- 著者
-
鳩山 由紀夫
- 出版者
- 公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
- 雑誌
- Journal of the Operations Research Society of Japan (ISSN:04534514)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.2, pp.106-122, 1979-06
本論文はDerman(1963)によって導入されたマルコフ型劣化を伴なう機械の保全問題の拡張である。拡張は系が閉じたループをなしていること、取替でなく修理問題であること、及び複数の修理施設をもつことに見られる。即ち、系は、有限個の劣化の状態をもち劣化の進行がマルコフ鎖で記述される単一の稼動機械と、同一機能をもつ有限個の予備機械、及び修理の種類毎に異なる複数の修理施設とからなる。各時点において、稼動機械を修理すべきか否かを決定することが問題となるが、その決定の際に、稼動機械の劣化の程度、修理がなされるときに要求される修理の種類、更に各修理施設で修理中の機械の数が情報として与えられる。修理がなされるときには、機械は修理の種類に対応した修理施設に直わに送られ、修理が開始され、同時に予備機械の一つが新たに稼動を開始する。修理時間は修理施設に依存する幾何分布に従うものとし、修理後は新晶同様の状態に戻ると仮定する。予備機械の用意が間に合わないときには、一つの機械の修理が終了する迄稼動は休止せざるを得ず、この間ペナルティが課せられる。その他のコストとしては、作動費用、材料費及び労賃を考慮している。以上のモデルを設定し、割引率を考慮した総期待費用、乃至は平均期待費用を最小とする最適保全政策が如何なる形となるかを考察する。ここで、修理の種類を固定したとき、稼動機械の劣化がある限界を越えたときのみ修理を施し、又稼動機械の劣化の状態を固定したとき、修理の種類がある限界を越えないときのみ修理を施すという二次元のコントロールリミットポリシーを提案し、緩やかな条件の下で最適政策がこの形となることを示す。次にコスト等を一般化し、更に保全員が各修理施設に一人づつの場合にも同様の議論がなされることを確認し、最後に解法に触れている。