著者
伊藤 康弘 宮内 昭 木原 実 小林 薫 廣川 満良 宮 章博
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.294-298, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
10

年齢は甲状腺乳頭癌の予後を規定する重要な因子である。特に高齢者乳頭癌が生命予後不良であることは,よく知られている。ただし,生命予後とリンパ節再発予後,遠隔再発予後とは必ずしも一致しない。今回われわれは小児(20歳未満)乳頭癌110例の予後および予後因子について検討した。8例に術前から遠隔転移を認め(M1),これらはM0症例に比べてaggressiveな臨床病理学的所見を示した。M0症例における10年リンパ節および遠隔再発率はそれぞれ16%,5%であった。多変量解析において3cm以上のリンパ節転移,16歳以下が独立したリンパ節再発予後因子であり,3cm以上のリンパ節転移と被膜外進展が遠隔再発予後因子であった。M1症例およびM0症例各1例が癌死した。小児乳頭癌の生命予後は良好であるが,再発率はかなり高い。特に3cm以上のリンパ節転移,16歳以下,被膜外進展のある症例に対しては慎重な治療と経過観察が必要である。
著者
小林 薫
出版者
公益社団法人 日本超音波医学会
雑誌
超音波医学 (ISSN:13461176)
巻号頁・発行日
pp.JJMU.R.78, (Released:2016-04-04)
参考文献数
20

甲状腺の偶発腫瘤(腫瘍)の発見が増加しつつある.有病率がかなり高いものであり,超音波,CT,MR,PET検査,胸部レントゲン撮影,頸動脈エコーの施行時に甲状腺の腫瘍が偶発的にみつかっている.甲状腺腫瘤に対して良性悪性の鑑別が最重要であり,超音波診断基準を適用して超音波の診断を行う.次に細胞診施行の適応を考慮する.超音波診断において,良性でかつ小さい結節は細胞診を省略して,そのまま経過観察にする.それ以外は細胞診を施行する.その上で手術か経過観察かを決定する.超音波検査では悪性腫瘍,とくに乳頭癌を見逃さないことが重要である.乳頭癌の大部分は典型的画像を示すので診断は容易である.乳頭癌と診断されるときは頸部リンパ節転移の検出が必要である.微小乳頭癌がみつかる機会が増えている.それを高リスクと低リスクに分類し,低リスクの微小乳頭癌は手術を行わず経過観察を推奨しており,その結果は十分に満足できるものである.良性腫瘍の大部分は手術を行わず経過観察にする.一部に手術適応がありうる.一般病院の対応としてはどの時点で専門の施設に紹介するべきかを決定する必要がある.
著者
角 康之 江谷 為之 シドニーフェルス ニコラシモネ 小林 薫 間瀬 健二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2866-2878, 1998-10-15
被引用文献数
52

本稿では,我々が現在進めている展示ガイドシステムの研究プロジェクトC?MAP (Context?aware Mobile Assistant Project)の概要と現状を報告する.C?MAPの目標は,博物館や研究所公開などの展示会場を想定し,携帯情報端末を携えた見学者へ,彼らのおかれた時空間的な状況や個人的な興味に応じて,展示に関する情報を提供する環境を構築することである.我々は最初のテストベッドとして我々の所属する研究所の研究発表会を選び,展示ガイドシステムを試作した.携帯ガイド上には,展示会場の地理的案内と展示間の意味的な関連を可視化した意味的案内が提供され,これらはユーザの時空間的/心的な文脈に応じて個人化される.また,ガイドシステム上にはlife?likeな外見を持つガイドエージェントが表示され,システムとユーザ間のインタラクションを取り持つ.本稿では,展示に関する興味を共有する見学者?展示者間のコミュニケーションを促進するためのサービスについても述べる.This paper presents the objectives and progress of the Context-aware Mobile Assistant Project (C-MAP).The C-MAP is an attempt to build a tour guidance system that provides information to visitors during exhibition tours based on their locations and individual interests.We prototyped a guide system using our open house exhibition of our research laboratory as a tested.A personal guide agent with a life-like animated charadter on a mobile computer guides users using exhibition maps which are personalized depending on their physical and mental contexts.This paper also describes services for facilitating communications among visitors and exhibitors who have shared interests.
著者
林 薫平
出版者
日本農業史学会
雑誌
農業史研究 (ISSN:13475614)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.27-37, 2022 (Released:2023-03-15)

This paper reports a case of transference of historical material. In particular, between Nobunkyo (the Rural Culture Association of Japan) Agricultural Library, which was founded in 1982 and closed in 2015, and the Faculty of Food and Agriculture of Fukushima University, which has just started in 2019, a special project of transferring all the books and historical material, totally amounting almost one hundred thousand, from the former to the latter, was launched in 2020, and is still ongoing. In this paper, I summarize the above process. My special focus is on Emeritus Professor Yasuo Kondo (at the University of Tokyo), who was the president of Nobunkyo Agricultural Library at the time of its foundation and provided for himself a lot of invaluable historical materials including his personal note, unpublished manuscripts, and even prewar Japanese Governmental documents, totally amounting 13 thousand units, to the Library. Also, he has long been the president, the librarian and the best user of the Library since its foundation. My conclusion is twofold: 1) Nobunkyo and Fukushima University are responsible for the completion of this big transference project and archiving of the important materials in the modern style for researchers' and the public utilization; 2) the Faculty of Food and Agriculture of Fukushima University must be the successor of not only Professor Kondo's documents but also his critical spirit and perspectives on agricultural economics and policies, that was built through his life, and we, researchers in Fukushima, will absolutely be able to learn a lot from this library and his perspectives in the face of many challenges of Fukushima's agricultural recovery from the disaster in 2011.
著者
局 伸男 渕 祐一 森崎 澄江 溝腰 利男 首藤 真寿美 藤井 幹久 山田 謙吾 林 薫
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.561-564_1, 1986-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
5
被引用文献数
1

大分県内のフグ料理専門店において行われていたフグ肝臓調理方法の除毒効果について調査した. トラフグ及びカラスの有毒肝臓 (最低62MU/g, 最高1,270MU/g) 21例の調理後の毒力はすべて5MU/g未満にまで減少していた. また, 各例とも調理工程における毒性減少の傾向が類似していた. 除毒のメカニズムは, 溶出除去を主としたものと考えられるが, 加熱処理によるフグ毒の分解とその無毒化も関与しているものと推測された.
著者
片瀬 眞由美 平林 由果 渡辺 澄子 栗林 薫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.94, 2003 (Released:2004-05-25)

【目 的】ここ数年、靴の踵を踏みつぶしてスリッパのように引きずって歩く高校生の姿が目につくようになった。どのような意識が隠されているのか、その背景を明らかにするために、女子高校生の靴や足に対する意識と実態を調査することにした。今回は通学靴に焦点をあて、靴選びや履き方に関してのアンケート調査を実施した。【方 法】愛知県下の高等学校に在籍する女子高校生に対し、通学靴の履き方の実態や靴選びに関して調査を実施した(自記式集合調査法)。調査時期は2002年12月、有効回答数は1257(通学靴を指定している高等学校759、指定していない高等学校498)であった。【結果および考察】通学靴としてローファーを毎日履いているものは48%、スニーカーは38%でローファー派の方が多かった。足で気になっていることについては、「靴ずれ」が最も多く、ローファー派では9割が訴えたが、スニーカー派では5割に過ぎなかった。その他、足部の痛みや巻き爪、外反母趾、肩こり、足の疲れなどの訴えもあり、女子高校生の多くは足の悩みを抱えていることがわかった。一方、自分の足のサイズに関しては、「測定はしていないが大体知っている」が77%、「知らない」が19%であり、正確な足のサイズへの認識度は低かった。「正確に足のサイズを測ってみたいか」では「思う」と「思わない」が半々で、足のサイズへの関心はそれほど高くないことが窺えた。通学靴の踵を「踏んでいる」のは16%で、その理由は「脱ぎ履きが簡単だから」であった。本調査の結果から、女子高校生は見た目を優先して通学靴を選び、脱ぎ履きの楽な靴を求めてサイズを選んでいることが足の悩みにつながっている可能性があることが示唆された。
著者
磯部 裕 小林 薫 柴山 健爾 石井 幹十
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.18, no.20, pp.19-24, 1994
被引用文献数
2

W-VHS VCR has been developed as a next generation consumer VCR in response to Hi-Vision and NTSC signals. This VCR has a high picture quality using new video signal processing technologies by new Metal-coated tapes, TCI signal processing and Temporal Emphasis. It has an excellent cost/performance ratio as a Hi-Vision VCR developed on the basis of the VHS system.
著者
海原 卓也 小林 薫 石橋 忠良
出版者
公益社団法人日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学年次論文報告集 (ISSN:13404741)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.1171-1176, 1999-06-21
被引用文献数
3

RCラーメン高架橋柱やRC橋脚において、阪神大震災級の地震に対して部材の耐震性能を向上させるためには、より変形性能を大きくする必要がある。しかしながら、帯鉄筋を多量に配置し、変形性能として部材のじん性率が10以上となるRC柱の地震時変形性能はまだ明らかにされていない。本研究は、帯鉄筋比が0.6%以上となるRC柱部材の交番載荷試験結果より、RC柱の地震時変形性能評価の基礎となる部材降伏時変位算定法を提案するものである。
著者
渕 祐一 野口 玉雄 斉藤 俊郎 森崎 澄江 仲摩 聡 嶋崎 晃次 林 薫 大友 信也 橋本 周久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.320-324_1, 1988-10-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
9
被引用文献数
2 1

大分県地方のフグ料理専門店に伝えられていた, フグ肝臓の独特な調理方法による減毒機構について検討した. マウス試験及びHPLC, TLC, 電気泳動の結果から, 調理方法による減毒は, 手揉み工程ではフグ毒の溶出除去によること, また煮沸工程では加熱によって有毒肝臓中のテトロドトキシンがアンヒドロテトロドトキシン, さらにテトロドン酸へと順次構造変化を起こし, これに伴い毒性が弱毒性, 無毒性へと転換変化する現象に基づくことが明らかにされた. さらに, この煮沸工程での減毒には溶出による除去機構も関与していることが示唆された.
著者
篠山 浩文 林 薫 藤井 貴明
出版者
千葉大学園芸学部
雑誌
千葉大学園芸学部学術報告 (ISSN:00693227)
巻号頁・発行日
no.49, pp.p267-270, 1995-03

β-D-xylosyl glycerol, lactoseを含む溶液中でEscherichia coli β-galactosidaseを作用させ, その反応液を活性炭およびセルロースカラムクロマトグラフ法に供したところ, ο-β-D-galactosyl-(1→4)-ο-β-D-xylosyl-(1→1)-glycerol, ο-β-D-galactosyl-(1→4)-ο-β-D-xylosyl-(1→2)-glycerol, ο-β-D-galactosyl-(1→4)-ο-β-D-xylosyl(1→3)-glycerolの3種の異性体からなる新規配糖体標品が得られた.
著者
梅林 薫
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集
巻号頁・発行日
vol.67, pp.21_1, 2016

<p> 文部科学省が作成したスポーツ基本法に関わるリーフレットの表紙には「スポーツの力で日本を元気に!」とある。そして基本法前文には「スポーツは、世界共通の人類の文化である」という言葉にはじまり、「スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵養等のために」と続き、私たちが生涯にわたり心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠なものであると記述されている。スポーツが心と体に何らかの影響を及ぼすことはアスリートのみならず多くの人が実感している。スポーツ界では心技体という言葉もよく耳にする。昨年現役を引退した澤穂希は「心と体が一致してトップレベルで戦うことが難しいと感じてきたから」と引退理由を説明した。</p><p> 本シンポジウムは「こころとからだをつなぐスポーツ」と題して3人の演者から、最新のエビデンスを交えた基本から最先端の話題や、女子テニス界トップアスリートの知られざる心と体の習慣などのご紹介など、それぞれの切り口でご講演を頂く。今後、より一層スポーツの力で心も体も、多くの人を元気に、私たちが取り組んでいくべき課題のヒントになるような企画としたい。</p>
著者
福見 秀雄 林 薫 三舟 求真人 七条 明久 松尾 幸子 大森 南三郎 和田 義人 小田 何 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p97-110, 1975-12

長崎地方における日本脳炎(日脳)ウイルスの生態学的研究のうち1964年から1973年に至る10年長間の調査成績を総括し解析を加えた.日脳ウイルスの主媒介蚊であるコガタアカイエカのウイルス感染の拡がりは媒介蚊の密度が最高に達する以前か或いはその時間に一致しているのが例年の様相である.また,人の日脳流行は主に豚の日脳感染が始まる頃の媒介蚊の密度によって影響されるようである.過去10年,相当の大量の越年コガタアカイイカ雌成虫から日脳ウイルスの分離を試みたが,いずれも不成功に終った.このことは蚊体内におけるウイルスの越年の可能性は南方諸地域とは異ることが推察される.
著者
林 薫 三舟 求真人 七条 明久 鈴木 博 松尾 幸子 牧野 芳大 明石 光伸 和田 義人 小田 力 茂木 幹義 森 章夫
出版者
長崎大学熱帯医学研究所
雑誌
熱帯医学 (ISSN:03855643)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.p129-142, 1975-12

1973年2月3日から18日の間,新生成虫が検出されない時期に野外で捕集した冬期のコガタアカイエカ1083個体,8プールから4株のウイルスを分離し,日本脳炎(日脳)ウイルスと同定された.この事実は,越年蚊体内でウイルスが持ち越されたものと考えられる.そして1973年には年間を通じて,蚊一豚の感染環が証明され,奄美大島,瀬戸内地域における日脳ウイルスの特異な撒布状況が観察された.この所見は我国で初めてのことである.しかしながら,1974年では,コガタアカイエカから7月上旬にはじめてウイルスが分離されると共に,これと平行して豚の新感染も同時に証明された.この事は蚊一豚の感染環,特に蚊によるウイルスの越年が中絶したことを意味すると共に,奄美大島の調査地域へのウイルスの持込みがあったに違いないことを物語るものであろう.換言すれば,奄美大島の調査地域では環境条件さえよければウイルスの土着が可能であるが,条件が悪いと蚊によるウイルスの越年は中絶し,流行期に再びウイルスの持込みが行われるであろうことを推定してよいと思われる.1973年7月24日夜半から25日未明にかけて奄美大島名瀬港及び鹿児島港の中間の海上で,船のマスト上にとりつけられたライトトラップ採集でコガタアカイエカ数個体を捕集した.この事実はコガタアカイエカが洋上を移動していることを意味しているものと考えられる.1975年7月下旬,奄美大島から鹿児島(九州南域)に向け,標色コガタアカイエカの分散実験を試みたが,遇然に実験地域を通過した台風2号で阻止され不成功に終った.しかし,分散実験日の約10日前にフイリッピンからの迷蝶が鹿児島南端に到達していることから気流によるコガタアカイエカの移動は決して否定出来ない.