著者
篠原 現人 尼岡 邦夫
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.487-490, 1994-02-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

北海道室蘭沖から得られ, 完模式標本以外に採集例のないヤセアイナメStellistius katsukii Jordan et Tanaka, 1927と同海域で普通に採集されるホッケPleurogrammus azonus Jordan et Metz, 1913との関係について主に外部形態に基づき調査した.両種の完模式標本と日本各地から得た23個体のホッケの標本を比較したところ, 両者に差異は認められなかった.従って, ヤセアイナメはホッケのシノニムであり, ヤセアイナメ1種のみを含むヤセアイナメ属Stellistiusもホッケ属Pleurogmmmusのシノニムである.また, 背鰭第1鰭条が長く, 後続のものとほとんど同じであるというヤセアイナメ属の特徴は模式標本の再調査では認あられず, Jordan and Tanaka (1927) の観察が誤りであったと判断された.
著者
尼岡 邦夫 武藤 文人 三上 敦史
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.109-112, 2001-11-26 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8
被引用文献数
1

In 1993 and 1999, a number of specimens of a poecilid fish collected from a drainage area of the hot spring at Kojyohama, Shiraoi-cho, Shiraoi-gun, southern Hokkaido, Japan was identified as Poecilia sphenops. Identifications were based on males having elongated pelvic-fin tips, in having the dorsal-fin origin posterior to a vertical through the pelvic-fin base, 9-10 dorsal fin rays, no horizontal pigment band and ocellus on the body, no opening of the cephalic sensory canal on the snout, and many tricuspid teeth in the inner row of teeth on the upper jaw. It is believed that small fish were introduced into this area longer than 20 years ago to assist in reducing mosquito populations. At present, high density schools of these small fish were observed swimming throughout the drainages. This report represents the record of habitation and natural breeding of this species in Japan.
著者
三木 徹 金丸 信一 尼岡 邦夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.128-134, 1987-09-10 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

北海道厚岸沖より得られたマダラの胃内容物を調査中に1個体のタウエガジ科魚類を発見し, 新属新種Neolumpenus unocellatusモンツキガジとして記載した.本種は比較的大きな胸鰭と1棘3軟条の腹鰭を持つこと, 体側に骨質状の側線管を持たないこと, 眼下感覚管孔が無いこと, 左右の鯉膜が峡部から幅広く離れる一皮摺を形成しないことなどによりウナギガジ亜科に含められる.さらに, 深く分枝した腹鰭軟状を持つこと, 腹鰭および臀鰭の棘が堅固であること, 胸鰭下部軟条が後方に伸長しないこと, 鋤骨および口蓋骨に歯が存在すること, 鰓孔の前端が眼の後縁下に達しないこと, 瞳孔の約1/2程度の非常に大きな頭部感覚管孔を持つこと, 吻が鈍く, その外郭は険しいこと, 尾鰭基底部の背方に1個の眼状斑を有することなどにより, 本種は同亜科内の既存の属および種と明瞭に識別される.
著者
後藤 友明 仲谷 一宏 尼岡 邦夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.167-172, 1994-08-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
18

クラカケザメの喉部のひげを詳細に記載した.その結果, このひげが基底軟骨および軟骨性の中軸により支持されること, 顔面神経の舌顎枝の1分枝であるramus mandibularis externusが分布すること, 筋肉がないこと, そして味蕾や他の感覚受容体を持たないことが明らかになった.これらは, このひげが物理的刺激に対する感覚器官の一種であることを示唆している.また, このひげの相同性を推定するため, 他の板鰓類にみられるいくつかの類似した器官と比較したところ, クラカケザメの喉部のひげはこれらのいずれとも相同ではない固有なものであることが明らかになった.
著者
尼岡 邦夫
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.153-157, 1974

種子島近海 (30°51'N, 129°01'E) の中層で, 水深32mから採集された1個体のダルマガレイ科 (Bothidae) の後期仔魚 (体長21.6mm) を調査した.この仔魚は体が長だ円形で, 短い背鰭第1棘と伸長した第2棘をもち, 尾舌骨と腰骨の腹縁に鋸歯を欠くなど明らかにナガダルマガレイ属 (<I>Arnoglossus</I>) の特徴をもっている.日本近海には本属の4種, ニホンダルマガレイ, ハナトゴダルマ, ナンヨウダルマ, ナガダルマガレイが生息している.この仔魚はすでに知られているニホンダルマガレイの仔魚によく似ているが, 背鰭条数 (II, 92), 臀鰭条数 (73) および脊椎骨数 (10+30=40) が少ない.これらの体節的形質に基づいて, この仔魚は南日本から南シナ海に広く分布するナガダルマガレイに同定される.また, この仔魚と同じ発育段階にあるニホンダルマガレイの仔魚と比較した結果, これらの体節的形質以外に, ナガダルマガレイの仔魚は体が高く, 吻・眼径・下顎・背鰭軟条・臀鰭軟条が短く, 吻突起がほとんど発達しないなどの相違のあることが判明した.
著者
尼岡 邦夫 岡村 収 吉野 哲夫
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:18847374)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.259-264, 1992

2種のダルマガレイ科魚類, ミツメダルマガレイ<I>Grammatobothuspolyophthalmus</I>とニテンナガダルマガレイ (新称) <I>Arnoglossustopeinosoma</I>が日本から採集された.<BR>前種は沖縄本島近海で刺網によって捕獲され, 知念魚市場から7個体得られた.本種は体側に3個の明瞭な眼状斑があること, 両眼間隔域は狭くくぼむが, その幅は雌雄で差が無いこと, 背鰭の前10軟条は伸長し, それらの軟条の鰭膜が深く切れ込み翼状を呈することなどによって特徴づけられる.本種には胸鰭の長さ (雄では雌よりも長い) 以外にも, 二次性徴が存在することが判明した.雄では背鰭伸長軟条は雌よりも長く, それらの後縁の鰭膜 (翼) は雌よりも広い.また, 雄には上眼の上方に2個の染色体状の暗色斑紋がある.インド洋からマレイ半島を経てオーストラリアや南シナ海までの分布が知られていた.<BR>後種の5個体は高知人学調査船「豊旗丸」のビームトロールによって土佐湾の水深45-75mから採集された.本種は背鰭と臀鰭の後部の基底にそれぞれ1個の大きな黒色斑があること, 背鰭の前4軟条がよく伸長することなどによって特徴づけられる.本種にも二次性徴が存在し, 雄の背鰭伸長軟条は雌や未成魚よりも長い.本種の分布はペルシャ湾から南シナ海までであった.<BR>今回の両種の記録は分布の北限であり, 日本から初めてである.
著者
尼岡 邦夫 阿部 晃治
出版者
日本魚類学会
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.185-191, 1977-03-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9

襟裳岬沖500-1000mの深みから採集された3個体のセキトリイワシ科魚類を調査した.1個体は下顎が著しく突出し, その縫合部に前向の1突起を具えることなどから本邦から未報告のBajacaliforniaウチグチイワシ属(新称)に含まれる種類であった.本属には世界各地から4種類が知られているが, 本個体は体が細長いこと, 横列鱗数が少ないこと, 口が著しく大きいことおよび吻が短いことなどから, これらのいずれの種類にも同定されず夢新種ウケグチイワシBajacalifornia erimoensisとして記載した.他の2個体はコンニャクイワシに同定された.本種は1914年青森から得られた標本にもとついてJordan and Thompsonによって記載されて以来報告がなく, 第2番目の記録である.
著者
尼岡 邦夫 矢部 衞 仲谷 一宏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究は1995-1999年に実施された千島列島の生物多様性に関する国際共同学術調査において採集された魚類標本約13,000個体を対象に系統分類学的および生物地理学的に精査し,千島列島に生息する魚類の種多様性の実態を解明する目的で行われた。本研究の結果,以下に示す研究成果を得た。1.千島列島全域にわたる15島で採集された浅海性魚類を分類・査定した結果,未記載種4種,原記載以来初記録種2種および西部北太平洋初記録種2種を含む5目14科60種を確認した。2.未記載種4種(Icelinus sp., Microcottus sp., Porocottus 2 spp.)はいずれもカジカ科魚類であり,前2種については新種として命名・記載種ための論文をすでに学会誌に投稿した。3.千島列島中部で得られたタウエガジ科Alectridium aurantiacumおよびカジカ科Sigmistes smithiを詳細に記載し,西部北太平洋初記録種として学会誌に発表あるいは投稿した。4.千島列島中部で得られたゲンゲ科Commandorella popoviおよびカジカ科Archaulus biseriatusは原記載以来の初めての記録に当たる希少種であることが判明した。5.本研究で確認された千島列島の浅海性魚類について列島内での分布パターンおよび周辺海域での出現状況を基に生物地理学的に解析した結果,千島列島のURUP島以東とITRUP島以西で浅海性魚類の種組成が著しく異なること見出し,この間に生物地理学的境界が創成されているとの結論を得た。6.本研究課題の研究成果をまとめて報告書を作成するとともに,本研究で扱った千島列島産の魚類標本を北海道大学水産学部生物標本館に学術標本として登録し,データ・べース化を図った。
著者
尼岡 邦夫 矢部 衛
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

南半球のダルマガレイ科魚類の種の多様性とその分散の経路を明らかにする目的で、サンゴ海、オーストラリアやニュージーランド周辺海域から集められた約3,000個体の本科魚類を雌雄差、老幼差などを考慮して、コンピューターで分析し、分類学的研究を行い、次のような結果を得た。本海域には本科魚類はイトヒキガンゾウビラメTaeniopsetta属1種、ミツメダルマガレイGrammatobothus属1種、ホシダルマガレイBothus属2種、コウベダルマガレイGrossorhombus属1種、ヤリガレイLaeops属1種、ヒナダルマガレイJaponolaeops属1種、ヤツメダルマガレイTosarhombus属3種、ダルマガレイEngyprosopon属10種、イイジマダルマガレイPsettina属3種、ナガダルマガレイArnoglossus属10種、スミレガレイParabothus属3種およびセイテンビラメAsterorhombus属3種の12属39種分布している。そのうち、14種が未記載種であり、次の10種、Engyprosopon bellonaensis, E.septempes,E.rostratum,E.longipterum,E.raoulensis,Tosarhombus necaledonicus,T.longimanus,T.brevis,Parabothus filipesおよびArnoglossus micrommatusは新種として記載し公表された。他の未記載種は投稿中または投稿準備中である。Arnoglossus bleekeriおよびPsettina variegatusは原記載以後初めて記録され、T.ocellata,Bothus myriaster, C.kanekonis,L.kitaharae,J.dentatus,E.grandisquamus,E.xystrias,E.maldivensis,E.hureaui,Parabothus kiensis,P.coactatus,Psettina iijimae, P.variegatus,Arnoglossus macrolophusおよびA.tenuisの15種は南半球から初記録である。本研究で南半球の本科魚類相を初めて明らかにしたが、属レベルでは北半球のものと100%、種レベルでは約50%が共通し、本科魚類に関しては両半球間に明瞭な障壁は認められない。本科魚類は底生魚であるが、浮遊性仔魚によって分散することと関係している。