著者
垣内 弘
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.149-173, 1994-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
30
被引用文献数
3

エポキシ樹脂の歴史、さらに最近の生産量や使用々途について概観し、どの様な樹脂がどの様な用途に適しているかを述べた。つぎに従来からの汎用エポキシ樹脂の欠点である脆さを改良する手法、特に網状硬化物の特徴である耐熱性、低吸水性や曲げ強度を主とした機械的強度などの低下を避けることを目標とした新しいエポキシ樹脂の開発や、従来からの樹脂の改質剤の添加による改質法について述べる。
著者
中村 茂夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.26-38, 1985-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
22
被引用文献数
1

ねじり振子における繊維, フィルム, 棒状試験片のかわりに, ガラス繊維の組紐 (Braid) と試料の複合体を用いて自由減衰振動の測定を行うTorsional Braid Analysis (TBA) の原理, 装置および熱硬化性樹脂への応用, とくに熱硬化過程の追跡, 熱硬化速度の決定, 硬化樹脂の力学的性質について解説する。熱硬化性樹脂の硬化反応の際に, その状態は液体状態からゴム状態を通ってガラス状態まで広い粘弾性領域にわたって変化するので, その全過程を1つの装置で連続的に測定することができるTBAは熱硬化性樹脂の研究に最も適すると言える。また, 熱硬化系の等温硬化過程における状態の変化を図示し, 硬化条件の設定および異なった反応系相互の比較を可能にするTTT図 (Time-temperature-transformation cure diagram) およびCHT図 (Continuous heating transformation cure diagram) についても説明し, その有用性を明らかにした。
著者
古沢 敏
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.169-183, 1989-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
107
被引用文献数
1

不飽和ポリエステル樹脂は, 1953年に国産化されて以来, ボタン, 化粧板などの非FRP用, 住宅機材, 舟艇, タンク, 工業部品などのFRP用マトリックス樹脂として広範に用いられ, 生産高は1988年に過去最高の23万トンに達した。約80%を占めるFRP用においては, 成形法も従来のハンドレイアップを中心とした成形法から加熱加圧成形法への移行が年々強まりマトリックス樹脂もこれに適した開発が行われている。さらに複合材としての高機能化に対応すべくエポキシ樹脂, ウレタン樹脂, アクリル樹脂との境界領域における樹脂開発が自動車分野への応用を目的として行われている。FRP用を中心に, 不飽和ポリエステル樹脂およびその周辺樹脂の高機能化について最近の技術動向を述べる。

2 0 0 0 BTレジン

著者
綾野 怜 岳 杜夫 永井 俊一
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.23-36, 1984

BTレジンは1974年三菱瓦斯化学で発明された新しい耐熱性付加重合型熱硬化性樹脂であり, その成分は西独バイエル社が発明したトリアジン成分と, ビスマレイミド成分からなる。そして, 熱重合反応により合成されるBTレジンは, 分子内にイミド環を有するポリイミド樹脂の一種に分類される。このレジンは高耐熱で高摩耗性, 低誘電特性や耐マイグレーション性などの電気特性を有し, 且つすぐれた成形性, 作業性, 反応性及び低毒性などの特性を併せもつ極めてユニークな実用性の高い高性能材料である。このような諸特性が国内をはじめ海外に於いて高く評価され, 電子機器用プリント配線材料, 航空機用構造材料, 重電機器用絶縁材料, 粉体塗料, 成形材料, 電子部品用保護コーティング材など広範囲な分野で実用化が進められている。<BR>本稿では機能性材料の原料としてのシアネート基の反応性, BTレジンの製法, BTレジンの特性とその用途開発の現況について概説する。
著者
井上 真由美
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-50, 1992-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
5

プラスチック材料は物理的にも化学的にも非常に安定した材料であるため, 材料の表面にカビや細菌が繁殖して変形・腐食が起こることは全くないと言うのが一般の常識かも知れない。しかしながら, 約40年にわたり極めて広範囲におよぶ各種材料の微生物災害研究を実施した結果, 40年間に研究を実施した約400件の項目のうち, その95%がプラスチック製品および材料に, カビや細菌が繁殖し, 微生物の生きた作用によって変形・腐食が発生することが確認された。従って, プラスチックの微生物による変形と腐食は極めて重要な研究課題ということができる。プラスチックが使用中に微生物の作用を受けるか否かを客観的に評価する方法を確立するとともに, 微生物に対する抵抗性を向上させるための研究の具体的な内容について述べる。
著者
森川 徹夫
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.161-166, 1993-09-10 (Released:2012-08-20)

大量生産・大量消費・大量廃棄によって有限な資源の枯渇化を招くと共に, 地球の環境容量を超えた高度の産業活動が地球規模での環境問題を引き起こしている。地球との共生を果たしながら産業活動の「持続的発展」を可能ならしめるためには, 地球規模での物質循環についての新しいシステム, 即ち「資源循環型社会」の構築が不可欠である。樹脂業界においてもプラスチック材料の評価項目に「環境適合性」が加わり, とくに「リサイクノレ性」が重視されるようになり, プラスチックリサイクルが強い社会ニーズとなってきた。そこで, 当社における「環境適合性」に対する考え方, 熱硬化性樹脂のリサイクルの方法についての考え方の一部を紹介する。
著者
加門 隆
出版者
Japan Thermosetting Plastics Industry Association
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-9, 1989

高融点の粉体であるジアミノマレオニトリル (DAMN), そのN-アルキル誘導体およびその, schiff baseをエポキシ樹脂の潜在性硬化剤として検討した。<BR>これらの硬化剤をエポキシ樹脂に分散すると約2ケ月のポットライフがあり, 150℃以上に加熱すると円滑に硬化して, 良い硬化物が得られた。<BR>DAMNとそのN-アルキル誘導体では, エポキシ基1molに対して1/8molから1/3molまで配合量を変化させた硬化物のガラス転移温度 (Tg) と橋架け密度 (ρ<SUB> (E′) </SUB>) の最大は約1/6molのとき得られ, それぞれの硬化剤のアミン活性水素の数から予想される配合量とは異なるものであった。<BR>DAMNのSchiff baseによる硬化物は予想に反し, Tgが200℃と非常に高く, ρ<SUB> (E′) </SUB> も大きかった。しかし, ρ<SUB> (E′) </SUB> の最大値が得られる配合量は1/5molのときで, Tgの最高は1/4molの配合物で, 特異な結果であった。<BR>以上の結果のように, これらの硬化物の物性は一般のエポキシ樹脂の硬化物とは異なっているため, 硬化物の構造を解明することができなかった。
著者
松井 醇一
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.145-152, 1990-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
8

繊維強化熱硬化性樹脂複合材料は, 工業用材料として重要な地位を占めている。複合材料の性質は, 素材, 積層設計及び成形加工によって決まるが, 本稿では素材, なかでも強化繊維の寄与について述べた。炭素繊維強化複合材料の場合, 繊維の高弾性率・高強度を反映して, 繊維配列方向の引張性質は抜群に優れているが, 直角方向, 層間及び圧縮性質は樹脂と界面に依存するため, 必ずしも優れているとは言えない。また, 航空機材料としてのCFRPに対する要求のひとつに, 耐衝撃性の改善があり, 熱硬化性樹脂の靭性改良の研究が進んでいる。コストについては, 複合材料の成形加工性の良否が重要であり, 使い易い樹脂及び製品の品質バラツキの生じにくい樹脂の開発に対する期待が大きい。
著者
船引 恭平 中村 昌之 釣谷 雅明
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.220-235, 1981-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24
被引用文献数
5

有機化合物を熱処理することにより生成する炭素化物の構造は, 主としてX線回折の手法によりいろいろと研究されて来た。また, 電子顕微鏡技術の発展により, これら炭素化物の微細構造を直接かつ正確に観察することができるようになって炭素化の研究に大いに役立っている。最近フェノール樹脂が炭素化材料として種々の用途で用いられるようになってきたため, 炭素化挙動についての関心が高まりつつある。そこで, こゝではまず有機化合物の炭素化・黒鉛化について総括的に触れた後, ついでフェノール樹脂の熱処理に伴って観察される炭素化・黒鉛化の挙動についてまとめてみた。また, 炭素化物の収縮率や強度などの物理特性や, フェノール樹脂の平均分子量やヘキサミン量などが残炭率に及ぼす影響についても論じてみた。さらには, いろいろの測定条件下での発生するガスの種類や量などにも触れ, それぞれについて実験結果や文献を紹介して説明する。
著者
加門 隆
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.94-111, 1985-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
61
被引用文献数
1

熱分析にはいろいろな方法があり, 原理, 操作が簡単ではあるが, ガラス転移温度, 融点, 熱膨脹, 反応, 熱分解など多くの情報が得られるので, 高分子材料の分野でも広く用いられているが, 本稿ではこれらのうち示差熱分析 (DTA), 示差走査熱量分析 (DSC) などの熱測定の熱硬化性樹脂の硬化反応への応用についてのみ述べたものである。これらの方法により, 広い温度範囲にわたり, 容易に, 迅速に複雑な熱硬化性樹脂の硬化の過程が得られるだけでなく, 硬化反応の速度論的解析もできることを示した。このことから, これらの方法は熱硬化性樹脂の化学的研究のみでなく, 成形材料, 接着剤, 塗料などの工業材料の品質管理にも用いることができる。
著者
鶴田 四郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.28-39, 1988-03-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
17

尿素樹脂の化学として, まずScheibler, Trostler, Scholz (1928), Bois de Chesne (1932), 次でFahrenhorst (1955) らの論文を紹介し, 尿素とホルムアルデヒドの反応が酢酸, 水, ブタノールと著者ごとに異なる溶剤中で行われている特異点を指摘した。Fahrenhorstがジメチロール尿素のアルカリ水溶液中における特殊な安定性につき報告しているのに端を発し, Martin (1952) の論文を分析すると共にジメチロール尿素とフェノール類の反応をDiesbach (1931), Euler (1941), Zigeuner (1955) らの論文について検討した。最後にこれらとアンモニア・レゾール生成反応に於ける庄野 (1929), 井本 (英) (1949) らの業績との類似性を指摘する。
著者
佐藤 次郎
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.92-103, 1993-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
12

ドライフィルムフォトレジスト (DFRと略す) はプリント配線板 (Printed Wiring Board. PWBと略す) の配線パターン形成用レジストとして広く用いられている。最近, PWBの高密度化 (ファインライン化, スルーホールの小径化, 多層化など) が急速に進んでおり, PWBメーカーの多様な要求に対応するために, 高密度PWBの製造に適したDFRの開発がレジストメーカーにより積極的に進められている。
著者
笹川 勝好
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.185-194, 1994-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
40
被引用文献数
1

1972年に米国で「眼鏡レンズの耐衝撃性に関するFDA規格」が制定されて以来, 眼鏡レンズのプラスチック化が世界的に急速に進んでいる。現在でのプラススチック化率は米国で80%以上, 日本でも70%を越えた。また, 世界のレンズ用モノマーの生産量も年間1万数千トンに達し, プラスチックレンズの生産量も年間3億枚に届こうとしている。その理由は, 軽量性, 耐衝撃性及び染色性において無機のクラウンガラスを凌賀しているからである。最近ではプラスチックレンズの薄型化や低収差に向かって改良が進んでいる。本稿ではプラスチックレンズの研究の始まりから現在までの素材面での進歩について概説する。
著者
山田 正栄
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.178-192, 1992-09-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
19
被引用文献数
1

自動車部品分野における軽量化, コストダウンを目的とした金属部品の樹脂化が進展する中で, この分野におけるガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の需要は目ざましい伸びを示している。過酷な条件下で長期の信頼性が要求される自動車部品に多く使用されているのは, ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料が持つ優れた耐熱性, 機械強度, 寸法安定性, 耐薬品性等が認められたことに他ならない。一方では熱硬化性樹脂に共通の「脆さ」, 金属と比較した場合の「摩耗」など改良すべき余地も残っており, 諸物性の向上, 新機能の付加などにより今後も用途拡大が図られよう。本稿では, 金属材料及び熱可塑性エンジニアリングプラスチックスと比較しながら, ガラス繊維強化フェノール樹脂成形材料の特長を主に概説する。
著者
榊原 純哉
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
熱硬化性樹脂 (ISSN:03884384)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.208-220, 1986-12-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1

プラスチックは第2次世界大戦後飛躍的に伸び, 世界の経済成長の一翼を担ってきた。そのなかで, 熱硬化性樹脂はプラスチック全生産量の約20%を占め, その優れた耐熱性, 電気絶縁性, 加工の容易さ等の特徴が活用され, 多様な製品形態で日本の産業発展に大きく寄与してきた。特に熱硬化性樹脂は, 日本経済をリードするエレクトロニクス産業を中心とする先端技術分野において重要な役割を演じてきている。熱硬化性樹脂の用途及びプリント配線基板, 半導体封止材料を主体としたエレクトロニクス産業における熱硬化性樹脂の応用と技術動向について概説した。さらに, 最近の新しい樹脂及び応用について述べ, 熱硬化性樹脂の今後の展開方向について言及した。