著者
畑 公也
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra = The journal of Kobe Pharmaceutical University in humanities and mathematics (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.16-32, 2016-03-30

「西洋近代音楽芸術」の制度において「環境(音)」から分離された「音楽」は、20世紀の初め以降、テクノロジーとメディアの進歩と社会の大衆化によって、その制度が徐々に破綻するとともに再び「環境」との関わりを取り戻していく。それとともに聴取のあり方も変化し、与えられた音楽からそこに込められた意図を受動的、分析的に汲み取る聴取ばかりではなく、ジョン・ケージ以降、ある種の「環境音楽」の場合には、聴き手自身が「環境(音)」との関わりから自分なりの音楽を紡ぎだす「創造的聴取」の可能性が生みだされることになった。
著者
赤井 朋子
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-32, 2002-03-25

イギリスでは1920年代に演劇検閲に対する関心が高まり,メディアによる検閲批判が目立つようになった。その批判の内容を検討すると,検閲の寛容な面を批判する言説と逆に検閲の厳格な面を批判する言説の両方が存在したことがわかる。演劇検閲は両極端の見解が交錯する中に存在していたわけであるが,その背後に,高級な演劇と低級な演劇を区別する当時の文化的状況(具体的に言えば商業演劇と小劇場への二極分化)を指摘することができる。そのような状況の中で検閲官は,両極端の見解の中間をとった民主的な検閲を行うと公言したが,実際にはそう公言することによって,検閲は中産階級の一般観客を演劇の影響力から巧妙に保護しようとしたのではないだろうか。
著者
赤岩 隆
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.23-56, 2007

サルマン・ルシュデイの『真夜中の子供たち』は難解な作品である。その理由と、いわゆるマジック・リアリズムと呼ばれるものとは、じつに深い関係を持っている。本稿においては、『真夜中の子供たち』におけるマジック・リアリズムの有り様を詳しく探り、それとともに、この難解なルシュデイの作品を少しでも読みやすいものへと解きほぐすことによって、より本格的な作品論へと議論全般を開くことを目標とする。
著者
小西 守周
出版者
神戸薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

高脂肪低炭水化物食(ケトン食)により、肝臓でのケトン体産生が誘導され、前進に置けるエンルギー代謝が影響を受けることが知られている。このケトン食飼育時の肝臓においてFgf21の発現が誘導されることから、ケトン食飼育時に置けるFgf21の役割についてノックアウトマウスを用いて検討した。今回の結果より、ケトン食は白色脂肪組織を通じて全身のインスリン抵抗性を惹起することが明らかとなった。さらに、Fgf21がこの白色脂肪組織におけるインスリン感受性の減弱を誘導することを明らかにした。
著者
畑 公也
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra = The journal of Kobe Pharmaceutical University in humanities and mathematics (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
no.16, pp.16-32, 2016-03-30

「西洋近代音楽芸術」の制度において「環境(音)」から分離された「音楽」は、20世紀の初め以降、テクノロジーとメディアの進歩と社会の大衆化によって、その制度が徐々に破綻するとともに再び「環境」との関わりを取り戻していく。それとともに聴取のあり方も変化し、与えられた音楽からそこに込められた意図を受動的、分析的に汲み取る聴取ばかりではなく、ジョン・ケージ以降、ある種の「環境音楽」の場合には、聴き手自身が「環境(音)」との関わりから自分なりの音楽を紡ぎだす「創造的聴取」の可能性が生みだされることになった。
著者
児玉 典子 守安 正恭 小山 淳子
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra = The journal of Kobe Pharmaceutical University in humanities and mathematics (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.55-76, 2012-03-30

著者らは、学力向上の1つの支援方法として上級生による下級生への個別学習支援を薬学教育支援制度(pharmaceutical educational support system:PESS)として立ち上げ、実施した。その結果、本制度を利用した学生のうち、留年生や学習不安を抱える学生の多くは学習意欲の低下や上級生への依存傾向が認められることがわかった。そこで、著者らは学力向上には学生の学習意欲や自律性をもつことが重要であると考え、さらにPESS を効果的に行なう方法として、精神面と学習面での支援を同時に行なうtwo step 学習支援としてpsychological and technical educational support system (PTESS) を企画・実施した。PTESS ではstep 1 として学生の自律性を促し、学習意欲の向上を目指した心理カウンセリングを行い、step 2で自分に合った学習方法を見出すためのPESS による学習支援を試みた。step 2ではPESS に加え、著者らによる「声かけ」や「励まし」などの見守り支援を行い、彼らの学習態度や心情の変化を観察した。このように個々の学生の特性を把握し、それを考慮したPTESS による学習支援を行った結果、学習意欲の向上には精神面での支援の重要性に加え、PESS における上級生と下級生とのペアマッチングの重要性が明らかとなった。
著者
和田 昭盛 岡野 登志夫
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

レチノイドX受容体は、他の核内受容体とヘテロダイマーを形成し生理機能を発現することより、脂質代謝異常症や糖尿病など様々な疾患とも関連することが知られている。そこで、RXRのリガンドである9-cis-レチノイン酸のアナログ化合物を合成し、ヘテロダイマーの作用分離が可能なリガンド分子の開発を検討した。その結果、レチノイン酸の疎水性ユニットであるシクロヘキセン部と続く二重結合を(-)-メントンとベンゼン環で縮環した誘導体MentPhMe及びMentPhEtにおいて、それぞれヘテロダイマーであるPPARγ/RXαおよびRLXRα/RXRαに対する選択性を示す化合物を見出すことができた。
著者
赤岩 隆
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-27, 2006-03-31

ラドヤード・キプリングの小説『キム』を論じる場合、それを主人公の成長物語として読むことは、まったく自然である。ただし、その際結末についてどう考えるかこれまで多く問題にされてきた。本稿においてはそれを解決するのに、「ボーダーライン」という言葉をキー・ワードに据えながら、主人公がそれによりいかに誘惑されつつ成長してゆくか論じる。
著者
菅原 一幸 北川 裕之 山田 修平 三上 雅久 浅野 雅秀 BAO Xingfeng LI Fuchuan
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)ヒトの先天性脊椎・骨端異形成症(spondyloepiphyseal dysplasia, SED)がコンドロイチン6-O硫酸基転移酵素-1(C6ST-1)の変異によって発症することを証明した。(2)コンドロイチンの基本骨格の生合成に関わるコンドロイチン重合化酵素(ChPF)の線虫のオルソログPAR2.4をクローニングし、その機能低下により、線虫の胚発生初期の細胞質分裂が異常になることが分かった。(3)サメ皮膚のCS/デルマタン硫酸(DS)ハイブリッド糖鎖の種々の生物活性を証明し、治療薬への応用の可能性を示した。(4)ブタ胎児脳のCS/DS鎖の神経突起伸長促進作用が増殖因子プレイオトロフィンとの結合を介することを証明し、さらに機能ドメインである硫酸化十糖を単離し、配列を決定した。(5)海産ホヤの果肉から海馬ニューロンの突起伸長促進活性をもつ高硫酸化デルマタン硫酸を精製し、これでマウスを免疫し、抗デルマタン硫酸単クローン抗体を調製した。この抗体は海馬ニューロンを染色し、免疫源であるデルマタン硫酸の神経突起伸長促進活性を阻害した。(6)ヘルペス単純ウイルス(HSV-1、HSV-2)は細胞表面のヘパラン硫酸への結合を介して感染するとされてきたが、今回我々は、感染細胞のコンドロイチン硫酸のE構造を認識して感染しうることを証明した。
著者
北川 裕之 三上 雅久 菅原 一幸 菅原 一幸
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究成果の概要 : 硫酸化グリコサミノグリカンと呼ばれる糖鎖は、タンパク質と共有結合をしたプロテオグリカンと呼ばれる形で、ほとんど全ての細胞表面や細胞と細胞との間隙に存在している。最近、ヒトの癌や遺伝病の原因として硫酸化グリコサミノグリカン鎖の合成異常の実例が多く示されている。本研究では、硫酸化グリコサミノグリカン鎖がどのように合成され、どのようにその機能を発揮するのか、またその合成がうまくできないとなぜ異常が生じるかを細胞レベル解析し、その一例を示した。
著者
赤井 朋子
出版者
神戸薬科大学
雑誌
神戸薬科大学研究論集 : Libra (ISSN:13452568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-31, 2003-02-20

ジョン・ヴァン・ドゥルーテンの『若きウッドリー』は、1925年に一度検閲で上演禁止になったが3年後に認可された。この作品には、検閲において禁止事項とされたものはいっさい含まれていなかったが、認可と上演禁止の境界線上に位置した劇で、作品の微妙な描き方をしている点が検閲官に不安を与えた。検閲の一次資料を調べると、言葉の表現における「節度」という点が問題視されたことがわかるが、おそらく上演禁止になった理由はそれだけではないだろう。資料には明示されていないが、さらに検討していくと、微妙な描き方をしたこの作品には、ダブルスタンダードの否定や階級の流動性といった点が読み取れる「可能性」のあることが判明する。そのことが検閲官に漠然とした不安を与えたのではないだろうか。この戯曲は、作品の微妙で繊細な要素を残しながらも検閲官の危惧を最小限に抑えるような演出をすることによって、その後上演を許可され、公演も興行的に成功する。検閲は一方的に表現の自由を奪うものではなく、むしろ検閲する側とされる側が互いに影響を及ぼしあうことによって、新たな何かを産み出すこともあるものだと言えるが、この戯曲の検閲はその一例を示している。