著者
大渡 伸 藤原 真理子 岩元 純 范 育仁 土屋 勝彦 小坂 光男 HW Soeliadi
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.235-241, 1983-12-28

熱帯地住民は暑さに強い事がよく知られている.彼等は,躯幹に比べ四肢が長く,体重当たりの体表面積が大きく,体構成では,皮下脂肪が少なく,能動汗腺総数の増加が見られる等,放熱に有利な特徴を備えている.これらの差異を知る事は,暑熱環境への順化のメカニズムを考える上で重要であると思われる.そこで我々は,熱放散反応のなかから,特に発汗現象に注目し,熱帯地住民を被験者として,一定条件(気温30℃相対湿度60%)下で局所温度負荷をかけ発汗を誘発した.それに伴う深部体温と皮膚温の変化は,それぞれ舌下に入れたサーミスター温度計と,前胸部をサーモグラフィでモニターした.その結果,両膝下部を43~44℃の温湯に30分つけるという局所負荷で,被験者の負荷開始時点から発汗までの潜時は10分であった.比較の為に同一条件で行った日本人による実験では,被験者は,負荷以前に発汗してしまい,潜時は測定出来なかった.この事から,被験者となった熱帯地住民は,日本人被験者に比べ,発汗までの潜時が非常に長い事がわかった.この理由としては,暑熱環境に順化した人の方が非順化人よりも,発汗に関する深部体温の閾値が高いかあるいは刺激前の深部温度が低い為に,同じ強さの温度負荷に対しても,発汗までの潜時が長いという可能性が考えられる.今後データの集積をはかり,更に詳細について検討していく所存である.The sweating response evoked by a local heat load was studied in an inhabitant of tropics in a climatic chamber. The change of skin temperature according to sweating was monitored by thermography. Time lag of the onset of sweating in the subject was about 10 minutes after initiation of a heat load. In such a condition, a Japanese volunteer sweated instantly without any heat load. The central and peripheral mechanism of heat acclimatization was discussed from the aspects of temperature regulation.
著者
末永 斂
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.76-90, 1969-10

The present author established the table of diagrammatic calendar ages of the housefly females, Musca domestica vicina, applicable to each month of the breeding season. The table was made on the basis of the examinations for the development of follicles and ovariole changes following oviposition carried out under various laboratory conditions. Using the table for the determination of age distribution of female populations collected in nature at intervals before and after the application of different residual insecticides to the different three villages, and comparing the changes in age distribution of the female populations collected in each village, he tried to evaluate the effect of the insecticides used.著者はイエバエMusca domestica vicinaを25℃,約70%比湿の下で1対飼育し,年令既知の雌群について濾胞の発育,経産に伴う黄体の濾胞管基部(現濾胞から小輸卵管までの間の部分)における分布,量,及び色彩等を調べて,本種の年令を未経産,1回,2回及び多経産に区分した(第1表)3回以上の多経産雌の場合にはこれを更に区分することは出来ないが,25℃,70%比湿の下で飼育したものでは11回も産卵をくり返す雌がある.継続1対飼育した雌群についてみると,卵塊当りの卵粒数は最初から5回位迄は大体100粒程であるが,経産が進むにつれてわずかずつ減少する.しかしこれらの雌群の死亡率をみると第6回産卵以後は極めて急激にその率が高くなる.第1回目のgonotrophic cycle(=前産卵期間)は25℃で7日を要するが,第2回目以後(=産卵間隔)は2~3日となる.イエバエの発生期間中の各月,5月から10月まで,1回ずつ24~55対(5月には9対のみ)のイエバエを1対飼育して,平均未経産期(=前産卵期間)(範囲)及び以後の平均産卵間隔(範囲)を調べた結果は以下の通りである.5月:11日(8~20),7日(4~16) 6月:8日(4~11),4日(2~6) 7月:5日(4~10),2日(2~4) 8月:5日(3~12),3日(2~4) 9月:5日(5~10),3日(2~10) 10月:8日(6~9),4日(3~7)この成績表から第3表に示すように各月におけるCalendar ageを模式的に決定した.このCalendar ageを用いて,1964年にダイアジノン,ナンコール及びバイテックスで残留噴霧を行なったS,H,及びO部落で残留噴霧前後にある間隔で採集した各回の個体群の年令構成を吟味し,各部落における年令構成の経日的変化を部落間で比較してみると,経産雌の現われ方がS部落で最も遅く,H部落でやや早く,O部落で最も早いことが判ったが,この傾向は同年同期間中ハエ格子で調べた各部落でのハエ指数の消長とかなりよく一致した.従って1964年に上記3部落で実験した限りでは,ダイアジノン,ナンコール,及びバイテックスの順に効果があったといえる.
著者
西垣 定治郎
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.183-201, 1970-02

For the control of Culex tritaeniorhynchus, the principal vector mosquito of Japanese encephalitis virus in Japan, the residual spray was proved to be nearly ineffective, and therefore the control experiments for the larvae were carried out at a farm village, Hokabira, located on a small island, Matsushima, Nagasaki Prefecture. From the results of the experiments, it is suggested that an effective control would be achieved when a 1% Sumithion floating dust is used once a week at a rate of 3 kg per 10 ares for all the potential breeding places such as paddyfields and allied collections of water, fertilizer pits, earthen jars, etc., located within the scope of at least 2km from the outskirts of the village in question, and that the desirable time for using the larvicide would be from early June to early September.本実験を行なった外平部落は,長崎県西彼杵半島の大瀬戸町から約1.5km離れた松島と云う小島にあって,この島に散在する5部落の内の唯一の農業部落である.外平部落は島の中央丘陵部の西南斜面と海岸との間にあって太田区,日向志区,瀬戸畑区の合計110戸の家がほぼ直線的に並んでおり,周囲に約950アール即ち松島全体の水田面積の97.4%に当る水田があり,多数の家畜を養い,古くから野菜作りが盛んで,その施肥のために下水を大水ガメに溜め,下肥を段々畑に掘られた多数の水肥溜に貯える習慣がある.この様に蚊の発生のための諸条件がそろっていたので,古くから蚊が非常に多く,バンクロフト糸状虫症が高度に浸淫していた.この糸状虫症は仔虫保有者に対する集団治療とアカイエカの駆除とによって1962年8月迄に完全に撲滅された.その後,村民は本病の再燃を恐れてアカイエカの撲滅作業を続ける事を決議し1963年から1965年迄残留噴霧を年1回ずつ実施し,下水,水肥溜等へは幼虫駆除剤の投入を続けながら,1963年中には下水溝を悉くコンクリート溝に改善して1964年,1965年には下水系統の水溜りがなくなり従っで駆除の対象は家の周辺にある水ガメと水肥溜のみとなった.この間,有機燐剤を使用して毎年行なった残留噴霧は,アカイエカに対しては著しい効果が長期に亘って見られたが,コガタアカイエカに対しては殆んど効果がなかった.このことは,残留噴霧実施後,♀成虫の採集数も,その経産率も減少しなかった事から認めざるを得なかったことであるが,残留噴霧を全く行なった事のない従って薬剤感受性が極めて高いと思われる部落においても同様に見られた事から,本種♀蚊の畜舎内に逗留する性質が極めて弱い事及び牛舎特に豚舎が構造上極めて開放的である事などがその主な原因であろうと思われた.そこで,1966年にはコガタアカイエカ(シロハシイエカも含む)の幼虫を対象として,早春から越年成虫群による産卵が終了する迄,水田を始めとする本種蚊の可能発生場所に幼虫駆除剤を散布し続ける計画を立て,外平部落の周縁から1kmの範囲の発生場所へ1%スミチオン浮遊粉剤を10アール当り3kgの割合で,越冬成虫の産卵期間と思われる4月3日から5月末迄の間,及び以後8月3日迄,4月中は10日,以後は7日間隔で散布を続けた.その結果,散布期間中は顕著な駆除効果がみられた.然しその間,蛹が少数ずつではあるが時々採集され,又,1km外から飛来したと思われる可成りの数の♀成虫が採集された.従って,1967年には駆除範囲を外平部落から2km迄広げて4月14日から5月31日迄即ち越年成虫に由来する幼虫が発生する期間中,昨年同様の方法で幼虫駆除剤の散布を続けた.散布中は勿論著効を認めたが,これによって6月以後の新生成虫の発生を防ぐことは困難であることが判った.7月上旬から幼虫及び成虫の発生がますます盛んになったので,全島(殆んど2km内に入る)一斉に残留噴霧を実施し,続いて幼虫駆除剤の散布量を多くして駆除を再開したが,約1ケ月間は幼虫及び成虫の盛んな発生を効果的に抑える事ができなかった.以上の実験から,少なくとも2kmの範囲内にある本種蚊の可能発生水域に対して1%スミチオン浮遊粉剤を10アール当り3kgの割合で週1回散布し続けるならば顕著な駆除効果を挙げることができる.然しこの方法で早春から越年成虫群が産卵を終了する迄の期間中幼虫駆除を続けても,6月からの新生成虫の発生の根源を断つ事にはならないので,成虫の発生が次第に盛んになり始め,豚での日本脳炎の自然感染が起り始める6月上旬から駆除を始め,多くの成虫が越年に入る9月中,下旬の少し前即ち9月上旬迄,幼虫駆除を続けることが,疫学的には必要且つ効果的であると考えられる.
著者
末永 斂 宮城 一郎 氏家 淳雄 林 薫 三舟 求真人 二ッ木 浩一
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.136-142, 1967-12

アーボウイルスの分離と関連してTanzania国のMwanza地方で1966年8月から1967年2月まで蚊の調査を行なった,蚊からのウイルス分離成績については別報でのべられるので,本報では採集された蚊の種類とそれらの生態についてのべる.この地方は海抜1000米以上の高地で比較的涼しく,6月頃から10月頃迄の乾期と11月頃から5月頃迄の雨期とに区別される.Mwanza及びその周辺における蚊の発生可能水域としてはVictoria湖岸の大小の湿地帯,一部破損した古い水洗便所の浄化槽,流れのとまった小さな河川の水たまり,及びその河口附近の岸辺等がある.成虫の採集は湿地帯の附近,市街地の人家内,森林地帯など9カ所(第2表)で実施し,この中3ケ所では二重蚊帳による夜間吸血活動の時間的消長についても調べた.9地点で採集された蚊は9属約38種,雌25185個体,雄2264個体で,この中,Bukobaの森林地帯で採れたHodogesia sanguinae, Eretmapodites grahamiの2種はTanzania国から初めての採集記録であると思われる.恒久的湿地帯の近くではMansonia africanaとMansonia uniformisが圧倒的に多く,市街地の屋内ではCulex pipiens fatigansのみが採集されるが湖に近い人家の附近ではこれらの3種が共にかなり採集される.H356ウイルスが分離されたCulex decensは比較的大きな恒久的湿地帯の近くでかなり採集された.湿地帯を内部にもったBukobaの閉鎖的森林地帯ではMansonia, Aedes, Orthopodomyia, Culex等に属する18種の蚊が採集された.Anopheles gambiae, An. funestus, Aedesaegypti等は少数採集されたにすぎない.Mansonia africana, M. uniformis及びCulex decensの3種は日没と共に飛来し始め,真夜中にピークを示し,日の出前迄吸血活動をつゞける.Culex pipiens fatigansは日没と同時に飛来し,午後8時頃ピークに達し,一且減少するが,早朝にもう一度ピークを示し,日の出前迄活動するように思われる.Mosquito survey in the highland district of the Republic of Tanzania,mainly in Mwanza region situated at south lake-side of Lake Victoria,Were carried out from August 1986 to February 1967. Over twenty seven thousand mosquitoes representing about 38 species of 9 genera were collected mainly by using human baited traps at nine different sites. Four mosquito species, Mansonia africana, M. uniformis, Culex pipiens fatigans and C. decens, were in about 91 per cent of all mosquitoes obtained in the survey. These Mansonia species and Culex decens seemed to breed in the open-permanent swamps near Lake Victoria, and Culex pipiens fatigans was breeding in cesspools and gutters around dwelling houses. Hodogesia sanguinae and Eretmapodites grahami which had not been found in Tanzania were collected at Munene and Ruasina forests in Bukoba area, and Anopheline mosquitoes, though very small in number, were collected in 10 species. The majority of mosquitoes collected were used for the isolation of arboviruses, however out of them only one strain (H336) was isolated from a pool of Culex decens collected nearby a open-permanent swamp, Mwanza. We wish to express our sincere thanks to all staffs of East African Institute for Medical Research, Mwanza for their kindness to accomplishment of our survey and to staffs of East African Virus Research Institute, Entebbe, Uganda for their kind advices, and also to officers of Mwanza Regional Forest Office and its branches for their kind help to collect mosquitoes in forests.
著者
林 薫 Shichijo Akehisa Mifune Kumato Matsuo Sachiko Wada Yoshito Mogi Motoyoshi Itch Tatsuya
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.214-224, 1973-12

Serial surveys on the ecology of Japanese encephalitis virus in Nagasaki area were made during from 1969 to 1971. In total, 11,229 hibernated female mosquitoes of Culex tritaeniorhynchus were caught in early spring every year for virus isolation, however it was unsuccessful. The significant increase of hemagglutination inhibition antibody possessing rate in the sera of slaughtered pigs in early spring was not found in these three years. Virus isolations from the vector mosquitoes in epidemic season were made from 1st to 26th of August in 1969, from 19th of July to 16th of August in 1970 and from 13th to 27th of July in 1971, respectively. Although the isolation efficiencies were not remarkably different at the highest level in a certain limited period in epidemic season during the years 1964 to 1971, the periods for JE virus isolation from the vector mosquitoes became shorter in the years from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. It was considered as one of the reasons that the number of the vector mosquitoes was smaller during the epizootic from 1968 to 1971 than from 1964 to 1967. Subsequently, it was noted that the encephalitis case sbecame to decrease in number in recent years.1969年,1970年及び1971年の3年間に越年コガタアカイエカ11,229個体,65プールについて哺乳マウス脳内接種法でウイルスの分離を試みたが,成績は陰性であった.流行期における蚊からのウイルスの分離は1969年は,8月1日から8月26日まで,1970年は,7月19日から8月6日まで,1971年は7月13日から7月27日までの期間であった.各年の捕集蚊からの日脳ウイルスの分離効率は最も高いときは1969年3.6,1970年4.8,1971年4.4であって,1968年以前の流行盛期のそれと大差がない.以上の事実は,最近3年間の野外でのコガタアカイエカのウイルス汚染が流行期の或る一時期には1968年以前と同じくらいに行われていることを示している.これに反して,蚊からのウイルスの分離期間が異常に短かくなっていることは,コガタアカイエカの発生,消長が最近3年間では著しく減少していることに,その一つの要因を求めることが出来る.これと平行して.患者数も減少し,1969年19名,1970年17名,1971年3名の届出患者があったにすぎない.
著者
近藤 正行 染岡 慎一 大渡 伸 山口 和正 藤本 博一 小坂 光男
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.p111-118, 1981-06

常温環境下にて6名の健常被験者の上腕二頭筋(M. Biceps brachii)に随意・等尺性筋収縮を誘起し,その経過中に出現する筋疲労のEMG波形をデータ処理システム(ATAC450及びPC-8001)を用いて解析し以下の結果を得た.(1)等尺性筋収縮による筋疲労時のEMG波形には寒冷ふるえ時のEMGと同様に群化放電(grouping discharge: G.D.)が観察された.(2)G.D.の形成機序を解明するために,G.D.の構成成分である連続する2個の筋放電パルスのインターバルについて相関行列を求め,更にP-mode Cluster分析を行った.その結果得られたdendrogramは,2個のパルスのインターバルが1~19 msecと20~50msecの2群に分かれ,かつ,両群のヒストグラムは筋疲労の進行過程において相反的な動態を呈した.(3)(2)で示したCluster分析のdendrogramで,インターバルが2群に区分できなかった例に関して,相関行列を求めた後にDirect Varimax法による因子分析を行い因子行列を作成した.因子分析の結果から,G.D.形成のインターバルは19msec~21msecが適当値と判明し,この事は従来の研究結果が妥当である事を立証した事になる.(4)即ち,従来の研究ではG.D.の条件設定に主観的要素が混入する可能性を残していたが,本研究(上述(2)(3))の結果は,多変量解析の駆使によってG.D.の条件設定がより客観的となった点が進歩である.(5)体熱産生の寒冷ふるえと随意・等尺性筋収縮の誘発法や,そのEMG波形分析,特に,Cluster分析や因子分析の統計学上の意義について二・三の検討が加えられた.In a neutral temperature environment, six healthy human volunteers aged 22-33 years were examined by computer analysis of EMG patterns of dominant biceps brachii muscle throughout its isometric contraction against a constant load. The isometric contraction was performed from a seated position with the elbow resting on a flat surface and 45°angle to the table (90°flexion). Fatigue EMG of unilateral biceps brachii was recorded during 40% maximum contraction value (MCV) isometric contraction, using both surface and fine needle electrodes. Properties of grouping discharge in EMG patterns of cold shivering and muscular fatigue were investigated. The interval of consecutive two pulses, mean frequency and mean duration of grouping discharge were analyzed by Cluster analysis as well as by Factor analysis using an analogue computer ATAC 450 and a personal computer PC-8001. Two different modes of interval of grouping discharge were found from a dendrogram of P-mode Cluster analysis. One had an interval time of 1-19 msec and the other had 20-50 msec of consecutive two pulses of grouping discharge. The data of Factor analysis using a Direct Varimax method also revealed a significant difference between the two modes interval, namely in the one, less than 19 msec and in the other, more than 21 msec, respectively. These results indicate that the range of interval of consecutive two pulses of grouping discharge in EMG of cold shivering and isometric muscular contraction is conclusively 20 msec and that the range is identical with the result of previous studies. The difference between Cluster analysis and Factor analysis was further discussed to evaluate the purposes and nature of the statistical analysis.
著者
林 薫 Mifune Kumato Shichijo Akehisa Wada Yoshito Nishigaki Jojiro Omori Nanzaburo
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.212-220, 1970-02

A serial survey on the ecology of Japanese encephalitis (JE) virus was made in 1968. Virus isolation was negative from 848 hibernated females of Culex tritaeniorhynchus collected in March to early May. In mid May, when newly emerged females appeared, and thereafter, attempts to isolate the virus were continued, but it was July 23 that the first isolation was made. A strain of JE virus was isolated each from C. pseudovishnui in early August and from Aedes vexans nipponii in late July. Eight other species of mosquitoes were negative for JE virus throughout the year. The pigs susceptible to JE virus were exposed in nature to mosquitoes including hibernated females of C. tritaeniorhynchus in spring without detecting the rise in hemagglutination inhibition (HI) antibody in their sera. Continuing the exposure to mosquitoes, the HI antibody was detected only after early August. The number of human cases was smaller than in any of the previous three years. One of the reasons is considered to be that the number of vector mosquitoes was smaller at the time of the epizootic in pigs.前年までに引き続き,1968年に日本脳炎ウイルスの生態学的調査を行なった.3月-5月上旬に採集したコガタアカイエカ越冬雌成虫848個体からはウイルスは分離されなかった.新生雌成虫が出現し始めた5月中旬及びそれ以後も分離を試みたが,始めて日本脳炎ウイルスが分離できたのは7月23日であった.シロハシイエカからは8月上旬に,キンイロヤプカからは7月下旬に,各々1株の日本脳炎ウイルスが分離された.感受性の豚を各々1頭ずつ2月下旬に3部落の豚舎に配って,自然に蚊から吸血されるままにして飼育し続けて,HI抗体が出現する時期を調べたが,抗体が検出されたのは8月上旬以降であった.発生患者数は,過去3年の何れにおけるよりも少なかった.その理由の1つは,豚で日本脳炎の流行が起っている時期のコガタアカイエカの数が少なかったことであると考えられる.
著者
大渡 伸 染岡 慎一 近藤 正行 藤本 博一 土屋 勝彦 小坂 光男
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.p169-176, 1981-09

正常ウサギの寒冷ふるえ(cold shivering)筋電図にみられる群化放電(GD)の解析に用いたGDの条件設定値の妥当性を検索するためにヒトの随意・等尺性筋収縮時の筋電図波形にみるGDをデータ処理システム(ATAC450及びPC-8001)にて解析,かつGDの詳細な分析を目的として下記の研究を実施した.(1)室温25℃・湿度65%の常温環境下にて先の論文に記載したと同一の被験者(6名・年令22~33才・体重54~72kg)の上腕二頭筋(M. Biceps branchi)に誘発させた等尺性筋収縮筋電図波形の中にあるGDの構成成分である筋放電を本研究の解析資料とした.(2)上記(1)の方法にて得られた筋電図波形に関して,Cluster分析および因子分析を用い,GDの条件設定値を検索し,連続する2個の筋放電パルス間隔およそ20msec以下を条件設定値と決定した.(3)等尺性収縮負荷による筋疲労の進行過程で記録された筋電図波形を経時的に分画し,GDの周波数,GDを構成する筋放電パルスの数,GDの持続時間及び一定時間内に出現するGDの発生率の4項目について解析し下記の結果を得た.(4)GDの平均周波数は等尺性収縮による筋疲労の初期(25, 40%MVC負荷開始2分目まで)には12~13c/sと比較的高い値を示すが疲労の中期(2分目以後)には10.0c/sとほぼ一定値に収束する.この結果からGDは疲労中期に形成されかつヒトの寒冷ふるえや筋疲労時にみるGDの周波数は10.0c/sである事が判明した.(5)筋疲労中期から極期(2分目~5分目)においてGD構成に参加する筋放電パルスの平均値は負荷開始より次第に増加し,36~38パルスでほぼ一定値を示し,GDの持続時間及び発生率もパルス数の変化とほぼ平行推移した.(6)これらの結果はGDの形成機序およびGDの体温調節上の意義を検索するため重要な資料であり,この点について幾らかの検討が加えられた.In an environmental control chamber (temperature: 25℃ and humidity: 65%), six healthy human volunteers aged 22-33 years were examined by computer analysis of EMG patterns of dominant biceps brachii muscle during fatiguing voluntray isometric contraction against a constant load. Fatiguing EMG activites of unilateral biceps brachii were recorded during 25 and 40% maximum contraction value (25 and 40% MCV) using fine needle electrodes. Grouping discharge in EMG patterns evoked by cold shivering was identically observed in electrical activity during fatiguing voluntary isometric contraction of human muscles. Following properties such as the interval of consecutive two pulses, mean frequency, mean duration, mean occurrence rate, and pulse numbers of grouping discharge in fatiguing EMG patterns were analyzed by Cluster analysis and Factor analysis using an analogue computer ATAC 450 and personal computer PC-8001. The range of interval of consecutive two pulses of grouping discharge in EMG of cold shivering as well as of isometric muscular contrac ion was conclusively less than about 20 msec. Mean frequency, duration, and occurrence rate of grouping discharge in EMG patterns during middle stage of muscular fatigue were about 10.0c/s, 140.0msec, and 85.5%, respectively. Pulse numbers participated in a certain group of consecutive grouping discharge increased in progress of mscular fatigue and eventually approximated to 36.0 in middle stage of muscular fatigue. These results indicate that various properties observed in grouping discharge of EMG activities evoked by cold shivering and isometric muscular contraction are identical and that rhythm of grouping discharge in their EMG patterns originate in the areas of the motoneuron pools of the spinal cord. Further thermoregulatory significance of grouping discharge during cold shivering and muscular fatigue was discussed in this paper.
著者
ZAITSU M.
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 Tropical medicine (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.141-154, 1988-06-30
被引用文献数
1

チカイエカの犬フィラリアに対する伝搬能力を同じアカイエカ群に属し,長崎市内での犬フィラリアの主要伝搬蚊であるアカイエカと比較した.実験室内において,種々の程度のミクロフィラリア密度(800-5000/30mm^3)を持つ犬から長崎産のチカイエカとアカイエカを吸血させた.吸血した蚊は,気温25℃,湿度70%, 16時間照明の条件下で15日間飼育した.その結果,蚊でのミクロフィラリアの中腸へのとり込み方と,ミクロフィラリアのマルピーギ管への移動の割合には,両者の蚊で差は認められなかった.しかし,吸血蚊の15日目の生存率はチカイエカ(0.0-20.8%)の方がアカイエカ(41.2-81.8%)にくらべ著しく低かった.また,チカイエカの実験感染指数は,どのミクロフィラリア密度の実験でも,アカイエカより低かった.さらに,野外においてライトトラップを用いてアカイエカ群成虫を採集し,それらについて犬フィラリア感染率をしらべた.調査は長崎大学医学部構内とそこから約2km離れたアパートで,1986年と1987年の4月から11月上旬に行なった.チカエイカとアカイエカは個眼数の違いによって判別した. 2ヶ年の結果を合計すると,チカイエカの自然感染率は0.4%,アカイエカでは5.4%で,チカイエカの方がアカイエカにくらべて著しく低いことがわかった.以上の実験感染と自然感染の結果から,野外におけるチカイエカの犬フィラリア伝搬に対する役割は,アカイエカにくらべて極めて低いものと結論された.The vector potential to Dirofilaria immitis of Culex pipiens molestus, a member of the Culex pipiens complex, was compared with that of Culex pipiens pallens, another member of the complex. In the laboratory, both mosquitoes were fed on a dog with various levels of microfilaremia. The mean number of microfilariae taken up by the mosquitoes and the rate of migration to Malpighian tubules for Cx. p. molestus was similar to that for Cx. p. pallens. However, the survival rate of Cx. p. molestus after feeding on the dog was lower than that of Cx. p. pallens. The lower survival rate of Cx. p. molestus was the main cause of the lower index of experimental infection. By a light trap, females of Culex pipiens complex were collected at two sites in Nagasaki City in 1986 and 1987. Cx. p. molestus was distinguished from Cx. p. pallens by the number of ommatidia in the compound eyes. Mosquitoes were dissected and examined for the presence of D. immitis larvae in proboscis, thorax, abdomen and Malpighian tubules. Natural infection rate of Cx. p. pollens was distinctly higher than that of Cx. p. molestus. Results of experimental infection and field survey clearly indicate that Cx. p. molestus is apparently not as important as Cx. p pallens in the transmission of D. immitis.