著者
加藤 秀一
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.298-313, 2004-12-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
11

ロングフル・ライフ (wrongful life, 以下WL) 訴訟とは, 重篤な障害を負って生まれた当人が, 自分は生まれないほうが良かったのに, 医師が親に避妊あるいは中絶の決断をするための根拠となる情報を与えなかったために生まれてしまったとして, 自分の生きるに値しない生をもたらした医師に賠償責任を要求する訴訟である.そこでは自己の生そのものが損害とみなされる.しかしWL訴訟は論理的に無意味な要求である.なぜならそれは, すでに出生し存在している者が, 現実に自分が甘受している状態と自分が存在しなかった状態とを比較した上で, 後者のほうがより望ましいということを主張する発話行為であるが, 自分が存在しない状態を自分が経験することは不可能であり, したがってそのような比較を当事者視点から行なうことは遂行的矛盾をもたらすからである.それにもかかわらずWL訴訟の事例は増えつつあり, 原告勝訴の事例も出ている.それだけでなく, WL訴訟と同型の論理, すなわち存在者があたかも非在者であるかのように語る〈非在者の語り=騙り〉は, 裁判以外のさまざまな文化現象の中に見てとることができる.そのような〈騙り〉は, 死の概念を一面化し, 死者を生者の政治に利用することで, 新たな死を召喚する行為である.

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ロングフル•ライフ訴訟 https://t.co/LqKAiqkPJ6
重い先天性障害を持つ人が、「生まれてこない権利」があると考え、「生まれてきたこと自体が損害である」として親や医師を訴えるケースを「ロングフルライフ訴訟」と言うそう。まさに私の考えてきたことだ。こんな言葉があったとは。実際に訴訟という行動に出た人がいたとは。 https://t.co/S4RaDf9qtk
子どもを持つのは勝手にどうぞ〜だけど訴訟のリスク考慮してる?両親の一方または両方が障碍を(遺伝的)持ってたり高齢出産などで障碍が出た場合、その実子から訴えられるというのが「生まれなければ良かった」でお馴染みロングフル・ライフ訴訟です https://t.co/Iy18s2GMkW
「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって ロングフルライフ訴訟...後で読む https://t.co/qit5bqjK2C
「○○しない権利」の難しさのひとつに「ロングフル・ライフ訴訟」とかがあるように思っていて、久々に検索してみたら加藤秀一さんの論文が出てきた。 生まれないほうが良かった」という思想をめぐって Wrongful life訴訟と「生命倫理」の臨界 https://t.co/V9eB0BNGo1
「生 ま れ な い ほ う が 良 か っ た 」 と い う 思 想 を め ぐ っ て Wrongful life訴 訟 と 「生 命 倫 理 」の 臨 界 加 藤 秀 一 https://t.co/xpJp3ZAlZS
Wrongful Life 訴訟なんてもんがあるのか、全然読んでないけど面白そう https://t.co/nEiqQQfaeE
https://t.co/PXDvlfrwU6 これはフェミニズム文脈関係ない系の、どちらかといえば負の功利主義的な側面の反出生に近いと思うのだけど結構面白い論文。ロングフルライフ訴訟(うまれたくなかった、と子供が親を訴訟する)のまとめ。 https://t.co/3hpNaqmUTY
産むのも親のエゴなのかしら。。 /「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって Wrongful life訴訟と「生命倫理」の臨界 https://t.co/LZJlVZXYz8
J-STAGE Articles - 「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって https://t.co/HmFU3xN8E7
"自分は生まれないほうが良かったのに, 医師が親に避妊あるいは中絶の決断をするための根拠となる情報を与えなかったために生まれてしまったとして, 自分の生きるに値しない生をもたらした医師に賠償責任を要求する訴訟である.そこでは自己の生そのものが損害とみなされる." https://t.co/HmFU3xN8E7
「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって https://t.co/ZdQVek5IDv
J-STAGE Articles - 「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって https://t.co/6HSaesQ9MM
J-STAGE Articles - 「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって https://t.co/t8KeEtD6Lw >WL訴訟の事例は増えつつあり, 原告勝訴の事例も出ている マジ?どういう理屈がついているんだろう
加藤秀一 「「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって」 https://t.co/br46jxqFkN Cf.https://t.co/mtzqLzYVzr →加藤秀一『〈個〉からはじめる生命論』森岡正博評https://t.co/5MxzABKAIj https://t.co/9X7M14EgM9「生まれざりせば」は常に既に手後れな反實假想による最後の希望なんだわな。
ちょっと違うけど,これとか似たアトモスフィアを感じる 「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって Wrongful life訴訟と「生命倫理」の臨界 https://t.co/uNhLIm8Z34
「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって https://t.co/zxLNEMDKCg
https://t.co/1uStn5mfVb
タイトルとアブストのインパクトが大きくて「うおぉ」って声が出た https://t.co/uNhLIm8Z34
1件のコメント https://t.co/jpWIJ8Nkcm “「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって” https://t.co/zEmM6jX3Ke
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あ り ま し た https://t.co/4PYGavHeyN
「生まれないほうが良かった」という思想をめぐって Wrongful life訴訟と「生命倫理」の臨界 加藤 秀一 (PDF)/ あとで読も。 https://t.co/kf0vwdRfrO

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