業員の役割や従事する職場を考慮したうえで,サービス・フロントライン従業員の創造性に関する研究の現状と今後の課題を提示する。