著者
廣瀬 卓哉 丸山 祥 金子 文成
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.333-339, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
23

視覚で誘導される運動錯覚(KINVIS)を用いた介入(KINVIS療法)が,視床損傷に起因する上肢の運動失調に及ぼす影響を検討した.症例は視床梗塞により左上肢に運動失調を呈していた.介入は10日間であり,20分間のKINVIS療法を実施した後に40分間の作業療法を行った.結果は,単回介入による即時効果,および反復介入期間前後で運動失調の軽減を認め,さらに10日後の評価においても機能が維持されていた.さらに,物品操作能力の改善や,生活場面上の問題の改善を認めた.上肢の運動失調に対する治療法として,今後もKINVISの効果を検証していく価値があるものと考えた.
著者
萩原 祐 丸山 祥 長山 洋史
出版者
一般社団法人 神奈川県作業療法士会
雑誌
神奈川作業療法研究 (ISSN:21860998)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.10-18, 2022 (Released:2022-07-29)
参考文献数
19

本研究は,セラピストが重度上肢麻痺患者の麻痺手を生活に転移させるための方略について明らかにすることを目的として実施した.対象者はCI療法の経験がある作業療法士とし,計8名(平均臨床年数10.6±4.0年)とし,個別インタビューを実施した.データから,Steps for Coding and Theorizationを用いて分析した.結果,麻痺手を生活に転移させるために,1)心理的支援として成功体験が積めるよう難易度の調整を行うこと,2)生活面の工夫として自助具を使用すること,3)導入方法の工夫として目標設定ツールの使用や家族の協力を得ること,4)目標設定の工夫として具体的な目標設定を敢えて行わない可能性があることが示唆された.
著者
齋藤 佑樹 丸山 祥 熊谷 竜太 髙橋 慧
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.393-401, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
18

本研究の目的は,作業科学の学びが,学生の作業療法に対する理解や私生活にどのような影響があるのかについて記述し,分析・考察を加えることである.作業科学を履修した1年生5名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施し,SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った結果,作業科学の学習経験は,作業の知識の理解だけでなく,自身を作業的存在として省みる契機となっていた.この実感を伴う作業の知識の活用経験は,クライエント中心の重要性に対する気づきを与え,父権主義的に偏った考え方の修正につながるなど,作業療法を行ううえでの大切な気づきをもたらしていた.
著者
丸山 祥 松本 仁美 岡和田 愛実 新藤 恵一郎 赤星 和人 金子 文成
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1437-1442, 2020-12-15

Abstract:脳卒中後の重度上肢麻痺に対する視覚誘導性自己錯覚(KINVIS)療法と従来型運動療法による複合療法に,Aid for Decision-Making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)を加えたアプローチによって日常生活での手の使用に変化がみられたので報告する.患者は50代男性で,左脳梗塞発症後3.5年経過していた.介入(10日間)は,①視覚誘導性自己錯覚療法,②従来型運動療法,③ADOC-Hを用いたアプローチを毎日行った(③のみ7日間).結果,上肢運動機能の改善を認め,日常生活での麻痺手の使用が増加した.本結果は,視覚誘導性自己錯覚療法と従来型運動療法によって運動機能改善が得られ,さらにADOC-Hを用いたアプローチによって日常生活での麻痺手の使用が促進することを示唆している.
著者
丸山 祥 廣瀬 卓哉 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.718-725, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
19

本研究では,作業療法士の卒前・卒後教育におけるクリニカルリーズニング学習の現在の知見の整理および先行研究で解決されていない課題であるリサーチギャップの特定を目的とし,スコーピングレビューを実施した.結果,30編が抽出され,8編が実験的・介入研究,22編が記述的・観察研究だった.有効な学習方略としては,臨床実習とケース基盤型学習,サービス学習が検討されていた.学習成果としては量的成果に加えて質的成果も利用されていた.今後のクリニカルリーズニング学習の研究では,多面的な学習成果を捉えた実証研究,ケース基盤型学習の検証,指導者や環境要因に焦点を当てた国際的な比較研究が必要である.
著者
丸山 祥 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.188-196, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
20

本研究は新人作業療法士のクリニカルリーズニング学習と教育の経験を分析し,作業療法のクリニカルリーズニング評価尺度(以下,A-CROT)の有用性を検討することを目的とした.新人作業療法士と経験のある作業療法士8組16名を対象に,個別的面接と再帰的テーマ分析を実施した.結果,A-CROT使用が言語・非言語のコミュニケーションによる共同の学習と,4つの思考プロセスの学習の継続に役立ったことから,A-CROT使用の教育効果と触媒効果を確認した.一方,A-CROT使用の実用的課題として,評価方法と評価結果を活用する難しさが挙げられた.今後,A-CROTの手引書や効果的な学習・教育方法の検討が必要である.
著者
丸山 祥 神保 洋平 笹田 哲 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.784-792, 2021-12-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,作業療法士の卒前卒後教育のためのクリニカルリーズニングの評価尺度の開発である.開発方法は,Boatengらの尺度開発の推奨段階およびCOSMINの内容妥当性評価の方法論を参考に,1)暫定項目群の収集,2)項目の内容妥当性の検討,3)尺度の内容妥当性の検討を実施した.研究対象者には作業療法教育者に加え,評価対象者である作業療法学生と作業療法士を含んだ.結果,作業療法のクリニカルリーズニングの4つの思考プロセスに基づく40項目と5段階の評定段階から成る評価尺度を作成し,その内容妥当性を確認した.今後,本尺度の信頼性や妥当性を検討する予定である.
著者
丸山 祥 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.197-205, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
23

今回,作業療法のクリニカルリーズニングの自己評価尺度(Self Assessment scale of Clinical Reasoning in Occupational Therapy;以下,SA-CROT)の妥当性と信頼性を検討した.作業療法学生135名と作業療法士138名を対象にRaschモデル分析,確認的因子分析,仮説検証,信頼性を検討した.結果,SA-CROTの14項目と5つの評定段階がRaschモデルに適合し,確認的因子分析で4因子モデルが適合した.また,仮説検証で予測した結果が得られ,尺度の妥当性が確認された.再検査信頼性と内的一貫性で基準値を満たし,尺度の信頼性が確認された.