著者
小林 勝 山口 定次郎
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.275-278, 1972

核多角体病ウイルスを接種したカイコの結紮分離腹部にエクジステロンを注射し, 強制的に蛹化させる処理を加えた場合の感染細胞におけるDNA合成を<sup>3</sup>H-チミジンを用いたオートラジオグラムで調べ, つぎの結果を得た。<br>1) 結紮分離腹部の感染数はエクジステロンを注射することにより, エクジステロンを注射しない場合の感染数よりも増加した。<br>2) エクジステロンを注射して15時間を経過した分離腹部の感染細胞核では, 対照のエタジステロンを注射しない分離腹都の感染細胞におけるよりも Virogenic Stroma への<sup>3</sup>H-チミジンの取り込み量と取り込んだ感染細胞数が多かった。したがってNPVに感染したカイコの結紮分離腹部にエクジステロンを注射して蛹化を促したものは, 対照の蛹化処理をしない分離腹部に比較して感染細胞におけるウイルスの増殖が促進されるものと考察された。
著者
野澤 瑞佳 代田 丈志
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.81, no.3, pp.3_213-3_220, 2012 (Released:2013-05-29)
参考文献数
18

食品添加物に認定されている薬剤から養蚕用の除菌洗浄剤を開発した。この除菌洗浄剤は,次亜塩素酸ナトリウム(NaClO),炭酸ナトリウム(Na2CO3)およびテトラポリリン酸ナトリウム(Na6P4O13)から構成されるpH11のアルカリ性水溶液である。本研究では,この養蚕除菌洗浄剤を用いて,鉄に対する防錆効果とカイコに感染する各種病原体への除菌効果を検証した。試験の結果,養蚕用除菌洗浄剤は,遊離塩素(254~286ppm)を含有するにも関わらず,その水溶液中において鉄の腐食を抑制した。また,カイコに感染する各種病原体(核多角体病ウイルスNPV,細胞質多角体病ウイルスCPV,コウジカビA. flavus S-85,白きょう病菌B. bassiana,緑きょう病菌N. rileyi,黒きょう病菌M. anisopliae,セラチア菌S. marcescensおよび微粒子病原虫N. bombycis)に対しても優れた除菌効果を示し,これら病原体を5~15分の浸漬処理で完全に除菌した。
著者
黒瀬 邁
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.405-409, 1965

燐酸欠乏桑葉中の非蛋白態窒素含量と蚕の生育阻害との関係を明らかにするために, 人工飼料に配合する普通桑葉粉末と燐酸欠乏桑葉粉末との混合割合を変えて蚕を飼育し, その生育におよぼす影響を調査するとともに, 同じく人工飼料を用いて燐酸欠乏桑葉に対する燐酸塩と糖の加用効果について検討した。<BR>その結果, 燐酸欠乏桑葉中の非蛋自態窒素含量と蚕の生育阻害程度との間には非常に高い相関が認められ, このことから桑葉中の非蛋白態窒素含量の多少は葉質の良否を考えるうえの一つの目安になるものと推定された。また, 燐酸欠乏桑葉粉末を含む人工飼料に対してはアデノシン三燐酸二カリウム, α-D-グルコース-1-燐酸二カリウム, 燐酸二カリウム, グルコースおよび蔗糖の加用効果が認められた。

1 0 0 0 抄録

出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.462-463, 1970

ハチノスツヅリガの結紮幼虫における核多角体病ウイルスの増殖<br>猩々蠅 (<i>Drosophila</i>) のラブソング<br>タマナキンウワバの核多角体病ウイルスに対する蛹の感受性1. 一般的なレスポンス<br>家蚕永続蛹の核多角体病ウイルスに対する感受性
著者
荻原 清治
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.265-277, 1942

セリシンのみから成る繊維を吐糸せしめ此れを試料として實驗し次の如き結果を得た。<BR>1) 纎維の斷面は正常繭糸と著しく異り甚だしく圓形に近くなり充實度に於て最大99.5%に達し最小のものでも50%を下らない。<BR>2) 同一繭の同一部分に於ての断面積の偏差極めて大である。<BR>3) 吐糸に融合して極めて太き形を示ずものもあるが此の接着部は明かに認めることが出來ない。<BR>4) 繭層は融合をして恰も一枚の膜状を呈する。<BR>5) 膨潤度に於て繊維相の方向には極めて低いが其れと直角方向には極めて大なる膨潤を示す。此れはセリシン粒子の配列が縦の方向に緊密にして横方向に粗なるものと推定する。又膨潤度は生成された繊維の状態、處理後變性を起したるもの等により異り又浸液の性質によりて異る。吐糸直後のものでは最小膨潤度に於て480-220%のものを得た。又乾熱處理したものは150%を得た。此等の最小膨潤點は如何なる試料を問はずpH=40-4.5附近にあつた。此れは從來の研究者によるセリシンの等電圏内にあることが考へられる。<BR>6) 扁光色に於て無扁光のものより微黄色のもの迄得た。最も多く現はれたのは微灰色-灰色程度である。無扁光部は纎構の處々にある瘤状部であつた。此れより見てセリシンも牽引された儘乾固することによりて粒子の配列を起すことが明かとなり松永博士、小原博士、清水正徳弐等によりて認められたセリシン粒子の結晶性を一層明かにすることが出來た。<BR>7) 以上の如き扁光色は其の膨潤により次第に低下し消失して來る。而して其の浩失膨潤度は如何なる纎維を問はず大體500-900%の膨潤點にあることを認めた。此の附近に達するとセリシンは過剰なる水会を吸着して散亂状態を呈して來るものと考へられる。<BR>8) 以上の結果によりて天然セリシンに於ては吐糸に常つて膠状の儘外界に出て牽引された儘乾固する時は粒子の配列を起し膠状の牽引が緩められる時は瘤状となりて配列度を低下することが明かであり正常繭糸にあるものが小原博士の述べる如く灰色迄を現はすとすれば此の場合に於てセリシンにも牽引が行はれてゐることが認められ第7報の推定を明かにするものである。又腺内にある間は膠状であるために吐糸孔の形に影響されることが少なく吐糸されて後、大部分が圓形に近づくと云ふことは第7報に推定せしセリシンの吐糸過程を一層明確にするものである。<BR>9) セリシンの研究に常つて試料の採取方法が其の結果に極めて大きな影響のあることを指摘して將來の此の方面の研究上の參考とした。<BR>10) ブイブロインの膠潤度はセリシンの其れに比較して極めて低い。
著者
木暮 槇太 中島 誠 高橋 幸吉 稲神 馨 須藤 芳三 待田 行雄 林 禎二郎 平尾 常男 五十嵐 三郎 仲野 良男 竹林 克明 吉田 徳太郎 宮内 潔 江口 正治 林 幸之 佐々木 周郁 渡辺 忠雄 近藤 義和 渋谷 勲 須貝 悦治 田中 茂光 小山 長雄 田中 一行 竹田 寛 竹鼻 孝夫 室賀 明義 蒲生 俊興 高橋 保雄 西村 浩 長谷川 金作 森 幸之 永友 雄 梅谷 与七郎 中村 晃三 松本 介 宮沢 正明 加藤 康雄 土橋 俊人 高木 直温 柳沼 泰衛 小野 四郎 村山 隆之 近森 俊哉 辻 辰四郎 小川 敬之 小松 四郎 大岡 忠三 妹尾 計一 森本 宏 梶浦 みち子 萩原 清治 瓶子 まち子 中条 紀三 高木 春郎 飯島 荘資 横内 和多良 清水 滋 堀内 彬明 堀内 ちよし 原田 忠次 木村 敬助 青木 秀夫 後藤 四男 小林 恵之助 皆川 基 皆川 豊作 岡村 源一 小河原 貞二 村山 穰助
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.244-255, 1956-06-28 (Released:2010-11-29)

蚕卵発育中に於けるPhasphataseの組織化学的所見2雄核の接合に関する細胞学的観察カイコガのモザイク複眼の構造とできかた家蚕蛹の頭部が産卵に及ぼす影響家蚕の血組織に関する生理学的研究 (II) 蛹の発育に伴う囲心細胞及び周気管細胞中の遊離アミノ酸の消長家蚕その他数種絹糸虫における誘引物質の共通性と類縁関係に関する研究蚕種の冷蔵障害と水銀塩による沈澱物前胸腺移植後の結紮と絹糸腺の成長家蚕のフラビン化合物に関する研究 (V) 蛹の器官特に中腸におけるフラビン化合物について (予報)家蚕の計量的形質と脳-食道下神経節連合体の機能追加7.白殫病菌の蚕卵への接種試験繭・繊維の部熱風乾燥に関する研究 (II)繭解じよの向上についての研究 (IV) 病蚕成立繭特に硬化病, 軟化病, 膿繭蚕繭の性状繭及び生糸の繊度変異に関する研究 (9) 定粒生糸と定繊度生糸の性能比較について生糸の摩擦係数に関する研究 (7) 精練度と摩擦係数について糸条斑と繰糸管理について生糸の練減率測定に関する2, 3の知見絹の膨潤現象から見た中心層発現の-所見チオ尿素樹脂の還元性について繭層セリシン溶液の粘度吐糸営繭に伴なう繭形の変化 (続)営繭条件と分離細繊維との関係フイブロインの糸条形成について (VIII) フイブロインの溶液中における分散状態について絹糸構造の研究 (I)酵素製糸の研究 (II)酵素精練の研究 (II)追加8. 落緒に関する研究 (II) 落緒形態の出現率とその分布
著者
船田 敏夫
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.281-287, 1968

日本種3品種, 支那種3品種およびこれらの交雑種を用いて, 伝染性軟化病ウイルスに対する抵抗性の遺伝様式について究明を行ない, 次のことが推定された。<br>1) FV抵抗性は感受性に対し劣性形質として遺伝する。かつその遺伝は主遺伝子に支配されている可能性がある。<br>2) 実験の範囲内では, FV抵抗性に関する雑種強勢の効果はほとんど認められなかった。<br>3) 抵抗性系統の選抜は, 蛾区選抜の方法で比較的容易に行なわれた。
著者
小島 友宏 塩見 邦博 石田 裕幸 梶浦 善太 中垣 雅雄
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集 日本蚕糸学会第72回学術講演会
巻号頁・発行日
pp.137, 2002 (Released:2004-02-03)

カイコの休眠ホルモン(DH)遺伝子の食道下神経節(SG)における発現はわずか14個の神経分泌細胞に限定される。このようなDH遺伝子の細胞特異的発現調節機構は先に形質転換キイロショウジョウバエで解析され、FXPRLアミドペプチド産生細胞において特異的な発現に関わるシスエレメントが同定された。さらに我々は組み換えAcNPV(rAcNPV)ベクターを用いた迅速かつ簡便なレポーター遺伝子発現解析システムを開発し、カイコ個体でのDH遺伝子の発現解析を進めた(日本蚕糸学会中部支部第57回·東海支部第53回研究発表会にて発表)。こうした解析系を用い今回はシスエレメントの同定を試みた。カイコはN4系統の5齢幼虫、および蛹を用いた。BAC-TO-BACバキュロウイルス発現システム(インビトロジェン)により12種類以上のDH遺伝子上流域を削除したコンストラクトを持つrAcNPVを作製した。rAcNPVをカイコに注射後、SGにおけるEGFPおよびDsRedの蛍光を観察した。その結果、形質転換キイロショウジョウバエで明らかにされたシスエレメントとは異なる領域もDH遺伝子の発現に関わっていることが分かった。
著者
持田 裕司 竹村 洋子 松本 正江 金勝 廉介 木口 憲爾
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-43, 2006 (Released:2007-07-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3

実用蚕品種受精卵の2年間保存条件を検討した。清水ら(1994)の2年間保存法における6回の15℃1日間中間手入れのうち,最終の1回を10℃10日間に改めた「改良2年間保存法」を試案した。この方法で2年間保存をした交雑種は実用ふ化歩合65%程度で,飼育成績は対照としての1年間保存卵からふ化した個体と同等であった。原種の場合,改良2年間保存後のふ化率は対照区と比較して著しく低く,ふ化幼虫の雌雄比にも偏りが生じた。しかし,次代卵を再び2年間保存することを繰り返す継代は可能であり,多くの品種において継代のたびにふ化率は向上した。2年間保存により幼虫の飼育成績は低下するが,継代した卵を通常の1年間保存後にふ化させることで飼育成績を回復することが確かめられた。産卵台紙の間にスペーサーを挿入することで積極的に空気の流通空間を確保することは,ふ化率の改善に有効であった。