著者
下条 文武 成田 一衛
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1310-1315, 2006-07-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6
被引用文献数
1

平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 下条 文武
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.725-732, 2001-01-20
参考文献数
20
被引用文献数
4 3

麦門冬湯(B)は漢方薬で, 気管支炎モルモットの咳嗽を抑制することが知られている。かぜ症候群後咳嗽に麦門冬湯が有効か否か検討した。非喫煙者で, かぜ症候群後2週間以上咳嗽が続き, ACE阻害薬を内服しておらず, 鼻・副鼻腔疾患, 慢性呼吸器疾患, アトピー歴, 胃食道逆流症がなく, 胸部単純X線, 呼吸機能, 抹消血好酸球数, CRP, 血清IgE値に異常のない症例を適格症例とした。適格症例を, 無作為にBエキス顆粒9g/日と臭化水素酸デキストロメトルファン(D)60mg/日の1週間内服群に分け, 咳日記(咳点数0-9点に分布)を用いて, 2群間の咳嗽抑制効果を比較検討した。B13例, D12例で検討した。両群で, 年齢, 性, 来院時の咳点数, 咳嗽持続機関, 検査成績に有意差はなかった。B, D両群で有意な咳嗽抑制効果が認められたが, Bでは2日目より, Dでは3・6・7日目に, 有意に咳点数が低下した。BはDに比し, 2日目で咳嗽抑制効果が強かった(P<0.05)。両軍に重篤な副作用を認めなかった。以上より, 麦門冬湯は, 非喫煙者のかぜ症候群跡咳嗽に有用で, 内服後すみやかに咳嗽抑制効果を現すと考えられた。
著者
藤森 勝也 鈴木 栄一 荒川 正昭 下条 文武
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.713-718, 1999
被引用文献数
4

慢性持続咳嗽は, 臨床上頻繁に遭遇する問題である。この鑑別診断における気道過敏性検査の臨床的意義について検討した。胸部単純X線写真および1秒率に異常のない慢性持続咳嗽症例に, アストグラフ法による気道過敏性検査を行い, 累積反応閾値のDminと年齢, %努力肺活量, %1秒量, 1秒率, %V_<50>, %V_<20>, 末梢血好酸球数, 血清IgE値との相関性を検討した。慢性持続咳嗽51例(男20例, 女31例, 平均年齢41歳)の原因疾患は, 咳喘息29例, かぜ症候群後持続咳嗽13例, アトピー咳嗽6例, その他3例であった。Dminと有意に相関したのは, %V_<25> (r=0.31, p=0.02)であった。Dmin 10単位未満を気道過敏性の亢進と判定した時, 咳喘息診断の感受性は93%, 特異性は87%であった。気道過敏性検査は, 他の検査では代用が難しく, 有用であるが, その診断限界があることを認識しておく必要がある。
著者
佐藤 英夫 岩島 明 河辺 昌哲 中山 秀章 吉澤 弘久 下条 文武 鈴木 榮一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.491-495, 2005-05-31 (Released:2017-11-10)
参考文献数
16

睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)の胃食道逆流症(以下GERD)合併頻度を,QUEST問診票を用いて検討した.QUESTは4点以上をGERD合併ありと判断した.PSG(Polysomnography)検査を実施した84例中の73例にAHI(Apnea Hypopnea Index)≧5 (/hr) のSASを認めた.QUEST 4点以上が25例(34.2%)あり,GERD合併の有無で2群に分けたときAHI,脳波上の短時間覚醒指数(以下Arousal Index),BMIなどに有意差はなかった.AHI≧20かつQUEST≧4点の17例中,11例がCPAP治療を開始した.CPAP治療を開始した4週間後のQUEST得点は7例で無症状(0点)となった.残る4例はプロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服を追加して,症状の消失が得られた.SASによる胸腔腹腔内圧較差開大をCPAP治療が改善して,胃酸逆流を抑制する機序が関与すると考える.SASには高頻度にGERDが合併することから積極的な問診と治療追加が望まれる.
著者
諏佐 理津子 布施 克也 石沢 真幸 中俣 正子 塚田 弘樹 下条 文武
出版者
Japanese Society of Environmental Infections
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.303-308, 2001-12-07 (Released:2010-07-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

病院職員がインフルエンザに罹患した場合, 個人の健康被害だけではなく多方面に様々な影響を及ぼす. 今回我々は病院職員に対するインフルエンザワクチンの有効性, および適切な接種回数を実際に評価するため, 1999年12月~2000年3月, 十日町病院に勤務する全職員362名をワクチンを接種しない群 (V0群) 166名, ワクチンを1回接種する群 (V1群) 112名, 2回接種する群 (V2群) 84名の3群に分けて, 前向きな検討を行った. 感冒罹患率は有意差をみなかったが, インフルエンザ様疾患 (以下ILI) にはV0群11名, V1群3名, V2群1名が罹患し, 接種群の方が未接種群より有意に罹患率が低かった (p<0.05). 感冒・ILIのための延べ欠勤日数は, それぞれ100名当たりV0群29.5日, V1群19.6日, V2群14.3日で, 接種群の方が未接種群より有意に短かった (p<0.05). 38℃以上の延べ発熱日数は, 100名当たりVO群38.0日, V1群26.8日, V2群19.0日で, 接種群の方が有意に短かった (p<0.05). いずれの項目もV1, V2群間で有意差を認めなかった. 以上の結果より, 冬期間の病院職員の医療提供能力を維持するためには, インフルエンザワクチン接種は有効であり, 接種回数は1回でも十分であると考えられた.
著者
成田 一衛 瀬賀 弘行 下条 文武 荒川 正昭
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.1317-1321, 1990

著しい高ナトリウム (Na) 血症によるrhabdomyolysisから急性腎不全を発症し, 血液透析により改善した1例を経験したので, 若干の考察を加えて報告する.<br>症例は58歳男性. 2度の脳出血の既往がある. 昭和63年8月中旬頃から食欲不振を訴え, 肺炎と消化管出血を合併し, 9月17日無尿となって入院した. 血清Naが191mEq/<i>l</i>と著しい高値を示し, CPK, LDH, GOT, アルドラーゼ, ミオグロビン等の骨格筋由来の酵素および蛋白も上昇し, また血漿浸透圧は461mOsm/kgH<sub>2</sub>O, 尿浸透圧も462mOsm/kgH<sub>2</sub>Oと上昇していた. 高張性脱水による高Na血症とrhabdomyolysisによるミオグロビン尿性急性腎不全と診断し, 高Na透析を連日短時間行った. 入院4日日, 3回の透析後から血清Na濃度は正常化し, 計12回の透析治療の後, 離脱し, 11月1日退院した.<br>高Na血症によるミオグロビン尿性急性腎不全の報告は稀で, 本例は7例目である. これらの報告例の基礎疾患をみると, 明らかな内分泌異常を有していたのは尿崩症の1例のみで, 他は高度の高張性脱水が持続したことが高Na血症の原因と考えられた. いずれも血清Na 180mEq/<i>l</i>以上の著しい高Na血症を呈していたが, 予後は全例良好であった. 一般に, 急性の高Na血症の予後は不良で, 165mEq/<i>l</i>を超える場合の致死率は75%といわれており, 骨格筋の壊死を起こすほどの高度の高Na血症は, 徐々に進行する高張性脱水が原因であることが多いと考えられた.<br>治療については, 血液透析が有効であるが, 急激な血漿浸透圧の低下による脳浮腫を防ぐために短時間の高Na透析を頻回に行うことが必要であると考えられた.
著者
榛沢 和彦 林 純一 大橋 さとみ 本多 忠幸 遠藤 祐 坂井 邦彦 井口 清太郎 中山 秀章 田中 純太 成田 一衛 下条 文武 鈴木 和夫 斉藤 六温 土田 桂蔵 北島 勲
出版者
新潟大学
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.120, no.1, pp.14-20, 2006-01-10
被引用文献数
4

新潟中越地震の車中泊では地震による心的ストレス,窮屈な下肢屈曲姿勢,そして脱水により下肢深部静脈に血栓が発生しエコノミークラス症候群(肺塞栓症)が多発した.10/31,11/3,11/7には厚生連佐久総合病院の診療チームと計69名(男性4名)にポータブルエコーで,11/15から12/20までは厚生連魚沼病院に通常のエコー装置を設置しマスコミを通じて呼びかけ82名(男性13名)に下肢静脈エコー検査施行した.2005/2/28から3/31まで再度魚沼病院で検査した方を対象に再度下肢静脈エコーを行った.10/31-11/7に検査した69名中車中泊経験者は60名で,8名にヒラメ静脈浮遊血栓(そのうち1名はCTで肺塞栓症を認めた),14名に壁在血栓を認め,血栓陽性例は全員車中3泊以上であった.11/15-12/20の検査では車中泊は66名(6名は30日以上連泊),そのうち60名が下肢の疼痛や腫脹を訴えヒラメ静脈の充満血栓1名,9名で壁在血栓を含めた血栓を認め,血栓陽性例は全員震災直後から車中4泊以上であった.血栓陽性率は震災後からの経過時間とともに低下し12/20では10%であったが2/28から3/31の診療結果では新たな血栓も認め血栓陽性率は21.9%と上昇を認めた.11/7までの下肢静脈エコーにおける車中泊者のヒラメ筋最大静脈径は8.8±2.5mm(車中泊経験の無いヒラメ筋最大静脈径7.1±2.0mm)より有意に大(n=55,p<0.05),また血栓を認めた被災者のヒラメ静脈最大径10.0±2.6mmで血栓の無い被災者(7.5±4.4mm)より有意に大であった(n=67,p<0.0001).本診療調査により大災害時における車中泊は急性期に肺・静脈血栓塞栓症を起こすだけでなく,静脈の損傷により慢性期に反復性の血栓を生じて血栓後症候群になる危険性も大であることが示唆された.
著者
太田 求磨 藤森 勝也 嶋津 芳典 鈴木 栄一 下条 文武
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.434-438, 2000
参考文献数
8

症例1は39歳女性。1999年8月中旬から, 乾性咳嗽, 倦怠感を自覚し, 受診した。胸部X線写真でスリガラス状陰影を, 呼吸機能で拘束性障害と拡散能の低下を認めた。気管支肺胞洗浄(BAL)でリンパ球優位の細胞数の増加とCD4/8比低下, 経気管支肺生検(TBLB)で類上皮細胞肉芽腫とマッソン体を認めた。ステロイド薬(ス薬)で軽快した。症例2は46歳女性。1999年9月6日から咳嗽, 発熱があり, 受診した。胸部X線写真でスリガラス状陰影が認められた。BALではリンパ球優位の細胞数の増加とCD4/8比の低下, TBLBで類上皮細胞肉芽腫を認めた。ス薬で速やかに軽快した。2症例とも, 血清抗Trichosporon抗体陽性で, 環境誘発試験も陽性であり, 夏型過敏性肺臓炎と診断した。症例1では風呂場改装, 症例2では転居によって再発していない。1999年夏は猛暑で, 新潟県北部地域でも2例の夏型過敏性肺臓炎が経験された。
著者
下条 文武 成田 一衛
出版者
日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.7, pp.1310-1315, 2006-07-10
被引用文献数
1

平成16年9月中旬以後, 新潟県北部の血液透析患者に原因不明の急性脳症が多発し, 死亡例も発生した. 私どもは, 関連病院の透析担当主治医から, 発症者のなかにスギヒラタケ摂取後に発症した症例があるとの情報を得たので, この事実に注目し, スギヒラタケ摂取との関連性について全国の日本腎臓学会員に情報提供を呼びかけた. その結果, スギヒラタケ摂取と急性脳症の発症に強い関連がある32症例の情報を得, 致死率が約30%に及ぶ重篤な臨床経過をとる脳症であることがわかった.