著者
中出 麻紀子
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では大学生とその親に自記式質問紙調査を実施し、大学生の意識・生活習慣や親による食育実施を含む様々な側面から朝食欠食の原因を探ることを目的とした。その結果、朝食欠食者は男女共に一人暮らしの人に多かった。また、女子学生の朝食欠食者では、喫煙習慣者、1時以降の就寝、朝食を欠食しても良いと考える人、夕食~就寝までの間に間食をする人、母親が朝食欠食する人が多く、アルバイト従事者、昼食~夕食までの間に間食をする人、母親の最終学歴が短大・専門学校以上、母親がパート勤務の人には朝食欠食者が少なかった。さらに、子どもの頃に親が食べ物の栄養的価値について子どもと話し合ったり、健康的な食べ物を楽しんで食べるところを見せていた人では朝食欠食者が少なかった。以上の結果から、大学生の朝食欠食には不健康な生活習慣や意識、母親の朝食欠食習慣が関連しており、母親による子どもの頃の食育は朝食欠食を防止し得る要因であることが明らかとなった。
著者
田畑 泉
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、まず身体トレーニングは低い強度でも高い強度でも疲労困憊に至るまで行えば、ミトコンドリアの新生の機序に関係のある核内蛋白質として注目されているPGC-1α(peroxisome proliferator-activated receptor γ coactivator-1)の骨格筋での発現には差がないこいことを明らかにした。しかし、この高強度・短時間トレーニング後のラット血中乳酸濃度は11mM以上に上昇し、疲労困憊に至るような運動であると考えられる。したがって、健康増進のための運動処方としては用いることができない。そのため高強度・短時間運動トレーニングを健康増進のための運動処方として用いるためには、より少ない運動セット回数でもある程度の効果が得られることを確認する必要がある。また、容量依存的に増加するか否かについても検討はなされていない。そこで、次に、SD系ラットに体重の18%の重りを負荷した、20秒間の水泳運動を3回,9回,14回、各セット感に10秒間休憩を挟み1日1回5日間行った場合の前肢筋epitrochlearisのPGC-1α発現を見た。その結果、疲労困憊に至らない3回の高強度間欠的運動トレーニング後のPGC-1αの発現量は、従来、運動トレーニングとしてPGC1α発現の最大刺激と考えられてきた疲労困懲に至る14回の間欠的トレーニング後のものと差はなかった。さらに、PGC-1αの発現の機序に関係していると考えられているAMPK活性は3回の間欠的運動後でも高い値であることが明らかとなり、PGC-1α発現は、AMPK活性が、それほど高くなくても、充分に高くなることが明らかとなり、さらにヒトを対象としても疲労困憊に至らないような最大下回数の高強度短時間間欠的運動トレーニングが効果的である可能性が示唆された。
著者
谷本 道哉
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、比較的軽負荷強度で行う筋発揮張力維持法(Low-intensity resistance exercise with slow movementand tonic force generation:LST)を用いたレジスタンストレーニングの動脈・血管系に与える影響について調べることであった。以下の横断研究と運動介入から以上の検証を行った。横断研究結果30歳-50歳の男性中年者層の、(1)主にLSTに近い形態でのレジスタンストレーニングを十年以上続けている競技ボディビルダー(BB群)、(2)主に高負荷を用いたレジスタンストレーニングを十年以上続けている競技パワーリフター(PL群)、(3)定期的な運動習慣のない対象群(CON群)の3グループにおける動脈硬化度等の測定を行った。動脈硬化度を示す動脈スティッフネスはBB群、PL群においてCON群よりも有意に高かった。運動介入研究結果定期的な運動習慣・喫煙習慣のない男子大学生を用いて、(1)LST法を用いた全身のレジスタンストレーニングプログラムを行う群(LST群)、(2)高負荷を用いた通常の全身のレジスタンストレーニングプログラムを行う群(HN群)、(3)運動を行わない対象群(CON群)の3群を用いて週2回・3ケ月間の運動介入を行った。LST群においてHN群と同等の有意な筋肥大と筋力増強効果を認めた。動脈硬化度の指標である脈波伝播速度(PWV)はLST群においてのみ有意な低下(硬化度の改善)が認められた。CON群においてはいずれの測定指標においても実験期間前後に有意な変化は見られなかった。以上より、運動介入実験から、LSTでは通常の高負荷を用いたHNと同等の筋肥大・筋力増強を達成しながら、動脈硬化度に望ましくない影響を与えないことが確認された。横断研究において、LST的なトレーニングを主に行うBB群において動脈硬化度が高かったことは、BB群がLST的なトレーニング以外のトレーニングにもこ高負荷重量を用いたトレーニングも行っているためと考えられる。
著者
熊江 隆 荒川 はつ子
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究の学術的な特色・独創的な点として、生体内では抗酸化的な酵素や物質が相補的・複合的に作用していると考え、血清の総抗酸化能(TAA)の測定・評価方法に関して検討を行い、方法を確立した。また、貪食細胞の活性酸素種(ROS)の産生を比較可能とする測定方法を確立した。ラットを用い、肺胞洗浄液(BALF)中の抗酸化物質濃度等を測定し、BALF中のタンパク質濃度は急性的な酸化的ストレスの、またチオバルビツール酸反応物(TBAR)濃度は中長期的な酸化ストレスの良い指標となると考えられた。さらに、肺胞マクロファージ(AM)のROS産生能とAM培養上清中のサイトカイン(IL-1β、IFNγ、及びTNFα)濃度を測定し、強制あるいは自発的な運動負荷の違いによる影響を明らかにした。ヒトを対象とした実験として、市民ランナーのマラソン前後で測定を行った。マラソン後には好中球数が増加し、IL-6、IL-8、及びG-CSF濃度も著明に増加していた。これらのサイトカインが好中球の動員に関与していると考えられる。さらに、マラソン完走者の好中球機能及びCD11bとCD16の発現を測定したが、レース後に好中球機能は低下し、その機能低下はCD16の発現減少に伴うと推察された。好中球数の増加は、機能低下に対する補償的な反応とも考えられる。女子大学生の長距離選手を被験者とし、持久的な運動負荷が繰り返される夏期合宿において血清の抗酸化物質濃度とTAA及び血漿中サイトカインを測定した。TAAと血清中抗酸化物質等との相関関係を検討したが、TAAとTBARの間にのみ正の強い相関関係が認められた。サイトカインの変動より、合宿によって全身の炎症性の反応はむしろ抑えられ、Th2活性を抑制した可能性が考えられる。また、運動習慣による血清中抗酸化物質等への影響を地域在住の高齢者を対象に調査研究を行ったが、男性の運動習慣あり群ではTAAとTBARの間に正の相関関係が認められた。本研究で確立した血清TAAは酸化・抗酸化の状況を示す良い指標になると思われる。
著者
田中 茂穂 徳山 薫平 藤井 久雄 田中 千晶 緑川 泰史 二見 順
出版者
独立行政法人国立健康・栄養研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

エネルギー消費量を評価するヒューマンカロリメーターの分析精度を向上させ、食事によるエネルギー消費量の評価法を提案した。また、エネルギー消費量に対する身体組成の影響や食習慣・運動習慣の影響について明らかにした。さらに、身体活動の種類と強度が評価できる3次元加速度計を用いて、歩数が中高強度の身体活動量をかなり反映するが、歩・走行以外の身体活動も重要であること、1日の身体活動量に対する歩・走行以外の身体活動の相対的な寄与が職業間で異なっていることを明らかにした。