- 著者
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小長谷 英代
- 出版者
- 県立長崎シーボルト大学
- 雑誌
- 県立長崎シーボルト大学国際情報学部紀要 (ISSN:13466372)
- 巻号頁・発行日
- vol.4, pp.159-170, 2003-12-20
米国カリフォルニア南部の日系アメリカ人にとって, ロスアンジェルスのリトルトーキョーは19世紀末日本人移民一世がその地に生活の拠点を築いて以来, 日系人の社会, 文化, 経済の中心地であった。第二次世界大戦の日系人強制収容は, 余儀なく住民のリトルトーキョーからの立ち退きを強い, 戦前のコミュニティの生活を解体するが, 1960年代末以降, 公民権運動の高揚の中で, アフリカ系アメリカ人を始めとして, 少数派のエスニックグループがコミュニティの復興に立ち上がると, 日系アメリカ人の間でも三世の若い世代を中心にコミュニティの再建運動が始まった。小論では, 筆者のフィールドワークに基づいて, 戦後日系人が正月や餅つき等, 祝祭や食といった民俗伝統の復元, オーラルヒストリーの記録を通してリトルトーキョーを再建する過程を辿ることによつて, 日系人コミュニティを想像する場, 集合的記憶(collective memory)を表象する場, 国家的歴史に対して日系人の歴史を構築する場, としてのリトルトーキョーの位置づけと役割を探る。