著者
橋本 健二 佐藤 香 片瀬 一男 武田 尚子 浅川 達人 石田 光規 津田 好美 コン アラン
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

市区町村および地域メッシュ単位の統計と質問紙調査の結果から、以下の諸点が明らかとなった。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級とマニュアル労働者が大幅に減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという2極化の傾向を強めた。(2)この変化は、都心部で新中間階級と高所得世帯が増加し、周辺部では非正規労働者と低所得世帯が増加するという空間的分極化を伴っていた。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向では低いという、東西方向の分極化傾向は維持された。(4)空間的な分極化は住民の政治意識の分極化を伴っていた。
著者
コン アラン
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.2-18, 2021 (Released:2022-06-30)
参考文献数
32

本研究は,世代間所得移動が階層帰属意識に対してもつ影響を1955年から2015年までのSSM調査(社会階層と社会移動全国調査)データを用いて,時系列的に検証したものである.世代間所得移動の測定には,父親の所得を推定する方法を用いた.検証にあたり,本研究では,①現在の階層的地位のみが階層帰属意識を決定するという「絶対地位仮説」,②上昇(下降)移動は相対的満足感(剝奪感)を与え,階層帰属意識を高める(低める)という「相対地位仮説」,③上昇(下降)移動しても,過去の低い(高い)階層的地位の影響が残るため,階層帰属意識を低める(高める)という「慣性仮説」の3つの仮説を提示し,データを用いて検討した.分析の結果,1975年においては世代間所得移動は階層帰属意識に対して正の影響力をもつが,1985年になるとその影響力を失い,2015年,再び統計的に有意な負の影響力をもつことがわかった.この結果,1975年においては「相対地位仮説」,1985年から2005年においては「絶対地位仮説」,2015年においては「慣性仮説」と合致する結果となった.本研究により,世代間所得移動は階層帰属意識に影響しており,その影響力と方向は時代により変化していることが明らかとなった.