著者
石井 容子 伊藤 奈央 松村 優子 横山 孝子 青山 真帆 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.283-291, 2023 (Released:2023-12-27)
参考文献数
16

【目的】緩和ケアの包括的な評価尺度であるIntegrated Palliative care Outcome Scale(IPOS)の非がん患者への適用を検討する.【方法】非がん患者と患者をケアする医療者, 各20名にIPOSの調査票へ回答してもらい,その調査票に対するコグニティブインタビューを行った.インタビュー内容は,質的分析手法である内容分析を用いて分析した.【結果】患者・医療者ともに約半数から9割がIPOSの全17項目に対して答えづらさやわかりにくさを感じなかったと回答し,表面的妥当性が確認された.また,分析結果を専門家で検討し,IPOSの内容的妥当性が確認され,非がん患者に特徴的なIPOSの項目も明らかになった.【結論】非がん患者に対するIPOSの表面的・内容的妥当性が確認され,IPOSは非がん患者の緩和ケアの包括的な評価ツールとして活用できることが明らかになった.
著者
鷹野 和美 横山 孝子 古田 睦美 清水 貞夫 鷹野 和美
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

異なる社会層からなる地域コミュニティの助け合いのしくみづくりにおける、地域通貨の果たす役割を実証的に研究した。具体的には学生および卒業生からなるNPO組織「学生地域暮らしづくり考房こみっと」の交流施設「縁舎」を拠点都市て、長野大学の学生という若い世代の新住民と、長野大学が位置する上田市下之郷地区において住民の主要な構成要素である65歳以上の老人の組織「双葉会」との交流活動が行われたが、そこにおいて、同NPO団体が発行する地域通貨「イクタル」の導入実験が行われた。1.高齢者、地域住民、学生に対するニーズ調査が行われ、その結果に基づいて交流活動および定期的な「御用聞き訪問」、夏野菜の提供による野菜市、脳いきいきテストなどが「イクタル」を媒介として行われた。2.3年間の実験を通して、地域通貨イクタルの周知度、地域通貨の流通量が増大し、これまで交流のなかった異世代間の交流が促進された。交流活動や脳いきいきテスト、かなひろいなどを通じて、高齢者の引き込むりを予防し、助け合いを行うしくみが模索された。3.3年間の実験を終えて、高齢者が、継続的に若い世代と関わる場合の地域通貨のあり方について、利用者調査から考察をいった。異なる社会層が助け合う地域コミニティの形成に、地域通貨の導入が好意的に受け入れられ、威力を発揮することが実証されるとともに、地域通貨システムの改善点や課題も抽出された。
著者
須田 秀俊 横山 孝子 松島 松翠
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.103, 2010

<緒言>若月俊一により確立された八千穂村の全村健康管理事業は、50年を経過している。その始まりを調査するなかで、これは戦前からの農村保健運動の成果をとりいれた経過が明らかになったので報告する。 <結果および考察>農村医学会が発足する以前の戦時下すでに、岩手県をはじめとして産業組合が組織をあげて農村保健運動を推進していた。この実行組織として全国協同組合保健協会では、病院建設、国民健康保険代行、保健婦養成の3点に重点をおき、病院建設は岩手県、保健婦養成は島根県や山形県をモデルに進めていた。佐久病院設立においても、そのモデルは岩手県の広域医療組合であった。そのほか、労働科学研究所の農村労働調査所の成果や、当時開設された農村保健館の事業、そして恩賜財団母子愛育会による愛育村の保健婦活動の成果をとりいれていた。そして対住民の現場においては、保健婦業務支援の保健補導員を下部組織におき、産業組合病院が保健指導を支援することを理想としていた。これは、戦後昭和30年代に若月俊一が、八千穂村をフィールドとした全村健康管理活動につながる前史である。 このほか、各地の産業組合病院では、症例研究会が開催されており、栃木県の足利病院や、秋田県の平鹿病院では特に盛んであった。また無医村対策として、保健婦を町村ごとに作られた、国民健康保険組合におくことを目的に保健婦養成に力を入れていた。 しかし昭和18年に、それまで国策の健民運動にそった農村保健運動は、治安維持法違反による指導幹部逮捕により活動停止状態となり、終戦を迎えた。戦時下における保健協会の指導幹部は黒川泰一 高橋新太郎 小宮山新一の3人であった。 昭和30年代に八千穂村の全村健康管理がはじまったころは、各地で数多くの同様な取り組みがなされていた。しかし現在も継続されているのは、八千穂村(現佐久穂町)と沢内村(現西和賀町)ほか数例しかない。農村医学の性質を見出すには、農村保健運動から現在に至る普遍性とは何かの検討が必要である。
著者
横山 孝子 大澤 早苗 嶋井 久美子 高水 佳寿美
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
no.2, pp.59-68, 2005-03-15

看護教育における臨地実習は,複雑な看護場面の中での経験を学習者自らが意味づけしていくという学習形態をとり,その意味づけをどのようにしていくかが学生の成長に大きく関わっている。今回,「主体的な学習姿勢への変化」を指導目標に設定し,臨地実習に臨んだ一学生の学習過程より"経験の意味づけを抽出し自己効力の影響因子の視座から分析した。その結果,学生の経験の意味づけの深まりと共に学生の自己効力は促進,維持されていた。そのことで学生は,1)不安から安心状態へと変化し,2)それを機に受動的から能動的姿勢へと変化して,3)自分自身と向き合うという自己の対象化ができ,4)更に意識的に自己の課題に取り組み,その達成に向かうという,4段階のステップを踏み自己の成長に繋がっていた。そのような学習過程の基盤になっていたのは,実習環境からの「肯定的な関わり」が有用であったと考えられる。

1 0 0 0 OA 農夫症の研究

著者
松島 松翠 寺島 重信 磯村 孝二 市川 英彦 横山 孝子 大柴 弘子 井出 秀郷 萩原 篤 清水 博昭 白岩 智恵子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.135-144, 1969-03-01 (Released:2011-02-17)

長野県南佐久郡八千穂村の三部落から, 40才代及び50才代の男女113名を選び, 2年間にわたって農夫症々候群を中心に追跡調査を行なった。そのうち4回全部検診及び調査のできた81例について, 次のような結果を得た。1) 労働時間は男に比べて女に多く, かつ逆に睡眠時間は女の万に短かい, とくに40才代にかいて著明である。あきらかに女の万が過労状態であるといえる。また疲労の自覚症状や一般的健康状況, 検査結果, 有病率なども一般に女の万に悪い。即ち女の万が健康障害が多い。2) 農夫症総点数は, 一般に40才代より50才代が, 又, 男より女に多く, 農繁期に増加している。最近2年間の経過では, 男女とも増加しているが, 女の万が増加率が高い。3) 農夫症総点数は, 耕地面積 (一人当り) の多いほど, また乳卵摂取量の少ないほど高い。4) 農夫症総点数は, 疲労の自覚症状 (とくに身体的症状)、有病率と著明に相関している。また諸検査結果 (血圧, 血液, 肝機能等), 心電図, 胃レ線, 腰部レ線結果による異常と若干の相関が認められる。5) 以上の点から, 農夫症は慢性疲労状態, 不健康状態, 疾病状態を表わす一つの健康示標であるといえる。これを減らしていくためには, 農家の生活及び農業全般の根本的な改善がなされなければならない。
著者
大澤 早苗 内山 久美 横山 孝子
出版者
熊本保健科学大学
雑誌
保健科学研究誌 (ISSN:13487043)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.69-78, 2005-03-15
被引用文献数
1

看護は,多様な背景を持つ人間の生活に関わり直接的に人間と人間の関係そのものを主体とする職業である。しかし,今日の看護学生の対人関係能力はきわめて低い傾向にあるといわれている。そこで,看護教育における職業的発達の取り組みへの示唆を得るため,卒業前の学生を対象に意識調査を実施し,それを「看護識者の醸し出す雰囲気や姿勢」として定義されたPLCを指標に検証した結果,以下のことが分かった。学生が専門職者としての人間的資質として求めたものは,<思いやり><やさしさ>などで構成される【親近感】【第一印象】のカテゴリーであった。学生は患者-看護師の二者関係が成立する最も基本的な視座を提えることができていた。看護における職業的社会化にとって必要なこととして,専門職業人としての人間的資質を獲得できるよう,リフレクティブシンキングができる環境を整え段階的に支援する教育システムの重要性と今後の縦断的研究の必要性が示唆された。