著者
近藤 公彦
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.6-17, 2023-09-29 (Released:2023-09-29)
参考文献数
21

この論文は,北海道を代表する土産菓子メーカーである石屋製菓株式会社のケース研究である。同社の製品ブランド「白い恋人」は土産菓子ランキングで首位にあげられるほどの知名度を有し,そのブランド名を冠した「白い恋人パーク」をはじめ,種々のコラボ商品も展開されている。「面白い恋人」をめぐる吉本興業等との商標権侵害やコロナ禍での観光客の激減に伴う売上高の低下といった逆境を乗り越えて,2022年には中東ドバイへの進出を果たした。一方,石屋製菓は東京GINZA SIXへの出店に際して,白い恋人を扱わず,「ISHIYA」という企業ブランドを前面に掲げた。そして,白い恋人にせよ,ISHIYAにせよ,いずれも「北海道」という圧倒的な地域ブランドを背景にしている。本研究は,製品ブランドの白い恋人を中心に同社の歴史を記述し,その過程においてISHIYAという企業ブランド,そして北海道という地域ブランドがどのように相互作用しているのかをブランドの構成要素,ブランド・エクイティ,および経験価値のフレームワークの観点から多面的に検討し,ブランド研究への新たな理論的示唆を提示する。
著者
佐々木 壮太郎
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.86-90, 1997-06-27 (Released:2023-09-14)
参考文献数
23
被引用文献数
2
著者
臼井 浩子
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.158-169, 2014-06-30 (Released:2020-06-16)
参考文献数
42

デジタル革命とソーシャルメディアの隆盛によって,消費者自身が消費経験に関する情報(クチコミ)を自発的に広める担い手となってきた。そのため,クチコミに対する関心が近年,高まってきており,クチコミをマーケティング活動に効果的に取り入れる手法が模索されている。しかし,このような試みを成功させるためには,まず,「人はなぜクチコミを行うのか」というクチコミ発生の要因を明確に捉える必要がある。本稿はこうした問題意識を受け,クチコミを促進する要因に着目した先行研究を,1)クチコミ動機の包括的研究(対面のクチコミ,オンライン上のクチコミ)2)クチコミを促進する個別要因の研究,の2つの視点から紹介すると同時に,今後の研究課題を提示する。
著者
須田 孝徳
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.73-80, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
38

本研究では,過去10年においてマーケティング研究で行われた混雑感知覚(Perceived Crowding)に関する研究をレビューする。混雑感知覚の研究を,混雑感が消費者の認知・感情に及ぼす影響,消費者の功利的・価値表出的行動に及ぼす影響,推論の手がかりとしての混雑感の3つの視点に分けて整理した。レビューの結果として,混雑感知覚の研究は店舗内購買行動研究から消費者の情報処理や意思決定を対象とした研究に,領域が拡張されていることを確認した。また今後の課題として,推論の手がかりとしての混雑のより詳細な議論の必要性,今日的な店舗研究と混雑感知覚を取り上げた研究が少ない,混雑感知覚の研究が購買意思決定の段階に沿って進められて議論がなされていない,の3点を指摘した。本研究の結果は,マーケティングにおける混雑感知覚の概念を説明し,この分野の実証研究を網羅的にレビューすることで,混雑した小売店環境や消費者行動の理解に役立つ知見を整理している。
著者
比留川 ありさ 西川 英彦 米満 良平
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.83-91, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
15

ユーザーからアイデアを集め,製品開発に活用するクラウドソーシングが注目されている。しかし,クラウドソーシングを活用する企業の多くが,アイデア募集に苦労している。たとえユーザーからアイデアを集められたとしても,そのアイデアを上手く活用できず失敗する企業や,継続できていない企業も多い。その困難克服の好例が格安スマホのmineoである。mineoはこれまでに約9,100件のアイデアをユーザーから集め,約1,100件ものアイデアを実現している。本稿では,まずmineoのコミュニティサイト「マイネ王」にて,ユーザーからアイデアを集める場として中心的に機能している「アイデアファーム」について紹介する。次に,ユーザーのアイデアをもとにサービスの創造やアップデートが行われていることを確認する。最後に,ユーザーのアイデアを数多く実現し,魅力的なサービスへと進化しているmineoの優れている点,すなわち1.アイデアの量の確保2.アイデアの質の向上3.役職者による全アイデアの検討と実現化の促進について述べる。
著者
渡邊 久晃
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75-82, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
37

近年,消費者は食品や化粧品といったさまざまなカテゴリーで自然製品をますます好むようになっている。自然感(naturalness)は,「人間による介入や処理,添加物がないこと」を意味する概念であり,自然感の影響に関する研究は徐々に増えてきている。そこで本稿では,消費者行動研究分野とマーケティング研究分野に関連する海外ジャーナルの論文のレビューを行った。その結果,自然感が特定の信念や推論を通じて消費者の判断や感情的反応に影響を及ぼすこと,プロセス要因と感覚的要因が自然感知覚に影響を及ぼすことがわかった。最後に,今後の研究の方向性について議論した。本稿は,自然感概念及び自然感選好についての理解に役立つ知見を提供している。
著者
石田 真貴
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.66-74, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
34

マーケターは新製品に対する消費者選好を正確に予測できているのだろうか。新製品開発において消費者選好を正確に予測することは重要だが,先行研究では,マーケターによる予測は正確でないことが示されている。そこで本稿の目的は,消費者選好を予測する際に生じるフォールスコンセンサス効果(False Consensus Effect:以下FCE)に関する研究を整理し,マーケターによる消費者選好の予測の正確さに貢献していくことにある。FCEとは,製品に対する個人選好を消費者に投影させる認知バイアスのことである。FCEが生じたマーケターの予測は,実際の消費者選好と乖離し,非魅力的な製品の開発を続けるなどの望ましくない意思決定を下す。そのため本稿では,FCEが生じる要因である「消費者への共感」と「顧客志向」について確認した上で,FCEを回避する方法である「個人選好抑制」について詳述していく。しかし,FCEに関する研究には残された課題が多い。そのため最後に,個人選好抑制,予測対象である消費者の属性,消費者選好の測定の正確さ,マーケターの特徴の観点から今後の研究の方向性を示唆する。
著者
井関 紗代
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.42-52, 2023-06-30 (Released:2023-06-30)
参考文献数
61

近年のデジタル化による技術革新は,短命で,アクセスベースで,脱物質的なリキッド消費を促進している。このような消費環境の変化は,心理的所有感(psychological ownership)を減衰させたり,他の対象へと転移させたり,維持するための新たな機会を生み出したりしている。本研究では,心理的所有感の根底にある動機として,コントロール欲求に着目し,音楽配信サービスに対する心理的所有感の醸成にどのような影響を及ぼしているのかについて検証した。調査は,音楽配信サービスであるSpotifyまたはApple Musicを週に1回以上利用する人を対象に実施された。分析の結果,コントロール欲求がサービスへの心理的所有感やロイヤルティに及ぼす影響は,利用頻度によって異なるだけでなく,サービスの違い(Spotify/Apple Music)によっても異なるパターンが示された。これらのことから,コントロール欲求が心理的所有感に及ぼす影響は,他の要因(e.g.,利用頻度)によって調整されるため,コントロール欲求が高いと心理的所有感も醸成されやすいというほど単純ではないことが示唆される。
著者
磯田 友里子 工藤 玲 恩藏 直人
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.75-86, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
43

シニア市場は同質な単一セグメントではなく多様な消費者の集まりであり,この多様性に応じたマーケティング戦略が必要であるという認識が広まりつつある。しかし,シニア市場内の多様性を捉える具体的な枠組みを提示する既存研究は少なく,消費者間の差異を十分に捉えきれていない。そこで本研究では,シニア市場内の多様性を表す指標として未来展望(FTP)と将来自己連続性(FSC)を用い,シニア女性を対象として,実際の購買データを用いて探索的な調査を行った。その結果,FTPは非消耗品の購買活動に負の影響を与え,FSCが正の影響を与えることが明らかになった。また,FTPとFSCの交互作用が観察され,購買活動がもっとも活発なのは「将来の自分とのつながりは強いが,残された時間は長くないと感じているシニア女性」であり,「将来の自分とのつながりが強く,残された時間も長いと感じるシニア女性」は,金銭的支出を控える傾向が示された。
著者
濵田 俊也 新田 都志子
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.97-107, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
11

本稿はコンテンツを活用するマーケティングのマネジメント事例研究である。群馬県はマスコットキャラクター「ぐんまちゃん」を用いて,県内外の事業者へのデザイン貸与やグッズ販売等を通じた群馬エリア経済への貢献と,群馬エリアの宣伝・広報に長年取り組んできた。現在,群馬県は,さらに戦略的に「ぐんまちゃん」を群馬県のキラーコンテンツと位置付け,ブランド化事業を行って認知度と好感度の向上を達成し群馬エリアのブランド向上に結び付けようとしている。この取り組みは近年群馬県が推進するメディア戦略が基礎になっている。本稿では,1)群馬県の26年間の「ぐんまちゃん」運営の状況を確認し,2)現在の群馬県のメディア戦略と3)「ぐんまちゃん」ブランド化事業に焦点をあてて論じ,コンテンツを活用するマーケティングのマネジメントで考慮すべき要を抽出する。
著者
北澤 涼平
出版者
日本マーケティング学会
雑誌
マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.51-57, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
34
被引用文献数
2

対象に対する個人の所有感覚である個人的心理的所有感という概念は,2000年代初期に組織論の文脈において提唱されて以降,製品に対する購買意図や支払い意思額の向上などのマーケティング成果をもたらすために,マーケティング研究に盛んに応用されてきた。さらに,この概念に加えて,対象に対する集団の所有感覚である集団的心理的所有感という概念が提唱されており,組織の効率性などの組織成果に関して,個人的心理的所有感とは異なる帰結をもたらす可能性が指摘されている。それにもかかわらず,マーケティング領域にこの概念を応用することを試みた研究はほとんど存在しない。本稿は,個人的心理的所有感と集団的心理的所有感に関する研究をレビューし,後者の概念の,消費者コミュニティや経験消費などのマーケティング研究への応用可能性を検討する。