著者
河本 夏雄 津田 麻衣 岡田 英二 飯塚 哲也 桑原 伸夫 瀬筒 秀樹 田部井 豊
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.2_171-2_179, 2014 (Released:2014-11-03)
参考文献数
20

養蚕業の振興とカイコを用いた新産業創出のため,蛍光を発するなど付加価値の高い絹糸を生産する遺伝子組換えカイコの開発が進められている。遺伝子組換えカイコを養蚕農家で飼育するための第一種使用規程の承認を得るには,生物多様性への影響が高まることがないことを示す必要がある。カイコは本来,野外で自立的に生存・繁殖することはないが,近縁野生種であるクワコとの交雑による影響を考慮することが求められる。養蚕農家でカイコが屋外に出るのは飼育残渣に幼虫が混入する場合であり,それを想定して屋外にカイコを放飼したところ,鳥類やアリ類等による捕食を受けることにより,交雑可能な成虫が生じることがないことが明らかになった。また,遺伝子組換えカイコの行動特性の評価として,幼虫の行動範囲と雌成虫の産卵範囲を調査する手法を開発した。有害物質の産生性については,遺伝子組換え植物での事例に準じた手法を適用してその有効性を示した。以上のことにより,遺伝子組換えカイコの生物多様性影響を評価する手法が構築された。
著者
中島 茂
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.381-390, 1931-12-09 (Released:2010-07-01)
参考文献数
10

1. 桑の中には比較的多量の Pectin 質を含み、その含有量は粗纖維、粗灰分などと略伯仲する。2. 其の形態は Free pectin としては極めて少く主として Pectic acid 及び“Pectin in combination with metallic ions”として存在する。3. 之等の總てより誘導された Calcium pectate の化學的性質に就いて、Caの含有量、Uronic anhydride の含量、Furfuraldehyde 及び Music acid の收量、加水分解生成物等に關して研究せるに、其の性質は、他の學者によつて桑以外の植物に就き研究せられたものに類似してゐる。4. このものは從來の桑の分析に於ては極く僅か可溶炭水化物として定量され大部は可溶炭水化物に屬せぬ可溶無窒素物として定量されて來た。5. Pectin は蠶兒には殆ど消化されない。6. 又全 Pectin の含有量は桑の品種、葉の發育、採摘季節土壤水分等に因つて異る。
著者
宮沢 福寿
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第73回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.44, 2003 (Released:2004-05-27)

蚕にセラミックスを食べさせる方法による、セラミックス入りの繭糸の開発を行った。 まず、実用化している人工飼料にセラミックスを添加して、セラミックス入り飼料を作った。 これを蚕に給餌して、飼育に適した添加濃度と、効率的な給餌時期を検討した。さらに、給餌したこれらのセラミックスが、繭糸をはじめ、蚕体のどの組織に移行しているか定量分析をして調べた。 飼育結果は、蚕の生育に害の無い飼料への添加濃度は、乾物あたり25%程度までであることが分かった。 セラミックス移行確認の定量分析結果は、繭糸へは飼料への添加濃度に比例して25%まで増加した。また、給餌時期では5齢の後半が特に有効であった。 また,組織への移行では血液、絹糸腺、蛹、脱皮殻、繭糸を定量分析して調べたが、いずれの組織にも移行していることが分かった。 今までセラミックスのような不活性の固体粒子が、蚕の消化管を通過して絹糸へ移行することは不可能という考えが常識とされてきた。 しかし今回の検討で、これを覆す結果が確認されたので報告する。 この結果は、蚕に各種機能性を持つ固体粒子を給餌する方法での、機能性絹を開発する基礎となると思われる。