- 著者
-
澁谷 覚
- 出版者
- 日本マーケティング学会
- 雑誌
- マーケティングジャーナル (ISSN:03897265)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.3, pp.23-36, 2017-01-10 (Released:2020-03-31)
- 参考文献数
- 54
昨今のソーシャルメディアを巡る議論では,ソーシャルグラフを見切り,インタレストグラフを再評価する論調が見られる。そこで本稿では,まず「オンライン/オフライン」および「ソーシャルグラフ/インタレストグラフ」という2つの軸から構成されるマトリクスによって個人間コミュニケーションを分類し,各領域におけるコミュニケーションの特性を概観した上で,インタレストグラフ側の2領域における個人間コミュニケーションを改めて比較しながら,インタレストグラフの役割について議論する。なお本稿では,インタレストグラフを介したコミュニケーションとは,すなわち面識のない人々の間のコミュニケーションと捉える。そこでオフライン×インタレストグラフの領域についてはうわさや流言に関する先行研究を,オンライン×インタレストグラフの領域については潜伏者に関する先行研究を参照しながら,人は見知らぬ他者とどの程度コミュニケーションを行うか,について検討する。結論として,ほとんどの人々にとってのインタレストグラフの役割とは情報取得の手段であること,マーケター側が情報を拡散するためには,オンラインのインタレストグラフとソーシャルグラフ,およびオンラインとオフラインのソーシャルグラフを適切に組み合わせることが必要であること,を述べる。