著者
向井 良人
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.49-62, 2012-03-31
著者
多久島 寛孝 山口 裕子 水主 いづみ
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-16, 2005-03-15

老人保健施設の痴呆性専門療養棟において,ケア・スタッフが痴呆性高齢者の訴えや行動に対応した場面を,参加観察法で収集した。収集した場面を質的に分析し,ケア・スタッフのケア提供へ影響しているものについて検討した。その結果,以下の点が明らかになった。1.ケア提供へ影響するものとして,【痴呆性高齢者の日常生活支援のあり方】【痴呆性高齢者の思いとのすれ違い】【否定的感情の表面化】の3つのコアカテゴリーが抽出された。2.【痴呆性高齢者の日常生活支援のあり方】には,〔基盤となる姿勢〕〔創造的な支援〕の2つのカテゴリーが抽出され,〔基盤となる姿勢〕には,『入所高齢者への気遣い』『信頼を壊さない』『安全の保障』『入所高齢者の感情への寄り添い』の4つのサブカテゴリーが含まれ,〔創造的な支援〕には,『探索』『入所高齢者の力を生かす』の2つのサブカテゴリーが含まれた。3.【痴呆性高齢者の思いとのすれ違い】には,〔個人的体験の優位さ〕〔個人の意識の差〕〔その場をしのぐ〕の3つのカテゴリーが抽出され,〔個人的体験の優位さ〕には,『体験的ルーティン化』『強引さ』の2つのサブカテゴリーが含まれ,〔個人の意識の差〕には,『優先順位』『見過ごし』『無意識』の3つのサブカテゴリーが,〔その場をしのぐ〕には,『説得』『関心を寄せない』の2つのサブカテゴリーが含まれた。4.【否定的感情の表面化】には,〔混乱〕の1つのカテゴリーが抽出され,〔混乱〕には,『困難感』『答えが出ない』『引きずられ』の3つのサブカテゴリーが含まれた。
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安東 由喜雄 安楽 健作
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はカチオン系界面活性剤とポリエチレングリコール修飾酵素をコレステロール測定系に加えるとHDL3-Cを選択的に可溶化することを見いだし、分離操作が不要で簡便なHDL3-Cのホモジニアス測定法を開発した。尚,HDL2-Cは総HDL-Cから差し引いて求めることとした。本法の同時再現性は,HDL3-Cが10~30 mg/dlの範囲でCV%2.0%以下であり,本法と超遠心法との相関はn=20 回帰式y=0.884x+4.807,r=0.841となった。本法は自動分析装置を用いてHDL3-Cを微量検体で簡便・迅速に測定できることから,動脈硬化性疾患の治療・予防に大きく貢献できるものと考えられる。
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安楽 健作 安東 由喜雄
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害剤は、アポリポ蛋白(アポ) Eを多く含み粒子サイズの大きいアポE-rich HDLを上昇させることが知られているが、本HDLの測定法やコレステロール引き抜き能などの抗動脈硬化能については報告されていない。本研究で、我々は、CETP阻害剤と同様にアポE-rich HDLが上昇するCETP欠損や胆汁うっ滞患者血清を用いて、本HDLの抗動脈硬化能を明らかにし、さらに、アポE-rich HDLに反応特異性の高いポリアルキレングリコール誘導体の界面活性剤を用いて、アポE-rich HDLを含む総HDLのコレステロール測定法を開発した。
著者
大澤 早苗 内山 久美 横山 孝子
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.69-78, 2005-03-15
被引用文献数
1

看護は,多様な背景を持つ人間の生活に関わり直接的に人間と人間の関係そのものを主体とする職業である。しかし,今日の看護学生の対人関係能力はきわめて低い傾向にあるといわれている。そこで,看護教育における職業的発達の取り組みへの示唆を得るため,卒業前の学生を対象に意識調査を実施し,それを「看護識者の醸し出す雰囲気や姿勢」として定義されたPLCを指標に検証した結果,以下のことが分かった。学生が専門職者としての人間的資質として求めたものは,<思いやり><やさしさ>などで構成される【親近感】【第一印象】のカテゴリーであった。学生は患者-看護師の二者関係が成立する最も基本的な視座を提えることができていた。看護における職業的社会化にとって必要なこととして,専門職業人としての人間的資質を獲得できるよう,リフレクティブシンキングができる環境を整え段階的に支援する教育システムの重要性と今後の縦断的研究の必要性が示唆された。
著者
岩井 学
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.83-98, 2006-03-31

ピーター・パンは常にフェアであることを信条とする。しかしフェアプレイへのこだわりはこの永遠の少年に特有なものではなく,20世紀初頭のイギリスに広く浸透していた。というのも大英帝国衰退のさなか,フェアプレイの精神は愛国主義,そして帝国主義を押し進めるイデオロギーへとつながっていくからである。ピーター・パンは,大人になりたがらない子どもという,時代を超えたある種の原型とみなされることが多いが,彼の存在には20世紀初頭の時代状況が色濃く刻印されているのである。本稿では,大英帝国の衰亡を目の当たりにしていた20世紀初頭英国の上流,中産階級の抱いていた不安や焦り,そこから生まれた愛国主義的イデオロギー,そしてそれを流布させる装置として機能した当時の教育,といったものからテクストを読み解き,ピーター・パンとその仲間の少年たちを描くことが当時のイギリスでどのような意味を持ちえたのか,そしてこの小説全体には当時の閉塞感がどのような形で現れているのか分析してみたい。
著者
岩井 学
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.109-120, 2005-03-15

H・G・ウェルズの『モロー博士の島』(1896年)は、ダーウィンやT・H・ハクスリーの進化論思想を用いて分析されたり、またスウィフト的寓意として解釈されてきた。しかしこれらの批評には、このテクストが産み出された当時の歴史的状況に対する考察が欠けている。本稿では、『モロー博士の島』を社会的、政治的文脈のなかに位置づけ、当時の社会情勢がこのテクストのなかにどのように表れているかを分析した。ロンブローゾ、ウィリアム・ブース『暗黒のイングランドとその出口』、ノルダウ『退化』といったテクストを参照しながら、初稿と出版稿との比較、白人の登場人物の象徴的意味、物語の寓意的意味といった点を中心に分析し、『モロー博士の島』が、大英帝国の衰退に対する恐怖心から生まれたイデオロギー-世紀末大英帝国の人種退化、植民地主義、優生学をめぐる言説-の交錯し重なり合った重層的なテクストであることを論じた。