著者
正高 佑志 池田 徳典 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001299, (Released:2019-06-27)
参考文献数
22

脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.
著者
中根 俊成 安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1571-1578, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
22

アセチルコリン(acetylcholine:ACh)は中枢・末梢両方の神経系で作用する神経伝達物質である.アセチルコリン受容体(acetylcholine receptor:AChR)もまた中枢・末梢両方の神経系に存在する.これまでAChRに対する自己抗体は重症筋無力症における筋型AChR(神経筋接合部)に対する自己抗体が最も知られており,抗体介在性の自己免疫疾患の代表として疾患の病態解明が進められてきた.今回,我々はそれ以外の2種類のムスカリン性AChR(muscarinic AChR:mAChR)とニコチン性AChR(nicotinic AChR:nAChR)に対する抗体の臨床研究の現況について,脳炎・脳症の視点から触れた.特に後者では,自律神経節に存在する神経型nAChR(本稿ではこれをganglionic AChR(gAChR)と称する)における広範な自律神経障害と自律神経系外の症状としての中枢神経症状と内分泌障害について述べた.
著者
中根 俊成 向野 晃弘 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.352-360, 2017 (Released:2017-12-13)
参考文献数
53
被引用文献数
1

神経系と免疫系はヒトを支えるふたつの広大なシステムである.両者の相関はこれまでにも研究がなされてきているが,神経系による免疫系制御が昨今注目を集めている.自律神経系に関してはinflammatory reflex仮説をベースに迷走神経刺激による幅広い抗炎症作用が臨床への応用という視点からも期待されている.また交感神経系によるリンパ球動態制御については,近年その分子基盤が解明され,さらなる研究の進展が期待される.元来,神経系は免疫系の入り込めない隔絶組織であり,生理的には免疫反応は起こり得ないと認識されている.しかし各種の免疫異常とバリアの破綻が相俟って神経免疫疾患が発症する.自律神経系については自律神経節に存在するアセチルコリン受容体は自己免疫の標的となることが知られている.血清中で抗自律神経節アセチルコリン受容体抗体を認め,広範な自律神経障害を呈する疾患,自己免疫性自律神経節障害の臨床的特徴が明らかになりつつある.免疫系と自律神経系の間で「接点」として働く神経伝達物質と受容体,自己抗体について述べ,その「相関」の結果,起こってくるさまざまな変化や臨床的事項について概説した.
著者
正高 佑志 池田 徳典 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.405-411, 2019 (Released:2019-07-31)
参考文献数
22

脳神経内科医を対象に,欧米では既に利用されている医療大麻の研究及び利用の是非に関する意識調査を行った.医療大麻に関する情報提供を受けた群(31名)と受けていない群(81名)との間で検討を行ったところ,両群共に大麻の研究利用に関して半数以上の医師が理解を示した.一方,大麻の医療利用に関しては暴露群の方が許容する傾向が強かった.これらの許容性は医療に関する大麻の情報を適切に有する医師に多く見られたことから,情報提供に一定の成果があったことが示唆された.この結果は本邦において一部の脳神経内科医が大麻の有用性を支持していることに加え,適切な情報提供が大麻への理解を向上させる可能性を示した.
著者
中根 俊成 渡利 茉里 安東 由喜雄
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.383-393, 2018-04-01

自己免疫性自律神経節障害(AAG)では抗ニコチン性自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)抗体の出現を血清中に認める。gAChRの構成サブユニットはα3とβ4であり,いずれかもしくはいずれに対しても自己抗体の産生が認められる。この抗gAChR抗体がAAGの病因であることを証明するin vitro実験は既に報告されており,患者血清IgGによる疾患移送もなされている。われわれは本邦におけるAAGの臨床像として,①慢性経過の症例が多い,②広範な自律神経障害を示すことが多いが,部分的自律神経障害(体位性起立性頻脈症候群,慢性偽性腸閉塞症など)の症例でも陽性と呈することがある,③extra-autonomic manifestations(自律神経外症状)として中枢神経症状(精神症状,記銘力障害など),内分泌障害などを呈することがある,④一部の症例において悪性腫瘍,膠原病などの自己免疫疾患の併存がみられる,などを報告してきた。これら以外の未解決の事項としてAAGと同じく自律神経障害を病態の主座とするニューロパチー(急性自律感覚ニューロパチーなど)が同じ疾患スペクトラム上にあるものか,異なるものか,が挙げられる。われわれはこれらの病像にアプローチするために他のニコチン性AChRサブユニットに対する自己抗体の検出についても研究を進めている。
著者
中根 俊成 樋口 理 高松 孝太郎 松尾 秀徳 安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本臨床神経生理学会
雑誌
臨床神経生理学 (ISSN:13457101)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.95-100, 2018-04-01 (Released:2018-04-17)
参考文献数
35

2011年, 低密度リポ蛋白質受容体関連蛋白質4 (LRP4) の細胞外領域に対する自己抗体が一部のMG患者血清中に存在することが確認された。しかしその頻度については研究によってばらつきがあり, 国際的な枠組みでの疫学調査, 抗体測定方法間のvalidationを解決法として考慮すべきであろう。LRP4はアセチルコリン受容体, MuSK同様, 神経筋接合部形成に必須である。そして「アグリン仮説」を担い, 筋膜上でアグリン, MuSKと複合体を形成している。抗LRP4抗体の作用機序としては神経筋伝達機能を保持するためのシグナルの機能的阻害が推測される。病態の推測と受動・能動免疫による動物モデルが作製可能である点から病原性のある自己抗体として捉えられている。抗LRP4抗体については重要な問題が提起されている。それは筋萎縮性側索硬化症を筆頭とする他の神経筋疾患におけるLRP4抗体の陽性症例である。われわれが測定しているLRP4抗体とはいったい何か。最新の知見を交えて概説したい。
著者
植田 光晴 孟 薇 大林 光念 堀端 洋子 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第35回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.121, 2007 (Released:2007-10-12)

【目的】 関節リウマチなどに併発するAAアミロイドーシスの発症機構は不明な点が多く確立された治療法もない。本研究ではT細胞とアミロイド沈着機構の関連に注目し、実験的AAアミロイドーシス惹起マウスに対しT細胞の活性化を抑制する免疫抑制剤であるFK506を用いアミロイド沈着抑制効果をはじめとする病態変化を解析した。 【方法】2種類の方法(急性アミロイド惹起と慢性アミロイド惹起)でマウスにAAアミロイドーシスを惹起しFK506を連日投与した。組織学的にアミロイド沈着量の変化を検討した。同時に血清中のSAA、IL-1β、IL-6、TNF-α濃度の変化をELISA法で測定した。また、肝臓でのSAAのmRNAレベルをリアルタイムRT-PCR法で検討した。更に、SCIDマウスとヌードマウスのアミロイド形成性を検討した。 【結果】FK506は用量依存性を持ってアミロイドーシス抑制効果を示した。FK506投与でアミロイド前駆蛋白質であるSAAの血清濃度とそのmRNAレベル、SAAの産生を刺激するIL-1β、IL-6は抑制されなかった。また、SCIDマウスとヌードマウスはAAアミロイドーシス惹起に対して抵抗性を示した。 【結語】 AAアミロイドーシス形成機構にT細胞の動態が関与していると考えられる。T細胞の活性化抑制をターゲットとする治療戦略はAAアミロイドーシスの新たな治療法となる可能性がある。
著者
稲富 雄一郎 中島 誠 米原 敏郎 安東 由喜雄
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
pp.17007, (Released:2017-08-25)
参考文献数
21

55歳,男性.1年前に脊髄症と診断されていた.言動異常が出現した1カ月半後の初診時に,左同名半盲,記銘力低下,超皮質性感覚失語を認めた.また医師の面接時に,自身の症状,心配事について,毎回ほぼ同じ語句で一通り話してから診察に応じる反復性発話を認めた.スケジュールへの固執もあり,予定変更に際してしばしば激怒した.MRIでは右下前頭回,上~下側頭回,角回,側頭後頭境界,左縁上回から上側頭回の深部白質に病変を認めた.多発性硬化症の再燃と診断された.急性期以後は,症候は徐々に改善した.本例の反復性発話は,オルゴール時計症状に該当すると考えられた.
著者
前谷 勇太 上利 大 野村 栄一 植田 光晴 安東 由喜雄 山脇 健盛
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.430-434, 2016 (Released:2016-06-22)
参考文献数
23
被引用文献数
5 7

症例は76歳女性.58歳で硝子体混濁,68歳で歩行障害と四肢の異常感覚が出現し,遺伝子検査で異型トランスサイレチンVal30Metホモ接合体を認め,家族性アミロイドポリニューロパチーと診断された.両親が血族婚で,叔母が類症疑い.歩行障害が徐々に増悪.76歳時に入院.小脳萎縮の進行と左右対称性のヘモジデリン沈着を認めた.脳アミロイドアンギオパチーで見られる限局型脳表ヘモジデリン沈着症(superficial siderosis; SS)とは分布が異なることから,古典型SSの合併と診断した.Val30Metホモ接合体患者では中枢神経症状を伴うことがあり,その原因として古典型SSの可能性が考えられた.
著者
中根 俊成 向野 晃弘 南 ひとみ 磯本 一 樋口 理 岡西 徹 村田 顕也 井戸 章雄 松尾 秀徳 中尾 一彦 安東 由喜雄
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.309c, 2017 (Released:2017-11-25)

【背景】Autoimmune gastrointestinal dysmotility(AGID)は2008年に米国より提唱された疾患概念であり,食道・胃の運動障害や慢性偽性腸閉塞(CIPO)の一部が相当する.抗自律神経節アセチルコリン受容体(gAChR)抗体による自己免疫性自律神経節障害(AAG)の限局型とも言われているが,臨床像および治療反応性に関する検討は世界的にも少なく,本邦における検討が急務である.【目的】本邦におけるAGIDの臨床像,治療反応性を明らかにする.【方法】1)抗gAChR抗体陽性AAG患者123症例における消化管運動障害(食道機能障害,胃不全麻痺,麻痺性イレウス)の頻度,臨床像,治療内容と反応性を調査する.2)新たにアカラシア28症例,CIPO14症例における抗gAChR抗体陽性頻度,臨床像を検討する.【結果】1)123症例のうち,上部消化管障害を48症例(39%),下部消化管障害を89症例(72%)に認め,そのうち食道機能障害6症例,胃不全麻痺1症例,麻痺性イレウス3症例を確認し,一部には免疫治療による改善症例が存在した.2)アカラシアでは6症例,CIPOでは7症例の抗体陽性者が存在し,自律神経障害(乾燥症状や膀胱機能障害など)の併存を確認した.【結論】AGIDは重度の消化管症状を呈するが,抗gAChR抗体陽性症例が存在し,それらでは自律神経障害の併存が確認された.AGIDがAAGの限局型に相当するか,さらなる集積と検討が必要であるが,免疫治療によって制御できる可能性が示された.
著者
大林 光念 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1044-1046, 2014
被引用文献数
2

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーや糖尿病性末梢神経障害は発症早期から小径線維ニューロパチーを呈するが,有用な臨床指標がない現状では,この病態の早期発見は容易でない.そこでわれわれは,小径線維ニューロパチーを早期診断するため,レーザードプラ皮膚血流検査や換気カプセル法による発汗検査,汗腺の形態チェック,胃電図,胃内の小径線維やCajal細胞の密度測定,<sup>123</sup>I-MIBG心筋シンチ,血圧オーバーシュート現象をみる起立試験などの自律神経機能検査を考案した.これらは,ATTR V30M保因者やIGT患者にみられる早期の小径線維ニューロパチーを診断しえる.また,これらにC,Aδ特異的痛覚閾値検査を加えることも,診断に有用となる.
著者
増田 曜章 植田 光晴 安東 由喜雄
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.158-161, 2016 (Released:2016-08-10)
参考文献数
11

Peripheral neuropathies are common disorders in the daily medical practice, and often cause weakness, numbness, pain, and autonomic symptoms. The several specific clinical laboratory tests are useful for the diagnosis of peripheral neuropathies. Nerve conduction studies are not useful for evaluating small fibre neuropathy, such as early stage of transthyretin–related familial amyloid polyneuropathy (TTR–FAP) characterized by involvement of small fibres such as Aδ and C fibres. To evaluate small fiber neuropathies, various autonomic function tests, such as laser–Doppler flowmetry, sweating tests using capsule type sweating ratemeter, electrogastrography, R–R interval study, 123I–MIBG myocardial scintigraphy, head–up tilt test, and intraepidermal nerve fiber density, are useful. TTR–FAP is an autosomal–dominant inherited disorder characterized by systemic accumulation of amyloid fibrils in various organs and peripheral nerves. To date, more than 130 mutations in the TTR gene have been reported. In TTR–FAP, several therapies have been developed in the recent decade. In addition to liver transplantation, tetramer structure stabilizers were developed. Also, gene silencing drugs are under clinical trials.
著者
大林 光念 安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1044-1046, 2014 (Released:2014-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーや糖尿病性末梢神経障害は発症早期から小径線維ニューロパチーを呈するが,有用な臨床指標がない現状では,この病態の早期発見は容易でない.そこでわれわれは,小径線維ニューロパチーを早期診断するため,レーザードプラ皮膚血流検査や換気カプセル法による発汗検査,汗腺の形態チェック,胃電図,胃内の小径線維やCajal細胞の密度測定,123I-MIBG心筋シンチ,血圧オーバーシュート現象をみる起立試験などの自律神経機能検査を考案した.これらは,ATTR V30M保因者やIGT患者にみられる早期の小径線維ニューロパチーを診断しえる.また,これらにC,Aδ特異的痛覚閾値検査を加えることも,診断に有用となる.
著者
安東 由喜雄
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.797-803, 2015 (Released:2015-11-21)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

神経関連アミロイドーシスはとりわけこの10年の間に治療の道が開けてきた.ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシスではそれぞれ新規化学療法剤やIL6レセプター抗体による治療が奏功している.遺伝性アミロイドーシスの中で最も患者数の多いトランスサイレチン(transthyretin; TTR)型家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloidotic polyneuropathy; FAP)は,肝移植,TTR4量体安定化剤,gene silencing剤と次々に治療法が開発され,根治目前の状態が拓かれつつある.神経関連アミロイドーシスとしては,ALアミロイドーシス,AAアミロイドーシス,透析関連アミロイドーシス,FAP,老人性全身性アミロイドーシス(senile systemic amyloidosis; SSA),脳限局アミロイドーシスとしてアルツハイマー病,プリオン病などがあげられるが本稿では全身性アミロイドーシスに絞ってそれらの診断・病態・治療について述べる.
著者
安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.375-382, 2008-10-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
26

トランスサイレチン (TTR) は血中に約20~40mg/dl存在する半減期1.9日の血漿蛋白質の1つである。本蛋白質は髄液にも他の蛋白質と比較して高濃度血中に存在し, アルツハイマー病, うつ病, 鉛中毒などの中枢神経系の疾患にTTR代謝が重要な役割を及ぼしていると考えられている。レチノール結合蛋白, サイロキシンと結合し, 血中で4量体として機能する。トリプトファンを多く含む蛋白質の1つとして位置づけられており, 栄養指標として重要な蛋白であることから, 栄養サポートチーム (NST) にも活用されている。しかし, 本蛋白は反急性期蛋白で, 炎症や感染により, 血中濃度が影響を受けるので, その血中濃度を病態と関連づけるのは難しい側面もある。本蛋白質はβシート豊富な構造をもつことから遺伝的に変異したTTRは家族性アミロイドポリニューロパチー (FAP) の原因蛋白であることも知られているが, 最近正常のTTRも老人性アミロイドーシスの原因蛋白質となることが注目されている。血中の異型TTRは主として肝臓で産生されることから, FAP患者に対して肝移植が行われ, 効果を挙げている。TTRはこれに加え中枢神経系の様々な疾患や糖尿病, 脂質代謝などに重要な働きを示すことが明らかになってきた。
著者
石黒 旭代 山内 露子 今田 龍市 西村 仁志 池田 勝義 杉内 博幸 大林 光念 安東 由喜雄
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.767-772, 2014-11-25 (Released:2015-01-10)
参考文献数
6

熊本県における特定健康診査の結果では,HbA1cが基準値(5.6%)以上を呈する受診者の比率が,地域によって大幅に異なることが判明した.この原因を究明し,是正措置を講じるために,HbA1c測定に関する機器や試薬による測定値の違いについて調査した.測定対象はインフォームドコンセントの得られた患者血液20検体,および標準品JCCRM411-2を用いた.HPLC法,免疫凝集比濁法,酵素法で各検体のHbA1c値を測定し,その結果を比較した.測定の結果,HbA1c 5.6%での患者血液における方法間差が最大0.3%であった.標準品の測定値は,HPLC法で表示値より+0.2%,酵素法で+0.1%高値であったが,免疫凝集比濁法での結果は表示値とほぼ一致していた.測定機器,試薬の違いがHbA1c実測値に差異を生じる要因となった可能性がある.この問題を是正するため,HbA1c測定の標準化に向けた早急な取り組みが必要である.
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安東 由喜雄 安楽 健作
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はカチオン系界面活性剤とポリエチレングリコール修飾酵素をコレステロール測定系に加えるとHDL3-Cを選択的に可溶化することを見いだし、分離操作が不要で簡便なHDL3-Cのホモジニアス測定法を開発した。尚,HDL2-Cは総HDL-Cから差し引いて求めることとした。本法の同時再現性は,HDL3-Cが10~30 mg/dlの範囲でCV%2.0%以下であり,本法と超遠心法との相関はn=20 回帰式y=0.884x+4.807,r=0.841となった。本法は自動分析装置を用いてHDL3-Cを微量検体で簡便・迅速に測定できることから,動脈硬化性疾患の治療・予防に大きく貢献できるものと考えられる。
著者
杉内 博幸 松嶋 和美 安楽 健作 安東 由喜雄
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害剤は、アポリポ蛋白(アポ) Eを多く含み粒子サイズの大きいアポE-rich HDLを上昇させることが知られているが、本HDLの測定法やコレステロール引き抜き能などの抗動脈硬化能については報告されていない。本研究で、我々は、CETP阻害剤と同様にアポE-rich HDLが上昇するCETP欠損や胆汁うっ滞患者血清を用いて、本HDLの抗動脈硬化能を明らかにし、さらに、アポE-rich HDLに反応特異性の高いポリアルキレングリコール誘導体の界面活性剤を用いて、アポE-rich HDLを含む総HDLのコレステロール測定法を開発した。