著者
橋本 健二 佐藤 香 片瀬 一男 武田 尚子 浅川 達人 石田 光規 津田 好美 コン アラン
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

市区町村および地域メッシュ単位の統計と質問紙調査の結果から、以下の諸点が明らかとなった。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級とマニュアル労働者が大幅に減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという2極化の傾向を強めた。(2)この変化は、都心部で新中間階級と高所得世帯が増加し、周辺部では非正規労働者と低所得世帯が増加するという空間的分極化を伴っていた。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向では低いという、東西方向の分極化傾向は維持された。(4)空間的な分極化は住民の政治意識の分極化を伴っていた。
著者
橋本 健二
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_5-2_22, 2008-11-30 (Released:2009-01-05)
参考文献数
38

「格差社会論」が注目を集めるなかで、階級研究・社会階層研究は、拡大する経済格差と「格差の固定化」など、社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず、社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある。このことは同時に、現代日本の階級研究・社会階層研究が、社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという固有の使命を十分に果たしえない状況にあるということを意味する。 階級研究・社会階層研究の困難をもたらしたのは、その戦後日本における独特の展開過程だった。そこでは階級という概念が、政治主義的な主体、あるいは前近代的性格を残した世代的に固定的な集群とみなされ、対称的に社会階層は、連続的な序列、あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーにすぎないとみなされた。このため日本において階級と社会階層は、その有効性と現実性を大きく制約されてしまった。 階級研究・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには、(1)Marxの両極分解論を明確に否定して、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級の4階級図式、あるいはそのバリエーションを採用するとともに、(2)階級所属が産業構造、労働市場、家族、国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして社会階層を定義することが有効である。本論文ではこうしたアプローチを「階級―社会階層研究」と呼び、1965年SSM調査データ再コードデータの分析によってその有効性を明らかにする。
著者
平原 幸輝 橋本 健二 浅川 達人 妻木 進吾
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2022, no.40, pp.76-92, 2022-09-05 (Released:2023-09-16)
参考文献数
18
被引用文献数
1

In this study, we created social maps based on socio-economic indicators and income-related indicators to clarify the commonalities and differences in the spatial distribution of income classes in the three major metropolitan areas. In the Tokyo metropolitan area, the high-income group concentrated area located in the center of the city is thickly established, and many low-income groups are seen in the outer periphery. In the Osaka area, high-income groups are concentrated in Osaka, Kobe and Kyoto, and highincome groups are concentrated in the north, creating a sector-type spatial distribution. In the Nagoya area, the sector-type spatial distribution is dominated by the concentration of high-income groups in the southeast and low-income groups in the northwest.
著者
坂梨 元軌 河邉 翔平 酒井 正彦 西田 直樹 橋本 健二
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2017-SE-196, no.24, pp.1-6, 2017-07-12

難読プログラミング言語 Malbolge は,その解析困難性により知的財産権の保護などに役立つと考えられているが,命令が特殊であるためプログラムの作成は非常に困難である.そのため,Malbolge プログラムを生成するための中間言語として制御付き疑似命令列が提案されているが,C などの通常の言語と比較すると依然としてプログラミングが困難である.本稿では,整数型と真偽型を扱え,while 文などの基本的な制御構造と再帰関数を定義できる C 言語のサブセットのプログラムから Malbolge コードへのコンパイラの実現法を述べる.コンパイラの実現のために,まず,既存の制御付き疑似命令列に配列構文と関数構文を追加し,それにあわせて既存の制御付き疑似命令列から Malbolge への変換系を拡張する.さらに C 言語のサプセットから制御付き疑似命令列へ変換する方法を提案する.
著者
橋本 健二 石原 靖哲 藤原 融
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.990-1004, 2007-04-01
被引用文献数
5

スキーマ進化においては,もとのスキーマに従う文書の情報を,新たなスキーマに従う文書により表現できることが重要である.また,スキーマ進化後には,もとのスキーマに従う文書を新しいスキーマに従うように変換する作業が必要となり,そのためにスキーマがどのように変更されたかに関する情報が必要である.そこで,本論文では,まず"スキーマ表現能力保存"についての一つの定式化を与える.具体的には,XML文書に新たな要素を追加して得られる文書はもとの文書の情報を保存すると定義する.そして,スキーマG_1の表現能力をG_2が保存するということを,G_1に従う各文書に対して,上の意味で情報を保存するような,G_2に従う文書が存在することと定義する.次にスキーマがどのように変更されたかを表す道具立てとして,更新能力が異なる2種類のスキーマ更新操作群A,Bを提案する.これらの操作群は表現能力保存に関する健全性と完全性を満たしていることが望まれる.そのため,本論文では,表現能力保存に関する各更新操作群の健全性と完全性について検討する.また,表現能力保存の定義に高さ制約という制約を与えた場合についても同様の検討を行う.
著者
橋本 健二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.127-139, 1984-09-30

The purposes of this paper are to outline Marxist approaches in the socio-logical study of education taken initiative by S. Bowles in 1971, to point out problems to be solved in them, and to find direction to overcome them. There are three major question in the theory of Bowles and H. Gintis : (1) Instrumentalist view of public educational institutions, (2) Underestimation of economic functions of them, (3) Overestimation of reproductive functions of them. They dealt with the problems of reproduction of capitalist mode of production as far as public educational institutions took part there, and failed to locate them in the whole processes of the reproduction. Furthermore, they regarded public educational institutions as instruments of ruling classes which they could operate arbitrarily. And they concentrated on only noneconomic, political and ideological functions of them. There have been many critiques of their theory. And some have been proposed attempts to overcome them in two directions : (1) integration of "micro" and "macro" sociology, (2) investigation of structural mechanisms and contradictions. Relative to the second direction, I try to locate "Marxist sociology of education" as a branch of the theory of the capitalist state. That is, "Marxist sociology of education" must, based on more general theories of the state and social classes, (1) analyse functions of public educational institutions as a part of the state, (2) investigate factors influencing these functions, (3) locate these functions in the whole processes of reproduction of capitalist mode of production including both economic and non-economic.
著者
橋本 健二
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.127-139,en308, 1984-09-30 (Released:2011-03-18)

The purposes of this paper are to outline Marxist approaches in the sociological study of education taken initiative by S. Bowles in 1971, to point out problems to be solved in them, and to find direction to overcome them.There are three major question in the theory of Bowles and H. Gintis:(1) Instrumentalist view of public educational institutions, (2) Underestimation of economic functions of them, (3) Overestimation of reproductive functions of them. They dealt with the problems of reproduction of capitalist mode of production as far as public educational institutions took part there, and failed to locate them in the whole processes of the reproduction. Furthermore, they regarded public educational institutions as instruments of ruling classes which they could operate arbitrarily. And they concentrated on only noneconomic, political and ideological functions of them.There have been many critiques of their theory. And some have been proposed attempts to overcome them in two directions:(1) integration of “micro” and “macro” sociology, (2) investigation of structural mechanisms and contradictions.Relative to the second direction, I try to locate “Marxist sociology of education” as a branch of the theory of the capitalist state. That is, “Marxist sociology of education” must, based on more general theories of the state and social classes, (1) analyse functions of public educational institutions as a part of the state, (2) investigate factors influencing these functions, (3) locate these functions in the whole processes of reproduction of capitalist mode of production including both economic and non-economic.
著者
橋本健二編
出版者
弘文堂
巻号頁・発行日
2015
著者
高西 淳夫 石井 裕之 橋本 健二 大谷 拓也
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2021-04-05

本研究は,既存の人型ロボットのエネルギー効率が低いという問題を解決するため,人間の身体構造および運動を参考に,『ロボット身体内保存力学的エネルギー活用運動』およびそれに適した身体構造により全身運動時の消費エネルギーを低減させることを目的とする.具体的には,力学的エネルギーの3形態変換を伴う消費エネルギー最小運動生成法を確立し,脱力・弾性の発揮が可能な高出力関節メカニズムおよび動力伝達機構を用いた人間規範軽量四肢構造,さらに消費エネルギー低減運動に最適化した等身大の人型ロボットを開発し,提案手法をロボット実機で評価する.
著者
橋本 健二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.94-113, 2008-06-30 (Released:2010-04-01)
参考文献数
63
被引用文献数
4 4

今日の「格差社会論」の隆盛は,これまでの階級・社会階層研究には深刻な問題があったことを明らかにした.階級・社会階層研究は,拡大する経済格差と「格差の固定化」など,社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず,社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある.このことは同時に,社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという,階級・社会階層研究の固有の使命を十分に果たしえていないということも意味する.こうした階級・社会階層研究の困難をもたらしたのは,その戦後日本における独特の展開過程だった.戦後日本の階級研究は大橋隆憲によって確立され,その階級図式は社会学者を含む多くの研究者に受け入れられたが,それはMarxの2階級図式を自明の前提とし,しかも労働者階級を社会主義革命の担い手とみなす政治主義的なものであり,1980年代には有効性を失った.社会階層研究を確立した尾高邦雄も,同様に階級を政治的な存在とみなしたが,大橋とは逆に現代日本には明確な階級が存在しないと考え,連続的な序列,あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーとしての社会階層の研究を推進した.こうして日本では,他の多くの国とは異なり,階級と社会階層がまったく別の概念とみなされるようになり,その有効性と現実性は大きく制約されてしまった.階級・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには,(1)Marxの2階級図式を明確に否定して,資本家階級,新中間階級,労働者階級,旧中間階級の4階級図式,あるいはそのバリエーションを採用するとともに,(2)社会階層を,階級所属が産業構造,労働市場,家族,国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして定義することが有効である.このとき階級と社会階層の不毛な対立は克服され,両者を相互補完的に活用することにより,現代社会の構造を分析する生産的な研究分野としての「階級-社会階層研究」を構想することができよう.
著者
橋本 健二
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.2_5-2_22, 2008

「格差社会論」が注目を集めるなかで、階級研究・社会階層研究は、拡大する経済格差と「格差の固定化」など、社会的に注目されている諸現象を十分解明することができず、社会学に対する社会的要請に応えることができない状態にある。このことは同時に、現代日本の階級研究・社会階層研究が、社会学の諸分野に階級または社会階層という有効な独立変数を提供するという固有の使命を十分に果たしえない状況にあるということを意味する。<BR> 階級研究・社会階層研究の困難をもたらしたのは、その戦後日本における独特の展開過程だった。そこでは階級という概念が、政治主義的な主体、あるいは前近代的性格を残した世代的に固定的な集群とみなされ、対称的に社会階層は、連続的な序列、あるいはその中に人為的に作られた操作的カテゴリーにすぎないとみなされた。このため日本において階級と社会階層は、その有効性と現実性を大きく制約されてしまった。<BR> 階級研究・社会階層研究のこうした弱点と困難を克服するためには、(1)Marxの両極分解論を明確に否定して、資本家階級、新中間階級、労働者階級、旧中間階級の4階級図式、あるいはそのバリエーションを採用するとともに、(2)階級所属が産業構造、労働市場、家族、国家などさまざまな制度によって媒介されることによって形成される社会的カテゴリーとして社会階層を定義することが有効である。本論文ではこうしたアプローチを「階級―社会階層研究」と呼び、1965年SSM調査データ再コードデータの分析によってその有効性を明らかにする。
著者
橋本 健二
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.164-180, 1999
被引用文献数
3

戦後日本では, 大橋隆憲らを中心に階級構成研究が独自の発展を遂げたが, 彼らの研究は, 資本家階級と労働者階級への2極分解論や, 労働者階級=社会主義革命勢力という規定など, きわめて非現実的な想定に立っていたこと, また特定の政治的立場を前提とした政治主義性格のために, 階級研究に対する数多くの誤解を生みだし, このことが日本における階級研究を衰退させる結果をもたらしてしまった。いま必要なことは, 階級研究からこうした理論的・政治的バイアスを取り除き, これを社会科学的研究として再構築することである。理論的には, 1970年代半ば以降の, 構造主義的階級理論から分析的マルクス主義に至る階級研究の成果を生かしながら, フェミニズムの立場からの階級研究批判に答えうる階級構造図式と階級カテゴリーを確立することが求められる。実証的には, 社会階層研究の豊かな蓄積を模範としながら, 計量的な研究のスタイルを確立する必要がある。本稿はこうした階級研究の発展のための基礎作業である。<BR>以上の目的のため, 本稿はまず, 現代日本の階級構造を, 資本主義セクターと単純商品セクターの節合関係を前提として, 資本家階級・新中間階級・労働者階級・旧中間階級の4階級からなるものとして定式化し, さらに各職業の性格のジェンダー差を考慮して, 実証研究に適用可能な階級カテゴリーを構成する。次に, 階級構成の変化を概観するとともに世代間階級移動量の趨勢を検討し, 近年の日本では世代間階級移動への障壁が強まりつつあることを明らかにする。最後に, 階級所属と社会意識の関係を検討し, 階級所属が社会意識の形成に第一義的な重要性を持ち続けていることを明らかにする。
著者
橋本 健二
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.29-40, 2008-01-20 (Released:2017-04-25)

This article aims to clarify the structure and dynamics of contemporary Japan as so-called "gap-widening society" from the viewpoint of class studies. For this purpose, 4-class scheme, which consists of capitalist, new middle, working and old middle classes on the basis of jobs, employment status, size of business and gender, is introduced and operationalized for quantitative analysis. Thereafter, economic disparity among classes are measured, income determination processes and income functions are estimated, and structure and trend of inter-generational class mobility is examined. Findings are as follows. (1) Class locations are very important determinant of income, independent of factors such as education, years of work experience and size of business. Income functions vary depending on class locations, which means different income determination processes exist corresponding to class locations. (2)Economic disparity among classes is expanding and its importance as component of total economic disparity is becoming large. Poverty rates vary greatly depending on class locations and these variations are becoming large. (3)Concerning about intergenerational class mobility, all classes show some exclusiveness, nevertheless capitalist class is extremely exclusive, and its exclusiveness has been strengthened in this 30 years. These findings imply that class theory and 4-class scheme have much power of explanation for social structure and processes of the "gap-widening society" in contemporary Japan. Speaking generally, contemporary Japan can be called class society.
著者
橋本 健二
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

骨盤運動や走法の違いが走行運動に与える影響を定量的に評価し,新しいスポーツコーチング学を創出すること目指し,人間の構造と運動を模擬可能な2足スプリント・ロボットの開発を目的とする.人間の走行運動解析を通して,骨盤運動が走行運動に寄与していることを見出した.そこで,腰部関節を持ち,膝関節と足関節には弾性要素を持つ2足ロボットWATHLETE-1を開発した.WATHLETE-1は全身で22自由度を持ち,身長1,500mm,体重62kgである.走行運動制御を開発することで,片脚での跳躍運動を実現した.またYaw方向の角運動量制御も開発し,下半身で発生する角運動量を上半身で補償することができた.
著者
橋本 健二
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.175-190,267, 1986-09-30 (Released:2009-11-11)

社会諸階級の概念はマクロな社会構造と諸過程の研究において基底的な位置を占めるものであるが、にもかかわらずこれまで少数の例外を除いては計量的な実証研究には適用されてこなかった。本稿ではまず社会諸階級の概念を計量的な実証研究に適用するための理論的な準備作業を行ない、その上で現代日本社会を対象に、諸個人の階級所属の決定要因、所得格差、社会意識についての分析を行なう。明らかになったのは次のような諸点である。(1) 諸個人の階級所属を決定する主要な要因は出身階級と学歴であるが、両者の相対的な重要性はそれぞれの階級によって異なる。(2) 諸個人の階級的位置の違いは学歴や職業などの違いには還元できない実質的な所得格差を生み出しており、階級構造は所得の不平等の重要な基礎になっている。(3) 社会諸階級は共通の社会意識を形成する重要な基盤になっている。