著者
三輪 哲 佐藤 香
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.489-494, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)

欧米諸国では多くの社会科学データアーカイブが1960年代に設立されたが,日本ではその設立が20年近く遅れた。日本の最初の組織的なデータアーカイブであるSSJデータアーカイブは,現在,2,000を超えるデータを公開・提供しており,社会調査データの散逸を防ぐとともに二次分析の普及を図り,社会科学教育にも貢献している。ただしSSJDAは,現在,いくつかの課題に直面している。寄託され公開するデータをより増加させることや,セルフアーカイブを実現すること,調査時点でのインフォームドコンセントに二次利用まで含めるよう啓発すること,多様化する利用者へと対応すること,などである。
著者
佐藤 香緒里 吉尾 雅春 宮本 重範 乗安 整而
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.323-328, 2008 (Released:2008-06-11)
参考文献数
15
被引用文献数
5 1

本研究では,股関節外旋筋群が股関節屈曲に及ぼす影響を検討することを目的とし2つの実験を行った。若年健常男女60名を対象とした股関節回旋角度の違いによる股関節屈曲角度の計測では,股関節内旋角度の増加に伴い股関節屈曲角度は有意に減少し(p<0.001),股関節外旋筋群の伸張が股関節屈曲を制限する因子として考えられた。新鮮遺体1体の両股関節後面各筋を切離するごとに股関節屈曲角度の計測と観察を行った結果,梨状筋と内閉鎖筋に著明な伸張が見られ,これらの切離後に股関節屈曲角度は顕著に増加した。梨状筋と内閉鎖筋は股関節外旋筋であることから,これらが股関節屈曲を制限している可能性があると考えられた。理学療法プログラムとして股関節屈曲可動域を拡大するときには,屈曲角度のみに注目せずに内旋角度にも注意を払う必要があると示唆された。
著者
橋本 健二 佐藤 香 片瀬 一男 武田 尚子 浅川 達人 石田 光規 津田 好美 コン アラン
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

市区町村および地域メッシュ単位の統計と質問紙調査の結果から、以下の諸点が明らかとなった。(1)1990年から2010年の間に東京圏の階級・階層構造は、旧中間階級とマニュアル労働者が大幅に減少し、新中間階級とサービス産業の下層労働者が増加するという2極化の傾向を強めた。(2)この変化は、都心部で新中間階級と高所得世帯が増加し、周辺部では非正規労働者と低所得世帯が増加するという空間的分極化を伴っていた。(3)しかし、都心の南西方向では新中間階級比率と所得水準が高く、北東方向では低いという、東西方向の分極化傾向は維持された。(4)空間的な分極化は住民の政治意識の分極化を伴っていた。
著者
佐藤 香寿実
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.393-416, 2019 (Released:2020-02-15)
参考文献数
47
被引用文献数
5 1

本稿の目的は,フランス,ストラスブールの大モスクの建設過程およびその利用を通じて,言説実践としてのスケールがいかに実質的な効果を生み出したのかについて,「スケールのパフォーマティヴィティ」の観点から論じることである。同モスクは,ライシテ(非宗教性の原則)が重要視されるフランスにありながら,異なる制度を持つアルザス・モーゼル地方法を活用し,地方公共団体からの資金援助を受けて2012年に建てられた。本稿では,人文地理学で発展してきた社会構築主義的な「スケール」視角に依拠し,スケール言説がモスクの建設過程および物質性にいかに作用したか,またモスクの利用を通じて新たなスケール言説がいかに再構築されているか,インタビューで得た語りを引用しながら分析を試みた。分析において,アクターや状況に応じて登場する複数のスケールが,「ここ/よそ」の区別に結び付けられていること,さらにスケールの言説実践を通じて,「ここ/よそ」の境界は絶えず問い直されていることが示された。
著者
佐藤 香
出版者
関東社会学会
雑誌
年報社会学論集 (ISSN:09194363)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.22, pp.22-31, 2009-07-25 (Released:2013-03-28)
参考文献数
16
被引用文献数
1

Despite the late introduction of data archiving in Japan, its development over the last 10 years has finally laid the groundwork for serious secondary analytic work. Survey data collected decades ago is, de facto, historical data, and thus, secondary analysis of these data must be approached from a historical perspective. In treating research data in its necessary historical frame, the following three principle dilemmas arise: 1) changing statistical categories, 2) lack of historical perspective, and 3) a tendency to find one's starting point in contemporary values.
著者
金子 元久 矢野 眞和 小林 雅之 藤村 正司 小方 直幸 山本 清 濱中 淳子 阿曽沼 明裕 矢野 眞和 小林 雅之 濱中 淳子 小方 直幸 濱中 義隆 大多和 直樹 阿曽沼 明裕 両角 亜希子 佐藤 香 島 一則 橋本 鉱市 苑 復傑 藤墳 智一 藤原 正司 伊藤 彰浩 米澤 彰純 浦田 広朗 加藤 毅 吉川 裕美子 中村 高康 山本 清
出版者
東京大学
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2005

本研究は、1)日本の高等教育についての基礎的なデータを大規模調査によって蓄積し、その分析をおこない、2)それをもとに各国の高等教育との比較分析を行うとともに、3)その基礎にたって、日本の高等教育の課題を明らかにすること、を目的とした。とくに大規模調査については、(1)高校生調査(高校3年生4000人を、その後5年間にわたり追跡)、(2)大学生調査(127大学、約4万8千人の大学生について学習行動を調査)、(3)社会人調査(9千事業所、2万5千人に大学教育の経験、評価を調査)、(4)大学教員調査(回答者数約5千人)、(5)大学職員調査(回答者数、約6千人)、を行い、それをデータベース化した。
著者
佐藤 香
出版者
JAPAN SOCIETY FOR RESEARCH ON EMOTIONS
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.71-79, 1996-03-31 (Released:2009-04-07)
参考文献数
14

The purpose of this study is to examine the effects of intention in other members' defecting behavior on emotional states and decision in a social dilemma. People may appraise circumstances differently depending on what causes an undesirable event such as inequity of outcomes in a social dilemma. Thus, they may behave differently to cope with the situation. It is hypothesized that the causal attribution of inequity to intentional defection will arouse negative feeling states more strongly and promote defection. On the other hand, such tendency may not be so salient in cases where inequity is due to a system or the structure which they are in. Perceived inequity and intention was manipulated by defecting behaviorof a bogus member created through a computer program. In the experiment, all subjects were in the underprivileded status and were asked how much he/she contribute for the common good on each trial. The results supported the predictions.
著者
吉尾 雅春 村上 弦 西村 由香 佐藤 香織里 乗安 整而
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0826, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】座位で骨盤の傾斜角度を変えて,屍体の大腰筋腱を他動的に牽引して股関節を屈曲する際の張力を調べることによって,座位における大腰筋の機能について検討した。【方法】ホルマリン固定した屍体10体で,明らかな骨変性のない17股関節,男性10股関節,女性7股関節を対象とした。第11,12胸椎間で体幹を切断し,脊椎,骨盤を半切,膝関節で離断,大腰筋腱,股関節の関節包,各靱帯のみを残し,骨格から他の組織を除去して実験標本を作製した。背臥位で両側の上前腸骨棘と恥骨結節とを結ぶ面が実験台と水平になるように,実験台に骨盤をクランプで固定した。実験台は股関節部分で角度を任意に調節できるようにし,床面と水平になるように設置した。骨盤側の台を座位方向に起こして,骨盤長軸と大腿骨とで成す股関節屈曲角度を0度,15度,30度,45度,60度,75度,90度に設定した。それぞれの角度で大腰筋腱を起始部の方向から徒手的に牽引して,股関節が屈曲し始めたときの張力を測定した。張力の測定にはロードセル(共和電業,LU-20-KSB34D)を用い,センサーインターフェイスボード(共和電業, PCD-100A-1A)を通してパーソナルコンピュータで解析して求めた。大腿骨の重量や長さなどの個体因子を排除するために,股関節屈曲角度0度での張力を1として,張力の相対値を求めて検討した。牽引時の主観的抵抗感も検討因子に加えた。統計学的検討はt検定により,有意水準を5%未満とした。【結果】各角度での張力の相対値は0度:1.00,15度:1.05±0.08,30度:1.04±0.11,45度:1.07±0.12,60度:1.25±0.11,75度:1.44±0.15,90度:1.82±0.29であった。15度と30度との間で差が認められなかった以外は,0度から45度まで有意に張力は微増,60度,75度で著明に増加,90度で張力は激増し,60度以上での張力はすべての角度との間で有意差がみられた。牽引時の主観的抵抗感は60度以上で強く,75度でかなり強さを増し,90度では股関節屈曲が困難なほど極めて強い抵抗があった。【考察】第40回大会で骨盤を固定した健常成人の他動的股関節屈曲角度が約70度であることを報告した。主観的抵抗感も加味すると,通常の生体座位における自動的股関節屈曲に75度,90度で得られた張力を求めるとは考えにくい。座位で大腰筋を用いて股関節を自動屈曲するためには骨盤後傾位が効率的で,骨盤前傾位では股関節を屈曲することが困難になる。逆の視点で考えれば,骨盤後傾位で体幹を伸展した座位姿勢を保持するためには下肢が挙上しないようにハムストリングなどの作用が求められるが,前傾位では下肢は挙上しにくいために大腰筋の作用によって体幹伸展保持が保障されるという,60度を境にした役割の切り替えがなされる筋機能を有していると考えられた。
著者
伊達 聖伸 渡辺 優 見原 礼子 木村 護郎クリストフ 渡邊 千秋 小川 浩之 西脇 靖洋 加藤 久子 安達 智史 立田 由紀恵 佐藤 香寿実 江川 純一 増田 一夫 小川 公代 井上 まどか 土屋 和代 鶴見 太郎 浜田 華練 佐藤 清子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、加速する時代のなかで西洋社会の「世俗」が新局面に入ったという認識の地平に立ち、多様な地理的文脈を考慮しながら、「世俗的なもの」と「宗教的なもの」の再編の諸相を比較研究するものである。ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の政教体制を規定している歴史的文脈の違いを構造的に踏まえ、いわゆる地理的「欧米」地域における世俗と宗教の関係を正面から扱いつつ、周辺や外部からの視点も重視し、「西洋」のあり方を改めて問う。
著者
箱崎 友美 鳥越 郁代 佐藤 香代
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.140-152, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

目 的帝王切開(帝切)で出産した女性の出産満足度と産後早期のうつ傾向との関連を明らかすること,ならびにその出産満足度に影響を及ぼす要因について検討する。対象と方法A・B県の22の産科施設にて帝切で出産した褥婦362名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施し,回収は留め置き法と郵送法を用いた。質問紙は,母親の基本属性・帝切で出産した母親の出産満足度(日本語版SMMS)・産後のうつ傾向(EPDS)・自尊感情(自尊感情尺度日本語版)・母親の愛着(MAQ)より構成された。SMMS得点とEPDS得点ならびに属性との関連は,t検定・一元配置分散分析を用い,出産満足度に影響を及ぼす要因の検討は,重回帰分析を用い分析した。結 果回収率は83.1%(301名)で,そのうち294名(97.7%)を分析対象とした。帝切の分類は,予定帝切が207名(70.4%),緊急帝切87名(29.6%)で,出産満足群(SMMS得点≥147点)が247名(84.0%)を占めた。また出産満足群は,出産不満足群に比して有意にEPDS得点が低かった(p=0.003)。さらにSMMS得点に対する影響要因として,母親の愛着得点が選択された(p=0.001)。結 論出産満足群・不満足群の2群間において,EPDS得点に有意差が認められたことから,帝切での出産満足度と産後早期のうつ傾向には関連があることが示唆された。また,出産満足度に影響を及ぼす要因として母親の愛着が確認された。以上のことから,助産師は,出産の振り返りを通して,帝切による出産に対する女性の認識を確認し,退院後も継続した支援を提供していくことが重要である。また帝切による出産の場合,遅れがちになる産後の早期母子接触・早期授乳を積極的に実施することが,出産満足度の向上につながると考えられる。
著者
池田 涼音 関根 詩乃 別所 朋香 大月 陽香 柴田 紗希 中野 実紅 佐藤 香枝
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4.5, pp.289-296, 2022-04-05 (Released:2022-06-05)
参考文献数
10
被引用文献数
2

In this study, we developed a cell culture device using gelatin. An appropriate material was sought to be used as a mold for the gelatin gel, and the bonding method between the gelatin gel and the coverslip, which was the cell culture surface, was investigated. The developed device can be used with a high-magnification objective lens. Furthermore, we report that human vascular endothelial cells and fibroblasts were co-cultured in the gelatin device, and a capillary network was successfully constructed.
著者
佐藤 香枝
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1.2, pp.53-58, 2022-01-05 (Released:2022-04-30)
参考文献数
15

近年,Organ-on-a-chipと呼ばれるmicroTASを利用したヒトの細胞微小環境を反映する三次元の組織モデルの開発が進められている.特に血管は血流にさらされており血管内皮細胞のみの静置培養では,生体内と同等の機能を評価できず,マイクロ血管モデルの開発は重要である.マイクロ血管デバイスは,静置で平面培養した単一種の細胞では実現できない複数種の細胞による組織を模倣した構造を持ち,機械的刺激を与えたアッセイもできることから,動物実験なしに血管の生理を評価できる新しいプラットフォームになることが期待できる.ここでは,著者らのこれまでの取組みとして,血管・リンパ管透過吸収試験デバイス,肺高血圧症マイクロデバイス,血液細胞分化マイクロデバイスの開発とバイオ分析化学への応用を紹介する.