著者
森田 公一
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2328-2333, 2004-11-10
参考文献数
5

熱帯性の蚊媒介性ウイルスであるウエストナイルウイルス(西ナイルウイルス)が1999年,米国に侵入し現在,北米・中米へと拡大を続けて多くの患者が発生している.本年度はカリフォルニア州でもすでに多くの患者発生が見られ,日本へ侵入する可能性があり警戒が必要である.わが国へ侵入した場合には日本脳炎との鑑別が重要である.
著者
大津留 晶 山下 俊一
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1271-1276, 1999-07-10
参考文献数
5

副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)は,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の原因物質として発見された. PTHrPのN端は副甲状腺ホルモン(PTH)と高い相同性を有し,いずれも共通のPTH/PTHrP受容体に結合し,作用を発揮する.しかし,副甲状腺より分泌され,血中カルシウムレベルを調節するホルモンであるPTHに対し, PTHrPはあらゆる臓器の様々な細胞より,時に応じて分泌され,生理的には主にパラクライン・オートクライン的に作用している.事実その受容体は全身に幅広く分布している.このためPTHrPの生理作用は不明な点が数多くあったが,発生工学的手法などの発展に伴い骨・軟骨系の新知見を始め,その機能の実態が徐々に明らかにされつつある.
著者
長瀧 重信 芦澤 潔人
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.1215-1221, 1997-07-10

情報が錯綜しているチェルノブイリ原子力発電所事故の健康に対する影響について1990年から現地で医療調査に従事して来た経験をもとに紹介する. 10年目に明らかに臨床的に確認された健康傷害は134名の急性放射線症(28名が3カ月以内に死亡)と800名の小児甲状腺癌(3名が死亡)だけである.被曝線量に不確的要素が多いために放射線傷害の調査は続行中であるが, 4~5年で癌の発症が100倍以上になったことは前代未聞であり,現地の癌の発生を予防するためにも一般的な癌発生の機序の研究にも国際的な協力体制が望まれる.
著者
芦澤 潔人 長瀧 重信
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.972-976, 1995-06-10
被引用文献数
1

放射線は広く活用される半面人体に及ぼす影響がいろいろと懸念されている.放射線の影響を知る上で甲状腺は最適臓器の一つであり,本稿では被爆者の甲状腺疾患および放射線の甲状腺細胞に対する影響について述べる.我々は長崎の原爆被爆者を対象にして甲状線の被爆量(DS86)と甲状腺疾患の相関について最新の診断法を使用して調査したところ従来の甲状腺癌に加えて自己免疫性甲状腺機能低下症も被爆者に有意に多いことが判明した.さらに長崎の経験に基づいたチェルノブイリ周辺地区の実態調査では甲状腺癌が急増していることは認められているにしても未だに放射線との関連は明確ではなく,他の環境因子も考慮する必要があるというのが現状のまとめである.又放射線の甲状腺に及ぼす作用は遺伝子,分子,個体レベルでもさかんに研究が進んでいる.ヒト甲状腺癌ではras, ret遺伝子が特に注目を集めている.
著者
下条 文武 成田 一衛
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1310-1315, 2006-07-10
被引用文献数
1

平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.