著者
清水 長 山川 武
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.109-147, 1979-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
115

今日までに目本から知られているすべての種, 西太平洋産の2種, さらに日本産の1新種を含むイットウダイ亜科2属18種の分類学的研究を行い, 各種のシノニムを詳細に論じた.この亜科には, イットウダイ属Adioryxとウケグチイットウダイ属Flammeoの2属が知られ, 両者は背鰭第11棘の位置で区別される。この棘は, イットウダイ属では第10棘と背鰭第1軟条との中間に位置し, ウケグチイットウダイ属では背鰭第1軟条に極めて近く位置する。イットウダイ属の分類には計数的形質のほかに, 鼻骨後部の棘, 鼻孔の棘および第1眼下骨上縁の棘もしくは鋸歯の有無が有効な形質である.本属の日本産10種, ハナエビスA.furcatus, トガリエビスA.spinifer, クラカケエビス (新称) A.caudinaculatus, スミツキカノコA.cornutus, イットウダイA.spinosissimus, アヤメェビスA.ruber, ホシエビスA.lacteoguttatus, アオスジエビスA.tiere, ニジエビスA.diadena, テリエビスA.itiodaiおよび1新種バラエビスA.dorsomaculatusの記載が与えられた.この新種は鼻孔の後縁 (時には前縁にも) に小棘をもつ, 第1眼下骨上縁に鋸歯をもっ, 鼻骨後部は平滑で棘をもたない, 側線鱗数32-35, 体色は全体に赤色で背鰭第1棘から第3棘の問の鰭膜の下方部に黒斑をもつなどの特徴により他のいずれの既知の種とも区別される.日本以外からのスミレエビス (新称) A.violaceus, ヒメエビスA.microstomus, サクラエビス (新称) A.tiereoidesの3種を含めて, 西太平洋産イットウダイ属14種の実用的検索が作製された.ウケグチイットウダイ属4種は, 背鰭第11棘の長さ, 側線上方鱗数, 胸・臀鰭条数および背鰭棘部鰭膜上の黒色斑紋の有無と形により容易に識別される.これら4種の記載と検索が与えられた.
著者
清水 長正 山川 信之 池田 明彦 大和 美佐枝 山田 祐子 柿下 愛美 石井 正樹 島立 正広
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.193-200, 2020 (Released:2021-04-28)
参考文献数
6

Jigokudani Crater is located at the altitude of 2,100m a.s.l. in the subalpine zone of northern area of the Yatsugatake volcanic chain (Kita-Yatsugatake). The relations between seasonal crater lake appearance and ground-ice development under the algific environment of talus slope in the crater were observed through 6 years from 2009 to 2014. The crater lake appeared during more than two months in early summer of 2010, 2012 and 2014 and ground-ice disappeared in autumn in each year except 2014. On the other hand, perennial ground-ice was formed in 2009, 2011, 2013 and maintained until next summer, and crater lake appeared. These periodic phenomena suggest that the appearance of crater lake depends on the frozen ground as an impermeable layer represented by ground-ice which was maintained from former year.
著者
清水 長正 宮原 育子 八木 浩司 瀬戸 真之 池田 明彦 山川 信之
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2016年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100044, 2016 (Released:2016-11-09)

東北地方では福島県と並んで山形県に風穴が多い。天然記念物にも指定された著名な風穴がある。これまでに確認された風穴から山形の風穴マップを作成した。県内の風穴は、自然風穴(地すべり地形・崖錐斜面などで自然状態にある風穴)、人工坑道の風穴、明治・大正期の蚕種貯蔵風穴跡(石垣囲)などに大別され、それらを2.5万分の1地形図索引図に示した。あわせて、各風穴の概要なども展示する。
著者
苅谷 愛彦 清水 長正 澤部 孝一郎 目代 邦康 佐藤 剛
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.87, no.5, pp.386-399, 2014-09-01 (Released:2019-10-05)
参考文献数
25

山地の解体過程において,大規模地すべりの時間的推移を詳しく検討することは重要である.本論文は,このような視点から関東山地南部・三頭山(標高1,531 m)北西面の大規模地すべりをとりあげ,踏査や空中写真判読,年代測定に基づき,その地形・地質的特徴と発生年代を論じたものである.この大規模地すべりは三頭山山頂から西北西方向に伸びる稜線の直下で発生し,滑落崖を形成した.地すべりで斜面物質は約1.5 km移動し,谷壁や谷底に堆積した.地すべり移動体はジグソー・クラックを伴う厚い礫層からなり,堰き止めを起こし湖沼・氾濫原を形成したとみられる.初生地すべりはcal AD 1292~1399(鎌倉時代~室町時代)かそれ以前に発生し,二次地すべりがcal AD 1469~1794(室町時代~江戸時代後期)に生じた.山麓の集落には,湖沼・氾濫原の決壊や二次地すべりを示唆する伝承が残されていることも判明した.
著者
清水 長正 山本 信雄
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.339, 2013 (Released:2013-09-04)

地下の空隙から冷風を吐出する風穴(ふうけつ)は全国の山地・火山地の地すべり地形・崖錐斜面・熔岩トンネルなどに多数ある。信州の稲核(現・松本市)では江戸期から風穴が利用されていて,幕末期に蚕種を風穴に冷蔵して孵化を抑制し養蚕の時期を延長させる手法が稲核で開発され,その後の明治期における蚕糸業の振興に伴い蚕種貯蔵風穴が全国へ普及し,大正期までに各地に280箇所以上が造成された。明治後期には風穴の機構に関する日本で最初の研究が稲核で始められた。さらに現在でも風穴の利用が持続しているという,自然現象(地形・表層地質・気象)を巧みに利用した山村文化をもつ場所である。
著者
Randall John E. 清水 長
出版者
魚雑
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.109-115, 1994

モーリシャスで採集した新種<I>Plectranthias pelicieri</I>を記載した.本種は他の種から, 前鯛蓋骨下縁に3本の前向棘があることで区別できる (外見で見にくい場合には触れると分かる).その他に背鰭はX, 16-17で細長い皮弁が数本の中程の長い棘の後端にある, 胸鰭は13軟条で全て不分枝, 側線は完全で側線鱗は29, 赤と黄の地に青から白の横縞の入る体色などの特徴がある.<BR>また生時の色彩が特徴なので, <I>P. gardineri</I> (Regan, 1908) のカラー写真を初掲載した.
著者
清水 長正
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.521-534, 1983-08-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
37
被引用文献数
1 5

秩父山地の山稜部周辺には,凹凸が少なく平滑で,表層に岩塊が堆i積する岩塊斜面が発達する.岩塊斜面は,斜面型,分布高度,斜面堆積物(岩塊層)の層相,その上下に存在する火山灰などから,最終氷期に形成された化石周氷河斜面と推定される. 岩塊斜面の形成期は,雲取期(最終氷期前半期),金峰1期(最終氷期極相期),金峰II期(晩氷期)に区分される.岩塊層は,雲取期と金峰1期の間で,マトリックスを有する層からマトリックスを欠く層へと変化している.雲取期には,山地全域にわたって岩塊斜面が発達し,その下限は標高1,700~2,300mである.金峰11期には,おもに金峰山の2,300m以上の部分に小規模に岩塊斜面が発達していたにすぎない.これらの岩塊斜面の分布が示す地域を,その時期の周氷河極相地域と考えた. 現在,雲取期および金峰1期の岩塊斜面は亜高山針葉樹林に,金峰II期の岩塊斜面はおもにハイマツに,それぞれおおわれているYこのような岩塊斜面と植生との関係は,最終氷期から後氷期にかけて岩塊斜面が安定していくとともに,ハイマツ,亜高山針葉樹林の順に植生が侵入する経過を示すものと考えられる.
著者
清水 長正
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.126-135, 1994-07-15 (Released:2010-04-30)
参考文献数
20
被引用文献数
4 2

北上山地最高峰の早池峰山 (1,914m) では, 森林限界は高度1,700~1,300mの間で著しく上下している。このような森林限界を決めた条件として, 斜面地形に注目し考察した。早池峰山の森林限界は, 最終氷期に形成された岩塊斜面末端, 完新世に形成された雪食凹地末端や崩壊斜面上端などの斜面地形境界にほぼ一致している。これらの斜面地形の表層地質や残雪などが樹木の生育に直接影響し, 森林の成立を拒否した結果,斜面地形の境界部に森林限界を成立させたと考えた。