著者
加藤 慶
出版者
東京通信大学
雑誌
東京通信大学紀要 第4号 = Journal of Tokyo Online University No,4 (ISSN:24346934)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-16, 2022-03-31

【目的】本稿は、(1)男性器と女性器の結合に留まらないセックスワークについて、北米のソーシャルワーク専門職団体の方針を明らかにすること、(2)日本のソーシャルワーカーは、LGBTQI のセックスワークについてどのように向き合い、支援を行うべきなのかを検討し提言すること、を目的とする。【研究方法と研究対象】研究方法は文献研究である。研究対象は、菊池(2015)、NASW「セックスワークに関する政策方針」、CASW「非犯罪化、出口戦略、健康の社会的決定要因」である。【提言】(1)LGBTQI を含む全てのセックスワーカーに対して、尊厳と敬意を払い、自己決定を尊重し、そして彼ら彼女らへの暴力を告発していくべきこと。(2)経済的正義、雇用と教育の機会が提供されるように努めるべきこと。(3)今日の性産業をめぐる世界的な議論を理解した上で、個人的な偏見を押し付けることなく、倫理綱領に従い、セックスワーカーに最善のサービスを提供できるような実践を行うべきことを提言した。
著者
若林 真衣子
出版者
東京通信大学
雑誌
東京通信大学紀要 = Journal of Tokyo Online University (ISSN:24346934)
巻号頁・発行日
no.2, pp.105-117, 2020-03-31

アルコール依存症(以下、ア症)の主症状は飲酒に対するコントロール喪失であり、現在の医学では治療対象である主症状が「治癒」困難であるといわれている。しかし断酒を続ける事によって、健常成人と一見変わりない社会生活を送ることが可能である。本稿ではア症者の「回復」を支援するネットワークについて注目し、今までの実践例がなぜ有用だったのか、またどのような課題をもっているのか、「連携」そのものの展開過程・促進要因・阻害要因の観点から分析した。結果、展開過程については個人レベルの顔の見える関係性の段階とその先の広がりや連携内容の底上げの段階があり、支援対象となる地域の現状に応じてその内容が細分される可能性があること、促進要因としては研究会や事例検討会を連携体制構築の要としてきた例は多いが複数の観点からこれが有効であることなど、今までの知見・実践例について一定の根拠を示すことができた。
著者
櫛原 克哉
出版者
東京通信大学
雑誌
東京通信大学紀要 = Journal of Tokyo Online University (ISSN:24346934)
巻号頁・発行日
no.2, pp.157-168, 2020-03-31

本論は、社会の心理学化論と、21 世紀の社会において関心が集められてきた脳神経科学的な知識の流通に関する社会学的研究の動向を要約したものである。社会の心理学化論については、その理論的潮流とそのなかで論じられてきた「心理学」の意味内容、さらには心理学化論に対する批判的な論点を整理した。脳神経科学に関する社会学的研究においては、「心理学と脳神経科学の関係性」と「脳を基軸とした自己とアイデンティティ」の2つの枠組みをもとに整理した。そのうえで、今後の理論的パースペクティヴの展開と研究の展望について検討した。
著者
植田 美津恵 山本 直子
出版者
東京通信大学
雑誌
東京通信大学紀要 第4号 = Journal of Tokyo Online University No,4 (ISSN:24346934)
巻号頁・発行日
no.4, pp.95-112, 2022-03-31

Of the 61 picture books in the so-called “classic picture books,” only “Suho’s White Horse” addressed death squarely. Japanese picture books are often rewritten with scenes of death and cruelty, the reason for this may be the influence of the education policy since the Meiji period and the involvement of the national character of Japanese people. From the 1970s, the number of picture books on the theme of death increased, and it is assumed that this was due to the increase in the number of suicides after the collapse of the bubble economy. Also there was also a murder in which an elementary school student was the perpetrator. Recently, while the number of suicides decreasing, especially the number of suicides young people increasing tendency, which increased the need to teach the importance of life in educational settings.The role of picture books in shaping one’s view of life and death was discussed by highlighting the similarities between “The Cat Who Lived a Million Times” were published in 1977 and have been long-time sellers.and “Suho’s White Horse,”
著者
岡田 哲郎
出版者
東京通信大学
雑誌
東京通信大学紀要 第4号 = Journal of Tokyo Online University No,4 (ISSN:24346934)
巻号頁・発行日
no.4, pp.47-62, 2022-03-31

国の「地域共生社会」政策で「地域の支え合い」が強調される中、社会福祉学においてその行為をいかに位置付けるかが問われている。本研究では、日本の社会福祉学及び地域福祉の礎を築いた岡村重夫が「相互扶助」をいかに捉え、自身の理論体系に取り入れたのかを明らかにするため、「民俗としての福祉」概念を軸として、「岡村理論」に内在する「相互扶助」をめぐる葛藤を読み解いた。今日の「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」における「地域・民族固有の知(indigenous knowledge)」を先取りした論としても、「民俗としての福祉」概念から再照射した「岡村理論」は注目される。